管理会計〔第七版〕




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第七版への序

2015年に本書の第六版を上梓してからわずか3年余の間に、日本の経済、社会、ビジネスの環境は劇的に変化した。本書との関係で注目すべき最も大きな変化は、3つある。

第1は、数多くの日本の製造業が高品質な工場を海外に移転してしたため、マザー工場として位置づけられてきた日本の工場や設備が老朽化した。そのような要因もあって、優良企業における品質不良が続出した。第2は、中国はここ数年さらなる飛躍的な発展を遂げている。国民総生産高やAIなどの先端技術で、わずか10年ほどの間に日本は中国に大きく水をあけられた。品質管理では、日本に代わって東南アジア諸国の製品品質が大幅に改善され、東南アジア製の製品品質は著しく向上した。第3に、逆に、日本企業はこの10年間、国内の設備投資、人材育成、研究開発投資を怠ってきたことにより、近年ではその歪みが品質不良、革新的な新製品の不在といった形で随所に現れ始めてきた。

本書『管理会計 第七版』は、以上で述べたような日本企業の現状分析に立脚した、日本企業が有する課題を明らかにするとともに、日本企業に内在する課題を改善するための具体的な方策を世に問うべく上梓した。第七版の際立った特徴は、次の5点にある。

第1は、AI(人工知能)の管理会計への適用に向けて、管理会計担当者は何を目指すべきかを明らかにした。第2は、管理会計の若手研究者による実証研究の成果を数多く紹介することで、内容の充実を図った。第3は、日本企業における劣化した品質管理の現状と課題を明らかにするとともに、その処方箋を提示した。第4は、京セラのアメーバ経営の現状と課題を明らかにするとともに、アメーバ経営の長所だけでなく問題点をも明らかにした。第5に、宅配業者によって惹起させられている物流革命の現状を明らかにした。

本書の構成を簡潔に述べたい。本書は全6部からなる。第1部では、管理会計の基礎を述べた。第1章では、管理会計が企業価値を創造するための経営者のツールであることを明らかにした。第2章では、管理会計の基礎概念を述べた。続いて第3章ではキャッシュ・フロー経営について考祭した。第4章では、IFRS(国際財務報告基準)と経済基盤の典型的な発展モデルとの関係から、日本の「原価計算基準」の問題点を指摘した。そして第5章においては、内部経営管理者の立場から企業評価と財務諸表分析の基礎を概説した。

第2部では利益管理をテーマの中心にした議論を展開した。中長期経営計画がトップとミドルの経営計画に深く関連するのに対して、予算管理は現場の業務活動のマネジメント・コントロールに関連する。第6章では中長期経営計画について述べ、第7章では、理論と実務的な立場から予算管理を考察した。第8章では、利益管理のプロセスで頻繁に活用されてきた損益分岐点分析の活用方法を中心に述べ、第9章では損益分岐点分析を会計制度のなかで行える仕組みである直接原価計算について論究した。

第3部では、原価管理のための管理会計を考察した。第10章では、標準原価計算の果たすコスト・コントロールに焦点をおいて、その役割と限界を述べた。続く第11章では、標準原価計算のもつ限界を克服するツールの1つとして、原価企画について述べた。原価企画はトヨタ自動車およびその関係会社によって生み出された、日本の誇る戦略的な原価管理の手法である。一方、次の第12章で考察するABCは、アメリカで生み出された製品戦略と原価低減および予算管理のためのツールである。第13章ではコスト・品質の戦略的コスト・マネジメントの課題を、近年の日本製品の品質劣化との関係で考察した。そして第14章では、販売促進費、物流費および本社費を企業がどのように管理すべきかについて、理論と現場サイドからの提案を行った。

第4部では、経営意思決定のための管理会計を概説した。第15章では経営意思決定の基礎概念を説明するとともに、設例をもとに、業務的意思決定の諸問題を考察した。第16章では戦略的意思決定の1つとしての設備投資の意思決定を考察した。リスク対応についても、いくつかの提案を行った。第17章では、戦略的・戦術的価格決定の課題に取り組んでいる。

第5部では、戦略策定のための管理会計を考察した。第18章では、戦略の基礎概念から各種の主要なツールまでを、できるだけわかりやすく紹介した。本章の理解を前提としたうえで、第19章では、企業がバランスト・スコアカードを活用して、いかにしてそれを戦略の策定と実行に役立たせるかを述べた。第20章では、知的財産、ブランド、コーポレート・レピュテーションの概念整理とマネジメントを扱い、インタンジブルズの戦略を考察した。

