チーズプロフェッショナル試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)




チーズプロフェッショナルの概要

チーズプロフェッショナルは、チーズの基礎的な知識と取り扱いに関する習熟度を測り、チーズの伝え手である方の呼称資格です。
受験資格は、チーズプロフェッショナル協会の個人会員であることです。
試験は、一次試験と二次試験があり、二次試験では、ブラインドテイスティングなど実技的な問題があります。

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チーズプロフェッショナル試験の公式テキスト

公式テキストがあり、書店やインターネットから購入できます。しかし、講習会での講義内容やチーズに関する常識的な内容などからも出題されるので、注意が必要です。

チーズプロフェッショナルのおすすめテキスト

1.「チーズの教本2019 ~「チーズプロフェッショナル」のための教科書~」(小学館)

チーズプロフェッショナル協会 (著)
小学館 (2019/2/8)、出典:出版社HP

本書は、公式の教本です。チーズの歴史から製造工程、各国のチーズといった基本的なことから生産・消費や販売といったプロの知識、チーズを使った料理やチーズと合う飲み物といった一般の人も知りたい多岐に渡る内容が網羅されており、毎年更新されています。

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目次 – チーズの教本 2019:「チーズプロフェッショナル」のための教科書 (小学館クリエイティブ単行本)

C.P.A.とは、「Cheese Professional Association」の略で、NPO法人チーズプロフェッショナル協会を指します。

「プロフェッショナル」と銘打っているので、チーズに携わるプロたちの団体と思われるかもしれませんが、そうではありません。チーズを愛し、その魅力を広めたいと思うすべての方々のためにある団体です。

いまや日本に輸入されているナチュラルチーズは500種類ともいわれています。最近では、日本全国で小規模ながら、自然と調和しながら個性的なチーズを造っているところが増えています。また世界に誇る高い技術力から生まれる国産プロセスチーズもたくさん売られています。日本独自の個性をもったチーズを造る工房も日本各地に次々と誕生しています。

このように、チーズの魅力は少しずつ日本に広がってきてはいますが、もっともっと理解していただくために、私たちがやるべきことはたくさんあるはずです。そして、私たちの主旨に賛同し会員になられた方々と手を取り合って、チーズを食卓に定着させ、日本に独自のチーズ文化を創っていきたいと考えています。
当協会のロゴマークをあしらったチーズプロフェッショナル認定パッチ

Cheeseの”C”、そしてその先端はチーズナイス、斜めに付いた道具はチーズテスター(トライヤー)を表現しています。

はじめに

私たちチーズプロフェッショナル協会は、チーズの正しい知識と取り扱い技能を習得したチーズのプロを通じて日本のチーズ文化の創造をめざし、2000年に発足しました。

日本ソムリエ協会が様々な活動により多くのワインのプロを育てたように、私たちもチーズのプロの育成が急務だと感じていたのです。それから19年、今では多くのチーズプロフェッショナル認定者が各地で活躍しています。

協会では、「チーズに関わるすべての人を応援する」「チーズの正しい知識・技術を提供する」「日本独自のチーズ文化を創る」を掲げて行動しています。チーズを食卓に定着させることにより、健康増進に寄与することができると考えています。

昨今、飲食店では洋の東西を問わず、チーズの豊かな味わいを活かした料理が次々に生み出されています。チーズを楽しめるお店がどんどん広がりつつあることは、喜ばしい限りです。また国産のチーズ生産者も増え、本場のチーズにひけをとらない優れたチーズが売り場に並び始めています。情報過多の時代だからこそ、正しい知識と技術を持ったチーズのプロの存在が求められています。

この「チーズの教本」は、チーズの歴史、また、世界各地で造られているチーズの基本的な知識やチーズを取り巻く周辺知識を体系的に載せています。多岐にわたる内容を横断的に学ぶことで、チーズの全体像が理解していただけると思います。

毎年行われる資格認定試験の教本でもありますが、チーズのある現場では日常的に活用できる内容も多く掲載しています。ぜひ、お手元に一冊置いていただけると幸いです。
習得した知識や経験をもとに、チーズのある豊かで楽しい健康的な日々を過ごしていただけることを願っております。

2019年 2月
NPO法人チーズプロフェッショナル協会
会長 本間 るみ子

NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (著)
出版社: 小学館 (2019/2/8)、出典:出版社HP

目次

巻頭特集 チーズ探求 ボーフォール
「チーズの教本2019」の主な更新内容

第1章チーズを識る

チーズの文化史
1. 乳食文化の夜明け
2. 凝乳の形成とチーズの誕生
3. チーズの多様化
4. チーズの精神性
5. チーズと近代社会
6. むすび一食べ物としてのチーズ
7. チーズの文化史年表

チーズの原料
1. チーズとは
2. 原料の牛乳について
3. 乳に含まれる各種成分
4. 成分の多様性

チーズの製造
1. 製造のアウトライン
2. タイプ別で分かるチーズの製法例

チーズの生産と消費
1. 世界の乳生産量
2. 世界のチーズ生産量
3. チーズをめぐる貿易
4. 日本のチーズ輸入量
5. 世界のチーズ消費量

第2章 チーズを巡る

日本
ヨーロッパの品質認証システム
フランス
イタリア
スイス
スペイン
ポルトガル
イギリス/アイルランド
ドイツ
オーストリア
ベルギー
オランダ
北欧諸国(デンマーク/ノルウェー/スウェーデン/フィンランド/アイスランド)
東地中海諸国(ギリシャ/キプロス/トルコ)
アメリカ
オセアニア諸国(オーストラリア/ニュージーランド)
アジア諸国(インド/モンゴル/中国)

第3章 チーズを広める

チーズの販売
1. 国際化する乳製品の輸出入
2. 販売員の役割
3. 販売に必要な工夫
4. 日本の食品表示項目
5. ヨーロッパのラベル表示

チーズのサービス
1. 多様化するチーズの仕入れ
2. 本質や特性を理解してチーズを選ぶ
3. 美しいサービスを身に付ける
4. チーズの管理にこだわる

第4章 チーズを愉しむ

チーズの栄養と健康
1. チーズの高い機能性
2. チーズを食べるときに気を付けたいこと

チーズのテイスティング

チーズと料理
1. チーズタイプ別の物性と風味
2. チーズの特性を料理に活かす
3. 各国のチーズ料理

チーズと飲み物
1. チーズとワインの相性
2. その他の飲み物とチーズ

付録1 ヨーロッパ周辺地図
付録2 ナチュラルチーズの分類.
付録3 国内外のコンテスト受賞チーズ一覧
付録4 国内のナチュラルチーズ生産者リスト
付録5 チーズ公正競争規約及び同施行規則
付録6 日・仏・伊・英チーズ用語対照表

