水処理技術を学ぶためのおすすめ本 – 技術士試験や下水道技術検定試験などの参考書にも!




水処理技術についての理解を深めよう

水処理技術は、地球を循環する水環境を良好な状態に保つために重要なことであり、下水や汚泥を適切に処理するためには専門の技術と資格が必要になります。ここでは、水処理技術の説明に加え、資格を取得する上でも役立つ本をご紹介します。

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出典:出版社HP

初歩から学ぶ水処理技術―微生物の働きできれいな水をつくる

改訂版刊行にあたって

初版は 1999年,すでに 13年も前のことである。この間,多くの読者からありがたいお言葉や励ましのお言葉をいただいた。

幸い,このたびご縁があって丸善プラネット株から拙著の復刻再販が実現する運びとなった。この改訂版では多少内容を充実させたり、新しい話題も付け加えた。あまりにも古い統計資料には修正を施した。

この機会に削除した方がよいと思った項目もあったが,水処理技術の発展にからむ歴史として残すのも意義があると考え直し, 割愛しなかった個所もある。ご了承願いたい。結局,修正は一部分のみとし、あくまでも初心者を対象とする入門書という基本姿勢を貫いたつもりである。再び諸姉諸兄のご愛顧を乞う次第である。

2012年11月 福田 文治

本書は、1999年9月に工業調査会より出版された同名書籍を再出版したものです。

福田 文治 (著)
出版社 : 丸善プラネット; 改訂版 (2012/12/1)、出典:出版社HP

まえがき

環境問題が常に話題となる昨今,「ごみ」とほぼ同様に身近でありかつ関心が高いのは「水」である。何といっても「命のもと」であるから当然であろう。多くの先達の並々ならぬ努力のお蔭で,わが国の水環境は危機に見舞われながら辛くもこれを克服し,今では世界に誇れるレベルに達している。この間に培われた技術も決して少なくはない。それらの成果は多くの著書となって後輩技術者の良き指針として活用されている。

筆者は水処理にかかわって30有余年、この間,文科系の方々あるいは初めて水処理の仕事をすることになったという方達から、「何か良い入門書はありませんか」と訊ねられることがしばしばあった。ないわけではないが,推薦に足る適切な本が見当たらないのが実情であった。

このたび,偶然のことから私に機会が与えられ入門書を執筆することになった。今まで全く水と関係のなかった方々にも理解していただけるような,少なくとも水処理についてより一層の興味を持っていただけるような入門書にしたいと思っている。

文献をたくさん引用させていただき,その都度出典は明記したつもりであるが、もし抜けていたらお詫び申し上げる。転載のご 許可についてもお礼申し上げたい。

1999年7月 福田 文治

福田 文治 (著)
出版社 : 丸善プラネット; 改訂版 (2012/12/1)、出典:出版社HP

目次

改訂版刊行にあたって
まえがき

第1章 水処理へのアプローチ一専門用語に慣れ親しむために一
生命と水
日本の降雨量と山紫水明の迷信
地下水の話
河川の自浄作用
溶存酸素
PPMの誤解—単位の話
BODってなに?
CODってなに?
TOCのこと
SS(懸濁物質)と MLSS
pH
技術用語総括
好気と嫌気
飲み水と浄水場
下水道の話
トイレの話
浄化槽
排水再利用
おいしい水とは

第2章 さまざまな排水処理技術
排水処理の基本パターン
一次処理の代表技法
二次処理(生物処理)の分類
活性汚泥法
活性汚泥法以外の生物処理法
三次処理各論
オゾン処理

第3章 汚泥処理
汚泥脱水
汚泥乾燥
急速堆肥(コンポスト)
汚泥焼却

第4章 新しい生物処理
生物学的脱窒素法
生物学的脱窒素脱リン法
膜分離法
微生物包括固定化法
好気性ろ床法
UASB法(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)
余剰汚泥発生ゼロの生物処理法
Anammox(アナモックス)法
有機化学物質の生物分解性

第5章 近代処理法
超臨界水とは
超臨界水の特長
下水汚泥処理への応用
さまざまな応用例
超臨界水の他の応用例
亜臨界水による有価物回収
微生物によるレアメタルの回収

あとがき
“あとがき”のあとがき
索 引

福田 文治 (著)
出版社 : 丸善プラネット; 改訂版 (2012/12/1)、出典:出版社HP

トコトンやさしい水処理の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

はじめに

私たちは、水に囲まれて生活し、水とともに生きています。古来より、日本では、山紫水明の地や豊富で清浄な水資源に恵まれ、比較的簡単にきれいでおいしい水を手に入れることができます。そのためか、日本人は水のありがたみを忘れ、まさに「湯水のごとく」という言葉通り、当たり前のように良質な水を多量に消費しています。

1961年、人類で初めて地球を飛び出し球形の地球を観察した旧ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンの帰還第一声は、「地球は青かった」と報道されています。これは私たちが生活している地球表面の約2%が水面であることから地球が青いベールに包まれていたからでしょうし、地球が水の惑星と言われる所以でもあります。一方、私たち人間の体は、約3%の水で構成されています。つまり人間は、巨視的にも微視的にも水のなかに漂っている生命体であるということになります。

水は、色々な機能を持っています。それは、人間の渇きを癒すとか、汚れを溶かして洗い流すとか、熱を移動させるとか、などなどです。これらの機能は、河川水、湖沼水、井戸水などどのような水でも一様に持っています。しかしながら、人里離れた山中の湧水などは例外として、川の水をすくっても通常は飲むことはできません。川の水のにごりを除去したり、消毒をしたりしないと川の水は飲料水にならないからです。そこで、このにごりを除去するとか消毒をすることを私たちは、水処理と言っています。つまり、水処理とは、水の持っている潜在的機能を発現させることなのです。それでは、排水処理は水処理ではないのかという疑問にぶつかりますが、汚水が潜在的に持っている水の機能を回復させるという意味から、もちろんこれも水処理の一つの重要な役割と言えます。

本書では、「水をみがき上げる技術」や「水を蘇らせる技術」を中心に水処理技術の入門編として、できるだけわかりやすく解説することを心がけています。紙面の都合で取り上げたかった水処理技術も多々ありますが、水処理の基本となるものや世の中で広く活用されているものは網羅してあるつもりです。