第6部では、2種類のテーマ(本書の第5部までに考察しきれなかったテーマと、管理会計の新たな展開)に取り組んだ。第21章と第22章では、いずれも組織にかかわる管理会計上の課題を取り上げた。具体的には、第21章では事業部制の業績評価を、そして第22章では組織再編と分権化の管理会計を考察した。JALを短期間で見事なまでに再生させた京セラのアメーバ経営の長所と課題については、この章で述べた。第23章では、EVA(経済的付加価値)を深堀りし、併せてEVA導入の留意点を中心に述べた。

なお、本章では2つの補論を付して、コーポレートガバナンス・コードで政府関係機関が企業に8%のROE目標を強いることの問題点を指摘するとともに、日本の低い労働分配率の現状と課題について述べた。第24章では、管理会計におけるITの役割として、ソフトウェア原価計算やIT投資戦略、クラウド、ソーシャルメディアなどを取り上げた。第25章では、AIの会計、内部監査、会計士監査での現状を述べるとともに、管理会計へのAIの適用、および適用にあたっての留意点を指摘した。最後の第26章では、今後の日本企業の持続的発展に欠かすことのできない、研究開発費の管理会計について考察した。

本書の概要は、以上のとおりである。では、本書を通じて著者が読者に最も伝えたかったことは何なのか。それは、次の3つの点である。

第1に、管理会計の実務で最も大切なことは何かと問われるならば、「経営の可視化」(見える化)である。経営の可視化によってはじめて問題点を明確に把握できる。経営を可視化するには、どんぶり勘定ではなく「セグメンテーション」が肝要である。事業や商品をセグメンテーション(区分)するには「測定」が必要である。管理会計の世界では、“測定されないものは管理できない”ということを銘記すべきである。

第2に、企業の目的は、企業価値の創造にある。では、企業価値とは何か。大多数の日本の経営者が考えている企業の本来的な価値は、アングロサクソン流の理論が教えるような株主価値や経済価値だけではない。企業が将来にわたって持続的発展を図るには、経済価値に加えて、顧客価値、社会価値および組織価値を高めることの必要性を強調した。いわゆる江戸時代に近江商人が唱えたという「三方良し」の考え方である。

第3に、経営には効率を上げることは重要である。しかし、効率を上げるために企業本来の目的を見失ってはならない。現代の企業にとって重要なことは、企業目的を効率的かつ効果性に達成することである。本書で「効果性重視の経営」というとき、短期的な利益に目が奪われて持続的発展に必要な「効果性」を軽視してはならないということである。

本書の改訂にあたっては、数多くの研究者・実務家から貴重なご意見をいただいた。最も多くのご意見をいただいたのは、毎週月曜日の午後に、専修大学の生田校舎において行っている「管理会計研究会」の研究者と実務家の仲間からのものである。とくに研究会の責任者、専修大学の伊藤和憲教授からは数々の貴重な提言と示唆を頂いた。専修大学の青木章通教授、岩田弘尚教授、谷守正行准教授、明治大学の喘章浩教授、東京国際大学の奥倫陽教授からも、ほぼ毎回のように数々の貴重なご意見を頂いた。

財務省財務総合政策研究所客員研究員(独立行政法人都市再生機構理事兼務)の大西淳也氏は、ご多忙な時間を割いてほぼ毎回研究会に参加頂き貴重なご意見を頂戴した。北海学園大学の関谷浩行准教授および防衛省の本間正人氏は勤務の関係から研究会には参加できなかったが、全章に渡って事前に有意義なご意見を頂戴した。そのほか、名前を列記できないが数多くの先生、経営者および大学院生からも貴重なご意見を頂戴した。記して、これらの仲間の一人ひとりに心より感謝の意を表したい。

最後に、同文舘出版社長の中島治久氏および取締役編集局長の市川良之氏には構想から完成まで、本書の完成をご支援頂いた。お二人の励ましがなければこの度の改訂が実現することはなかったであろう。心より感謝している。本書の読者としては、企業経営者、大学院生、会計学研究者、コンサルタント、公認会計士試験受験者、学部生、とくにゼミ生を想定している。本書が日本企業の持続的な発展とコーポレート・レピュテーションの向上に取かでも寄与できるのであれば、著者の存外の慶びとするところである。

2019年初春
櫻井通晴

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版; 第七版 (2019/2/27)、出典:出版社HP

目次

第七版への序

第1部 管理会計の基礎
第1章 経営者のための管理会計
1企業の経営者と管理会計
企業の目的
企業価値が日本の経営者にとってもつ含意
経営者の機能
経営計画と統制 マネジメント・コントロール

