調理師試験問題と解答〈2019年版〉




序文

日本栄養士会は調理師各位の資質の向上を願い、調理師試験受験のための教本として『調理師読本』を刊行し、広く皆さんのご愛読を得て参りました。また、昭和38年以来、毎年「調理師試験問題と解答』を刊行し、全国の受験者の皆さんの便を図ってきたところであります。

幸い調理師試験の出題関係者をはじめ、全国の受験者の皆さんからたいへん好評を得て参りました。皆さんのご要望にこたえて、毎年最新の問題と入れ替えるなど、改訂を行い内容の充実を図っています。

本書の特色は、

1. 最近実施された全国の都道府県、調理技術技能センター及び関西広域連合の出題を各試験科目別に区分し、さらに出題を内容別に分類して出題の傾向を知るための便に供しました。
2. 解答及び解説についてはそれぞれの出題脇に、また関連した参考事項、注意事項を該当ページに枠記事として掲載し、受験者の勉強の一助としました。
3. それぞれの問題には出題された都道府県名を示しました。

受験者の皆さんが本書を十分活用され、見事合格されますよう願ってやみません。

2019年2月
公益社団法人 日本栄養士会
会長 中村丁次

日本栄養士会 (編集)
出版社: 第一出版; 27版 (2019/3/28)、出典:出版社HP

目次

序文

本書の使い方

調理師試験受験の手引き
1 公衆衛生学
2 食品学
3 栄養学
4 食品衛生学
5 調理理論
6 食文化概論

本書の使い方

●平成30年度までに行われた都道府県、調理技術技能センターおよび関西広域連合の調理師試験問題を抜粋し、掲載している。
●問題、解答・解説を並列し、見やすくかつ学習しやすく配置した。

*センターは、「公益社団法人調理技術技能センター」を表し、下記の都県での出題を指す。
平成30年度=青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・新潟県・富山県・石川県・岐阜県・愛知県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・香川県・高知県・福岡県・大分県・宮崎県
平成29年度=青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・茨城県・埼玉県・東京都・富山県・石川県・岐阜県・鳥取県・岡山県・香川県・高知県・福岡県・大分県・宮崎県
平成28年度=青森県・宮城県・秋田県・山形県・茨城県・埼玉県・東京都・富山県・石川県・岐阜県・鳥取県・岡山県・香川県・高知県・福岡県・大分県
「公益社団法人調理技術技能センター」は、これらの都県が調理師試験を委任ししている厚生労働大臣の指定試験機関。

(関西)は、「関西広域連合」を表し、下記の2府4県での出題を指す。
滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、徳島県

調理師試験受験の手引き

調理師とは
調理師とは、調理師法において調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者である。平成29年度の免許交付期32,477人に及んでいる。

調理師免許の取得方法
調理師の免許資格を取得するには次の2つの方法がある(調理師法第3条)。
①調理師養成施設を修了する方法
中学校卒業以上の資格を有する者で都道府県知事指定の調理師養成施設において1年以上、調理、栄養及び衛生について調理師として必要な知識及び技能を修得した場合。平成29年度は13,789人が取得した。
②調理師試験に合格する方法
中学校卒業以上の資格を有する者が、多数人に対して飲食物を調理して供与する施設または営業(下記の①~④の勤務場所)で、2年以上の調理業務に従事した後、都道府県が実施する調理師試験に合格した場合。平成29年度は18,686人が取得した。

調理師試験受験資格
調理師試験により調理師の資格を取得したい者は、以下に示す給食施設または営業において2年以上調理業務に従事した経験(実務経験)が必要である。

実務経験場所
①寄宿舎、学校、病院、事業所、福祉施設(老人、児童、社会)、きょう正施設、自衛隊、給食センターなどの給食施設(継続して1回20食以上または1日50食以上調理している施設)
②飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、バー、キャバレーなど客に飲食させる営業)
③魚介類販売業(調理工程のある店舗を設け鮮魚介類を販売する営業をいう)
④そうざい製造業(通常副食物として供されるそうざいを製造する営業をいう)

