トレーニング指導者テキスト 実践編 改訂版




執筆者紹介

有賀誠司 東海大学スポーツ医科学研究所教授(1章1節、2章2節、3章1節)
長谷川裕 龍谷大学スポーツサイエンスコース教授(2章1節、4章1節、2節)
菅野昌明 愛知学院大学ラグビー部コンディショニングディレクター(2章3節、3章2節)
山内武 大阪学院大学経済学部教授(2章4節、3章3節)
伊藤良彦 株式会社R&SCOMPANY取締役(2章5節)
有賀雅史 帝京科学大学医療科学部教授(2章6節、3章5節)
藤田和樹 大阪大学全学教育推進機構准教授(2章7節)
福田崇 筑波大学体育系助教(2章8節)
原賢二 久留米大学人間健康学部准教授(2章8節)
朝倉全紀 リクシルディアーズディレクターオブアスレティックパフォーマンス(3章4節)
守田誠 日本スポーツ振興センターハイパフォーマンスサポート事業パフォーマンス分析(柔道)(5章1節)
白井克佳 日本スポーツ振興センタースポーツ開発部課長(5章2節)
(執筆順)

序文

特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会(IATI)は、2007年、国内の実状と将来の展望を踏まえ、日本の現場において本当に役立つ指導者資格を確立することを目指して「JATI認定トレーニング指導者」の認定事業を開始した。現在、トレーニング指導に関わる数多くの方々がこの資格を取得しており、国内におけるトレーニング指導者資格のスタンダードとして位置づけられるようになってきている。

JATI認定トレーニング指導者とは、「対象や目的に応じた科学的根拠に基づく適切な身体運動のプログラムを作成し、これを効果的に指導・運営するための知識と技能を有する専門家」と定義される。本書は、この資格を取得するために必要とされる知識と技能を習得するための養成講習会のカリキュラムに基づき、その教本として制作されたものである。

本書は、上述した養成講習会の一般科目の内容に相当する「理論編」と、専門科目の内容に相当する「実践編」の2冊1組で構成されている。理論編は、トレーニング指導者が科学的根拠に基づいて活動するためのバックグラウンドとなる必須事項を精選し、現場的な視点で解説されている。また、実践編については、現場におけるトレーニング指導の実務をふまえ、トレーニング指導者の役割と具体的業務、トレーニングプログラムの作成法、各種トレーニングの実技と指導法、測定・評価、トレーニングの運営、情報収集等に関する内容が網羅されている。

本書が、トレーニング指導者を目指す人はもとより、すでにトレーニング指導者として活動している人、競技スポーツのコーチや選手、フィットネス分野の指導者、学校の教員の方々などに存分に活用されることを願っている。

改訂版の刊行にあたって、幸いにも本書の初版は、刊行以降6年間にわたり、JATI認定トレーニング指導者の取得を目指す方をはじめ、多くの皆様にお役立ていただいた。今回の2冊の改訂版では、スポーツ科学やトレーニングの実践に関わる最新情報を反映させたほか、理論編7章1節の「救急処置法」については、最新のガイドラインに基づく改訂を行った。

最後に、執筆の労を賜った著者の皆様、写真撮影や資料提供にご協力いただいた方々、そして、出版に際して多大なご高配をいただいた大修館書店に心より感謝の意を表したい。

2014年2月
特定非営利活動法人
日本トレーニング指導者協会

日本トレーニング指導者協会 (著)
出版社: 大修館書店; 改訂版 (2014/3/5)、出典:出版社HP

特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会(JATI)について

2006年設立。競技スポーツとフィットネスの分野で活動するトレーニング指導者や、これを目指す人を主な対象として、トレーニング指導者の社会的地位の向上、知識・技能の向上、交流の促進、相互扶助などを目的に、トレーニング指導者の資格認定、教育・交流、調査・研究、雇用促進などの各種事業を展開しています。

事務局〒106-0041
東京都港区麻布台3-5-5-907
TEL:03-6277-7712
FAX:03-6277-7713
e-mail:info@jati.jp
オフィシャルサイトhttp://www.jati.jp/

JATI設定トレーニング指導者について

一般人からトップアスリートまで、あらゆる対象や目的に応じて、科学的根拠に基づく適切な運動プログラムの作成と指導ができる専門家であることを証明する資格です。

1資格の種類

1)トレーニング指導者(JATI-ATI:AccreditedTrainingInstructor)
対象や目的に応じて、科学的根拠に基づく適切な運動プログラムを作成・指導するために必要な知識を習得したと認められた方に授与されます。スポーツ選手や一般人を対象としたトレーニング一指導の専門家として活動するための基礎資格として位置づけられます。

