基礎からわかる 下水・汚泥処理技術




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はじめに

国際社会は、2015年の国連サミットにて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という2030年度までの国際開発目標を採択した。この2030アジェンダでは、現在人類が直面しているさまざまな課題に取り組むべく、相互に密接に関連した17の目標(ゴール)と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げている。

日本は、この2030アジェンダに取り組むための国家戦略として、2016年に実施指針を決定している。SDGsの17のゴールに対し、再構成した八つの優先分野を設定し、その中には「5.省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会」「6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」が掲げられている。

これら二つの優先分野に共通するキーワードの一つが「水」である。地球を循環する水環境を良好な状態に保つこと、そのためには水環境に流入する水を汚染しないことが原則であり、下水の適正処理を行って、水の再利用や河川・海に放流される水質を向上させることが大切である。さらに、下水処理によって発生する汚泥を適正処理することに加えて、カーボンニュートラルな下水汚泥を再生可能エネルギー資源として有効活用することも重要である。

本書は、エネルギー・環境保全分野を中心に事業活動を展開している株式会社タクマの技術者グループ「タクマ環境技術研究会」が著者を務め、下水処理・排水処理とそれにより発生する汚泥の処理・活用について、原理から処理技術およびその関連設備を解説したものである。本書ではなるべく多くの図表を用いて、わかりやすい解説に心がけ、下水処理や下水汚泥の分野に直接関係していない方々や、これからこういった分野を学習する学生の方々にも理解しやすいようにという思いを持って記述した。本書を通して、下水処理・汚泥処理への関心が高まり、それらに対する技術・知識の向上がSDGsの達成に向けての一助となることを著者一同願っている。

なお、本書は2005年11月に初版発行した「絵とき下水・汚泥処理の基礎』を現在の技術的進歩や下水処理・汚泥処理に関する規制改定等を踏まえて見直した上で、新たに発行するものである。姉妹書にあたる「基礎からわかるごみ焼却技術」「基礎からわかる大気汚染防止技術」「基礎からわかる水処理技術」も環境技術図書として併せてご愛読いただければ幸いである。

2020年5月 竹口英樹

タクマ環境技術研究会 (編集)
出版社 : オーム社 (2020/6/25) 、出典:出版社HP

基礎からわかる下水・汚泥処理技術 目次

第1章
水を取り巻く状況~地域環境から地球環境へ~
1.1 水の惑星ー地球ー
1.2 社会発展と水環境の公害
1.3 国内の水環境の現況
1.4 水環境を守るために
1.5 水処理技術の発展
1.6 地球を取り巻く水環境
1.7 持続可能な発展のために

第2章
下水処理の概要~第4のライフライン~
2.1 下水道の状況
2.2 下水道の体系
2.3 下水道の施策
2.4 下水の処理
2.5 下水前処理と一次処理
2.6 下水二次処理と高度処理
2.7 下水汚泥処理
2.8 今後の下水道

第3章
し尿処理・浸出水処理の概要〜自然をまもる施設〜
3.1 廃棄物の処理・処分
3.2 し尿と浄化槽汚泥
3.3 し尿処理システム
3.4 最終処分場と浸出水
3.5 浸出水処理設備

第4章
物理・化学的な水処理~自然の摂理を最大活用~
4.1 沈降分離
4.2 凝集分離
4.3 浮上分離
4.4 ろ過
4.5 膜分離
4.6 活性炭吸着
4.7 酸化分離
4.8 消毒

第5章
生物学的な水処理~ミクロの決闘~
5.1 活性汚泥法
5.2 生物膜法
5.3 担体法
5.4 嫌気性処理法
5.5 生物学的硝化脱窒法
5.6 生物学的脱リン法
5.7 アナモックス法

第6章
有害物質の除害処理~環境汚染のセーフガード~
6.1 除害施設の概要
6.2 カドミウム・鉛廃水の処理
6.3 六価クロム廃水の処理
6.4 水銀廃水の処理
6.5 シアン廃水の処理
6.6 ヒ素・セレン廃水の処理
6.7 農薬廃水の処理
6.8 有機塩素化合物・ベンゼン廃水の処理
6.9 ふっ素・ほう素廃水の処理
6.10 栄養塩類(窒素、リン)の処理

第7章
污泥処理~廃棄物を価値あるものへ~
7.1 汚泥処理の状況と目的
7.2 濃縮
7.3 消化
7.4 脱水
7.5 コンポスト
7.6 燃料化
7.7 焼却
7.8 創エネルギー型汚泥焼却
7.9 返流水対策

第8章
低炭素・循環型社会への貢献~下水処理場は資源の宝庫〜
8.1 下水処理施設で発生する「資源」
8.2 処理水の有効利用
8.3 汚泥の有効利用
8.4 汚泥のエネルギー利用
8.5 その他のエネルギーの有効利用
8.6 有効成分の回収

第9章
水質の関連法規~水環境の道しるべ~
9.1 環境基準:人の健康にかかわる水質項目
9.2 環境基準:生活環境にかかわる水質項目
9.3 環境基準項目の後続グループ
9.4 水質汚濁防止法
9.5 下水道法

参考文献
索引

タクマ環境技術研究会 (編集)
出版社 : オーム社 (2020/6/25) 、出典:出版社HP