「管理会計の基本」がすべてわかる本 第2版




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はじめに 〜改訂にあたって〜

本書の前身である『「管理会計の基本」がわかる本』は、おかげさまで各方面からずいぶんとご好評をいただきました。

聞くところによると、私が全く関係していない大学で教科書として採用されたというような話もあったようです。それだけ管理会計に対する認知度が高まってきたと現れと言えますが、「前著が管理会計に対する認知度を高めた」と嬉しいことをおっしゃってくださる方もいます。そのように高く評価された本ではありますが、初版から7年以上経つと、さすがに手直ししたいところや、もっと言いたいことが出てきました。そこで、さらなる内容の充実を図るべく、少々の修正とそれなりの加筆を加えた改訂版をあらためて出すこととなりました。

そうは言っても、修正についてはそれほど大掛かりなものはありません。管理会計は財務会計と違い、制度の影響をほとんど受けませんし、前著が版を重ねたことによって単純なミスは既に修正されてるからです。

一方で、加筆についてはそれなりに行いました。まず、丸ごと新たな節として「2-8 業務改善の効果 〜どのような経済効果が出るか分かっているか〜」を追加しました。これは、なかなか示唆深い内容ですから、実務上も大いに参考になるのではないかと思います。さらに、「補足解説」、「発展的解説」、「コラム」を随所に加えました。

「補足解説」と「発展的解説」は、理論面の充実が目的です。これらによって、より深く正確な理解が進むと思います。このうち、「発展的解説」は、難易度が少々高かったり、「ここまでは必ずしも知らなくてもいい」という内容ですので、理論面にあまり関心がない方は飛ばしていただいて結構です。「コラム」は読み物です。単なる読み物ではありますが、それなりに重要なことも書いたつもりですので、気の向いたところだけでも読んでいただけると、何かと得るものがあるのではないかと思っています。

前著よりもさらにパワーアップした本書が、ますます皆さまの仕事や勉強に役立つことを願っております。

コンサルタント・公認会計士
金子智朗

金子智朗 (著)
出版社 : 秀和システム; 第2版 (2017/8/10)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 管理会計とは何か 〜マネジメントに役立ってこそ〜
1-1 会計の種類
会計にもいろいろある
管理会計はすべてのビジネスパーソンにとって必須
会計には3つの分野がある
管理会計はマネジメントのための会計
まとめと演習

1-2 財務会計の利益の意味
それで経営判断ができるのか?
利益が増えたらなぜ嬉しいのか
財務会計は港で待つ貴族のための会計
まとめと演習

1-3 財務会計と管理会計の比較
4つの視点でまとめてみよう
情報の利用者
利用目的と関心の対象
管理会計は「考える」ことが重要
まとめと演習

1-4 意思決定と行動マネジメントに役立ってこそ
そうでなければ管理会計じゃない
最も重要なのは意思決定
努力の方向性を間違えるな
最後に物を言うのは行動力
まとめと演習

第2章 意思決定 〜知らないうちに過ちを犯している〜
2-1 意思決定とは何か
比較対象を明確にすること
交通事故に遭った2人
比較対象が変われば結論も変わる
まとめと演習

2-2 ピザ屋はいくら損をしたのか
変動費と固定費を明確に分ける
考え方のポイントは3つ
1枚落としたケース
犬が出てきたケース
まとめと演習
補足解説 損得学と失敗のコスト