2企業における管理会計の役割
企業と会計
会計についての2つの見解
企業会計の2つの領域
財務会計と管理会計の特徴
管理会計の基本的前

3日本企業のガバナンス体制と内部統制
日本の株式会社のコーポレート・ガバナンス体制
内部統制組織
内部統制は管理会計の対象範囲に含まれるか?
J-SOX法による内部統制とリスク管理

4経営組織と管理会計の担当組織
組織形態
経営組織
ライン・スタッフ、委員会組織
稟議制度、職能別分権制
管理会計の担当組織
経営企画室、経理部、財務部の関係
経理関係担当者の給料-日米比較

5管理会計担当者の倫理規範
専門的能力
機密保持
誠実性
客観性

6管理会計の体系と本書の構成
過去から現在までの主要な管理会計体系
本書における管理会計の体系
本書の構成

参考1 会社は誰のものか

第2章 企業価値創造のための管理会計
1現代企業における企業価値創造の意義
企業価値は経済価値とイコールなのか
DCF法による企業価値測定の妥当性
企業価値は経済価値、社会価値(顧客価値を含む)組織価値からなる

2企業価値創造のための効果性重視の経営
環境の変化にともなう企業目標と管理会計手法の変化
効果性重視の経営-経済性、能率、効率との関係で
ポスト工業化社会における管理会計への役割期待
21世紀でのインタンジブルズの重要性
統合報告と企業価値

3責任会計制度
責任会計制度における責任センター
責任センター
責任センター概念の展開

4業績評価基準の選択
業績評価における階層性
日米企業における伝統的な財務業績評価の方法
企業価値の創造と業績評価の方法

参考2 企業価値とは何か

第3章 キャッシュ・フロー経営
1近代会計学とキャッシュ・フロー
発生主義とキャッシュ・フロー
発生主義アプローチとキャッシュフロー・アプローチ

2キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書の様式
間接法と直接法
財務会計のグローバル・スタンダード化への背景

3キャッシュ・フロー情報利用の歴史的沿革
管理会計成立当時の利益情報
1930年代における利益管理のためのキャッシュ・フロー情報
1960年代における設備投資意思決定
現代におけるキャッシュ・フロー情報

4フリー・キャッシュフローとキャッシュ・フロー投資利益率
伝統的概念 自己金融
フリー・キャッシュフロー
キャッシュ・フロー投資利益率(CFROI)

5キャッシュ・フロー情報の活用方法
EBITDA
キャッシュ・フロー情報と業績評価
キャッシュ・フロー情報と意思決定・戦略の策定

第4章 原価計算の基礎と「原価計算基準」の現代的意義
1原価計算の意義
原価計算とは何か
原価計算対象とは
原価計算の目的
原価計算の適用領域
本書での原価計算の考察対象の限定

2原価概念と原価の分類
操業度、固定費と変動費の分類
管理可能費と管理不能費
製品原価と期間原価
原価要素と原価の構成要素
製造原価要素の分類
伝統的な原価の概念とコストとの異同

3原価計算制度における製品原価算定の手続き
原価計算制度と特殊原価調査
製品原価計算のステップ
個別原価計算
製造間接費の配賦と生産量の増減
総合原価計算
平均法における計算原理

4原価計算とディスクロージャー
製造原価明細書と財務諸表
総原価の計算と売価

5「原価計算基準」(「基準」)の現代的意義と課題
経済モデル 経済基盤の変容と「基準改定」の必要性
「基準」を放置することによる会計基準、税務との不整合性
防衛省の「訓令」に及ぼす「基準」の影響
「基準」のあり方を巡って現実的な解決法を探る

第5章 企業評価と財務諸表分析
1企業価値の評価
企業価値の評価になぜ経済価値の測定が必要か
将来キャッシュ・フローの現在価値の測定

2財務諸表分析の基礎データとなる財務諸表
損益計算書
貸借対照表

3財務諸表分析
収益性分析
安全性の分析
生産性の分析
成長性分析
投資収益性の分析

参考3 日本の生産性は、世界的に見て高いのか低いのか

第2部 利益管理のための管理会計 経営計画とコントロールのための会計1
第6章 中長期経営計画、利益計画、目標管理
1経営戦略と中長期経営計画
経営理念、ビジョン、中長期経営計画
中長期経営計画の役割
中長期経営計画の展開のプロセス
中長期経営計画情報の自発的な外部ステークホルダーへの開示

