機械製図CAD作業技能検定のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)




機械製図CAD作業技能検定試験突破ガイド-1、2、3級実技試験対応-

試験においては「機械製図手書き作業」「機械製図CAD作業」「プラント配管製図作業」に分かれ、「手書き作業」「CAD作業」は同じ課題で、図面を描く手段が異なる。等級は1級~3級まであり、製図に取組む技術者が通常有すべき技能の程度と位置づけられています。

はじめに

機械製図技能士(CAD作業)試験は、CADを使用して、組立図から指定された部品図を、JIS規格に基づいて制限時間内に作成する課題に取組むもので、設計者の総合的な図面作成能力を評価している。職業能力開発促進法に基づく国家資格であり、並行して同じ課題図を用いて行われている機械製図技能士(手書き作業)は、昭和34年から継続的に行われている。製図作業が手書きからCADに移行したことにより、全国で年間約5000人の受験者のうち85%以上がCADで受験している。

この本は、機械製図技能士(CAD作業)試験対策と製図を初歩から学ぶ技術者、学生ともに使えるように配慮してある。第1章に課題図の解読と作図の手順が紹介されており、第2章から第6章は課題を解読するための基礎知識が解説されている。第7章(組立図の解読)は、ねじ製図を中心に、設計者に理解してほしい製図及び関連の工学的知識を解説している。第8章(計算問題)は、過去に出題された1級の計算問題の解読法が紹介されている。第9章(学習の手順)は初歩から学ぶ技術者や学生諸氏が、練習問題を解いてゆく過程で、製図規格の要点を学べるようにまとめられている。

今回の書籍は、筆者の40年に渉る技術者としての活動及び、製図教育に関する経験を集約したものである。製図教育に係わるきっかけは、筆者が全社の業務効率の向上を目的とするTQM推進部に席をおいていたことに由来する。設計を社内で行い、金型製作からモノづくりまでを仕入先で行っている部品を、担当する技術部門から設計者の残業を減らしたいと相談があった。3次元CADに関する教育を充分行っており、モノづくりがうまくいくのは設計がよいことを立証しており、設計者の力は充分あると考えているが、残業時間が減らない、何が問題か、どのような教育が有効か、提案してほしいと依頼があった。

設計者のヒアリングから出てきた問題は、「仕入先に手がかかる、図面を理解して知恵を出して進めてほしい」という設計者の苦情だった。そこで、仕入先に出向いて事情を聞くと、「3次元データで金型を切削する前にに関してどこにどのような配慮をするべきかの情報がない」と訴えてきた。それで、どうしているのと尋ねると、「多くの時間を割いて、設計者と打ち合わせを行い、注意点を聞き出しているが、質問し忘れは製作側の責任で打ち合わせ時間は、長時間にわたってしまう」何とかできませんかと。

見せてもらうと、はめあい部分も寸法記入だけで、寸法公差の記入がなく、しまりばめなのか、すきまばめなのかの記載もない。はめあい部の金型を共に正寸狙いで型を作っているだけでは、はめあいにならない。具体的には、ヒンジの支点部はすきまばめが必要であり、事前に狙い寸法で造りこみ、“軸は細く/穴は大きく”を狙って、適正なすきまができるように造りこまない品の完成後に不具合が発覚して型修正となる。設計者は発行した図面のらないが低いことを棚に上げて、仕入先に問題を転嫁しているのである。

図面の多いが例のごとく、図面を受け取る側が半歩下がった状況であり、問題点は現れてはこない。また、3次元CADシステムのメーカーが3次元CADの効果として金型精度向上、短期間でモデル完成、設計の成立性検証、類似設計時のデータ転用などをPRすることから、設計者に3次元CADの講習を受けさせて、3次元CADを使って設計をすれば、設計に関する情報はすべて検証でき、発信できると勝手に思い込んでいる向きがある。

3次元CADで取り扱えるのは、形状情報と正寸時の設計の成立検証である。量産時についてまわる、製作時のばらつきに関する配慮は、別の視点が必要であることに気づいているのは、モノづくりを担っている技術者たちである。

このような状況の中、3次元CADの講習に加えて、機械製図に関する教育を取り入れて、紙の上に平面図形で表した図面情報が読み取れ、ばらつきに関する配慮をした指示事項を記入できる設計者を目指して、設計者教育を開始した。その結果、図面の完成度が向上し、図面作成時間が減少し、仕入先との打ち合わせ時間が減少し、加えて機械製図の技能検定の合格率が画期的に向上した。

筆者はこのような実体験を基に、企業の製図教育や、大学で製図教育に取り組んでいる。現在の設計活動の効率がCADにより画期的に向上したことは、周知の事実であるが、ばらつきや、製作上の許容差に関する情報を、図面に描く機械製図に関する教育をしないで、設計部門の効率向上を望むことはできない。

以上のように、CADに関する教育と、機械製図に関する教育は、技術活動を進める両輪であり、切っても切れない関係である。CADの普及活動により、少し脇役のような扱いを受けていた機械製図であるが、機械製図技能士(CAD作業)の資格取得を通じて、設計者として成長する願いをこめて、現場を経験した設計者として、社員教育や、大学での教員と多くの場面での経験を活かして、本書を取りまとめた。大いに活用していただきたい。

機械製図技能検定の実技課題の解読法に関する書籍の発売に際しまして、実技課題の著作権の所有者であります中央職業能力開発協会様には掲載についての許諾をいただき、誠にありがとうございます。厚くお礼申し上げます。

NPO活動を通じて知己を得て、社員教育のチャンスをいただきました、新東エンジニアリング株式会社・成瀬社長さんには、今後、進度を増す技術のグローバル化に重要な機械製図の教科書と、推薦の辞をいただきました。この場をお借りして、お礼を申し上げます。

