産業廃棄物適正管理能力検定 公式テキスト 第4版




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はじめに

日本で事業活動を行う企業であれば、産業廃棄物を全く排出しない、という企業は存在しないでしょう。

産業廃棄物は工場や工事現場から排出される大量の廃棄物とは限りません。オフィスで捨てたボールペンや交換した蛍光灯など、普段産業廃棄物としてイメージされることが少ないものも、法律上では産業廃棄物に分類され、工場から排出される産業廃棄物と同様に規制が適用されます。

振り返ってみれば、日本ではたびたび産業廃棄物の不適正な処理が大きな問題になってきました。各地で大規模な不法投棄事件が発生し、その中には発生から数十年を経た今日もなお最終的な解決に至っていないものもあります。このような状況の中で、産業廃棄物に関わる規制は繰り返し改正され、さらに厳しく変化し続けています。今日では、廃棄物処理法を中心とした産業廃棄物関連の規制は非常に複雑なものとなっており、担当者が正しい知識を有していなければ、容易に法律違反を犯してしまいます。

加えて、産業廃棄物を排出する企業には特に重大な責任を求められ、処理を委託した処理業者が不適正処理を行った場合でも責任を問われる場合があります。一度、産業廃棄物の不適正処理に巻き込まれれば、高額な罰金や、原状復帰のための費用負担が生じることはもちろん、社名の公表によるブランドイメージの失墜や刑事事件への発展など、経営全体に悪影響を与える事態を引き起こしかねません。今や、産業廃棄物の適正管理は企業の社会的責任にとどまるものではなく、経営リスクへのマネジメントとしても大きな意味を持つようになってきています。

当機構では、ますます重要性を増す産業廃棄物の適正管理を、企業全体で取り組む課題であると定義し、その第一歩は産業廃棄物管理担当者が適正管理を実現できるだけの正しい知識を有していることであると考えました。産業廃棄物適正管理能力検定は、そのコンセプトのもとに、産業廃棄物の管理担当者が必須の知識を体系的に学習し、確かな力量を持つことを確認するために創設された検定試験です。平成28年8月に東京の1会場のみでの開催から始まった本検定試験も、開催8回を数え、全国主要8都市での開催を行うまでに発展してきました。同時に、本検定試験の帯びる社会的使命もますます大きくなっていると感じています。

本書「産業廃棄物適正管理能力検定公式テキスト第4版」は、最新の法施行状況を反映したことに加え、本検定の主旨に共感いただいた第一法規株式会社からの発行物として改訂しました。検定試験に向けた学習はもちろんのこと、日々の実務を行う上での参考書籍としても是非本書をご活用ください。

2019年4月
執筆代表 一般社団法人企業環境リスク解決機構
理事兼事務局長 子安伸幸

一般社団法人企業環境リスク解決機構 (著)
第一法規 (2019/4/27)、出典:出版社HP

産業廃棄物適正管理能力検定とは

産廃リスクから企業を守るため、担当者に必要な力量を日本で事業活動を営む企業であれば、必ず排出している産業廃棄物。廃棄物処理法をはじめとする複雑な規制に対応するためには、何よりも正しい知識が必要です。本検定は、産業廃棄物を排出する企業の担当者が知っておくべき知識を問う検定試験です。

試験要項

名称 産業廃棄物適正管理能力検定
主催 一般社団法人企業環境リスク解決機構(通称:CERSI、セルシ)
受験資格 年齢、性別、学歴、国籍を問わず、どなたでも受験できます。
出題範囲 最新の公式テキストの基礎知識と、それを理解した上での応用力を問います。
廃棄物、リサイクルに関わる内容については、公式テキスト外からも出題される可能性があります。
出題形式 多肢選択方式、正誤方式、および記述方式等
制限時間 90分
合否の判定 70%以上の得点率
受験料 8,500円+消費税 *消費税は受験年度の税率となります。
試験会場 東京、大阪、名古屋、福岡など、全国の主要都市で実施します。
試験日 毎年、7月・12月の年2回実施

 

一般社団法人企業環境リスク解決機構 (著)
第一法規 (2019/4/27)、出典:出版社HP

目次

はじめに
産業廃棄物適正管理能力検定とは

第1章 廃棄物処理法を知る
1.廃棄物処理法の目的と改正の背景
1-1廃棄物処理法制定の背景と目的の変化
1-2制定後の改正の変遷
1-3法律・施行令・施行規則の関係

2.産業廃棄物の排出状況の実態
2-1産業廃棄物の現状
2-2過去に起きた大規模不法投棄事件
2-3産業廃棄物の不法投棄の現状

3.廃棄物処理に関わる立場と責務
3-1国及び地方公共団体の責務
3-2都道府県又は政令市の役割
3-3事業者の責務

4.排出事業者とは
4-1排出事業者とは誰か?
4-2建設工事に伴って排出される産業廃棄物の排出事業者
4-3多量排出事業者
4-4排出事業者の単位
4-5親子会社間の自ら処理の認定

5.廃棄物とは
5-1廃棄物の定義の基本的な考え方
5-2廃棄物であるかどうかの判断事例
5-3産業廃棄物と一般廃棄物の定義・区分
5-4産業廃棄物とは
5-5一般廃棄物とは
5-6特別管理産業廃棄物
5-7特別管理産業廃棄物管理責任者の設置