最近、2世紀は水の世紀だとか、水処理技術などを活用したエコビジネスで世界をリードしようとかいう話をよく耳にします。皆様が水に関心を持ってくれることは水処理屋にとって大変うれしいことですが、なかには、科学技術を超えたところで議論される水もあります。例えば、植物の成長を飛躍的に促進させる水とか、万病に効く水など魔法のような水が喧伝されることがありますが、これらの事象については本書で取り上げる水処理の範疇ではありません。水は、比較的安価でいろいろな機能を持っており、人間にとって必要不可欠なものです。本書によりトコトン水処理について理解を深めていただき、水の不思議にせまり、皆様一人一人が水の大切さを認識され、水環境の保全に積極的に参加されることを切望します。

2009年2月

オルガノ (編集)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2009/12/1)、出典:出版社HP

目次

第1章 日本と世界の水資源
1 水の大循環「水はどこからやってくるの」
2 世界の水資源「意外と少ない水資源」
3 日本の水資源「水は自国だけで賄える数少ない資源の1つ」
4 仮想水「輸入農産物の生産に伴う水」
5 水を取り巻く基準・規制「環境基準により守られる水環境」
6 水の中の不純物「水には色々な物質を溶解する力がある」
7 水の品質「水にも品質表示がある

第2章 私たちの生活を支える水
8 生命を支える水「飲料水は生命の源」
9 産業を支える水(工業用水)「リサイクルされる工業用水」
10 農業を支える水「農業用水は食料の源」
11 養殖を支える水「養殖水産に欠かせない水質管理」
12 発電を支える水「電気は水でできている」
13 冷却を支える水「水は優れた冷却材」
14 電子産業を支える水「究極が求められる超純水
15 医薬を支える水「日本薬局方は医薬用水管理のバイブル」
16 食品製造を支える水「水は食品の色と風味を決める」
17 いろいろな洗浄を支える水「水は優れた洗浄剤」
18 科学技術を支える水「理科室からスーパーカミオカンデまで」
19 こんなところでも水「新しく開拓される水の用途」

第3章 水を磨く技術
20 凝集「凝集=粒子を大きくする」
21 沈殿「沈殿=粒子を沈める」
22 加圧浮上「泡で浮かせる」
23 サイクロン「渦で分離する」
24 砂砂ろ過「砂で濾す」
25 繊維ろ過「繊維で濾す」
26 精密ろ過(MF)「身近なところで活躍しているフィルター」
27 限外ろ過(UF)「厳しく管理される医薬用水」
28 除鉄・除マンガン「色や目詰まり原因となる鉄マンガンの除去」
29 殺菌「細菌類の処理」
30 活性炭吸着「活性炭はマルチなタレント」
31 イオン交換樹脂の種類と仕組み「水中のイオンを除去する方法」
32 イオン交換樹脂による水処理「イオン交換は水処理の心臓部」
33 特殊イオン交換樹脂「特定のイオンを除去するイオン交換樹脂」
34 逆浸透膜(RO)「膜でイオンを除去する」
35 電気再生式イオン交換装置(EDI)「電気でイオンを除去する装置」
36 オゾンを使った水処理「オゾン水で強力に分解」

第4章 排水をきれいにする技術
37 固形物・色「きれいな水」「汚い水」とは?」
38 標準活性汚泥法(有機物I)「代表的な生物処理方法」
39 生物膜法(有機物I)「付着した微生物による生物処理」
40 膜分離活性汚泥法(有機物皿)「膜を利用した新しい生物処理」
41 嫌気性処理法(有機物N)「嫌気性微生物による生物処理」
42 生物脱窒法(窒素1)「硝化菌と脱窒菌の働きによる窒素処理」
43 ストリッピング法(窒素H)「高濃度アンモニア排水のガス化処理」
44 不連続点塩素処理法(窒素正)「塩素によるアンモニアの分解処理」
45 生物脱リン法(リンI)「ポリリン酸蓄積細菌を利用したリン除去」
46 凝集沈殿法(リンⅡ)「アルミニウム鉄カルシウムによるリン除去」
47 重金属の処理(1)「重金属を除去する理由」
48 重金属の処理(2)「一般的な重金属の除去方法」
49 水銀「特殊な金属の除去方法」
50 ヒ素「水中での個数を知ることが大切」
51 クロム「大問題は6価クロム」
52 ホウ素「除去が難しく技術開発が待たれる」
53 フッ素「除去対象水の濃度に注意」
54 シアン化合物「猛毒にならないように監視し処理」
55 セレン「処理技術はまだ未確定」

第5章 汚泥を処理する技術
56 脱水「汚泥の減量化に不可欠なプロセス」
57 消化「汚泥からメタンガスを回収」
58 焼却「汚泥の減量化・安定化」
59 コンポスト「汚泥を肥料にする」

第6章 21世紀の水環境と水処理技術
60 下水処理水の利用「水資源としての下水」
61 水の循環利用「総合的な水循環と涵養」
62 ビル用水のための水回収「中水道とは?」
63 産業排水の回収「半導体工場の高度な回収」
64 リンの回収「枯渇資源のリンを回収するには」
65 フッ素の回収「産業廃棄物の減量も重要な課題」
66 金属の回収「金属も枯渇する」
67 能力アップされた水/機能水「水の可能性を拡げる機能水」
68 宇宙での水処理「国際宇宙ステーションでは、水を極限まで再利用

【コラム】
●幽霊の正体は北風だった
●レンジでのチンで温まるわけ
●おいしい清酒をつくるには
●氷の結晶成長を制御する
●サプリメントと微生物
●水に「溶ける?」「溶けない?」

参考文献

オルガノ (編集)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2009/12/1)、出典:出版社HP

基礎からわかる水処理技術

はじめに

「21世紀は水の世紀」といわれる。これは、1995年に当時世界銀行の副総裁であったイスマル・セラゲルディン氏が「20世紀の戦争は石油をめぐる戦争だった。21世紀の戦争は水をめぐる戦争になるであろう。」と発言したことが発端とされている。背景には、水不足が世界的な人口増加の影響もあって深刻な問題となり、水資源獲得のための争いが世界各地で頻発する、あるいは水資源確保のための国際的な協調が大きな課題になるとの予想がある。