2利益計画の意義とその設定
長・中・短期の利益計画
中長期経営計画の更新期間とその方法
利益計画における費用・収益計画
利益計画の策定過程

3利益計画における目標利益
企業が目標とする利益 利益の極大化か多元的目的か
目標利益の指標
IFRSを前提にした目標利益における利益概念
目標利益の求め方

4利益目標を補足する非財務業績の目標
非財務業績とは何か
非財務業績指標がなぜ必要か
非財務業績指標のマネジメントコントロール・システムへの統合
財務業績と非財務業績の目標値の設定
顧客ロイヤリティと顧客満足の罠
従業員満足は先行指標となる非財務業績

5目標管理の現状と課題
目標管理とは何か
目標管理の問題点は何か
リコーはいかにして目標管理の形骸化を防いだか?
知識創造型人材を育成するには目標管理は有効か

第7章 企業予算によるマネジメント・コントロール
1利益計画と企業予算
利益計画の本質と企業予算
利益計画と予算編成の関係

2予算管理の意義、目的、体系
企業予算と予算管理
予算管理の目的
予算の体系

3予算編成の手続き
予算編成のアプローチ
経常予算編成の基礎
予算編成の手続き
経常予算編成の具体的な手続き
損益予算編成の手続き
資金予算編成の手続き
資本予算編成の手続き

4予算統制の方法とその限界
変動予算
基本予算と実行予算
予算差異分析の方法
予算差異分析の限界

5予算管理を活かすための動機づけ、参加、組織文化
予算モチベーションと行動科学に基づく予算統制論
予算管理と動機づけ
参加的予算管理
予算管理による組織能力の構築

6マネジメントコントロール・システムの運用と組織文化
会計によるコントロールの限界とコントロール・パッケージ
マルミニブラウンが提唱する「パッケージとしてのMCS」とは何か
マルミニブラウンの「パッケージとしてのMCS」の特徴
日本企業における「パッケージとしてのMCS」の必要性

7脱予算管理の妥当性
脱予算管理の意義と予算管理の役割
予算管理の問題点とその克服のための方策
日本企業は脱予算管理の主張にいかに対応すべきか
脱予算管理が必要とされる企業

第8章 損益分岐点分析による収益性の検討
1損益分岐点分析の経営への活用
損益分岐点分析とCVP分析
限界利益
損益分岐点図表
算式による損益分岐点の分析

2損益分岐点分析の展開と前提
固定費、変動費の増減
目標利益売上高の算定
一定の目標売上高利益率を達成するための売上高
投資利益率と損益分岐点分析
法人税と目標利益
感度分析の損益分岐点分析への適用
安全余裕率
損益分岐点の位置
業務レバレッジ
営業外収益、費用の分析
損益分岐点分析の前提

3固定費・変動費の態様と原価分解
経済学と会計学における原価態様の仮定
原価分解

参考4 限界利益か貢献利益か、直接原価計算か変動費原価計算か

第9章 直接原価計算による利益管理
1直接原価計算の意義
直接原価計算とは何か
直接原価計算の損益計算書
直接原価計算の特徴

2全部原価計算と直接原価計算の利益
営業利益に差が出るのは固定製造原価の差
全部原価計算と直接原価計算とで利益が異なる理由

3直接原価計算の機能
利益計画への活用
経営意思決定への活用
原価管理への役立ち
公表財務諸表と直接原価計算

4標準直接原価計算
標準直接原価計算の意義、目的、様式、有用性
標準直接原価計算の目的
標準直接原価計算の様式
標準直接原価計算の計算例
標準直接原価計算の実務的な有用性

5キャパシティ・コストと貢献利益法
キャパシティ・コストとは何か
セグメント・マージンと貢献利益法

6スループット会計
TOCによる伝統的会計(原価管理システム)の批判
スループットとは何か
スループットは直接原価計算の発展形
スループット会計システムが日本の管理会計に対してもつ意義

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版; 第七版 (2019/2/27)、出典:出版社HP

第3部 原価管理のための管理会計 経営計画とコントロールのための会計2
第10章 標準原価計算によるコストコントロールー
1標準原価計算による原価管理の意義
標準原価計算とは何か
標準原価計算による能率管理
標準原価計算の目的
IFRSにおける標準原価計算の扱い
標準原価の種類

2標準原価の設定
標準直接材料費の設定
標準直接労務費の設定
標準製造間接費の設定
習熟曲線と経験曲線

3原価差異分析
直接材料費の差異分析
直接労務費の差異分析
製造間接費の差異分析

4標準原価計算の特徴と限界
標準原価計算の特徴
標準原価計算の原価管理上の限界
現在でも多くの企業が標準原価計算を活用している理由
IFRSによって提起される「基準」との関係