NPO法人チーズプロフェッショナル協会とは
チーズプロフェッショナル呼称資格認定試験
C.P.A.チーズ検定
チーズ関連サイト紹介
チーズの索引
参考文献

本書ではチーズ名のカタカナ表記は現地発音に近づけていますが、慣用表記が日本で定着している場合はそれを採用しています。

巻頭特集チーズ探求ボーフォール

美食家として有名なブリア・サヴァランが「グリュイエールのプリンス」として称賛した、フランスが誇る山のチーズの1つです。
生産地はフランス東南部のアルプスの山岳地域、無殺菌乳の全乳を使用した加熱圧搾タイプの大型チーズで、内側に反った側面を持つ円盤形をしています(詳細は82ページ参照)。生産者や生産年月を読別できるカゼインマークが付けられていて、品質を維持するためにA.O.Pに定められた各種の規定があります(A.O.C.取得1968年4月4日)。

ボーフォールとは

原料乳となる牛の種類

A.O.P.(65ページ参照)に定められた規定により、ボーフォールの生産にはサヴォワ地方に古くからいるタリーヌ種O(タランテーズ種)とアボンダンス種が使用されます。両種とも機敏で気温の変化にも耐える能力があり、急斜面でも対応できる足腰の強さを持っています。

タリーヌ種は地元のタランテーズの谷の名から来ており、体重は550~600kg、赤みがかった茶色の毛で、黒目が大きく愛くるしい牛です。アボンダンス種はオート・サヴォワのアボンダンス渓谷が発祥といわれ、体重は約650kg、毛は茶色をしており、顔は白く、その目の周りは茶色で、まるでサングラスをかけたように見えます。

搾乳量は牛1頭あたり、年間5000kgまでに制限されています。餌の75%は指定領域の自然の牧草とし、サイレージの使用は禁止されています。

3つのカテゴリー
このチーズには「ボーフォール」、「ボーフォール・デテ」、「ボーフォール・シャレ・ダルパージュ」の3つのカテゴリーがあります。

ボーフォールBeaufort
11月から5月までの期間に造られたもの。牛は麓にある牛舎で飼育され、主に乾し草(規定エリアでの夏の間に収穫された)を与えられます。仕上がったチーズの生地の色は淡い麦わら色で、味わいは他の2種よりも穏やかです。側面には青い楕円形のカゼインマーク(FRANCE、BEAUFORTという文字、生産者の番号、製造年と月)が付けられています。

ボーフォール・デテBeaufortd d’été
6月から10月までの期間、エテ(夏)に造られたボーフォールです。夏の自然の草はカロテンが多いため、チーズの生地の色は黄色で、フルーティーで豊かな風味がします。通常、乳は麓のコーペラティヴ(酪農協同組合)に運ばれチーズが造られます。

同じ夏の乳でも複数の群れのものが混ざるため、ボーフォール・シャレ・ダルパージュに比べ、できあがったチーズの味わいはやや穏やかになります。側面には青い楕円形のカゼインマークが付けられます。

ボーフォール・シャレ・ダルパージュ Beaufort Chalet d’Alpage
夏の期間(6月から10月)、標高1500m以上の高地で、自然の牧草や高山植物を食んだ一群れの牛の乳を使用し、朝と夕の1日2回、山のチーズ製造小屋(シャレ)で造られます。単一の群れの乳を使用するため、餌となる牧草の影響が反映され、その土地や環境の個性が表現された印象的な味わいのチーズになります。

青い楕円形のカゼインマークに加え、反対側の側面には、ボーフォール・シャレ・ダルパージュの証明となる赤い正方形のカゼインマーク(FRANCE、BEAUFORTという文字、生産者の番号、製造年と月)が付けられます。

生産地域について
フランス東南部、サヴォワ地方のアルプス山脈にある谷、ボーフォールタン、タランテーズ、モーリエンヌ、アルリ渓谷の一部が生産エリアです。これらの地域は適度な降雨量と土壌の性質により、牧草が豊富な牛の飼育に適したエリアです。また、芳香のよい高山植物の多様な植物相も確認できます。

ボーフォールの生産地域はフランスでも最大のスキー場がある場所です。

現在までの流れ

この地で生きる山の人々は、高い山と急峻な斜面、冬の厳しい気候など自然環境と酪農を上手に結び付け、夏の山の斜面に生える豊かな牧草を利用しチーズを製造する必要がありました。

中世、修道院と山の共同体は、多くの乳牛を受け入れるために山を開墾し、高地放牧場を造り、フリュイコミューン(fruitscommuns)といわれる共同経営の加工場でチーズを製造、熟成してきました。

この山では長い間、ヴァシュランと呼ばれる約10kgのチーズを造っていましたが、山地の開墾が進んだ17世紀、ボーフォールタンの谷でグリュイエールに似た40kgのグロヴィール(grovire)というチーズが製造されました。そして急速にタランテーズの谷、モーリエンヌの谷でもこのチーズの製造が広がっていきます。

1860年ごろ、2人の木工職人がボーフォールのために側面が凹形になる円形の型を発明しました。そのおかげで、チーズの側面を縄で縛り、ロバの背の両側にチーズを載せ、高地から谷に下ろすことが可能になりました。

1865年ごろにはグロヴィールはボーフォールと呼ばれるようになったようです。こうして、徐々にボーフォールは山の人々の収入源となっていきました。

しかし、第二次世界大戦後、人口流出やリゾート開発がすすみ、この地域の山岳酪農は危機に直面しました。1960年ごろの生産量は500t以下に落ち込む事態となりました。

この状況を打開するためにMaxime Vialletという人物がリーダーとなり、ボーフォール生産者協同組合(l’Union des Producteursde Beaufort)が再編成され年間を通して製造、熟成、マーケティングを確実に行えるようにしました。ボーフォールタン地区、タランテーズ地区、モーリエンヌ地区に組合が設立され、各地区の施策が始まりました。

