ウイスキー完全バイブル




はじめに

ウイスキーはいま新しい時代に入っている。それは「マッサン」ブームに沸いた日本だけの一話ではない。

新興国を中心にウイスキー需要が急増し、スコッチウイスキーは歴史始まって以来の活況を呈しているし、バーボンウイスキーは二ューヨークを中心に、クールな飲み物として再び注目を集めている。スコッのお隣のアイリッシュは、やはりアメ中心にこのところ毎年2桁増を続けており、世界5大ウイスキーのなかで最も成長率が著しい酒となっている。

ウイスキーが劇的な変化を遂げるきっかけとなったのは、1980年代後半に登場したシングルモルトだった。それまでのウイスキーの歴史は、9世紀後半に誕生したスコッチのブレンデッドの歴史だったと言っても過言ではない。竹鶴政孝によってもたらされた日本のウイスキーも、スコッチに倣ったブレンデッドウイスキーである。

しかしシングルモルトの登場によってその世界は大きく変わった。1990年代後半からミレニアムにかけ、世界中にシングルモルト愛好家が増え、ネットやSNSの普及によって一気に、ウイスキー熱、は加速した。飲んで酔うためや、ブランドステータスによって選ばれていた酒から、飲んで楽しむ酒、歴史や文化を楽しむ酒へと変化した。

実際、ウイスキーほど知る楽しみを与えてくれる酒はないと思っている。世界5大ウイスキーとは何なのか、それぞれどんな造り方をしているのか。原料穀物、水、ピート、酵母、知れば知るほどおもしろく、そして製麦、糖化、発酵、蒸留、熟成という製造工程を知ればウイスキーのアロマ、フレーバーへの理解が深まる。

ウイスキーほど複雑な工程を経て造られる酒はなく、香味は多彩である。漠然と飲むのではなく、ぜひ喇き酒にもチャレンジしてみてほしい。多彩な香りや、ひとつとして同じものがない、そのフレーバーに驚くだろう。

ウイスキーは、その国の文化や歴史とも密接に絡み合っている。日本に初めてウイスキーを紹介したのは、あのペリーだったことや、アメリ力のジョージ・ワシントンがウイスキーを造っていたこと。スコッチには生涯に2万8899匹のネズミを捕らえた、ギネスブックにも載るネコがいたことなど、歴史や文化、ちょっとしたエピソードを知れば知るほど、ウイスキーへの愛着が増すだろう。

この本は、そうしたウイスキーの造り、それが造られる国や地域の文化や歴史、そして最新の情報まで、ウイスキーにまつわるすべての事柄を豊富なイラストや写真によって、余すところなく伝えた本である。

もちろん、私1人の力でこの本ができたのではない。今回もアーク・コミュ二ケーションズの石川瑞子氏はじめ、谷岡幸恵氏らに大変お世話になった。ぜひ旨いウイスキーで乾杯し、労をねぎらいたいと思っている。

監修者 土屋守

土屋 守 (監修)
出版社: ナツメ社 (2015/11/10)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第1章 進化し続けるウイスキー
Topic1世界中で伸びるウイスキー消費量
Topic2世界に認められたジャパニーズウイスキー
Topic3シングルモルトがウイスキー史を変えた…
Topic4ウイスキー愛好家が大注目「NAS」
Topic5新たな歴史を踏み出したアイリッシュウイスキー・
Topic6ニューワールドウイスキーの台頭
Topic7アメリカンの新潮流クラフトディスティラリー

第2章 世界の5大ウイスキー
ウイスキーとは何か
ウイスキーの定義
ウイスキーを知る5つのキーワード
ウイスキーの主な種類
ラベルからウイスキーを知る
世界の5大ウイスキーMAP

Section1 ジャパニーズウイスキー
ジャパニーズウイスキーの主な製品の種類
日本の主なメーカーと蒸留所
サントリー
山崎蒸溜所
白州蒸溜所
鳥井信治郎
ニッカウヰスキー
余市蒸溜所
宮城峡蒸溜所
竹鶴政孝
キリンビール
富士御殿場蒸溜所
ベンチャーウイスキー
秩父蒸溜所
本坊酒造
信州マルス蒸留所
江井ヶ嶋酒造」
ホワイトオーク蒸留所
このジャパニーズから飲む!
初・中・上級別おすすめ銘柄