いまだ浅学非才な小生に執筆のチャンスをくださった日刊工業新聞社書籍編集部の野﨑氏にこの場をお借りし、お礼申し上げます。

2015年7月 著者

河合 優 (著)
出版社: 日刊工業新聞社 (2015/8/13)、出典:出版社HP

推薦の辞

ものを作る時に、工場の職人さんに設計者の意図を正しく伝えるのあり、正しく描けることは、技術者にとって必須の技能である。海外へものづくりを依頼する時には、図面は契約書ともなる。こういった重要な教育・訓練が近年の大学工学部ではなされていないのが実情である。朝はの先生方においては図面を描けない方が多いからで、製図技能は正しい継続的に使うことがなければ身につかないからである。

歴史ある企業の中では、その企業だけで通用する暗黙の了解事項や部門間の取り決めという企業内ルールがいっぱいある。このため経験豊富な技術といえども、JISに準拠した正しい図面を描けるとは限らないという状況がある。実務経験10年以上の機械設計技術者が技能検定1級、2級を受けて落ちてしまうということが意外に多いのはこのためだ。

社内の取り決めが、悪い癖として身についているからである。こういった方々は、なぜいけないのかをJIS規格に基づいて教えるだけで直ぐ合格できる。しかし、間違いの原因を教えなければ何度受けても落ちてしまう。企業内ルールは社内だけなら便利なものである。しかし社外調達、特に海外調達では度々問題を引き起こすことになる。

技術のグローバル化とはJIS規格に基づいた図面が正しく描けることである。JIS規格を遵守した図面であれば他国の規格への翻訳も容易だが、企業のルールで作られた図面では、企業内で通用する暗黙の了解は全て抜け落ちる。製造現場の職人さんによる、当たり前と呼ぶ配慮もない。結果として、コスト低減目的で海外調達にしたところ山のように“使えないもの”が届き、全て処分して新たに作り直すという問題が発生する。

こういった場合、幾何公差が無いなど図面に原因があることが多く、図面の一寸法公差には全て入っている(合格品)が、曲がっている、芯ずれしている、となり使えないということになる。企業内では、工場の職人さんが、軸は曲がりも芯ずれも無いのが当たり前として作ってくれていただけなのである。

本書は、ものづくりの現場にいた著者の経験がふんだんに盛り込まれている良書であり、JISに準拠した正しい図面の書き方の教科書である。

親会社である新東工業株式会社では2012年度より理系の新入社員を対象に、基礎技術教育と製図技能教育をわが社、新東エンジニアリング株式会社が行っている。著者には友人として、2011年に弊社員の技能検定の受験対策指導をお願いしたのがきっかけで、翌年の2012年度から、新東グループの技術系新入社員への製図技能教育初日の講義と図面の添削指導を早い時期と試験日直前にお願いしている。著者の機械製図に対する高い見識と明快な指導に助けられることが多い。

教育成果の確認として技能検定2級を受験させている。全員に2級レベルの教育を実施し、常に高い合格率を維持している。平成26年度は2級、3級(受験資格がない場合は3級を受験)とも100%の全員合格となっている。

2015年7月吉日
新東エンジニアリング株式会社
取締役社長
技術士 成瀬英次

河合 優 (著)
出版社: 日刊工業新聞社 (2015/8/13)、出典:出版社HP

目次

はじめに
推薦の辞

第1章 CAD 機械製図技能士試験

1-1 CAD での受験
1-2 実技試験の概要
1-3 級実技課題の解読例
1-4 級実技課題の解読例
1-5 級実技課題の解読例

第2章 機械製図

2-1 CAD 機械製図
2-2 製図と図面
2-3 製図と製図用語

第3章 CAD 機械製図とJIS 規格一実技試験の線の使い方-

3-1 適用範囲
3-2 引用規格
3-3 図面の大きさと様式
3-4 尺度
3-5 線及び優先順位
3-6 文字

第4章 CAD の図形の表し方一実技試験の図形の描き方一

4-1 投影図の表し方
4-2 断面図
4-3 図形の省略
4-4 特殊な図示法
4-5 図形線は面を代表している

第5章 CAD の寸法の表し方一実技試験の寸法記入

5-1 基本事項
5-2 寸法補助線と寸法線
5-3 穴の寸法の表し方
5-4 特定の対象物と寸法記入
5-5 実用的な寸法記入

第6章 その他の指示事項一実技試験の重点項目

6-1 表面性状の指示記号
6-2 寸法公差
6-3 幾何公差

第7章,組立図の解読一実技課題の解読の手順―

7-1 ねじ製図
7-2 ねじ構造
7-3 封止構造
7-4 軸受のはめあい
7-5 カバーのはめあい
7-6 交差する円筒形状
7-7 リブ構造と回転図示断面図
7-8 鋳肌面と切削面
7-9 加工に配慮した形状
7-10 ばね

第8章 1級の計算問題―1級実技試験準備一

8-1 はめあいの計算 I
8-2 軸間距離の計算 I
8-3 軸間距離の計算 II
8-4 はめあいの計算 II
8-5 六角ボルトの適正本数の計算
8-6 焼きばめの把持力
8-7 水きり溝の寸法
8-8 キー幅の計算
8-9 ボルト本数とピン径の計算
8-10 ウォーム歯車の要目表
8-11面圧の計算
8-12 はすば歯車の要目表

第9章 学習の手順一製図入門者、学生に向けて

9-1 トレース教材
9-2 ねじ製図
9-3 スケッチから製作図面
9-4 表面性状の指示記号
9-5 幾何公差
9-6 現物のスケッチと製作図面
9-7 組立図から製作図の作成

河合 優 (著)
出版社: 日刊工業新聞社 (2015/8/13)、出典:出版社HP