利用可能な水を確保するためには、取水源となる水域の水環境を良好な状態に保つとともに、水の効率的な利用を推進することが重要である。水環境を良好な状態に保つためには、水環境に流入する水を汚染しないことが原則であり、水処理技術が重要な役割を担う。また水の効率的な利用のためには、一度利用した水を処理して再利用することが有効な手段であり、水処理技術が必須である。

一方で、水は利用用途に応じて必要となる水質が異なる。例えばトイレ用水は、消毒がなされていて使用者が不快に感じない程度に浄化されていればよいとされ、必ずしも飲める水である必要はない。つまり、すべての水を飲料水レベルに処理することは、エネルギーやコストの浪費で「もったいない」ことであって、適切な処理方法を選定して利用用途に必要な処理を施せばよい。水処理技術は本書で紹介したように多種多様なものが実用化されているが、これらを目的に応じて適切に実施することは水環境の保全、ひいては利用可能な水の確保という観点からも非常に重要である。

本書は、2000年8月の初版以来14刷を数えた「水処理技術絵とき基本用語」を基とし、最新の技術や社会の動向をふまえて各種の新しい情報を加筆・修正し、「基礎からわかる水処理技術」としてまとめたものである。執筆は、環境保全設備を提供している株式会社タクマの技術者グループ「タクマ環境技術研究会」が担当した。水処理に関心を持たれた一般読者の方々にも理解しゃすいよう、また関連分野の技術者や学生の参考となるよう、図や絵を用いてわかりやすく記載するとともに平易な解説とし、さらに資料を充実させている。本書により水処理についての理解が進み、その重要性を感じていただく際の一助になればと願っている。

なお、タクマ環境技術研究会編でオーム社の「絵とき基本用語」シリーズとして発刊されている「ごみ焼却技術絵とき基本用語」、「大気汚染防止技術絵とき基本用語」、「絵とき下水・汚泥処理の基礎」も併せてご覧いただければ幸いである。
2015年2月 芝川重博

タクマ環境技術研究会 (編集)
出版社 : オーム社 (2015/2/25)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 水質汚濁~公害から水環境への歴史~
1.1 水質汚濁の歴史
1.2 水質汚濁の発生源
1.3 排水の性状
1.4 水質汚濁の状況
1.5 水の流れと水質汚濁
1.6 水環境保全に係わる法体系
1.7 行政と水質汚濁の防止対策
1.8 水質汚濁防止技術の発展
1.9 水環境に係わる課題

第2章 水処理設備の概要~命の水を守る施設~
2.1 上水道施設(厚生労働省)
2.2 下水道施設(国土交通省)
2.3 し尿処理施設(環境省)
2.4 最終処分場浸出水処理施設(環境省)
2.5 農業集落排水事業(農林水産省)
2.6 清掃工場汚水処理設備(環境省)
2.7 産業排水処理設備(民間)
2.8 浄化槽設備(国土交通省、環境省)
2.9 脱臭設備

第3章 物理・化学処理法~基本技術からハイテクまで~
3.1 沈降分離
3.2 凝集分離
3.3 浮上分離
3.4 ろ過
3.5 膜分離
3.6 RO膜(逆浸透膜)分離
3.7 活性炭吸着
3.8 イオン交換
3.9 酸化分解
3.10 消毒
3.11 電気透析

第4章 生物学的処理法〜ミクロの決闘〜
4.1 活性汚泥法
4.2 生物膜法
4.3 担体法
4.4 嫌気性処理法
4.5 硝化脱窒法
4.6 生物学的脱リン法
4.7 アナモックス法
4.8 土壌処理法

第5章 有害物質の処理技術~環境汚染の救世主~
5.1 有害物質の概要
5.2 カドミウム、鉛廃水の処理
5.3 6価クロム廃水の処理
5.4 水銀廃水の処理
5.5 シアン廃水の処理
5.6 ヒ素・セレン廃水の処理
5.7 農薬廃水の処理
5.8 PCB廃水の処理
5.9 有機塩素化合物・ベンゼン廃水の処理
5.10 ふっ素・ほう素廃水の処理
5.11 アンモニア・アンモニア化合物・亜硝酸化合物・硝酸化合物廃水の処理

第6章 下水処理設備の概要~第4のライフライン~
6.1 下水道の状況
6.2 下水道の体系
6.3 下水道の施策
6.4 下水の処理
6.5 下水高度処理
6.6 下水汚泥処理
6.7 今後の下水道

第7章 汚泥処理~よみがえる不死鳥~
7.1 汚泥処理の状況と目的
7.2 濃縮
7.3 消化
7.4 脱水
7.5 コンポスト
7.6燃料化
7.7 返流水対策

第8章 汚泥焼却・溶融設備の概要~火の鳥とマグマ~
8.1 汚泥焼却・溶融の状況
8.2 焼却プロセス
8.3 溶融プロセス
8.4 熱回収プロセス
8.5 排ガス処理プロセス
8.6 灰の処理処分
8.7 創エネルギー型汚泥焼却システム

第9章 し尿処理設備の概要~し尿処理の歩み~
9.1 し尿処理の歴史・体系
9.2 し尿処理方式の変遷
9.3 高負荷脱窒素処理法
9.4 浄化槽汚泥対応型し尿処理方式
9.5 汚泥再生処理センター
9.6 下水道放流型し尿処理方式

第10章 埋立浸出水処理設備の概要~地下水を守れ~
10.1 廃棄物の処理、処分
10.2 最終処分場の機能
10.3 最終処分場からの浸出水
10.4 浸出水処理設備
10.5 微量汚染物質の処理
10.6 浸出水処理設備の維持管理

第11章 低炭素・循環型社会への貢献~水処理は資源の宝庫〜
11.1 水処理施設で発生する「資源」
11.2 処理水の有効利用
11.3 汚泥の有効利用
11.4 汚泥のエネルギー利用
11.5 その他のエネルギーの有効利用
11.6 有効成分の回収