第11章 原価企画による戦略的コスト・マネジメント
1原価企画生成の沿革と背景
原価企画誕生の背景
管理会計の手法としての原価企画

2 原価企画の目的と特徴
原価企画の目的
標準原価計算との比較で見た原価企画の特徴
英語での呼称から見た原価企画の特徴

3 原価企画、原価改善、原価維持の体系
革新、改善、維持
原価企画と原価改善、原価維持との関係

4原価企画の推進方法
原価企画のフェイズと委員会の役割
中長期経営計画の原価企画への統合
原価企画の担当組織
原価企画の展開方法

5原価企画のための原価概念
許容原価
成行原価
目標原価
原価見積もりのためのコスト・テーブル

6目標原価の設定方法
目標原価の設定方法
絶対値原価方式か差額原価方式か
目標原価達成度の分析

7VEによる原価低減
VEの意義
VEの方法
VEの適用領域
社内・社外VE
アイデア提案と実施提案
テアダウン

8目標原価設定と分析の実際的手続
目標原価の設定
生産移行活動
事後評価

9原価企画が適する企業
適用可能な産業の種類
多品種小量生産に最適
製造業以外での原価企画の適用

10原価企画の課題
長期にわたる創発の努力
バイヤーとサプライヤーの関係
海外への原価企画の移転
コンカレント・エンジニアリングの導入
原価改善、原価維持の研究促進
人間性の充足
原価企画のハイブリッド版の展開
原価企画の今後の課題

第12章 ABCによる製品戦略、原価低減、予算管理
1ABCの意義と目的
ABC誕生の背景と目的
伝統的な製品原価の計算方法
ABCによる製品原価計算の基本原理
ABCにおける製造間接費の計算方法の特徴

2ABCの基礎概念
活動
原価計算対象
原価作用因
資源消費のモデル

3ABMによる原価低減・
ABM成立の背景と目的
ABMとは何か
ABMの目的はプロセスの改善にある
原価作用因分析のための支援の原価の階層性
ABMの日本企業にとっての意味
業務的ABMと戦略的ABM

4ABBの意義、目的と作成方法
ABBの意義と目的
ABBの目的と編成ステップ
ABBの特徴と留意点

5ABBによるホワイトカラーの生産性向上
伝統的予算の限界とABB
ABBがホワイトカラーの生産性向上に役立つ理由

6ABC、ABM、ABBの特徴
ABC、ABM、ABBの発展

7設例によるABC、ABM、ABBの関係3887ABC導入における留意事項
ABCシステムの設計
機能、プロセス、活動、タスクの関係

8ABCは、日本の経営にどんな影響を及ぼしてきたか
将来の日本企業にとってABCのもつ管理会計上の意義
ABCと効果性重視の経営

第13章 コスト・品質の戦略的コスト・マネジメント
1コスト・マネジメントの意義とその変遷
コスト・マネジメントの意義
コスト・マネジメントの構成要素
企業価値創造のための戦略的コスト・マネジメント

2戦略的コスト・品質のマネジメント
品質原価計算
ライフサイクル・コスティング
環境管理会計とCSR戦略

3日本的現場管理の手法とその特徴、変遷
在庫管理
設備管理ツールとしてのTPM
日本の品質管理と欧米諸国の逆襲
リーン・マネジメント
方針管理
現場力の弱体化と対策
データ改ざん・無資格検査などによる日本企業の品質低下
品質低下がなぜ日本企業に目立ってきたのか
日本企業の現状をいかに分析すべきであるか

第14章 販売促進費、物流費、本社費の管理
1営業費管理会計の重要性
営業費管理の意義
営業費管理の特質
3営業費管理のための原価分類

2販売促進費の管理
販売促進費管理の要点
販売促進費管理における割当型予算
販売促進費管理と貢献利益法
顧客収益性分析と顧客満足の視点
サービス提供原価が高い顧客と低い顧客の管理
販売促進費の管理-交際費、広告宣伝費、PR
PR効果の測定

3物流費の管理
物流費管理の要点
物流費効率化とVE、ABC/ABM
具体的な物流費(輸送費、保管費、包装費)の管理
宅配業者が直面する管理会計上の課題

4 一般管理費の管理
一般管理費管理の要点
ホワイトカラーの生産性向上
一般管理費の分析

5営業費分析と損益計算書の様式
営業費分析における全部原価法
営業費分析における貢献利益法
営業費分析へのABCの適用
IFRSによって変わる販売促進費管理の方法
営業費管理と企業価値の創造467