2-3 埋没コストと機会コスト
財務会計には無い管理会計特有のコスト
埋没コスト
機会コスト
まとめと演習
COLUMN 埋没コストから学ぶべきコト

2-4 アウトソーシングの意思決定
正社員人件費は変動費なのか?
考え方のアプローチは同じ
正社員労務費は削減されるのか
まとめと演習

2-5 追加受注の意思決定
限界利益、貢献利益について
原価割れでも受注すべきなのか
限界利益、貢献利益
まとめと演習
補足解説 限界利益と貢献利益の意味

2-6 撤退条件
限界利益マイナスと原価割れの意味
限界利益または貢献利益マイナスの意味は?
原価割れの意味
補足解説 「単位当たり原価」の意味
まとめと演習

2-7 価格交渉力
売れっ子ほどますます儲かる
生産能力に余裕が無かったら
稼働率によって結論は変わる
まとめと演習

2-8 業務改善の効果
どのような経済効果が出るのかを分かっているか
「業務改善」という言葉だけで安心するな
需要が供給を上回っている場合
まとめと演習

2-9 価格戦略
値下げが販売量に与えるインパクト
10%値下げしたら販売量はどうなるのか?
重要なのは結論
まとめと演習
発展的解説 値上げ・値下げと販売量の一般的関係

第3章 CVP分析 〜最初から利益が出るほど甘くない〜
3-1 損益分岐点
損益トントンになる点
利益を出すために必要な個数
作った後ではどうなるのか?
まとめと演習

3-2 CVP分析の変数の取り方
物量にするのか、売上高にするのか
部門の損益分岐点
横軸は場合によって使い分ける
まとめと演習

3-3 CVP分析の各種公式
損益分岐点と目標利益を達成する点
物量が変数の場合
売上高が変数の場合
まとめと演習

3-4 量産効果
「量産すればコストが下がる」は本当か?
単位コストは減少する
総コストは増加する
まとめと演習

3-5 安全余裕率
損益分岐点から遠いほど安全
利益の安定度
安全余裕率と損益分岐点比率
まとめと演習

3-6 コスト構造の業態特性
変動費中心型と固定費中心型
変動費中心型と固定費中心型
それぞれの特徴
まとめと演習

3-7 CVP分析の応用(1)
価格戦略で使ってみる
100円バーガーの投入
値下げは諸刃の剣
まとめと演習

3-8 CVP分析の応用(2)
予算編成における安全余裕率の活用
売上変動に弱い予算
安全余裕率を意識して予算を立てる
まとめと演習

第4章 固変分解 〜実はそんなに簡単ではない〜
4-1 固定費と変動費の分解
固変分解の5つの方法
固変費と変動費は自然には分かれない
帰納的な方法
まとめと演習
COLUMN 企業は財務会計情報が集まるようにできている

4-2 費目別精査法
簡単で実務的な方法
費目別分類の例
費目別精査法の例
まとめと演習

4-3 最小自乗法
数学的に固定費と変動費を求める
点と直線との距離の2乗和を最小にする
微分して0とおけば最小値が求まる
まとめと演習
COLUMN 財務会計は算数、管理会計は数学

4-4 どの方法がベストなのか
それぞれの長所と短所を理解する
費目別精査法か最小自乗法が実務的
正常操業圏以外では直線にならない
まとめと演習

金子智朗 (著)
出版社 : 秀和システム; 第2版 (2017/8/10)、出典:出版社HP

第5章 投資の評価 〜複数年に及ぶ効果をどう評価するのか〜
5-1 投資に伴う利益計画
「儲かる」とはどういうことなのか?
5年間の利益計画
タテの視点とヨコの視点
まとめと演習

5-2 投資評価の3つのポイント
“ヨコの視点”における具体的なポイント
プロジェクト単位に予想貢献年数で評価
キャッシュで評価する
まとめと演習

5-3 投資による経済効果
税金を考慮してキャッシュ・フローを見積もる
タックス・シールド
2つの式の使い分け
まとめと演習

5-4 キャッシュ・フローを計算してみる
ステップを踏んで考えれば分かりやすい
実効税率
キャッシュ・フローの計算
まとめと演習
COLUMN 税率を調べるには

5-5 投資の経済性計算
代表的な方法は4つある
NPV法またはIRR法が合理的
まとめと演習

5-6 回収期間法
簡単だが収益性の判断に使えない
3つの投資案
回収期間は収益性の指標にならない
まとめと演習

5-7 投下資本利益率法(ROI法)
収益性の指標にはなるが時間差を評価できない
ROIの計算
時間差を評価できない
補足解説 ROIのもう1つの式
まとめと演習

