第一種衛生管理者免許試験対策 合格水準問題集 2020年度版

田中通洋 (著), 小室文菜 (著)

労働調査会 (2020/2/22)、出典:出版社HP

衛生管理者免許試験のあらまし

業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場では衛生管理者を選任しなければなりません(労働安全衛生法第12条)。

衛生管理者免許には大きく分けて「第一種衛生管理者免許」と「第一編管理者免許」があります。このうち、第一種衛生管理者免許を持っていればすべての業種の事業場で衛生管理者を務めることができます。一方、第二編:生管理者免許は、第3次産業など有害業務のない業種に限って衛生管理者を務めることができる資格です。建設業や製造業で衛生管理者になるには、第一種衛生管理者免許が必要になります。

衛生管理者免許試験は、第一種・第二種とも「労働衛生」「労働生理」「関係法令」の3科目からなっていますが、試験に合格するには、各科目ごとの得点が40%以上で、かつ、3科目の合計点が60%以上である必要があります。第一種衛生管理者免許試験の配点は以下のとおりです。

試験科目	範囲	出題数（配点）
労働衛生	有害業務に係るもの	10問 ( 80点)
労働衛生	有害業務に係るもの以外のもの	7問 ( 70点)
労働整理		10問(100点)
関係法令	有害業務に係るもの	10問 ( 80点)
関係法令	有害業務に係るもの以外のもの	7問( 70点)
合計		44問(400点)

衛生管理者免許試験は、全国に7か所ある、安全衛生技術センターで月に数回実施されています。センターの所在地や試験の内容などについては、公益財団法人安全衛生技術試験協会(本部/東京都千代田区、TEL03-5275-1088)のホームページをご覧ください。

田中通洋 (著), 小室文菜 (著)

労働調査会 (2020/2/22)、出典:出版社HP

本書の使い方　~受験勉強の進め方のご提案とともに~

本書は第一種衛生管理者免許試験の受験対策用の問題集ですが、特に総仕上げのためにご活用いただくことを念頭に構成しました。具体的な使い方としては、1本試験と同じように解答時間を区切るなどして、実戦形式で試験問題に向き合う、21問ごとに解答・解説を確認し、重要ポイントを適確に押さえる、3弱点を克服するために、本文中の「関連問題」を手掛かりに類題を続けて解くなどを想定しています。

また、受験勉強のためにまとまった時間を確保できない方のために、通勤電車の中や会社のお昼休みといった、ちょっとした時間を有効に活用できるよう、問題を掲載したページをめくった、そのすぐ裏のページに解答・解説を載せてすぐに参照できるようにしました。

そして、合格を目指すうえで最新の公表問題をまずきちんと修得することが大事になること、さらに新たなタイプの問題が公表されていることを踏まえて、公表が新しい問題から順に掲載しています。

どのような使い方をしても、本書を反復して活用し、解答・解説のページにまとめた「重要ポイント」を確実に押さえるだけで、「合格水準」に到達するために必要な知識を習得することができます。

この合格水準という言葉については、多少、説明が必要だと思います。衛生管理者免許試験は全体として60%の正答率を求めている試験です。正答率6割を超えれば合格水準をクリアしたことになります。つまり、100%の正答率が求められる試験ではないのです。

ですから受験勉強に際しても80%くらいの正答率を目指すのが現実的な対応だと言えるでしょう。100%を目標に置く勉強と、80%を目標に置く勉強とでは方法が異なります。あまりにも難解な問題に出会ったら「まぁいいか」ぐらいの気持ちで、ぜひ気を楽にして受験勉強に、そして試験に臨み、合格水準をクリアしてください。

なお、本書で学ぶ前に、受験対策用の参考書で基本的な知識を学んでおけば合格がより確実なものとなることは言うまでもありません。

さて、ここでは私たちの経験上、より理想的だと考えられる勉強の進め方をご紹介しましょう。

衛生管理者免許試験に限らず、受験勉強の目的の第一は、試験に合格することです。しかし、そのことに固執するばかりでは、「衛生管理者として最低限必要な知識」の表面をなぞっただけで、本質的な知識の習得にはなり得ない危険性もあります。貴重な時間を費やして試験に合格したにも関わらず、「容枚をとった」という自己満足だけで終わってしまっては残念です。産業現場では資格を持っているというだけでは何の価値もなく、その資格にふさわしい知識を実際に身に付けているかどうかが、あらゆる場面で問われているはずです。

