はじめてのセンサ技術




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はじめに

センサとはまさに千差万別であり,その技術は幅広い分野に広がっており,また,日々発展し続けている。このようなセンサを利用するにあたって,その基本的原理と性質を知っておくことは非常に大切である。その知識は特に厳密な理論を必要とするわけでもなく,長年の経験を要することでもない。しかしながら,機械やプロセスを制御するとき,どのような情報が必要であるか,どこにどのようなセンサをおくかといった設計問題に対しては,基本的なセンサの知識はもちろん最新のセンサ技術の流れを知っておく必要がある。

さて,従来のセンサ関連の入門書はただセンサを項目ごとに羅列してあるだけで,体系的にかつ必要な事項のみがまとめられているものは少なかった。そこで本書ではセンサを人間の五感と関連付け,センサ技術を分かりやすくかつ興味を持って読んでいただけるような解説を試みることにした。まず,人間の感覚機能に注目し,それらを工学的に実現する手段としてセンサを位置づけ,古典的な基本センサから最新のセンサまでを系統的に紹介していくこととした。また,これからのインテリジェントなシステムを設計・製作しようとする技術者のための入門書として情報処理や制御,応用を念頭におくこととした。

内容的には,まず第1章で人間の五感と現在使われているセンサの基本原理および材料について述べ,これ以降人間の感覚と対応して,内部感覚(第2章),手や指を中心とした触覚(第3章),最も多くの情報を収集する視覚(第4章),聴覚(第5章),味覚,嗅覚と温覚(第6章)という順に説明することとした。さらにセンサで得られた情報を処理する方法について1章を設け,最後にセンシングシステムの実際の例を挙げることとした。

本書を執筆するに当たり,センサ技術に対する数々の有益な助言をいただいた東京工業大学名誉教授・長谷川健介氏に深謝する。また,センサの収集と写真撮影に協力いただいた東海大学技術職員・米岡寿氏に謝意を表する。

1998年9月
ポーランド,ジェローナ・グラにて
著者

増田良介 (著)
東京電機大学出版局

CONTENTS

はじめに

第1章 センサの基本
1.1 センサとは
1.2 人間の感覚とセンサ
1.2.1 視覚
1.2.2 触覚
1.2.3 聴覚
1.2.4 味覚
1.2.5 嗅覚(臭覚)
1.2.6 体内の感覚
1.3 センサの原理と材料
1.3.1 金属材料
1.3.2 半導体材料
1.3.3 アモルファス材料
1.3.4 セラミックス材料
1.3.5 高分子材料
1.4 センサ構成と情報処理

第2章 計る・・・内界計測センサ
2.1 力のセンサ
2.1.1 圧電素子
2.1.2 ストレインゲージ
2.1.3 半導体圧力センサ
2.1.4 ロードセル
2.1.5 トルクセンサ
2.2 加速度・速度のセンサ
2.2.1 加速度センサ
2.2.2 ジャイロセンサ
2.2.3速度センサ
2.2.4 タコジェネレータ
2.3 変位・角度のセンサ
2.3.1 電磁気式変位・角度センサ
2.3.2 抵抗変化式変位・角度センサ
2.3.3 光学式変位センサ
2.3.4 超音波変位センサ

第3章 触れる・・・触覚
3.1 接触センサ
3.1.1 機械式接触センサ
3.1.2 接触センサの応用
3.2 触覚センサ
3.2.1 圧覚センサおよび把握力覚センサ
3.2.2 分布型およびマトリックス型触覚センサ
3.2.3 重心位置検出センサ
3.2.4 マトリックス触覚情報処理
3.2.5 触覚センサの応用
3.3 すべり覚センサ
3.3.1 すべりの発生
3.3.2 すべり検出方式
3.3.3 すべり信号による把握力修正制御
3.4 力覚センサ
3.4.1 力・モーメント検出原理
3.4.2 力覚センサの構造
3.4.3 力覚制御

第4章 見る・・・視覚
4.1 光センサ
4.1.1 光導電素子
4.1.2 光起電力素子
4.1.3 焦電素子
4.1.4 2次元光センサ
4.1.5 光センサの特性表現
4.1.6 発光素子
4.1.7 光センサの応用
4.2 距離センサ・近接覚センサ
4.2.1 距離センサの計測方式
4.2.2 近接覚センサの原理
4.2.3 近接覚制御
4.3 視覚センサ(ビジョンセンサ)
4.3.1 視覚センサの構成と役割
4.3.2 2次元の画像処理
4.3.3 3次元計測
4.3.4 視覚制御
4.4 視覚センサの新しい技術

第5章 聞く・・・聴覚
5.1 音響センサ
5.1.1 マイクロホン
5.1.2 音の計測の応用
5.2 超音波センサ
5.2.1 超音波センサの原理
5.2.2 超音波を用いた距離センサ
5.2.3 超音波センサの応用
5.3 音声センサ
5.3.1 音声認識
5.3.2 音声合成
5.3.3 音声合成・認識による機械とのコミュニケーション

第6章 感じる・・・温覚,味覚,嗅覚
6.1 温度センサ
6.1.1 熱電対
6.1.2 抵抗温度センサ
6.1.3 サーミスタ
6.1.4 IC温度センサ
6.1.5 磁気温度センサ
6.1.6 赤外線温度センサ
6.2 湿度センサ
6.2.1 セラミックス湿度センサ
6.2.2 高分子型湿度センサ
6.2.3 熱式温度センサ
6.3 味センサ
6.3.1 イオン電極センサ
6.3.2 イオン感応型FET(ISFET)
6.4 においセンサ
6.4.1 半導体ガスセンサ
6.4.2熱式ガスセンサ
6.4.3 水晶振動子ガスセンサ
6.5 バイオセンサ
6.5.1 酵素センサ
6.5.2 免疫センサ
6.5.3 微生物センサ
6.6 磁気センサ

第7章 センサ情報処理・制御
7.1 アナログ信号処理
7.1.1 基本アナログ処理
7.1.2 信号変換処理
7.1.3 ノイズ防止・除去の技術
7.2 ディジタル信号処理
7.2.1 基本ディジタル処理
7.2.2 ディジタル信号処理
7.2.3 インテリジェント情報処理
7.3 センサフュージョン
7.3.1 マルチセンサ情報の処理
7.3.2 センサフージョンの手法
7.4 センサ制御
7.4.1 センサ制御の概念
7.4.2 センサ制御の形態

第8章 センサの応用
8.1 家電製品
8.2 ロボットと人工現実感
8.3 自動車
8.4 セキュリティーシステム
8.5 自動審判システム

おわりに
参考文献
さくいん

コラム
百聞は一見に如かず
耳は音の上下をどうやって知るのか?
第六感
力とは
長さとは
卵は硬い
力覚を使わない力制御
人間の目に見えて機械の目に見えないもの
超音波は聞こえない
音声制御の難しさ
みずみずしさの検出
「分解能」と「精度」

増田良介 (著)
東京電機大学出版局