第12章 水質と関連法規~水の羅針盤~
12.1 水質の表示・計量に関する基本事項
12.2 分析の方法
12.3 環境基準:人の健康に係わる水質項目
12.4 環境基準:生活環境に係わる水質項目
12.5 環境基準項目の後続グループ
12.6 水質汚濁防止法
12.7 下水道法
12.8 最近問題となっている水質

参考文献
索引

タクマ環境技術研究会 (編集)
出版社 : オーム社 (2015/2/25)、出典:出版社HP

基礎からわかる 下水・汚泥処理技術

はじめに

国際社会は、2015年の国連サミットにて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という2030年度までの国際開発目標を採択した。この2030アジェンダでは、現在人類が直面しているさまざまな課題に取り組むべく、相互に密接に関連した17の目標(ゴール)と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げている。

日本は、この2030アジェンダに取り組むための国家戦略として、2016年に実施指針を決定している。SDGsの17のゴールに対し、再構成した八つの優先分野を設定し、その中には「5.省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会」「6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」が掲げられている。

これら二つの優先分野に共通するキーワードの一つが「水」である。地球を循環する水環境を良好な状態に保つこと、そのためには水環境に流入する水を汚染しないことが原則であり、下水の適正処理を行って、水の再利用や河川・海に放流される水質を向上させることが大切である。さらに、下水処理によって発生する汚泥を適正処理することに加えて、カーボンニュートラルな下水汚泥を再生可能エネルギー資源として有効活用することも重要である。

本書は、エネルギー・環境保全分野を中心に事業活動を展開している株式会社タクマの技術者グループ「タクマ環境技術研究会」が著者を務め、下水処理・排水処理とそれにより発生する汚泥の処理・活用について、原理から処理技術およびその関連設備を解説したものである。本書ではなるべく多くの図表を用いて、わかりやすい解説に心がけ、下水処理や下水汚泥の分野に直接関係していない方々や、これからこういった分野を学習する学生の方々にも理解しやすいようにという思いを持って記述した。本書を通して、下水処理・汚泥処理への関心が高まり、それらに対する技術・知識の向上がSDGsの達成に向けての一助となることを著者一同願っている。

なお、本書は2005年11月に初版発行した「絵とき下水・汚泥処理の基礎』を現在の技術的進歩や下水処理・汚泥処理に関する規制改定等を踏まえて見直した上で、新たに発行するものである。姉妹書にあたる「基礎からわかるごみ焼却技術」「基礎からわかる大気汚染防止技術」「基礎からわかる水処理技術」も環境技術図書として併せてご愛読いただければ幸いである。

2020年5月 竹口英樹

タクマ環境技術研究会 (編集)
出版社 : オーム社 (2020/6/25) 、出典:出版社HP

基礎からわかる下水・汚泥処理技術 目次

第1章
水を取り巻く状況~地域環境から地球環境へ~
1.1 水の惑星ー地球ー
1.2 社会発展と水環境の公害
1.3 国内の水環境の現況
1.4 水環境を守るために
1.5 水処理技術の発展
1.6 地球を取り巻く水環境
1.7 持続可能な発展のために

第2章
下水処理の概要~第4のライフライン~
2.1 下水道の状況
2.2 下水道の体系
2.3 下水道の施策
2.4 下水の処理
2.5 下水前処理と一次処理
2.6 下水二次処理と高度処理
2.7 下水汚泥処理
2.8 今後の下水道

第3章
し尿処理・浸出水処理の概要〜自然をまもる施設〜
3.1 廃棄物の処理・処分
3.2 し尿と浄化槽汚泥
3.3 し尿処理システム
3.4 最終処分場と浸出水
3.5 浸出水処理設備

第4章
物理・化学的な水処理~自然の摂理を最大活用~
4.1 沈降分離
4.2 凝集分離
4.3 浮上分離
4.4 ろ過
4.5 膜分離
4.6 活性炭吸着
4.7 酸化分離
4.8 消毒

第5章
生物学的な水処理~ミクロの決闘~
5.1 活性汚泥法
5.2 生物膜法
5.3 担体法
5.4 嫌気性処理法
5.5 生物学的硝化脱窒法
5.6 生物学的脱リン法
5.7 アナモックス法

第6章
有害物質の除害処理~環境汚染のセーフガード~
6.1 除害施設の概要
6.2 カドミウム・鉛廃水の処理
6.3 六価クロム廃水の処理
6.4 水銀廃水の処理
6.5 シアン廃水の処理
6.6 ヒ素・セレン廃水の処理
6.7 農薬廃水の処理
6.8 有機塩素化合物・ベンゼン廃水の処理
6.9 ふっ素・ほう素廃水の処理
6.10 栄養塩類(窒素、リン)の処理

第7章
污泥処理~廃棄物を価値あるものへ~
7.1 汚泥処理の状況と目的
7.2 濃縮
7.3 消化
7.4 脱水
7.5 コンポスト
7.6 燃料化
7.7 焼却
7.8 創エネルギー型汚泥焼却
7.9 返流水対策

第8章
低炭素・循環型社会への貢献~下水処理場は資源の宝庫〜
8.1 下水処理施設で発生する「資源」
8.2 処理水の有効利用
8.3 汚泥の有効利用
8.4 汚泥のエネルギー利用
8.5 その他のエネルギーの有効利用
8.6 有効成分の回収

第9章
水質の関連法規~水環境の道しるべ~
9.1 環境基準:人の健康にかかわる水質項目
9.2 環境基準:生活環境にかかわる水質項目
9.3 環境基準項目の後続グループ
9.4 水質汚濁防止法
9.5 下水道法

参考文献
索引

タクマ環境技術研究会 (編集)
出版社 : オーム社 (2020/6/25) 、出典:出版社HP

汚水・排水処理―基礎から現場まで

はじめに

本書は、化学の知識や排水処理の知識がほとんどない人が、初めて工場の排水担当者となったことを想定して、排水処理技術とその基礎となる化学についてのかりやすく解説したものである。化学の解説を行った理由は、排水処理に化学の知識は不可欠だからである。化学的現象の大部分は核の周囲の電子の数と配置によって生ずるため、ある程度これらに関する知識があれば、排水処理技術がより一層豊かに理解できると筆者は考えている。