2)上級トレーニング指導者(JATI-AATI:AdvancedAccreditedTrainingInstructor)
対象や目的に応じて、科学的根拠に基づく適切な運動プログラムを作成・指導するために必要とされる高度な知識を有するとともに、実技のデモンストレーション技能や指導技能を十分に習得したと認められた方に授与されます。トレーニング指導の専門家として高いレベルの知識と技能を有し、後進への指導を行う能力も有することを証明する上級資格として位置づけられます。ハイレベルなアスリートを対象としたトレーニング指導者、大学や専門学校などにてトレーニング指導者の教育・養成に携わる方、フィットネスクラブのチーフインストラクターなどに推奨されます。

3)特別上級トレーニング指導者(JATI-SATISeniorAccreditedTrainingInstructor)
トレーニング指導者として必要とされるきわめて高度な知識及び技能を有するとともに、長期にわたる実務経験と優れた指導実績を保持していることを認められた方に授与されます。国内を代表するトレーニング指導者として、業界の社会的地位向上を担う最上級資格として位置づけられます。国際レベルのトップアスリートを指導するトレーニング指導者、大学や専門学校などにおけるトレーニング指導者の教育,養成統括担当者、フィットネスクラブにおけるインストラクターの教育研修担当者などに推奨されます。

2資格の対象

1)競技スポーツ分野において、選手の体力強化や傷害予防を目的としたトレーニング指導を行う専門家
例)トレーニングコーチ、ストレングスコーチ、コンディショニングコーチ、スポーツコーチ、地域スポーツ指導者、教員、アスレティックトレーナーなど

2)一般人を対象としたトレーニング指導の専門家
例)フィットネスクラブのインストラクター、一般人を対象とした運動指導者、パーソナルトレーナーなど

3「トレーニング指導者」資格の取得方法
(内容が変更になる場合がありますので、詳細については最新の要項をご参照ください)

1)申請条件
1本協会個人正会員であること
2指定する学歴または指導歴を有していること
・大学・短大・専門学校卒業または卒業見込み
・高等学校卒業後3年以上の運動指導に従事した方など
3免除制度
・健康運動指導士、スポーツプログラマー、NSCA-CSCS、NSCA-CPTなどを現在保持または、過去に取得した経歴がある方には、養成講習会の免除制度があります。
※資格の種類などによって免除内容が異なります。
・本協会が認定する「養成校」及び「養成機関」において、所定の単位を取得した方は、養成講習会が免除され、認定試験を受験することができます。

2)養成講習会の受講
認定試験の受験に当たって、所定の講習会を受講することが必要です。
1一般科目体力学総論、機能解剖、バイオメカニクス、運動生理学、運動と栄養、運動と心理、運動と医学、運動指導の科学
2専門科目トレーニング指導者論、各種トレーニング法の理論とプログラム、各種トレーニング法の実際、トレーニング効果の測定と評価、トレーニングの運営と情報活用

3)認定試験の受験
以下の2科目の筆記試験を受験し、合格した方に認定資格が授与されます。試験は、4つの選択肢から正解を選ぶマークシート方式になっています。
1一般科目:90問(90分)
2専門科目:90問(90分)

4上位資格の取得方法

1)上級トレーニング指導者
1申請条件
有効な「トレーニング指導者」であり、取得後3年以上の実務経験があること。また、CPR・AEDに関する講習会を修了している方が対象となります。
2認定方法
「実技のデモンストレーション技能」「トレーニングの指導技能」「トレーニングプログラム作成技能」等に関する実技試験と筆記試験に合格した方に認定資格が授与されます。

2)特別上級トレーニング指導者
1申請条件
有効な「上級トレーニング指導者」であり、取得後5年以上の実務経験があること。また、35歳以上で、10年以上の指導歴または教育歴がある方が対象となります。
2認定方法
指導実績と小論文の審査により、認定資格が授与されます。

日本トレーニング指導者協会 (著)
出版社: 大修館書店; 改訂版 (2014/3/5)、出典:出版社HP

目次

執筆者紹介
序文
特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会(JATI)について
JATI認定トレーニング指導者について

1章 トレーニング指導者論

1節トレーニング指導者の役割
1.トレーニング指導者とは
2.国内のトレーニング指導者に対するニーズ
3.トレーニング指導者の役割と業務
4.競技スポーツ分野における状況に応じた活動
5.トレーニング指導者の資質
6.トレーニング指導者が身につけるべき能力
7.トレーニング指導者の行動と倫理