第4部 経営意思決定のための管理会計
第15章 経営意思決定会計
1意思決定会計の意義と区分
意思決定とそのプロセス
意思決定のプロセスと情報の活用
意思決定会計の区分

2増分分析の意義と留意点
増分分析の意義
配賦問題と意思決定
増分分析における減価償却費

3意思決定のための原価
意思決定のための原価概念
意思決定に用いられる原価の種類

4業務的意思決定の事例
加工か販売か
自製か購入か
新製品の追加または旧製品の廃棄

5プロダクト・ミックスの意思決定とLP
2製品、販売上の1つの制約条件下での組合せ
2製品、生産上の1つの制約条件下での組合せ
2製品、販売・生産上の多くの制約条件下での組合せ
多品種、多数の制約条件下での組合せ

6意思決定とリスク
不確実性下の意思決定
期待値によるリスクの検討
分散によるリスクの検討
期待効用

第16章 戦略的意思決定と設備投資意思決定
1設備投資意思決定の意義
経営戦略の意義
戦略的意思決定における管理会計の役割
設備投資意思決定とその区分
設備投資モデルの決定と実行のプロセス
設備投資意思決定の特徴

2設備投資意思決定における基礎概念
設備投資計画案とキャッシュ・フロー
経済命数、減価償却費
現在価値概念と利子算出表
資本コスト

3設備投資の経済性計算
原価比較法
投資利益率法
回収期間法
内部利益率法
現在価値法
内部利益率法と正味現在価値法の比較
設備投資意思決定における税金問題
DCF法の意義の高まりと今後の設備投資評価のあり方
投資案件と設備投資評価方法の選択

4リスクの評価とリアルオプション
設備投資意思決定におけるリスク評価の方法
リアルオプション

5FA、CIM設備投資の採算計算
工場自動化の3つのレベル
工場自動化の特徴
工場自動化の効果の見積もり
CIM設備のコストの見積もり
CIM投資の採算計算モデル

6プロジェクト・コントロール
進捗度統制と事後監査
設備投資の採算計算と評価のあり方

第17章 戦略的・戦術的価格決定
1経済学における価格決定モデル
経営者と価格決定
需要と価格
価格、生産量の決定
経済モデルの限界

2会計モデルによる価格決定(全部原価法)
価格決定問題への会計モデルの特徴
全部原価法
総原価法
加工費法
目標投資利益率法
売上(高)利益率法

3会計モデルによる価格決定(部分原価法)
直接原価計算法
増分分析法
会計モデルの限界と価格決定における考慮事項

4価格戦略の選択
すくい上げ価格と浸透価格
需要の価格弾力性と弾力的価格決定
追随価格
セグメント別価格
再販制度と価格
その他 せり売買、フェイズアウト・プライシング、ロングテール

5現実の価格決定の類型と会計モデルの適用
確定価格契約と原価加算契約
短期価格決定と長期価格政策
導入期、成長期、成熟期、衰退期の価格決定
新製品と既存製品の価格決定
完全独占的製品と完全競争的製品の価格決定
公共調達に関する価格決定と契約形態
レベニューマネジメント

第5部 戦略策定のための管理会計
第18章 経営戦略の管理会計への役立ち
1経営戦略の意義と必要性
経営戦略とは何か
戦略のもつ5つのP
競争優位の戦略
日本企業の経営戦略への取り組み
業務効率化の限界と経営戦略の必要性

2計画的戦略と創発戦略
意図された構想と実現されたパターン
診断的コントロールシステム
インタラクティブ・コントロールシステム
ダブルループの学習プロセス

3管理会計における経営戦略上の諸問題
戦略策定と実行のプロセス
戦略的意思決定と戦略
戦略的管理会計
戦略的マネジメント・コントロール
LIKE5サイモンズの戦略論
マネジメント・コントロール概念の変容と管理会計

4経営戦略策定のための手法
管理会計の主な対象は企業戦略と事業戦略
管理会計における戦略技法の活用方法

5資源ベースの戦略論とアウトソーシング
競争戦略から資源ベース・アプローチへ
資源ベースの戦略論
アウトソーシングの多様化とその管理
契約の明確化とSLA
アウトソーシング等の管理会計へのインパクト

第19章 バランスト・スコアカードによる戦略マネジメント
1バランスト・スコアカードと企業価値の創造
多様なステークホルダーを満足させる企業価値創造のシステム
バランスト・スコアカードの経営への役立ち
知的戦略の強化への役割