本書を書くきっかけとなった理由は、筆者が、長い間、工場の排水担当者から多くの質問や相談を受けてきたことによる。質問の内容は、化学や排水処理技術の基本的な知識がないことが原因であることが多かったと思う。また、排水処理技術に関しては、これまでに何冊も出版されているが、それらはすべて一定の化学や排水処理の知識や技術が前提となっており、ある程度の専門家を前提としているように思える。このような現状から、より基本的なところからの解説書が必要であると以前から考えていた。

本書はこのような目的に達するように心掛けて執筆し、一定の目的を達成できたのではないかと考えている。各内容については、過去の公害防止管理者試験の問題を掲載し、現実に即した内容でさらに理解できるように構成してある。そして、解説に目を通すことによって理解をなお一層深めることができる。なお、銅、亜鉛、溶解性鉄および溶解性マンガンは「有害物質」ではないが、処理技術が有害物質と類似しているところがあるため、本書では同一の節にまとめて記載した。

また、数多く現場の読者から質問があり、これらを整理したものを各章の終わりに記載し、回答を試みた。質問者が排水担当の初心者であることから質問内容が抽象的であることはやむを得ないところである。本来、このような質問に正確に答えることはできないものであるが、質問者が初心者であるところから、あえてこのような質問にも回答を行ったものであるしたがって、回答も抽象的、一般的にならざるを得ない、多くの読者の参考になればと考えている。

本書は、排水処理技術について広範な内容になっているため、個々の内容は深くないが、読者の皆さんが本書によってさらに詳しく勉強するきっかけとなれば幸いである。

2009年7月
著者しるす

三好 康彦 (著)
出版社 : オーム社 (2009/8/1)、出典:出版社HP

目次

第1章 汚水・排水処理のための化学の知識
1.1 原子の構造
原子の構造(原子核、中性子、陽子、陽イオン、陰イオン、原子番号)
電子軌道と電子配置

1.2 周期表
族と周期
典型元素
遷移元素
金属元素と非金属元素

1.3 化学結合
電子配置と原子の性質
イオン結合
共有結合
金属結合
配位結合
水素結合
ファンデルワールスカ

1.4 酸化数

1.5 原子量、分子量およびモル
原子量および分子量
モル(mol)と気体の体積
モルと化学計算

1.6 溶液の性質
溶液の一般的性質
溶液の濃度
溶解度
溶解度の温度依存性
溶質、溶媒の性質と溶解度

1.7 酸とアルカリ
水溶液の酸性、アルカリ性
酸と塩基
酸と塩基の強さ
酸と塩基の当量
アルカリ性と水素イオン
(H*)濃度

1.8水の特異性
水分子の構造
水の性質

1.9 酸化および還元
定義
酸化・還元に関係する事例
酸化当量と還元当量

1.10 元素の起電力系列

1.11 電解質と解離
解離
電解質を含む水の電気分解
イオンの活量
OH-とOHラジカルおよびCN”

1.12 化学反応
可逆反応・不可逆反応・平衡
平衡定数と質量作用の法則

1.13 溶解度積と沈殿
溶解度積の概念
共通イオン効果
土壌中アルミニウムの溶出計算事例

1.14 錯体とキレート
錯体の構造
金属キレート化合物
身近な金属キレートの事例

1.15 ベンゼンの記号および結合
ベンゼンの記号
結合

1.16 BODおよびCOD
BODの定義
BODの試料作成
CODの定義
COD試験における過マンガン酸消費量の酸素相当量(mg/ml)
BODとCODの関係
環境基準とBODおよびCOD
実務上のQ&A

第2章 汚水・排水処理技術の重要ポイント
2.1沈降分離
沈降速度式
沈降速度分布

2.2水面積負荷または表面積負荷

2.3自由沈降と干渉沈降

2.4越流負荷

2.5傾斜板による分離促進

2.6凝集分離
凝集の原理
凝集剤の種類と凝集方法
適用範囲

2.7浮上分離
自然浮上
加圧浮上

2.8ろ過
清澄ろ過
ろ過抵抗
ろ過の種類
ろ過速度およびケーキ比抵抗
汚泥脱水テスト

2.9脱水機
真空ろ過機
フィルタプレス
ベルトプレス(ロールプレス)
スクリュープレス
遠心脱水機
多重円盤形脱水機
脱水率などの比較

2.10汚泥処理・処分
焼却処理
湿式燃焼
コンポスト
焼却灰の処分

2.11活性炭吸着
活性炭吸着の特徴
吸着等温線
吸着装置
再生

2.12中和
中和剤
中和曲線
金属イオンを含む中和
中和装置

2.13汚水・排水処理における酸化と還元
酸化と還元電位
酸化剤
還元剤

2.14イオン交換
イオン交換の原理
イオン交換体の種類と特徴
イオン交換樹脂の選択性
イオン交換容量
イオン交換樹脂量計算方法

2.15膜処理法
分離膜と種類
精密ろ過膜法
限外ろ過膜法
ナノろ過膜法
逆浸透膜法
活性汚泥装置
(膜分離活性汚泥法)への適用

2.16イオン交換膜電気透析
原理
実用の現状
実務上のQ&A

第3章 生物処理技術の重要ポイント
3.1浄化に関係する生物
好気性微生物
嫌気性微生物

3.2活性汚泥処理法
概要
基本フローシート
活性汚泥法で使用してる用語
管理項目
計算事例
汚泥排出
供給空気量
各種の活性汚泥法
バルキングの一因と対策
ばっ気槽の著しい泡の発生と対策

3.3生物安定池
生物酸化池(Oxidation Pond)
嫌気性池(Anaerobic Pond)
通気性安定池(Facultative Stabilization Pond)

3.4生物膜法
生物膜法の特徴
散水ろ床法
回転円板法
接触ばっ気法

3.5嫌気性生物処理法
嫌気性生物処理の原理
適用および維持管理上の特徴
装置の種類と構造
UASB装置と特徴

3.6生物的脱窒素法
生物酸化池法
活性汚泥法による方法
硫黄酸化
細菌による方法
嫌気性アンモニア酸化法(Anammox法)