したがって、受験勉強においてもそのことを少し意識してみることをお勧めします。
例えば、本書をベースにおいて受験勉強を進めるのであれば、本書に書かれている問題の内容(「正しい」あるいは「間違い」として、その問題の正解となっている選択肢のみではなく、全ての選択肢の内容)を、信頼のおける参考書で丹念に調べ、関係箇所をよく読んで理解するようにしてみてはいかがでしようか?

私たちは、本書に掲載した過去に出題された問題を丹念に調べることで、本質的な知識の多くを習得できると考えています。なぜなら、試験はそもそも本質的な知識、すなわち衛生管理者として最低限必要な知識を持っているかどうかを試すために行われているからです。

出題頻度の高いテーマは、イコールル較的多くの産業現場で関係するテーマであり、またそれを学ぶことによって衛生管理者として最低限必要な知識を習得できるというわけです。受験勉強を進めるに当たっては、本書オリジナルの「公表問題出題傾向分析」もぜてしてください。

さて、受験勉強はどの程度の期間が必要なのでしょうか?毎日勉強できる人、土日だけしか勉強できない人など、人によってスタイルが異なるため、一概には言えません。ただし、この試験の内容を考えると、1年から2年といった長期間を費やして取り組むものではありません。1~2か月といった、短期集中型で取り組むことをお勧めします。

解答・解説中の略称
◎法令：関係法令に関する問題の趣旨を理解する上で役立つと思われる代表的な法令をピックアップしました。お手元にある法令集などで内容を調べてみてください。

◎関連問題：趣旨が同じ問題をまとめてみました。例えば、「H29.10.問4」とある場合は、「平成29年10月公表分の問題の問4」を指します。また、「R1.10.問10」とある場合は、「令和元年10月公表分の問題の問10」を指します。

法令等の略称
安衛法：労働安全衛生法
安衛令：労働安全衛生法施行令
安衛則：労働安全衛生規則
有機則：有機溶剤中毒予防規則
鉛則：鉛中毒予防規則
特化則：特定化学物質障害予防規則
酸欠則：酸素欠乏症等防止規則
粉じん則：粉じん障害防止規則
石綿則：石綿障害予防規則
事務所則：事務所衛生基準規則
労基法：労働基準法
労基則：労働基準法施行規則
女性則：女性労働基準規則
年則：年少者労働基準規則
高圧則：高気圧作業安全衛生規則
電離則：電離放射線障害防止規則

田中通洋 (著), 小室文菜 (著)

労働調査会 (2020/2/22)、出典:出版社HP

公表問題出題傾向分析

田中通洋 (著), 小室文菜 (著)

労働調査会 (2020/2/22)、出典:出版社HP

最新情報

筆者のもとには、衛生管理者免許試験の受験者から様々な情報が寄せられています。こうした情報の中から、「公表された問題では触れられていない項目」、「合格するために知っておいたほうが良いと思われる項目」などについて、試験の科目ごとにまとめてみました。

なお、この最新情報は、基本的な知識の習得を終え、さらに過去5回分の試験問題をマスターしてから目を通されることをお勧めします。
*取り上げた情報は令和2年1月現在の情報です。

I.関係法令(有害業務)
1.有害業務の安全衛生管理体制
事業場の業種、労働者数、有害業務の状況、衛生管理者の選任状況などが説明されていて、そのことを踏まえた上で法令違反の状況に係わる記述を選択させる問題が多く出題されています。

このような問題は、自分の部憶をひとつひとつ照らし合わせて解答を道き出すことが必要となるため、解答を得るのに少々時間が掛かります。また、問1として最初に取り上げるケースが多いと思います。このような問題が出題された場合に解答が得られるような問題を先に片付け、最後に余裕を持ってことをお勧めしますが出題された場合には、余裕を持って取り組むことをお勧めします。