様々な研究機関(国立農業研究所INRA、フランスチーズ技術研究所ITFF)と協力し品質面での改善がなされ、1968年のA.O.C.認定へと結び付きます。また、牧草地における移動式搾乳システムの開発や草刈り作業の部分的な機械化などをすすめ、作業効率を上げる工夫もされてきました。さらに制度の基準をより厳格化することにより、ボーフォールは付加価値のあるチーズとして広く知られるようになりました。

現在でもボーフォール生産者協同組合とボーフォール保護組合(Syndicat de Défense du Fromage Beaufort)が中心となり施策は続けられています。

2009年よりEU(ヨーロッパ連合)の品質認証制度に準拠しA.O.P.と表記。
2013年、パリのリュクサンブール公園近くにブティックを開店。

◆生産量の変化
2006年4320t
2014年5004t
2015年5050t
2017年5100t
出典:CNAOL/INAO/ODGlaitiers-septembre2017
http://www.fromage-beaufort.com/fr/i14-beaufort.decouvri_p43-un-peu-d-histoire.aspx

◆ボーフォールの製造者数2017年現在
コーペラティヴと呼ばれる酪農協同組合(製造と熟成) 8
山岳酪農のグループ(夏季アルパジストのグループ) 7
個人経営の生産者 18
牛乳購入の生産者 1
規定地域内の熟成専門の会社 2

アルプスの山の四季の中で

ここでは山岳地帯の地形を生かし、変化のある四季の中で、すばらしい芳香を持ったチーズを造り続けています。牧草の成長と共に、牛も谷から山へと標高を上げ移動し、夏にはアルパージュの季節をむかえます。


5月になるとアルプスの谷は雪解けと共に若草が生え、緑の斜面へと変わっていきます。牛は長い冬を過ごした牛舎から出され、麓の自然の草を食み始めます。


6月半ばごろ、高地で夏のチーズを造るため、アルパジストは牛の群れと共に標高1500m以上の放牧地にたどり着きます。カウベルの音が響き渡り、山が活気付くアルパージュの季節の到来です。

山の斜面には緑豊かな牧草地が広がり、牛は柔らかく青々とした草や高山植物を食み、夏をのびのびと過ごします。近くにはチーズを造るシャレ=山小屋(一番小屋)があり、1日に2回、朝と夕方に一群れの牛の乳を使用し製造が行われます。そして、牛が牧草を食べ尽くした7月にはさらに上の二番小屋へと牧草の成長と共に上がっていき、約2500mまで上がることもあります。

9月になると最初の放牧地には二番草が生えており、彼らは山を下りそこで過ごします。戻った小屋では夏の終わりまでチーズが造られます。移動式搾乳機も牧草地の状況と共に移動します。

規定のエリアの標高1500m以上の高地にある放牧地には様々な植物が群生します。その植物の種類は1mあたり60ほどを確認することができます。

この季節は放牧の100日間といわれます。また、この季節は麓では冬に備えるための牧草を収穫する期間でもあります。

このように山の斜面を利用して牛を放牧することにより、この地域の観光資源でもある冬のスキー場の斜面(ゲレンデ)の維持にも役立つのです。

*6~10月の間、乳をコーペラティヴに運び製造されたボーフォールは「ボーフォール・デテ」となります。同じ期間、標高が1500m以上、山小屋にて一群れの乳のみを使用し、朝、夕の1日に2回製造する場合は「ボーフォール・シャレ・ダルパージュ」となります。

*牧草を確保でき、放牧が可能な広い斜面では、山小屋が1カ所の場合があります。

*牧草地や小屋は、共同の所有(commun)の場合と個人の場合がありますが、communの場合は借りて使用します。

秋から冬
秋になると気温が下がり、日が短くなります。群れは徐々に下山し、再び麓に移動します。牛は雪が降るまでの間は牛舎に近い土地で過ごし、雪の季節を迎えると、牛舎の中で乾し草を与えられ、長い冬を過ごします。

夏には放牧場だった斜面には雪が積もり、スキーヤーが冬を楽しむ季節がきます。酪農家は牛の世話のみならず、スキー場での仕事に携わる忙しい季節となります。

山小屋でのダイナミックな製造

以下は伝統的なボーフォール・シャレ・ダルパージュの製造の例です。ボーフォールのカテゴリーの中でも夏季放牧の期間に山小屋で造られる、ボーフォール・シャレ・ダルパージュは搾乳したばかりの生あたたかい乳を凝固させて造ります。

伝統的なボーフォール・シャレ・ダルパージュの製造例

◆搾乳したての無殺菌の全乳を大きな銅製の鍋(ショードロン・アン・キュイヴル)に注ぎ、33°Cほど(規定では32~34°C)に加温
◆自家製のレンネットを用意
仔牛の第4胃袋を乾燥させたものを使用してレンネットを入れて約30分後、凝乳を確認します。
◆カッティング
15分ほど凝乳を静置した後、チーズハープを使用し丁寧にカットをします。
●加熱と攪拌
カッティングが終わったら、約54°C(規定では53~56°C)まで温度を上げ、攪拌はサイコロ状のカード粒が収縮し、カード粒が麦粒ほどのサイズになるまで続けます。
◆カード粒の確認
凝乳の粒を固めて握ったり、潰したり、振ったりしながら確認します。チーズの種類によって異なりますが、ボーフォールでのこの作業は、粒の質感や弾力だけではなく、粒の塊がほぐれる加減も確認します。
◆底に沈んだカードをリネン(亜麻)の布で引き上げ
◆型入れ
布に入ったカード粒の大きな塊を、プレス機のある場所に移動させ、型に入れます。型に入れる際、カゼインマーク2種を側面につけて次のプレス作業へ移ります。
◆成形(プレス)
約20時間(規定では15時間以上)ボーフォールの形状の特徴となる、側面を縄で締めることで直径が調節できる凹型の木枠(cercleaBeaufort)を使用し、途中反転が行われます。
◆加塩
型から出した後、飽和食塩水に24時間(規定では20~24時間)に浸けます。