3.7生物的説リン法
原理
維持管理の特徴

3.8窒素とリンの生物的同時除去法
実務上のQ&A

第4章 有害化学物質処理技術の重要ポイント
4.1重金属物質処理技術
カドミウム

6価クロム
水銀
亜鉛
溶解性鉄
溶解性マンガン

4.2無機物質処理技術
ヒ素
セレン
シアン
ベンゼン
フッ素
ヘキサン抽出物質
フェノール類
窒素(NH3、NO2、NO5)
リン
ホウ素

4.3有機塩素化合物の処理技術
PCB
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素系化合物
ダイオキシン類

4.4農薬処理技術
有機リン化合物(パラチオン、メチルパラチオン、EPN、メチルジメトン)
そのほかの農薬(チウラム、シマジン、チオベンカルブ)
ジオキサン

実務上のQ&A

参考文献
索引

三好 康彦 (著)
出版社 : オーム社 (2009/8/1)、出典:出版社HP

水処理技術 (ポイント解説)

はじめに

この本は実務に役立つ水処理の要点についてわかりやすく解説したものです。

水は地球上に一定量しか存在しない限りある資源で、水がなければ人の生命維持や産業は成り立たちません。

近年、世界の水問題は深刻化し、今から数年前に21世紀は「水の世紀」になるといわれました。現在、その言葉が水不足、水環境汚染、穀物生産の仮想水(バーチャルウォーター)問題などを包括する概念としてにわかに現実味を帯びてきました。今、石油資源を押さえた者が世界経済の行方を左右しています。近い将来、「水」が「石油」にとって代わる時代が来るかも知れません。私達は水が地球を循環しているものであるということを常に念頭において、人類共通の資産である水の汚濁防止に努め、高度処理、リサイクル化、節水に配慮した「循環型社会の構築」を目指すべきだと思います。

水処理技術者は、化学、生物、機械、電気、環境などの基礎理論に加え実体験の積み重ねが必要です。自分の知識と経験が一致したときの手ごたえは、まさに技術者の喜びであり、仕事への意欲がわいてきます。この体験により、それまでの知識が本物となり、やがては新技術開発のきっかけともなります。本書がこれらの課題を解決するために少しでもお役に立てば幸いです。

この本は日ごろ水処理の業務に携わる技術者はもとより、理工学部の学生、初心者の方々でも容易に理解できるように書かれています。内容は基礎的な凝集沈澱や砂ろ過をはじめ、最近の環境規制の動向、排水のリサイクルに至るまで幅広いのですが、どの項目を読んでも4ページで概要が把握できるようにしました。紙面の都合で内容を伝えきれないと思われる部分については、補足説明と確認を兼ねて演習問題と解答を記載しました。

本書の作成にあたって、本文中に掲げた優れた文献、著者、発行者の資料を参考にさせていただいたことを感謝します。また、出版の協力をいただいた(株)工業調査会編集部の各位に厚くお礼申し上げます。

2008年10月 和田洋大

和田洋六 (著)
出版社 : 東京電機大学出版局 (2011/5/6)、出典:出版社HP

目次

はじめに
第1章 水処理の基本
1.1 水は貴重な資源
1.2 環境規制と化学物質規制の動向

第2章 水処理で使う主な用語
2.1 pH
2.2 酸化還元電位(ORP)
2.3 電気伝導率
2.4 蒸発残留物
2.5 溶存酸素(DO)
2.6 BOD とCOD
2.7 酸化、還元
2.8 硬度
2.9 アルカリ度
2.10 塩素殺菌
2.11 紫外線殺菌
2.12 オゾン酸化
2.13 促進酸化法(AOP)

第3章 生活用水と工業用水
3.1 上水道水源の水質
3.2 飲料水の水質
3.3 凝集
3.4 沈殿分離
3.5 浮上分離
3.6 緩速ろ過と急速ろ過
3.7 除鉄、除マンガン
3.8 砂ろ過(圧力式ろ過)
3.9 活性炭吸着
3.10 UV オゾン酸化
3.11 イオン交換樹脂による脱塩
3.12 MF膜ろ過
3.13 UF膜ろ過
3.14 RO 膜脱塩
3.15 電気透析
3.16 純水
3.17 超純水
3.18 ボイラ水の管理
3.19 冷却水の管理
3.20 海水淡水化

第4章 生物学的処理
4.1 流量調整槽
4.2 沈殿槽の構造
4.3 活性汚泥法
4.4 長時間ばっ気法と汚泥再ばっ気法
4.5 バルキングの原因と対策
4.6 生物膜法
4.7 回分式活性汚泥法理
4.8 汚泥負荷と容積負荷
4.9 偵負荷
4.10 毒性物質と阻害物質
4.11 窒素の除去
4.12 リンの除去

第5章 物理化学的処理
5.1 pH調整による重金属の処理
5.2 硫化物法による重金属処理
5.3 粒子径と沈降速度
5.4 6価クロム排水の処理
5.5 シアン排水の処理
5.6 フッ素含有排水の処理
5.7 ホウ素含有排水の処理
5.8 亜鉛含有排水の処理
5.9 フェントン酸化
5.10 シリカの除去

第6章 排水のリサイクル
6.1 RO膜による重金属含有排水のリサイクル
6.2 イオン交換樹脂法による重金属含有排水のリサイクル
6.3 UVオゾン酸化とイオン交換樹脂法によるシアン含有排水のリサイクル
6.4 UVオゾン酸化とイオン交換樹脂法による3価クロム化成処理排水のリサイクル

和田洋六 (著)
出版社 : 東京電機大学出版局 (2011/5/6)、出典:出版社HP

これでわかる水処理技術 (現場の即戦力)

まえがき

安全でおいしい水道水やボトルウォーターの供給技術,半導体産業に重要な超純水の品質向上,下水処理水の再利用の促進など,水処理技術も急速に発展している。そのなかで,水源の汚染や水資源の希少化といった流域の水環境全体に係わる課題,さまざまな病原性微生物,化学物質などに係わる問題に対し,高度化・複雑化した水質管理が求められており、設備の安定した維持・管理体制の,さらなる改善が検討されている。