選任にあたって、第一種衛生管理者の免許が必要な業種かどうかという話題が取り上げられた場合に、ひっかかりやすい業種として「燃料小売業」、「運送業」、「ゴルフ場業」、「農林畜水産業」、「林業」などがあります(安衛則第7条第1項第3号)。法令集や参考書で確認しておきましょう。

常時500人を超える労働者を使用し、有害業務に常時30人以上従事させている場合には、少なくとも1人を専任の衛生管理者にするとともに、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者にしておく必要があります。

ここで、専任の衛生管理者が必要かどうかを見極めるための対象の有害業務と、衛生工学衛生管理者免許を受けた者が必要かどうかを見極めるための対象の有害業務は異なっていることを確認しておいてください(安衛則第7条第1項第5号ロ、安衛則第7条第1項第6号、労基則第18条)。また、専属の産業医が必要かどうかを見極めるための対象の有害業務も、あわせて確認しておいてください。(安衛則第13条第1項第2号)

2.譲渡等の制限
厚生労働大臣の規格が定められている防毒マスクの吸収缶の種類を確認しておいてください。

3.定期自主検査
最近は、容易に回答できる実施の頻度を問う問題も出題されていますが、少し深い知識を問う問題も引き続き出題されています。「平成30年10月公表分の問2」(186ページ)の解説をよく学んでください。

4.有害業務の健康診断
有害業務と特殊健康診断における検査項目の正しい組み合わせを選択させる問題には、様々な解答パターンがあります。個々の有害要因を学ぶ(労働衛生の科目の職業性疾病の項)ことによって、必要となる検査項目はおおよそあたりが付けられそうですが、余裕があれば、「鉛業務」、「有機溶剤業務」、「放射線業務」、「高気圧業務(潜水業務を含む)」の特殊健診の検査項目を、参考書で何度かながめておく(きちんと暗記することまでは意識せずに)ことをお勧めしておきます。「平成30年10月公表分の問3」(188ページ)の解説も参考にしてください。

5.健康管理手帳
対象ではない業務を選択する問題もあります。健康管理手帳の交付対象業務で取り上げている物質は、じん肺の症例がある物質など一部の例外を除けば発がん性物質が主対象であることがわかります。対象ではない業務を選択する場合には、発がん性のない物質、またじん肺の症例もなさそうな物質を念頭に置いて探せば、簡単に解答が得られそうです。

6.有機溶剤中毒予防規則、ならびに特定化学物質障害予防規則
「クロロホルム他9物質」が、有機則の規制対象から特化則の規制に変わり、平成26年11月から施行されています。特定化学物質の館質の「特別有機溶剤等」の中に位置づけられるとともに、特別管理物なりました。特別管理物質になったことに伴って、新たに発生する例えば「作業記録の作成義務」、「記録の保存期間の延長」などを確認しておくことをお勧めします。

「クロロホルム他9物質」とは、具体的には「クロロホルム」、「四塩化炭素」、「1,4-ジオキサン」、「1,2-ジクロロエタン」、「ジクロロメタン」、「スチレン」、「1,1,2,2-テトラクロロエタン」、「テトラクロロエチレン」、「トリクロロエチレン」、「メチルイソブチルケトン」です。この10物質に、さらに「エチルベンゼン」、「1.2-ジクロロプロパン」を加えた12物質が、特別有機溶剤となっています。

特定化学物質障害予防規則第3章「用後処理関係」第10条~第11条で規定されている個々の物質の具体的な排ガス処理方式、ならびに排液処理方式を、法令集や参考書で確認しておくことをお勧めします。

7.酸素欠乏症等防止規則
酸素欠乏危険場所は、様々な問題で取り上げられます。代表的な「酸系欠乏危険場所(安衛令別表第6)」は、法令集や参考書で確認しておきましょう。

8.粉じん障害防止規則0アーク溶接、研磨、粉状の原料の袋詰めなど、代表的な「粉じん(粉じん則別表第1)を確認しておいてください。特定粉じん)ん則別表第2)については、「平成31年4月公表分の問61の解説を参照してください。

II.労働衛生(有害業務)
1.衛生管理体制(有害業務)
化学物質のリスクアセスメントの問題が多く出題されています。参考書で取り組みの全体像に目を通しておくことをお勧めします。