ボーフォールの熟成

◆熟成は小屋に数日置いた後、麓にある協同組合や熟成会社のカーヴに移して行います。◆約10°C(*規定では6~12°C)の湿度の高いカーヴ。
◆エピセアの板を使用。
◆週に2回反転とモルジュ液でブラッシング、表皮を形成させます。
◆最低5ヵ月熟成させます。熟成期間中も定期的に反転、ブラッシングを行います。

ボーフォールを楽しむ

香り高いボーフォールは子供からお年寄りまで楽しめるチーズです。緻密な組織でありながら、しなやかさがあり、ナッティーでフルーティーな風味を持ちます。1年ほど熟成したものは、芳醇な旨味をじっくりと楽しむことができます。

愉しみ方
アペリティフのお供に、おやつタイムにと手軽に幅広く楽しめます。そのままカットし、飲み物ならワインや日本酒、紅茶などと一緒に召し上がるとよいでしょう。また、フルーツやナッツ、ドライフルーツ、はちみつ、ジャムを添えても楽しめます。

また、サヴォワ風チーズフォンデュ、グラタン、キッシュ、サラダ、サンドイッチなど様々な料理に利用できます。現地ではサヴォワ地方の伝統的なクロゼ(Crozets)という小さな四角いパスタにボーフォールやベーコン等を使用したグラタンも人気です。

ボーフォールのカット方法
・サイコロ状にカットすると、チーズが口中でゆっくり溶け出し、濃厚な味わいを楽しめ
ます。
・スライサーで薄く削ると口溶けがよくなり、華やかな香りを楽しむことができますが、
乾きやすくなるので、スライスしながら召し上がるとよいでしょう。
・2~3mmほどの厚さにカットして、チーズプラトーに加える方法もおすすめです。

ボーフォールの保存方法
カット面に油分が浮いていたら、キッチンペーパーで押さえ、保存はアルミホイルかチーズ専用ペーパーに包み、さらに乾燥しないようにラップをしてタッパーなどに保存するとよいでしょう。

「チーズの教本2019」の主な更新内容

新たにA.O.C.(原産地名称統制)に認可されたチーズ
※A.O.C.については、65ページ参照

●フランスのBrousse du Rove(ブルース・デュ・ロヴ)がA.O.C.に登録されました。(詳細は88ページへ)

更新、追加された箇所

●ドイツを更新しました。(詳細は146~149ページへ)

NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (著)
出版社: 小学館 (2019/2/8)、出典:出版社HP

目次 – ツウになる! チーズの教本

はじめに

「あなたはチーズが好きですか?」

こう質問すると、たくさんの方が「好きです!」と答えてくれます。でも「どのチーズが好き?」と次の質問をすると、ほとんどの方が「ええと……」と、言葉に詰まってしまいます。

「チーズ」という言葉を聞き「好きです!」と答えるまでに、頭の中でイメージするのは、どんなチーズでしょうか。チーズバーガーやピザ、グラタンやチーズフォンデュといった料理?もしくは、チーズタッカルビやのびるチーズドッグといった流行りのメニューでしょうか。

どれもおいしいけれど、まだまだそれはチーズの世界の入り口。

チーズの伝統国では、日常の食卓に欠かせないものとしてチーズが存在していますし、その種類は星の数ほどあります。真摯に、ていねいに造られるチーズには、ほかの郷土の料理やお酒と同じように、ワクワクするような魅力やストーリーがあります。

また「チーズを知る」ということは、その製造工程や原料となるミルクのことはもちろん、そのミルクを搾らせてくれる牛や山羊、羊などの動物のこと、その餌となる草や自然環境……..いろいろなことがつながってきます。ひとかけらのチーズには、自然の恵みと長年積み重ねられてきた英知がギュッと詰まっているのです。

日本におけるチーズの食文化は、まだ始まったばかり。その歴史や造り手については、本書の中でもくわしくお伝えしますが、日本の一般家庭にチーズが普及したのは、戦後のこと。ヨーロッパには1000年単位の歴史があるのに対し、まだ100年も経っていません。

でも、伝統や本質を大切に考え、新たな食やスタイルを生みだすことが得意な日本人。私達ならではのチーズの食文化がこれから花開いていくことは、想像に難くありません。

「チーズが好き!」から一歩進んで、「○○っていうチーズが好き!」「このチーズはこうして食べるのが好き!」「この人の造るチーズが好き!」といった答えが返ってくる“チーズツウ”が1人でも多く増えたらステキだなぁ……そんなことを思い描きながら、本書を執筆しました。

本書は、日本の食卓、そして日本人のさまざまな生活シーンにチーズを定着させるために日々活動を行っているNPO法人チーズプロフェッショナル協会の監修のもと、同協会が手がける公式教本や「チーズ検定」の講習会テキストの内容をベースに、チーズプロフェッショナルである著者が所有する独自の資料を加え、執筆・再編集した内容となっています。

写真素材につきましては、日本各地の工房やチーズに関わるさまざまな団体の方々にもご協力いただき、新たなものも多く使用させていただいております。チーズを愛するみなさんのご協力に、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

そうした感謝の思いを胸に、あらためてチーズと向きあうと、なんだかそれだけで自然と笑顔になってしまいます。チーズが特別な食べ物としてではなく、多彩な食べ方とともに日々の暮らしに溶けこんでいきますように、そして、多くの方がチーズから広がる楽しみをたくさん発見してくれますように……やはりそう願わずにはいられません。

まずはページをめくりながら、1つでもよいので“自分のお気に入りのチーズ”を見つけてみましょう。そこからワクワクするなにかが、きっと始まります。

ようこそ、チーズツウの世界へ!

2018年11月
佐野 嘉彦

佐野嘉彦 (著), NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: 秀和システム (2018/11/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに
JCA2018速報!
チーズツウになるための基礎知識

第I部 「チーズ造りツウになろう!

Chapter1 チーズの原料、ミルクを知ろう!
Column 草を食むものく反芻する>

Chapter2 チーズの造り方を知ろう!
Column チーズの各国の呼び名
Column チーズの皮はどれでも食べる?

Chapter3 チーズの歴史を知ろう!
Column チーズの文化史より

Chapter4 世界の品質保証システムを知ろう!
第1回 チーズ造りツウCheckテスト

第II部 日本のチーズツウになろう!