わが国の水質汚濁状態は、総体的に改善されているといえる。特に重金属などの人の健康にとって有害な物質については,産業製品そのものから排除されつつあり、環境基準はほとんど達成されている。また,BOD,CODなどの有機物で生活環境の保全に関する項目についても,下水処理場での高度処理により改善傾向が見られる。しかし,一部の湖沼,内湾などの閉鎖性水域においては水交換が悪いため,窒素,りんな「どの栄養塩類の流入によって水中生物が急激に増殖し水質が累進的に悪化する、いわゆる富栄養化の問題が残されている。

一方、人への影響が懸念される,環境ホルモン,ダイオキシンなど新たな物質に対応するための安価で安定した処理技術も必要になっている。このような状況において、水処理業界に身をおく一人として、運転管理の充実、処理水質のさらなる高度化と安全性に完全を目指し、環境「負荷を低減し、水環境・水循環へ貢献しなければ,との思いが強い。

本書が水処理に興味がある人,事業所・工場の設備管理者および運転者の方々のお役に立てれば幸いである。また、執筆にあたり、諸先輩のデータおよび資料の供出,アドバイスをいただいた。加藤勇氏,北川幹夫氏,小泉求氏に感謝したい。さらに文献・報告書・指針などから数多く引用させていただいた。それらは巻末に出典としてまとめて記載した。
なお,本書は工業調査会で出版された『これでわかる水処理技術」を新装版として再出版したものである。

2011年4月 吉村二三隆

吉村 二三隆 著  栗田工業 監修 (著)
出版社 : 技術評論社 (2011/6/10)、出典:出版社HP

これでわかる水処理技術目次

まえがき

基礎編 水処理技術の基礎知識
1章 水処理装置のいろいろ
1.1 水環境の保全
1 水循環について
2 水質汚濁の現況

1.2 水処理方法

1.3 固液分離装置
1 スクリーン・粗粒分離
2 pH調整
3 凝集処理
4 沈降分離
5 浮上分離
6 ろ過

2章 用水処理
2.1 前処理
1 富栄養化工業用水を処理する上での留意点
2 凝集二層ろ過
3 凝集加圧浮上二層ろ過
4 凝集沈殿ろ過

2.2 イオン交換装置
1 イオン交換樹脂による水処理
2 2床3塔型純水装置の原理
3 その他の純水装置

2.3 膜装置
1 膜装置とは
2 膜の構造
3 モジュールの構造
4 ろ過方法
5 逆浸透の原理
6 RO膜の塩排除メカニズム
7 膜分離に影響する因子

2.4 連続電気脱イオン装置
1 装置の構成
2 装置の原理

2.5 超純水
1 超純水とは
2 超純水の水質
3 超純水製造システムの基本構成

3章 排水処理
3.1 有害物質の処理
1 従来の技術
2 置換法による重金属錯体の処理
3 銅排水の処理
4 鉛排水の処理
5 水銀排水の処理
6 砒素排水の処理
7 カドミウム排水の処理
8 ニッケル排水の処理
9 クロム排水の処理
10 ほう素排水の処理
11 ふっ素排水の処理
12 シアン化合物排水の処理
13 ダイオキシン類排水の処理
14 キレート剤(有機酸)を含む重金属の処理
15 金属含有排水の汚泥減容化システム

3.2 生物処理
1 微生物とは
2 嫌気性処理
3 標準活性汚泥法
4 2段活性汚泥法
5 膜式活性汚泥法の特徴
6 生物膜処理法
7 生物脱窒法
8 脱りん法
9 有機汚泥の減量化技術

3.3 活性炭吸着法
1 活性炭の吸着能力と破過
2 活性炭の適用試験
3 活性炭吸着装置の種類
4 排水処理への適用
5 活性炭の再生

3.4 汚泥処理
1 汚泥の種類と性状
2 脱水機の種類と機能

事例編 排水処理設備の基本設計事例
事例1自動車製造工場排水処理設備
1 処理対象排水
2 排水の水量,水質
3 処理装置の選定
4 処理プロセスの構築
5 マテリアルバランス
6 ユニットの基本設計計算

事例2 製鉄所排水処理設備
1 設計条件
2 処理対象とユニットの選定
3 処理プロセスの決定
4 マテリアルバランス
5 ユニットの基本設計計算

参考文献・使用資料
索引

吉村 二三隆 著  栗田工業 監修 (著)
出版社 : 技術評論社 (2011/6/10)、出典:出版社HP

図解入門 よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み[第3版]

はじめに

本書は2008年の初版発売以来、今日まで長きにわたって多くの読者から愛用されてきました。このたび新たなべ容を加え、第三版を刊行することとなりました。

近年、毎年のように起こる気候変動により、日本や世界の国のどこかで「水のあるところには有り余るほどあって洪水・土砂災害まで起こすが、ないところには一日の生活用水すらない」という偏在した状況が発生し、人々が安全で健康的な生活をするための水を確保することが難しくなっています。こうした水問題の解決には地球上の淡水は限られた量が循環することで成り立っていることを認識し環境保全、リサイクル、節水などの有効利用を図ることが大切です。

水は簡単な構造をしたありふれたものですが、他の物質にはない「何でも溶かす」という特異な性質を持っています。何でも溶かす水は有害なシアン、6価クロム、重金属、フッ素、ホウ素、難分解性有機物など様々な有害成分を取り込みます。これを不完全な処理のまま排出すれば水環境汚染や公害の原因となります。

水処理は「分離と精製の技術」ともいえるので、化学、物理、機械、生物、環境などの基礎知識に加えて現場経験が要求されます。これらの手段を用いて適切な処理を施せば汚れた水はきれいな水に甦ります。それまで捨てていた汚濁排水でも高度処理すれば再利用でき水道料金の節約となるので、工場や事業所の経費節減ともなります。

本書は水処理について学ぶ学生や初心者の方々に読んでいただくことを想定し、わかりやすく解説することを心がけました。本書が水処理技術の基礎知識の整理と実務の参考に役立てば幸いです。

2017年11月 和田洋六

和田洋六 (著)
出版社 : 秀和システム; 第3版 (2017/12/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