2 バランスト・スコアカードとは何か
バランスト・スコアカードにおける”バランスとは
4つの視点とその業績評価尺度
GE社の重要な結果指標
バランスト・スコアカードにおける因果関係
遅行指標と先行指標

3戦略の策定と実行のためのマネジメント・システム
ビジョン、戦略の個々の業績評価尺度への落とし込み
戦略テーマ、戦略目標、目標値、実施項目
戦略マップ
中長期経営計画とバランスト・スコアカードの統合

4バランスト・スコアカードの業績評価への役立ち
バランスト・スコアカードによる業績評価
目標管理制度とバランスト・スコアカードとのリンク
バランスト・スコアカードを報酬に結びつけることの効果
成果給の適用における留意点

5経営品質への役立ち
経営品質とは何か
日本経営品質賞と経営品質
方針管理と経営品質
バランスト・スコアカードによる経営品質の向上

6バランスト・スコアカードが有効な適用領域
すべての組織体への適用可能性
会社全体かSBUへの適用か
客観的で公正な業績評価制度を求める企業
統合的な経営システムを望む企業
統合報告へのバランスト・スコアカードの適用
長期的な企業価値の創造を望む企業
”効果性重視の経営”を指向する企業

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版; 第七版 (2019/2/27)、出典:出版社HP

第20章 インタンジブルズの戦略マネジメント
1現代におけるインタンジブルズ管理の重要性
商品自体が無形物の複合体
企業価値の創造が戦略によって決定づけられる
戦略マップなどのマネジメント・ツール

2インタンジブルズとは何か
インタンジブルズをもって知的資本だとする見解
「インタンジブルズの管理と報告のためのガイドライン」
インタンジブルズに知的資産とその他の資産の存在
本書におけるインタンジブルズの位置づけ

3超過収益力のバリュー・ドライバーは何か
知的収益力の本体は知的資産とレピュテーション
管理会計の立場からするインタンジブルズの分類
知的なインタンジブルズ
ブランド・レピュテーションに関連するインタンジブルズ

4知的なインタンジブルズの管理会計からするマネジメント
知的なインタンジブルズのマネジメントの特徴
キャプランとノートンによるインタンジブルズの分類
インタンジブルズ管理の留意点
インタンジブルズから最大の企業価値を創造するための方策

5レピュテーションに関連するインタンジブルズ
コーポレート・レピュテーションと企業価値の向上
CSRはレピュテーション・マネジメントに役立つ
レピュテーション・マネジメントの具体的な方策

参考5 コーポレート・レピュテーションの国際会議に参加して

第6部 管理会計の展開
第21章 事業部制による業績管理会計
1わが国の事業部制組織
分権化と事業部制
職能別事業部制
事業部制の長所と短所

2事業部の業績評価
事業部制における責任会計
投資利益率の有効性とデュポン・チャートシステム
投資利益率の落し穴(その1) 短期志向の経営
投資利益率の落し穴(その2)事業部長の評価には不適
投資利益率の代替的な業績評価基準

3本社費・共通費の事業部への配賦
本社費・共通費の性格
純利益か貢献利益か
本社費配賦の方法

4社内資本金制度と社内金利制度
投資ベースの3つのタイプ
社内金利制度の生成と発展
社内金利の対象とその算定
社内金利と社内資本金制度のケーススタディ
事業の選択と集中のための社内資本金制度

5社内振替価格の設定
市価基準
原価基準
協定価格基準

第22章 組織再編と分権化の管理会計
1組織再編の経営上の意義
組織再編の必要性
独占禁止法、連結納税制度の整備
組織再編の管理会計上の意義
パナソニックグループの事業再編と管理会計システム

2持ち株会社の会計と管理
持ち株会社の意義と組織形態
持ち株会社設立の目的
持ち株会社の管理会計

3会社分割の管理会計上の意義
なぜ会社分割か
会社分割の形態
会社分割の管理会計

4カンパニー制
カンパニー制の経営上の意義と特徴
カンパニー制の特徴
カンパニー制の業績評価
カンパニー制か分社化か

5流通業における部門別・商品別業績評価
業績評価の対象
部門別業績評価会計
商品別業績評価会計
DPPとPOS情報の結合

6ミニ・プロフィットセンターと京セラのアメーバ経営
ミニ・プロフィットセンターとは
住友電工ほかのラインカンパニー制
セーレンのライン採算制組織
京セラのアメーバ経営
京セラのアメーバ経営の飛躍的発展と現状