Section2 スコッチウイスキー
スコッチウイスキーの主な製品の種類
スコッチ6大産地
スペイサイド
アイラー
ハイランド
アイランズ
キャンベルタウン
ローランド
このスコッチモルトから飲む!ー初・中・上級別おすすめ銘柄
このスコッチブレンデッドから飲む!初・中・上級別おすすめ銘柄

Section3 アイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーの造りと種類
アイリッシュの主な蒸留所MAP
このアイリッシュから飲む!―初・中・上級別おすすめ銘柄-

Section4 アメリカンウイスキー
アメリカンウイスキーの主な種類
アメリカンの主な蒸留所MAP
バーボンの特徴
このアメリカンから飲む!―初・中・上級別おすすめ銘柄–

Section5 カナディアンウイスキー
カナディアンウイスキーの主な種類
カナディアンの主な蒸留所MAP

第3章 世界のウイスキー図鑑
ウイスキー図鑑の見方

ジャパニーズウイスキー
山崎
白州
余市
宮城峡
竹鶴
イチローズモルト
富士山麓
駒ヶ岳
あかし
ジャパニーズウイスキーカタログ

スコッチウイスキー「シングルモルト」
マッカラン(スペイサイド)
グレンフィディック(スペイサイド)
ザ・グレンリベット(スペイサイド)
ボウモア(アイラ)
アードベッグ(アイラ)
ラフロイグ(アイラ)
ラガヴーリン(アイラ)
ブルックラディ(アイラ)
グレンモーレンジィ(ハイランド)
クライヌリッシュ(ハイランド)
ダルモア(ハイランド)
タリスカー(アイランズ)
ハイランドパーク(アイランズ)
スプリングバンク(キャンベルタウン)
オーヘントッシャン(ローランド)
スコッチウイスキーカタログ「シングルモルト」

スコッチウイスキー「ブレンデッド」
ジョニーウォーカー
シーバスリーガル
カティサーク
オールドパー
スコッチウイスキーカタログ「ブレンデッド」

アイリッシュウイスキー
ブッシュミルズ
カネマラ
ジェムソン
タラモアデュー
アイリッシュウイスキーカタログ

アメリカンウイスキー
ワイルドターキー
フォアローゼズ
ジムビーム
ノブクリーク
メーカーズマーク
バッファロートレース
ブラントン
ウッドフォードリザーブ
I.W.ハーバー
ジャックダニエル
バラエティ豊かなアメリカンウイスキー
注目のクラフトディスティラリー
アメリカンウイスキーカタログ

カナディアンウイスキー
カナディアンクラブ
クラウン・ローヤル
カナディアンウイスキーカタログ

Column 蒸留所見学に行こう!

第4章 ウイスキーの基礎知識

Section1 ウイスキーの歴史
Chap.1 ウイスキーの始まり物語
Chap.2 密造時代が生んだ奇跡の琥珀色
Chap.3 スコッチが世界に広まった理由
Chap.4 ウイスキー戦争と禁酒法
Chap.5 ジャパニーズウイスキーの黎明
ウイスキー史年表

Section2 ウイスキーの造り方
ウイスキーの原料
ウイスキー造りの流れ

Stepl 製麦 ~モルティング~
モルティングの流れ
「ピート」について
Step2 糖化 ~マッシング~
マッシングの流れ
Step3 発酵 ~ファーメンテーション~
発酵の流れ
Step4 蒸留 ~ディスティレーション~
蒸留の種類と仕組み
ポットスチルの形状と酒質の関係
個性あふれる蒸留所のポットスチル
Step5 熟成 ~マチュレーション~
樽熟成中に影響を与える要素
樽の種類について
熟成庫での樽の積み方について
Steps6 ヴァッティングとブレンディング
ヴァッティングとブレンディングの違い
マリッジとダブルマリッジについて
Step7 瓶詰め ~ボトリング~
瓶詰めまでの流れ
バーボン製造のポイント
ボトラーズブランドとは?

Column監修者・土屋守が出合った心に残るウイスキー10本

ウイスキー用語集
ウイスキーINDEX
問い合わせ先一覧/取材、写真協力/参考文献

土屋 守 (監修)
出版社: ナツメ社 (2015/11/10)、出典:出版社HP