2章 各種トレーニング法の理論とプログラム

1節トレーニング計画の立案(総論)
1.トレーニングとは
2.トレーニングの原理と原則
3.トレーニング計画の立案
4.ピリオダイゼーション

2節筋力トレーニングのプログラム作成
1.筋力トレーニングの効果
2.筋力トレーニングのプログラムの条件設定

3節パワー向上トレーニングの理論とプログラム作成
1.パワーの基本概念
2.スポーツや日常生活動作におけるパワー
3.短時間に大きな力を発揮する能力
4.パワーに類似する用語
5.パワー発揮様式の分類
6.パワーの測定と評価
7.パワー向上トレーニングのプログラム戦略
8.トレーニングプログラム変数
9.反動動作における生理学的基礎
10.プライオメトリクスのプログラム変数
11.パワー向上トレーニングの長期的な計画
12.フィットネス分野におけるパワートレーニング

4節持久力向上トレーニングの理論とプログラム作成
1.持久力に関する基礎理論
2.有酸素性持久力向上トレーニングに対する基本的な適応
3.無酸素性持久力向上トレーニングに対する基本的な適応
4.持久力向上トレーニングのプログラム作成の基本
5.持久力向上トレーニングのプログラム作成の実際

5節スピード向上トレーニングの理論とプログラム作成
1.スピード、アジリティ
2.スピードを向上させる要因
3.基礎筋力、最大筋力、パワーの向上
4.コアの重要性
5.スピードにおける動作テクニックの獲得
6.アジリティの強化
7.オープンスキルアジリティの強化
8.スピード、アジリティトレーニングのプログラムデザイン
9.トレーニング変数
10.まとめ

6節柔軟性向上トレーニング及びウォームアップとクールダウンの理論とプログラム
1.柔軟性向上のトレーニング
2.ストレッチング
3.ウォームアップとクールダウン

7節特別な対象のためのトレーニングプログラム
1.メタボリックシンドロームに対するトレーニングプログラム
2.高齢者に対するトレーニングプログラム
3.妊婦に対するトレーニングプログラム
4.子どもに対するトレーニングプログラム

8節傷害の受傷から復帰までのトレーニングとプログラム作成
1.アスレティックリハビリテーション概論
2.アスリハにおける評価の流れ
3.アスリハのプログラム作成の実際

3章 各種トレーニング法の実際

1節筋力トレーニングの実際-
1.筋力トレーニングの実施に当たって
2.筋力トレーニングの代表的エクササイズ(30種目)の実技と指導

2節パワー向上トレーニングの実際
1.クイックリフト
2.ジャンプ系エクササイズ
3.プライオメトリクス
4.フィットネス分野でのパワートレーニング

3節持久力向上トレーニングの実際-
1.持久力向上トレーニングを安全に実施するガイドライン
2.持久力を向上させる代表的トレーニング手段
3.持久力を向上させる代表的トレーニング方法
4.持久力に関連するトレーニング及び環境

4節スピード向上トレーニングの実際
1.スピードの概念
2.スピード向上トレーニングの基本動作
3.スピード向上トレーニングのエクササイズ
4.ドリルの運用とまとめ

5節柔軟性向上トレーニング及びウォームアップの実際
1.スタティックストレッチング
2.パートナーストレッチング
3.ダイナミックストレッチング
4.器具を使用したストレッチング
5.ウォームアップ!

4章 トレーニング効果の測定と評価

1節トレーニング効果の測定と評価の実際
1.トレーニング指導における測定と評価の意義と目的
2.測定の一般的留意点3.測定と評価の実際

2節測定データの活用とフィードバックの実際
1.測定データを活用するための準備
2.データの特徴を把握するための記述統計
3.ランキングや得点化による評価法
4.データ間の関係を把握するための相関分析と回帰分析
5.統計的仮説検定の基礎
6.トレーニング指導における測定データのフィードバック

5章 トレーニングの運営と情報活用

1節トレーニングの運営
1.トレーニング機器・器具
2.トレーニング環境
3.リスクマネジメント

2節運動指導のための情報収集と活用
1.情報とは
2.情報の活用
3.情報の取り扱い

索引
付録:JATIトレーニング指導者の行動規範

日本トレーニング指導者協会 (著)
出版社: 大修館書店; 改訂版 (2014/3/5)、出典:出版社HP