5-8 正味現在価値法(NPV法)
最も合理的な計算法
時間差は利回りで定量化する
正味現在価値
まとめと演習
発展的解説 正味現在価値の意味

5-9 内部利益率法(IRR法)
基本的な考え方はNPV法と同じ
先に投資の利回りを計算する
正味現在価値法との関係
まとめと演習
発展的解説 内部利益率の求め方とExcelの使い方

5-10 割引率をどうやって決めるのか
背後にあるのは株主重視
割引率は資本コストが決める
資本コストの計算
まとめと演習

5-11 企業目標との整合性
NPV法がよいとは限らない
ROAを重視するならROI
企業価値を重視するならNPV法
まとめと演習

第6章 コスト・マネジメント 〜重要性が増す間接費の管理〜
6-1 標準原価計算(1)
直接材料費と直接労務費のマネジメントには一定の効果あり
製品の製造コスト
「あるべきコスト」との差異を把握する
まとめと演習

6-2 標準原価計算(2)
製造間接費のマネジメントにはほとんど無力
製造間接費差異の把握
標準原価計算では製造間接費をマネジメントできない
まとめと演習

6-3 原価企画と間接費管理
コストマネジメントの新たな方向性
直接原価の90%は企画・設計段階で決まる
重要性が高まる間接費の管理
まとめと演習

6-4 ABC(Activity Based Csting)
そのエッセンスは細かい配賦
従来の間接費計算はドンプリ計算
間接費をまとめず、個々に配賦基準を選択
まとめと演習

6-5 ABCによる製造間接費の計算例
汎用品とカスタマイズ品
従来の計算
ABCによる計算
まとめと演習

6-6 ABCによる顧客別コストの計算例
おいしい顧客とおいしくない顧客
コスト・オブジェクトは何でもよい
顧客別コスト
まとめと演習

6-7 ABM(Activity Based Management)
業務改善による間接費のマネジメント手法
アクティビティのコストが分かってしまう
リソースを減らさないとコストは下がらない
まとめと演習

6-8 ABC/ABMの落とし穴
使うならその本質をよく理解して
ABC/ABMは間接費マネジメントの切り札なのか
ABCだけでは全体観を見失う
まとめと演習

第7章 業績評価 〜管理会計をカタチにする〜
7-1 業績評価指標の重要性
人は採点基準通りに行動する
行動は指標によって決定付けられる
100の大義名分よりも1つの評価指標
まとめと演習

7-2 強化すべき部門はどれか
見るべき指標を間違えば戦略も間違う
強化の判断は限界利益で
ボトルネックがある場合
まとめと演習

7-3 撤退すべき部門はどれか
固定費を2つに分ける
部門Cを撤退させたらどうなるのか?
個別固定費と共通固定費
まとめと演習
補足解説 配賦に代わる“負担金方式”

7-4 管理可能性によるコストの分類
組織と人の評価を混同しないことが重要
火中の栗は誰も拾わない
部門の評価と部門長の評価は違う
まとめと演習

7-5 あるべき部門別損益計算書
これが管理会計をカタチにするということ
ここまでのまとめ
メータの意味を知らなければ宝の持ち腐れ
まとめと演習

7-6 予算管理への応用
管理できない数字を考えさせても意味が無い
形骸化している予算管理
管理可能なものだけ管理させる
まとめと演習

7-7 管理会計は経営思想に従う
株主重視は本当なのか?
財務会計では必然的に株主が最重視される
人件費前利益という考え方
まとめと演習
COLUMN ポスト資本主義

第8章 バランストスコアカード 〜表面的には業績評価手法、その実体は戦略必達ツール〜
8-1 バランスの取れた成績表
非財務的視点を加える
元々は業績評価手法
財務的指標だけでは人は動かない
まとめと演習

金子智朗 (著)
出版社 : 秀和システム; 第2版 (2017/8/10)、出典:出版社HP