Chapter5 日本のチーズ事情を知ろう!

Chapter6 注目したい!日本のチーズの造り手25選!!
01. 鶴居村振興公社酪楽館
02. チーズ工房白糠酪恵舎
03. しあわせチーズ工房
04. 共働学舎新得農場
05. ハッピネスデーリィ
06. 冨田ファーム
07. 伊勢ファーム
08. 町村農場
09. チーズ工房タカラ
10. ニセコチーズ工房
11. 那須高原今牧場チーズ工房
12. CHEESESTAND
13. 高秀牧場チーズ工房
14. チーズ工房【千】sen
15. アトリエ・ド・フロマージュ
16. ボスケソチーズラボ
17. 清水牧場チーズ工房
18. H.I.F.開田高原アイスクリーム工房
19. ILRICOTTARO
20. 吉田牧場
21. 三良坂フロマージュ
22. 木次乳業
23. 糸島ナチュラルチーズ製造所TAK
24. FARMQ
25. ダイワファーム
Column 世界に誇る!日本のプロセスチーズたち|
第2回 日本のチーズツウCheckテスト

第Ⅲ部 世界のチーズツウになろう!

Chapter7 ツウなら知っておくべき!世界のチーズ50選!!

Chapter8 世界のチーズ<キホンのキホン20選>
フロマージュ・ブラン/クリームチーズ/マスカルポーネ/モッツァレッラ/リコッタ/フェタ/カマンベール/ブリ/ラクレット/モン・ドール/ロックフォール/ゴルゴンゾーラ/ブルー・スティルトン/チェダー/ゴーダ/ミモレット/コンテ/パルミジャーノ・レッジャーノ/グラナ・パダーノ/ペコリーノ・ロマーノ
Columnブルーチーズとあわせて飲みたいお酒
Column関税と価格について

Chapter9 世界のチーズ<ツウのキホン20選>
カッテージチーズ/ブルサン/サンタンドレ/シャウルス/サント・モール・ド・トゥーレーヌ/シャヴィニョル/マンステール/ピエ・ダングロワ/タレッジョ/フルム・ダンベール/ブルー・ドーヴェルニュ/ダナブルー/カチョカヴァッロ/テット・ド・モワンヌ/コルビー・ジャック/オッソー・イラティ/ケソ・マンチェゴ/ボーフォール/グリュイエール/エメンターラー
Column シェーヴルチーズの魅力
Column チーズによくあう食材
Column 羊乳製チーズの魅力
Column 孔あきチーズとネズミのストーリー

Chapter10 世界のチーズ <ツウのツウ10選>
ブリア・サヴァラン/ブッラータ/バラカ/ヴァランセ/バノン/ラングル/エポワス/シュロップシャー・ブルー/ルブロション/アジアーゴ
第3回世界のチーズツウCheckテスト

第IV部 チーズのウンチク
Chapter11 チーズの味わい方のコツを知ろう!
Chapter12 飲み物から考えるチーズ
Chapter13 チーズの道具・カット方法・盛りつけのコツ
Chapter14 チーズの保存方法を知ろう!
Chapter15 チーズの栄養と健康効果を知ろう!
Chapter16 チーズの用語集
第4回 チーズのウンチクツウCheckテスト
チーズツウ Checkテスト総合
チーズツウ Checkテスト解答

参考文献
索引

佐野嘉彦 (著), NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: 秀和システム (2018/11/20)、出典:出版社HP

JCA2018速報!

第3回グランプリは、北海道のハードチーズ「タカラのタカラ」
2014年から隔年で開催されている国産ナチュラルチーズコンクール「JCA(JapanCheeseAwardジャパンチーズアワード)」。2018年10月20日、第3回となる“JCA2018″が東京・大崎ブライトコアホールにて開催された。

翌日開催された国産ナチュラルチーズの展示会「日本の銘チーズ百選」の会場で、結果は発表。その模様とともに、各カテゴリーでNo.1となった部門賞と、“ベスト・オブ・ベスト”として選出されたグランプリを紹介しよう。

Japan Cheese Award 2018受賞一覧
グランプリ チーズ工房タカラ 北海道 タカラのタカラ
フレッシュ・プレーン部門賞(金賞) らくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場 熊本 フロマージュブランリス
フレッシュ・バラエティ部門賞(金賞) プレスキル・フロマージュ 北海道 プレスキル
フロマージュ
オイル漬け
リコッタ・プレーン部門賞(金賞) CHEESE STAND 東京 出来たてリコッタ
リコッタ・バラエティ部門賞(金賞) ナカシマファーム 佐賀 ブラウンチーズ
白カビ部門賞(金賞) アトリエ・ド・フロマージュ 長野 ブリー
ソフト酸凝固(山羊乳) 部門賞(金賞) 三良坂フロマージュ 広島 三次の鵜飼
ソフト酸凝固 山羊乳以外) 部門賞(金賞) フロマージュ・デュ・テロワール 東京 dome(ドーム)
ウォッシュ部門賞(金賞) 共働学舎 新得農場チーズ工房 北海道 酒蔵
パスタフィラータ・モッツァレッラ
部門賞(金賞)
八丈島乳業株式会社 東京 Mozzarella
Dorata
パスタフィラータ・バラエティ部門賞(銀賞) CHEESE STAND 東京 東京ブッラータ
パスタフィラータ・熟成部門賞(金賞) チーズ工房乳ぃーずの物語 広島 カチョカヴァロ
青カビ部門賞(銀賞) ニセコチーズ工房有限会社 北海道 ブルーチーズ
二世古【空ku:】
非加熱圧搾・熟成4ヶ月未満部門賞(金賞) ボスケソ・チーズラボ 長野 SHIRAKABA
非加熱圧搾・熟成4ヶ月以上部門賞(金賞) チーズ工房 那須の森 栃木 森のチーズ
非加熱圧搾・アディティブ部門賞(銀賞) 神津牧場 群馬 神津下仁田ねぎ
非加熱圧搾・ラクレット系部門賞(金賞) チーズ工房タカラ 北海道 タカラのトケル
加熱圧搾・熟成6ヶ月未満部門賞(銀賞) 川瀬チーズ工房 北海道 フリル
加熱圧搾・熟成6ヶ月以上部門賞(金賞) チーズ工房タカラ 北海道 タカラのタカラ