6.知っておくべき廃棄物に関する用語
6-1誤解が違反につながる廃棄物用語

第2章 廃棄物に関するリスク
1.法令違反に対する厳しい罰則規定
1-1 1つ目のリスク「法令に違反してしまうリスク」
1-2それぞれの立場から見る罰則

2.処理委託後の不適正処理
2-1 2つ目のリスク「処理委託後の不適正処理」
2-2委託に不備があった場合
2-3不備が無くてもリスクは無くならない

3.不適正処理に対する自治体の対応
3-1報告の徴収
3-2立入検査
3-3改善命令
3-4生活保全上の支障の除去等の措置

4.罰則だけが企業リスクじゃない
4-1社会的責任(食品廃棄物不正転売事件の例)
4-2民事責任(ホルムアルデヒド事件の例)

第3章 産業廃棄物の委託基準
1.委託基準1「許可証」
1-1処理業許可の種類
1-2許可証のチェックすべきポイント
1-3許可更新中に期限が切れた場合の対応
1-4収集運搬を委託する際に注意すること
1-5処理業許可の欠格要件
1-6優良産廃処理業者認定制度

2.委託基準の「委託契約」
2-1事前の契約、契約書の保存
2-2契約の相手方
2-3契約の相手を知る上で把握しておきたい条項
2-4契約書の記載事項
2-5契約書の内容変更
2-6WDSは必要?不要?

3.委託時のルール「マニフェスト制度」
3-1マニフェスト制度の目的
3-2マニフェストの運用の流れと各帳票の役割
3-3マニフェストの記載事項
3-4マニフェストの保存
3-5管理票交付等状況報告書
3-6電子マニフェストの仕組み
3-7電子マニフェストの料金プランと選び方
3-8電子マニフェストと受渡確認票
3-9ASPサービスを活用したマニフェスト

4.処理委託において重要な定め
4-1マニフェスト交付が不要となる特例
4-2措置内容等報告書の提出条件
4-3処理困難通知とその対応
4-4契約書の電子化
4-5再委託の禁止と例外
4-6建設廃棄物の下請業者による運搬

5.許可のような特別な認定など
5-1再生利用認定制度
5-2広域認定制度
5-3無害化処理認定制度
5-4廃棄物再生事業者登録制度

第4章 廃棄物の処理基準
1.保管における基準
1-1保管基準
1-2保管時の届出

2.収集運搬における基準
2-1処理基準(収集運搬)
2-2積替保管に関する基準

3.処分の方法や基準
3-1産業廃棄物処分施設の設置
3-2帳簿について
3-3中間処理の方法
3-4埋立処分の方法

4.特別な基準を要する廃棄物
4-1特別管理産業廃棄物の処理方法と基準
4-2廃石綿等、石綿含有産業廃棄物の基準
4-3PCBに係る処理基準
4-4水銀廃棄物の分類
4-5水銀使用製品産業廃棄物の対応

第5章 廃棄物処理法で扱う廃棄物以外の規定と廃棄物処理法以外の規制や法令
1.廃棄物処理法で扱う廃棄物以外の規定
1-1届出の対象となる事業者とは
1-2届出の適用対象となる事業者の保管基準と処分方法

2.廃棄物の規制は法律だけではない
2-1排出事業者の自ら保管の届出対象拡大
2-2廃棄物の地域外搬入等に関する規制事前協議制度
2-3産業廃棄物税
2-4施設確認の義務化
2-5多量排出事業者の対象拡大

3.環境関連法令の全体像
3-1環境問題と廃棄物
3-2環境基本法
3-3循環型社会形成推進基本法
3-4資源有効利用促進法

4.個別のリサイクル関連法令
4-1関連法令と廃棄物処理法との関係
4-2家電リサイクル法
4-3容器包装リサイクル法
4-4建設リサイクル法
4-5食品リサイクル法
4-6小型家電リサイクル法

5.その他注意を要する法律
5-1フロン排出抑制法
5-2ダイオキシン類対策特別措置法
5-3PCB特別措置法
5-4化学物質排出把握管理促進法.
6.災害廃棄物に関する対応
6-1災害廃棄物

COLUMN
COLUMN.1 告示と通知・通達の違い
COLUMN.2 処理業のビジネスモデルから見る不適正処理のメカニズム
COLUMN.3 環境法規制の原則となる考え方
COLUMN.4 排出事業者の例外:下取り
COLUMN.5 マニフェストの例外:保管場所の提供者がまとめて交付
COLUMN.6 産業廃棄物の20種類にはいろいろな呼び方がある?
COLUMN.7 総体として産業廃棄物?
COLUMN.8 あわせ産廃
COLUMN.9 こんなことも法令違反に?~事例紹介~
COLUMN.10 千葉市のウェブサイトから
COLUMN.11 行政処分情報を知るために
COLUMN.12 処理業許可は適正な処理を保証するものではない
COLUMN.13 許可番号の持つ意味
COLUMN.14 年間の許可取消処分件数
COLUMN.15 読みづらい条文の簡単な読み方
COLUMN.16 処理費用の支払い方
COLUMN.17 誤解が違反につながる専ら物と有価物の違い
COLUMN.18 都道府県知事による再生利用個別指定
COLUMN.19 施設「見学」は無駄!施設確認で見るべきポイント
COLUMN.20 特別法と一般法の関係

一般社団法人企業環境リスク解決機構 (著)
第一法規 (2019/4/27)、出典:出版社HP