2.有害な化学物質
テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなど、名称に「クロロ」、あるいは「クロル」といった言葉が入っている物質には、塩素が入っています。このような塩素を含んだ有機溶剤などは、特に肝臓に影響を与えることを確認しておいてください。また、塩素を含んだ有機溶剤は、常温では引火しないことを確認しておいてください。

3.熱中症
熱中症予防対策の通達(平成21年6月19日基発第0619001号)では、熱中症をⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と分類しています。「熱失神」、「熱射病」などが、それぞれ何度に該当するのか確認しておいてください。

Ⅲ.関係法令(有害業務以外)
1.事業者の責務
労働安全衛生法第3条(事業者の責務)に目を通しておきましょう。

2.安全衛生管理体制
衛生管理者免許を受けた者以外で、衛生管理者として選任することができる者は、「医師」、「歯科医師」、「労働衛生コンサルタント」であることを確認しておいてください。

総括安全衛生管理者を選任すべき事業場を規定している安衛令第2条に関して、様々な物を取り扱っているスーパーマーケットは「各種商品小売業」に含まれますが、食品のみを取り扱っているスーパーマーケットは、「その他の業種」に含まれることを確認しておいてください。

3.安全衛生教育
「旅館業」、「各種商品小売業」(様々な物を取り扱っているスーパーマーケットは含まれる)、また「ゴルフ場業」は、雇い入れ時教育の一部の科目が省略できる業種には含まれていないことを確認しておきましょう。(安衛則第35条、安衛令第2条)

反対に、雇い入れ時教育の一部の科目が省略できる代表的な業種として、「金融業」、「警備業」を押さえておいてください。

4.健康診断等

一般健康診断(雇い入れ健診、定期健診、海外派遣労働者健診)の省略規定を、よく頭で整理しておくことをお勧めします。

平成27年12月から一定の事業者にストレスチェックの実施が義務付けられました。「平成29年10月公表分の問24」(410ページ)の解説をベースに、全体像に目を通しておくことをお勧めします。

5.女性及び年少者
産婦の定義(産後1年を経過しない女性)を確認しておきましょう。

IV.労働衛生(有害業務以外)
1.腰痛予防対策
「職場における腰痛予防対策の推進について(平成25年60618第1号)」で公表されている「職場における腰痛予防対策指針」に目を通しておいてください。「平成31年4月公表分の問28」(148ページ)の解説も参考にしてください。

2.受動喫煙防止対策
令和元年7月1日に、「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン(基発0701第1号)」が発出されています。このガイドラインは、平成30年7月に成立・公布された健康増進法の一部を改正する法律が順次施行されていることにともない、労働安全衛生法第68条の2に沿って事業者が実施すべき事項と、前記した健康増進法で義務づけている事項を一体的に示すことを目的としています。

例えば、喫煙専用室の設置にあたって求められている技術的な基準は、健康増進法の基準と同じであるといったことです。特に、ガイドラインの別紙1「健康増進法における技術的基準等の概要」と別紙2「技術的基準を満たすための効果的な手法等の例」には、目を通しておくことをお勧めします。

喫煙専用室の、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準
(1)出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2m/s以上であること。
(2)たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること。
(3)たばこの煙が屋外又は外部の場所に排気されていること。

3.情報機器作業における労働衛生管理
令和元年7月12日に「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(基発0712第3号)」が発出されています。「平成31年4月公表分の問29」(150ページ)の解説を参考にしてください。

4.健康管理
感染症の特徴、特に「日和見感染」、「不顕性感染」、あるいは「飛沫感染」、「空気感染」といった言葉、ならびに具体的な感染症として結核、インフルエンザなどについて書かれている参考書の該当箇所に、ざっと目を通しておいてください。

V.労働生理
1.メタボリックシンドローム
BMIの正常値を確認しておきましょう。いくつを下回るときは、いくつを上回ると肥満なのか、わかるようにしておいてください。

2.神経
参考書で、脳の正中縦断面の図を見ながら、「間脳」、「視床下部」、「研髄」、「小脳」などの位置を確認しておいてください。

田中通洋 (著), 小室文菜 (著)

労働調査会 (2020/2/22)、出典:出版社HP