JCA(JapanCheeseAward)とは
JCA(JapanCheeseAward:ジャパンチーズアワード)は、チーズプロフェッショナルという呼称資格をもち、品質評価のトレーニングを積んだメンバーが、国産のナチュラルチーズと真剣に向き合い“今、食べるべき日本のチーズ”を選ぶコンクール。

「食べ手・伝え手のプロ、チーズプロフェッショナルだからこそできる応援をしたい!」というみんなの熱い想いが詰まった国産ナチュラルチーズのコンクールだ。

NPO法人チーズプロフェッショナル協会(CPA)は、ヨーロッパの品質評価法をベースに、日本ならではの評価方法を築き、人材を育成していくことを目的とした「専科セミナー」を2012年より本格的に開始。2014年から隔年で、造り手と食べ手をつなぐ国産ナチュラルチーズコンクール「JapanCheeseAward」を開催している。

“ジャパニーズ・ウイスキー”が1つのジャンルとして確立したように、“ジャパニーズ・チーズ”にも国内外で認められる時が将来やってくる!チーズツウなら、注目しないわけにはいかないコンクールといえるだろう。

DATAJCA(JapanCheeseAward)

公式Webサイトhttps://www.japancheeseaward.com/

●JCAの3つの特長

1.専門のトレーニングを積んだ審査員たち「チーズプロフェッショナル」の有資格者で、ティステイング能力(官能評価能力)を向上させる基礎トレーニングや品質評価法の学習からなる「C.P.A.品質評価・専科セミナー」の修了者が審査。そのほか、出品するチーズ生産者からの希望者(※出品したカテゴリー以外のチーズの審査を担当)や、海外のチーズコンクールなどで審査員経験の豊富なチーズの専門家も加わる。

2.きめ細やかな審査方法
チーズのカテゴリーごとに則したC.P.A.オリジナルの評価表を使用。ベースライン評価として「形と外観」「生地と組織」「においと味」の3項目について減点法で細かく審査するほか、特にすぐれた点をメリットとして加点法で評価する。

3.フィードバック&ブラッシュアップ支援
審査結果と内容は、リーダーとなる審査員が「フィードバックシート」にまとめて、チーズづくりの改善ポイントの参考になる製造の手引きも添えて、すべての出品者に送付される。

●C.P.A.(CheeseProfessionalAssociation)とは
C.P.A.とは、チーズの正しい知識と取り扱い技術をもつプロフェッショナルを育成し、チーズの普及啓蒙を行うために、2000年に発足した特定非営利活動法人「チーズプロフェッショナル協会」の略称。

チーズプロフェッショナル協会の会員数は約1,900名(2017年度現在)。飲食業界に従事する方、チーズ製造者、一般愛好家など、職業・年齢層はさまざまだ。
C.P.A.は“チーズを食卓に定着させる”という思いをもとに、「チーズに関わるすべての人を応援する」「チーズの正しい知識・技能を提供する」「日本独自のチーズ文化をつくる」を三本柱として、チーズを食べる人たちの健康増進に寄与する活動を行っている。

「チーズプロフェッショナル資格認定試験」や「チーズ検定」の実施のほか、専門知識を深める勉強会や相性研究、試食会や見学ツアーなど数多くのセミナーやイベントを開催。2009年からは、国産ナチュラルチーズの展示会「日本の銘チーズ百選」を定期的に開催。国産ナチュラルチーズの生産者を食べ手と直接つなげる活動を行っており、「JCA(JapanCheeseAward)」もその一環だ。

NPO法人チーズプロフェッショナル協会
〒101-0047東京都千代田区内神田1-18-1イワカタビル3F(本部)
TEL:03-3518-0102
FAX:03-3518-0103
https://www.cheese-professional.com/

チーズツウになるための基礎知識

チーズとはなにか

そもそもチーズとはなにか。あらためてその定義を尋ねられると困る人も多いはず。CODEXという国際食品規格の定義では「乳や脱脂乳をレンネットやその他の凝固剤によって凝固し、ホエイを分離したもの」となるが、この基礎知識ではもう少し噛み砕いて説明しておこう。

原料となるのは、みなさん知ってのとおりミルク。牛のミルクがもっとも多く使われるが、山羊や羊、水牛のミルクで造られるチーズもある。そのミルクを、乳酸菌やミルクを固める酵素(レンネット)の力を借りて固めて、水分(ホエイ)をある程度切ったもの。これがチーズと呼ばれる最低限の定義となる。いわばこの“チーズの原型”から、さらにさまざまな製法が用いられて、いろいろなタイプのチーズになっていくわけだ。

ナチュラルチーズとはなにか
チーズは大きくナチュラルチーズとプロセスチーズの2種類に分けられる。先に説明したように、乳酸菌や酵素の力でミルクを固めて“チーズの原型”となるものができるわけだが、フレッシュタイプのチーズを除くと、ほとんどのチーズはその後、時間とともに熟成という工程を経ていく。

熟成の変化、その仕組みは本当に複雑で、まるで魔法のようなものなのだが、いわゆる“食べどき”を逃すと、私たちにとっては酸化や腐敗といわれるネガティヴな変化となっていってしまう。

この“食べどき”をできるだけ保つための工夫が施されたものがプロセスチーズ(くわしくはP.78~79を参照)。それ以外の多くのチーズがナチュラルチーズということを、この基礎知識ではまず覚えておこう。

ミルクから生まれるほかの乳製品
図は、牛のミルク(生乳*)から造られる代表的な乳製品を表したもの。ミルクの成分を余すところなく有効利用することで、これらの乳製品が造られている。どれも私達の生活に必要なものばかりだ。

なお、日頃なじみのあるマーガリンは植物性油脂から造られているので、ここには入っていない。

※生乳:牛から搾ったままのミルクのこと。生乳を加熱殺菌し、私たちが飲むために造られたものが牛乳と定義される。

ナチュラルチーズの分類
個性豊かなナチュラルチーズ。日本で流通しているものだけでもその種類は数百種類ともいわれるが、個々の特徴によって整理することができる。

ナチュラルチーズの分類方法は国によって異なる。原料乳の種類、製造方法、製品中の水分や脂肪の含有率、原産国別など、さまざまな分類方法があるのだが、日本では1990年代にフランスの分類をもとにして、ナチュラルチーズを7つに分類し、整理したものが一般化している。