Chapter1 貴重な資源、水
1 循環する淡水は地球上の水の約0.05%
2 水は生命維持と産業に必須の資源
3 河川には本来、自然浄化力がある
4 社会を支える水の特異な性質
5 暮らしを守る下水道の役割
6 必要性が増す水のリサイクル
コラム 富士山は大きなろ過装置

Chapter2 水処理技術のキーワード
7 DO(溶存酸素)―水中の酸素溶解度
8 COD(化学的酸素要求量)
9 BOD(生物化学的酸素要求量)
10 TOCI水中の全有機性炭素量
11 SS-直径2ミリ以下の不溶解性浮遊物質
12 pH-酸性やアルカリ性の度合いをはかる尺度
13 酸化と還元-水処理の基本
14 ORP(酸化還元電位)
15 電気伝導率水の種類で異なる
16 蒸発残留物―水の味や質を決める要素
17 硬度―「軟水」「硬水」とは?
18 アルカリ度―地下水や地質条件を知る指標
19 ランゲリア指数スケール制御の目安
20 塩素殺菌利点と欠点の理解が大切
21 紫外線殺菌—化学薬品を使わない処理
22 AOP(促進酸化法)―注目が高まる技術
コラム 亜硝酸性窒素と硝酸性窒素

Chapter3 生活用水をつくる
23 大切な上水道水源の水質
24 飲料水の水質と塩素殺菌
25 塩素殺菌と有害物質トリハロメタン
26 緩速ろ過と急速ろ過
27 小さな粒子を寄り集める凝集処理
28 鉄とマンガンの除去
29 汚濁水の砂ろ過(圧力式ろ過)
30 分離精度が高い膜ろ過
31 異臭除去にも効果、活性炭吸着
32 二次汚染のないオゾン酸化
33 淡水不足の地域で活躍、海水淡水化
34 RO膜で地下水を飲料水にする方法
コラム BODはとれてもCODは残る

Chapter4 工業用水をつくる
35 工業用水の水質とニーズ
36 工業用水の前処理と用途
37 懸濁物を沈める沈殿分離
38 水より軽いものに浮上分離
39 粒子に泡を付着させる加圧浮上
40 イオン交換樹脂による脱塩
41 イオン交換樹脂の再生①単床塔
42 イオン交換樹脂の再生②並流再生と向流再生
43 イオン交換樹脂の再生③混床塔
44 水中の二酸化炭素を除く簡単な方法
45 膜面が詰まりにくいクロスフローろ過
46 砂ろ過より高精度なMF膜ろ過
47 より高精度なUF膜ろ過
48 逆浸透作用を利用するRO膜脱塩
49 RO膜を排水処理に使うポイント
50 脱塩と濃縮が同時に可能な電気透析
51 産業活動に欠かせない純水
52 半導体製造に不可欠な超純水
53 シリカ(二酸化ケイ素)の除去
54 カルシウムの除去
55 電力の安定供給に貢献、ボイラ水
56 用途として最も多い冷却水
コラム 湖沼などの富栄養化を防ぐには

Chapter5 排水の物理化学的処理
57 pH調整による重金属の処理
58 硫化物法による重金属の処理
59 キレート凝集剤による重金属の処理
60 凝集沈殿での粒子径と沈降速度
61 6価クロム排水の処理
62 シアン排水の処理
63 ふっ素含有排水の処理
64 ほう素含有排水の処理
65 処理困難なほうふっ酸の処理
66 晶析材によるリンの吸着処理
67 亜鉛含有排水の処理
68 COD除去に適したフェントン酸化
コラム 排水処理は初めの分別が大切

Chapter6 微生物の力を利用する排水処理
69 好気性微生物の力を使う活性汚泥法
70 長時間ばっ気法と汚泥再ばっ気法
71 汚泥が沈まないバルキングの原因と対策
72 微生物の継続保持が容易な生物膜法
73 単一槽で行える回分式活性汚泥法
74 利点の多い膜分離活性汚泥法
75 生物の代謝活動を支える流量調整槽
76 汚泥を分離する沈殿槽
77 汚泥計量で流量を一定に保つ
78 汚泥負荷と容積負荷
79 毒性物質と生物の増殖阻害物質
80 富栄養化の一因となる窒素の除去
81 活性汚泥によるリンの除去
82 食品排水処理などで活躍、UASB処理
コラム 汚泥をくみ上げるエアーリフトポンプ

Chapter7 水処理で生じる汚泥の処理
83 スラッジの種類と脱水機の使い分け
84 ろ過室で加圧するフィルタープレス
85 有機系汚泥に適した真空脱水機
86 用途が広いベルトプレス
87 遠心力を利用、遠心脱水機
コラム 発電で注目のバイオガスの回収

Chapter8 環境と命を守る水処理技術
88 日本における環境規制の動向
89 水のリサイクル①-RO膜の活用
90 水のリサイクル②イオン交換樹脂の活用
91 水のリサイクル③MBRの活用
92 水のリサイクル④効果的な光オゾン酸化
93 水のリサイクル⑤シアン含有排水
94 水のリサイクル⑥3価クロム化成処理排水
95 回収・再資源化①―めっきで多用されるニッケル
96 回収・再資源化②—用途が広いクロム
97 具体例①表面処理排水のリサイクル
98 具体例②食品工場の排水処理
99 具体例③医療用水の製造
100 化学工業などで生じるジオキサンの処理
101 セシウム(放射性物質)の除去
102 汚染土壌と地下水の浄化
103 天然の蒸留水、雨水の利用
104 水資源有効利用に効果、中水道
コラム 排水リサイクルのためのポイント10

巻末資料
目的別処理技術一覧
①用水の種類と処理技術
②排水の成分と処理技術

索引

参考文献

本書は、図やイラストなどを用いて水処理のひととおりの基本を易しく解説した書であり、次のような方々におすすめです。

・水処理についてこれから学ぶ学生が、概要について広く押さえる。
・仕事で必要な方が、水処理の基本を押さえたり、自分の弱い項目の概要についておさえる。
・公害防止管理者(水質関係)、下水道技術検定などの水処理に関連する資格取得をめざす人の副読本として。

もちろん、水処理について関心のある一般の方にもおすすめです。

和田洋六 (著)
出版社 : 秀和システム; 第3版 (2017/12/20)、出典:出版社HP