7IFRSの導入がグループ経営の戦略に及ぼす影響
企業グループと企業結合
連結子会社に対する投資
特別目的事業体に対する投資
関連会社への投資
買収した企業の減損の扱いと経営・管理会計へのインパクト

第23章 EVAによる経営効率の向上
1EVAの経営上の意義
日本企業にとってのEVAの意義
経常利益への批判とEVAへの関心の高まり

2EVAとは何か 算式、株主価値、個別か共通の資本コストか
EVAの算式上の特徴は何か
EVAは株主価値の向上に役立つ
資本コストは共通の資本コストか個別資本コストによるべきか

3EVAは経常利益、RIとどこが違うのか
RIがなぜROIよりすぐれているのか
経常利益や残余利益ではなく、なぜEVAか

4社内金利制度とEVAとは両立が可能か
カンパニー制と社内金利制度
EVAと社内金利制度との関係

5EVAが適する企業と利用上の留意点
EVAが適する企業
EVAの留意点

6EVAとBSCの統合システム
なぜ統合システムか
PCA(関西電力版EVA)による資本効率の向上

補論1 コーポレートガバナンス・コードの制定とROEの活用
補論2 日本の低い労働分配率の現状と課題

参考6 経常利益、残余利益、EVAの関係

第24章 IT投資戦略とコスト・マネジメント
1ソフトウェア原価計算
受託開発ソフトウェアを前提にしたソフトウェア原価計算
汎用パッケージソフトウェアの原価計算
ソフトウェア開発業者の製造原価明細書

2IT投資の評価とコスト・マネジメント
ITの発展とC/Sシステムの登場
C/Sシステムのアーキテクチャー
IT投資の評価とマネジメント
IT投資評価の基本的なアプローチ
情報システム化投資の採算計算表
ネットワークやコミュニケーション技術の導入効果
ERP活用の投資評価

3インターネット・ビジネスにおける価格決定
情報の価格決定要素
インターネットでの情報の価値と価格
収穫逓増の法則

4クラウドと投資効果の評価
クラウドとは何か
クラウドのサービスモデルと提供対象
クラウドの技術的特徴と管理会計上の特徴
クラウドの適用事例
クラウドの問題点
クラウドの将来と投資効果

5ソーシャルメディアの戦略的活用
ソーシャルメディアとは何か一産業メディアとの違い
ソーシャルメディアの種類と目的
戦略的レピュテーションリスク・マネジメントの領域
戦略的レピュテーションリスク・マネジメントに何が必要か
ソーシャルメディアによるレピュテーション毀損の典型的事例

第25章 AIの管理会計への適用
1AIが現代の会計と管理会計において果たす役割
2人工知能(AI)とは何か
3機械学習と深層学習(ディープラーニング)の意義
4AIの会計、会計士監査、内部監査への適用と課題
クラウド会計ソフトへのAIの活用
会計士監査へのAIの活用
内部監査へのAIの活用

5AIの管理会計への適用と課題
AIの不正検知機能を活用した契約原価データへの適用
予実管理、標準原価差異分析へのAIの適用
中長期経営計画と設備投資意思決定へのAIの適用

6AI適用に向けてのビッグデータ、データ・アナリティクスの役割

まとめ

第26章 研究開発費の管理会計
1研究開発費管理の意義
研究開発効率化の重要性
研究開発活動の区分
研究開発費の会計基準
IFRSによる研究開発費の会計

2研究開発費管理への管理会計の貢献
研究開発費の増大と管理会計についての誤解
研究開発費の性質と管理の方法
わが国における研究開発費の管理会計

3研究開発組織のあり方
プロフィット・センター型組織の構築
研究開発組織の形態
マトリックス組織
オープン・イノベーション

4戦略的中長期経営計画における研究開発費の位置づけ
戦略的中長期経営計画の重要性
経営戦略に基づく研究開発
プロジェクト別の中長期経営計画
経営戦略、中期計画と予算編成

5研究開発費の予算管理
研究開発費予算の策定アプローチ
研究開発費予算の決定方法
プロジェクト別研究開発費予算
ゼロベース予算
予算の運用と弾力性

6研究開発費の評価
研究開発費の評価における焦点
事前評価、中間評価、事後評価
費用効果分析
費用効果分析における研究成果の測定
費用効果分析のケース・スタディ
研究開発費管理における効果性重視の経営

参考7 IFRSにおける研究開発費の会計処理(一部は要約)

・付録1 複利現価表
・付録2 年金現価表

索引

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版; 第七版 (2019/2/27)、出典:出版社HP