これは、多くのチーズショップや本などでも紹介されている方法。またこの基礎知識では、セミハードタイプとハードタイプをひとまとめにして、セミハード・ハードタイプとして紹介しておこう。

1.フレッシュタイプ
ミルクを凝固させ、ホエイを分離してすぐに食べられるチーズをいう。原料乳は、その土地で飼育されている牛、山羊、羊などさまざま。

フレッシュタイプのチーズは一般的に、水分が多く、やわらかいものが主流。成形されていないものが多く、容器に入れて販売されている。成形されていないものでも、熟成させないチーズはフレッシュタイプに属する。

2.白カビタイプ
チーズの表面に白カビを繁殖させ、熟成させるタイプ。白カビが作る酵素によってタンパク質が分解され、表面から内部に向かってチーズの組織がやわらかく変化していき、風味も濃厚になっていく。

原料になるのは牛のミルクが主流だが、山羊乳製や羊乳製のものもあり、最近ではクリームを加えて脂肪分を高くした新しいタイプの白カビチーズも販売されている。

3.青カビタイプ
チーズの内部に青カビを繁殖させ、熟成させるチーズで、総称してブルーチーズとも呼ばれる。青カビの生育には酸素が必要なため、チーズの内部にわざと隙間を作ったり、金串で孔をあけたりして、青カビの繁殖を助ける。

これも原料乳はおもに牛のミルクだが、フランスでは羊のミルクで造るロックフォールがあり、スペインなどでは季節によって数種類のミルクをブレンドするものもある。また、近年開発されたもので、青カビチーズの表面に白カビを繁殖させたチーズもある。

4.ウォッシュタイプ
チーズの表面を塩水、蒸留酒やビールなどのアルコールで洗いながら(拭いながら)、熟成させるチーズ。表面を洗うことで、リネンス菌という微生物が繁殖。このリネンス菌が強いにおいと赤みがかった粘り気のある膜を作るが、菌の活動はチーズの表面だけなので、表皮を取れば、においはさほど強くないものがほとんど。

フランスでは、昔の修道院で生まれたチーズやそれらに由来するウォッシュチーズが今でも多く造られている。

5.シェーヴルタイプ
フランス語で山羊乳から造られるチーズをシェーヴル(Chèvre)という。日本では、フランス以外の国の山羊乳製チーズもシェーヴルタイプと呼んでいる。

山羊乳製チーズの多くは組織がもろく、崩れやすいので、比較的小さな形で造られている。ユニークな形が多いのも特徴の1つ(参照:P.126~127、シェーヴルチーズの魅力)。

6.セミハード・ハードタイプ
長期熟成に向くとして造られたチーズで、硬さ(水分含有量)によってセミハードタイプとハードタイプに分けられる。

セミハードタイプはやや硬く、生地はしっとりとしている。大規模工場製のものはワックスやフィルムが表皮代わりになり、中身を保護していて、熟成期間は1カ月から6カ月程度のものが多く、おだやかな風味が特徴。これらのチーズはブロック状やシュレッド状になって販売されていて、おもにサンドイッチや加熱調理用として広く使われている。プロセスチーズは主として、このタイプのチーズを原料として造られている。

ハードタイプは熟成期間が長く、なかには3年以上の熟成というものも。熟成期間中の手入れによって、硬くしっかりとした表皮が作られる。水分は少なく、熟成によってアミノ酸などのうま味成分が作られるので、時間の経過とともに、濃厚な味わいに変化していく。

セミハードやハードタイプのチーズの原料乳は、牛や羊のミルクが主流。ハードタイプのチーズは、平野部よりも山地で多く造られている。

佐野嘉彦 (著), NPO法人チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: 秀和システム (2018/11/20)、出典:出版社HP

目次 – 世界のチーズ図鑑

CONTENTS

Introduction チーズの基礎知識

チーズは知るともっとおいしい
そもそもチーズってなに?
チーズは世界中で愛されている
チーズの種類はいくつある?

チーズの分類法
フレッシュタイプ
白カビタイプ
ウォッシュタイプ
シェーヴル、ブルビタイプ
青カビタイプ
非加熱圧搾・加熱圧搾タイプ
パスタ・フィラータタイプ
プロセスチーズ

Part1 食べてみたい!世界のチーズ181種類

世界のチーズを楽しもう

フランス
西部
中央部
北部・北東部
東部
オーヴェルニュ・南部

イタリア
北部
中南部

大陸ヨーロッパ
スイス
スペイン
ドイツ
オーストリア
ベルギー
オランダ

北欧
デンマーク
ノルウェー

英語圏
イギリス、アイルランド
アメリカ、ニュージーランド

日本
日本のプロセスチーズ

Part2 もっとチーズを楽しむための知識

チーズの歴史
チーズの栄養
おいしいチーズの選び方
チーズの道具
もち味をいかすチーズの切り方
チーズの盛りつけ方
おいしいチーズの合わせ方~飲みものと~
食べものと~
チーズの保存法
お店でチーズを楽しもう

Column
古代のチーズにちなんだ「チーズの日」
1度は食べてみたい!ドキドキする世界のチーズたち
チーズ工房紹介SHIBUYACHEESESTAND
チーズの資格

図鑑の見方

チーズのための用語集

CHEESEINDEX

国別チーズ索引
チーズ名索引
種類(タイプ)別索引
問い合わせ先一覧

NPO法人 チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: マイナビ (2015/9/26)、出典:出版社HP

国別チーズ索引

フランス

西部
カマンベール・ド・ノルマンディー
カマンベール/クータンセ
ヌーシャテル
サン・トーバン/フロマージュ・ブラン
ポン=レヴェック
リヴァロ/キュレ・ナンテ
ジェラール・クリーミー・ウォッシュ
サン・モルゴン/マダム・ロイ(ガーリック/サーモン)

中央部
ブリ・ド・モー
ブリ・ド・ムラン/ブリー
クロミエ/ブリ・オ・グラン・マルニエ
ブリヤ・サヴァラン/ブルソー
サント・モール・ド・トゥーレーヌ
サント・モール/ミニ・ビュッシュ
ヴァランセー
セル・シュール・シェール/クロタン・ド・シャヴィニョル
モテ・シュール・フォイユ
シャビシュー・デュ・ポワトー

北部・北東部
マロワール
マンステール/ラングル
シャウルス
カプリス・デ・デュー/シュプレム
シャモア・ドール/ジェラール・カマンベール
ミモレット

東部
コンテ
モルビエ/トム・ド・サヴォワ
エマンタール/グリュイエール
ボーフォール
アボンダンス/ルプロション・ド・サヴォワ
ピコドン
リゴット・ド・コンドリュー/マコネ
シャロレ
シュヴロタン/バラット
サン・フェリシアン/サン・マルスラン
アペリフレ(プロヴァンス/イタリアーノ)/モン・ドール
エポワス
アフィデリス/スーマントラン
ラミ・デュ・シャンベルタン
ピエ・ダングロワ/ルクロン
ルイ/パヴェ・ダフィノア
バラカ
ジェラールセレクション・ブルーチーズ/ブルー・デュ・ヴェルコール・サスナージュ
フルム・ド・モンブリゾン
ブルー・ド・ジェクス/ブレス・ブルー

オーヴェルニュ・南部
ロックフォール
ブルー・デ・コース/ブルー・ドーヴェルニュー
フレ・プレジール・ド・サンタギュール/サンタギュール
フルム・ダンベール
ブルー・ド・ラクィーユ/ショーム
ロカマドゥール
ペラルドン/サン・ニコラ
ローヴ・デ・ガリッグ/バノン
ブロッチュ
ブラン・デュ・マキ/カイエ・ド・ブルビ
サン=タンドレ/サン・ネクテール
ガプロン
オッソー・イラティ
ナポレオン/プティアグール
カンタル
ライオル/トラップ・デ・シュルニャック

イタリア

北部
ゴルゴンゾーラピカンテ/ゴルゴンゾーラドルチェー
ゴルゴンゾーラマスカルポーネ/ブルー
マスカルポーネ
ラ・トゥール/ロビオラ
タレッジョ
パルミジャーノ・レッジャーノ
グラナ・パダーノ/モンターズィオ
アズィアーゴ
ウブリアーコ/グラン・モンテオ
ピアーヴェ/カステルマーニョ
ブラ
フォンティーナ⇒p.113
プロヴォローネ・ヴァルパダーナp.114
モッツァレッラ→p.115

中南部
リコッタ
ペコリーノ・ロマーノ
ペコリーノ・トスカーノ/モッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナ
ブッラータ/スカモルツァ・アップミカータ

大陸ヨーロッパ

スイス
エメンターラ
グリュイエール
スプリンツ/アッペンツェラ
テット・ド・モワンヌ
ラクレット

スペイン
ケソ・マンチェゴ
イディアサバル/マオン
ケソ・テティージャ/カブラレス
ケソ・デ・バルデオン
ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノ

ドイツ
カンボゾーラ
セレクト・カマンベール/ルードヴィヒ王のビアケーゼ
マウンテン・ハーブス・レベル/ステッペン

オーストリア
クラッハー/ツィーゲンケーゼトルテ

ベルギー
エルヴ/シメイ・ア・ラ・シメイ・ルージュ

オランダ
ゴーダ
オールド・ダッチ・マスター/ベームスター・クラシック
オールド・アムステルダム/ベビー・ゴーダ
エダム
バジロン/ブルー・デ・グラーヴェン

北欧
デンマーク
サムソー
マリボー
クリーミー・ハヴァティ/モザレラ
ダナブルー
ミセラ/キャステロ・クリーミーブルー
キャステロ・クリーミーホワイト/フレンドシップ・カマンベール
アーラブコ/アペティーナフェタ

ノルウェー
イェトスト/リダー

英語圏

イギリス、アイルランド
ブルー・スティルトン
シュロップシャー・ブルー/ウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダー
チェダー(レッド/ホワイト)
アイリッシュ・ポーター/セージ・ダービー
ホワイト・スティルトン(ブルーベリー)

アメリカ、ニュージーランド
モントレー・ジャック/コルビー・ジャック/ペッパー・ジャック
アメリカンクリームチーズ/アンカー・クリームチーズ

日本
カリンパ
花畑牧場十勝ラクレット/ナチュラルチーズ「鶴居」シルバーラベル
二世古空[ku:] 出来たてモッツァレラ/タカナシ北海道マスカルポーネ
茶臼岳
フロマージュ・ド・みらさか/ロビオーラダイワ

図鑑の見方
チーズ名の現地表記(アルファベット)
カタカナ表記

図鑑の見方

取り扱い会社により、カタカナ表記や種類(分類)が異なる場合があります。

掲載のデータは2015年9月現在の情報です。生産や輸入元の状況、法律の改正により日国内への輸入ができなくなる場合があります。

チーズの解説①、②
チーズ名の由来や原産地にまつまること、生産者(メーカー)のことなど。また、食べ合わせなどについても紹介。

見ため
食べる前に見える外観や中身の特徴。熟成したときの変化など。

味わい
よい状態・熟成のものを口に入れたときに感じる食感や味わいなど。

香り
食べる前に周囲に漂う香り。口に含んだり、飲み込んだりしたあとに感じる香りなど。

季節
特においしいとされる旬や食べごろ具合の時期など。生産時期が限定されているものもある。

DATA

種類
チーズの種類。原則的にはp.12〜で説明する分類法に基づくが、必要に応じて表現を補った。

産地
原則、そのチーズを特徴づける風土をもつ生産地を紹介。実際の生産場所が異なる場合は適宜補足する。

A.O.C年など
原産地名称保護を受けた年。認可された年、国の表記にのっとって記す。

原料乳
チーズの原料となったミルクを得た動物について。牛、山羊、羊、水牛のいずれかが主。

熟成期間
チーズを成形後、カーヴ(熟成庫)に置いて熟成させる期間。

固形分中乳脂肪量
チーズの固形分(チーズから水分重量を差し引いたもの)に含まれる脂肪分のこと。MG/ES(仏)と記される。

NPO法人 チーズプロフェッショナル協会 (監修)
出版社: マイナビ (2015/9/26)、出典:出版社HP