なお、以下の場合は調理業務に従事していたとは認められない。
●飲食店、魚介類販売業、そうざい製造業で、調理の仕事をしていても無許可営業であった場合。営業禁止または停止された期間も含まれない。
●給食施設、飲食店、魚介類販売業及びそうざい製造業で仕事をしていても、もっぱら事務や運搬、配達、食器洗浄、管理経営など直接調理と関係ない業務、あるいは保育士、栄養士などが、付随的な調理業務をしていた場合。
●料理学校や教育機関等で調理を教えていた期間、または習っていた期間。
●パートやアルバイトについては、週4日以上かつ1日6時間以上継続して勤務している場合を除き、調理業務に従事しているものとは認められない。
なお、都道府県によって、条件の異なる場合があるので、必ず問い合わせをするか、またはホームページ等で確認すること。

受験の手続き
調理師試験を受けようとする者は、まず保健所、県庁などで調理師試験のお知らせや受験願書、その他提出書類の用紙を受け取り、それらに記入して都道府県の窓口に提出する。
なお、調理師試験は都道府県において実施するが、都道府県によっては調理師試験を団体((公社)調理技術技能センターや関西広域連合]へ委託しているので、その場合は、団体に問い合わせた上で、受験の手続きをとること。

提出書類
①調理師試験受験申請書
②受験票及び写真(6カ月以内に撮影の上半身、脱帽名刺型1枚)
③受験手数料〔6,300円(東京都・平成30年度の場合)〕納付後の領収証書
④最終学校の卒業証明書(卒業証書は不可)
⑤調理業務従事証明書(2年以上調理の業務に従事したことの証明書)
<次頁 別紙様式(例)参照。この証明書は(公社)調理技術技能センターの例。都道府県ごとに違うので注意すること。〉
⑥戸籍抄本等(該当者のみ。結婚等によりの卒業証明書と氏名が異なる場合や外国
籍の方等)
なお、都道府県によって、受験票、送付用封筒など提出書類の種類及び様式が若干異なるので、必ず問い合わせをするか、またはホームページ等で確認すること。

試験科目
①試験科目とその出題範囲
試験科目と出題範囲は、平成26年に示された厚生労働省健康局長通知で次のように定められている。
①公衆衛生学・公衆衛生の概念、健康の概念、健康と疾病に関する統計、環境と健康、食生活の現状と健康づくり対策、主な疾患の現状と予防対策、保健・医療・福祉の
制度の概要、健康増進や食生活の向上に関する法規、調理師の業務と社会的役割
②食品学:食品の意義と用途、食品の特徴と性質、食品の加工・貯蔵、食品の表示、食品の流通

③栄養学:栄養と健康、栄養素の機能、栄養生理、ライフステージと栄養、病態と栄食
④食品衛生学:食品の安全と衛生、食品の腐敗、食中毒、食品による感染症・食品と寄生虫、食品中の汚染物質、食品添加物、飲食による危害の防止と衛生管理、洗浄と消毒方法、器具・容器包装の衛生、食品の安全・衛生に関する法規、食品の安全・衛生対策
⑤調理理論:調理の意義と目的、調理の種類と特徴、調理操作、調理器具、調理施
設・設備、調理に使う食材の特徴、献立作成、調理技術、集団調理、調理施設の洗浄・消毒・清掃、接客サービス・食事環境
⑥食文化概論:食文化の成り立ち、日本の食文化と料理、伝統料理・郷土料理、世界の食文化と料理、食料生産

②出題数及び配点
調理師試験基準は、平成9年の厚生省告示で示されており、その一部が平成26年3月31日に改正され、平成28年4月1日から適用されている。
調理師試験の問題数は60問以上とし、120分以上で解答することにより行われる。なお、試験科目とその出題割合は下図のとおりである。
公衆衛生学、栄養学、食品衛生学、調理理論のウエイトが大きい。したがって、これらの科目は出題数もおおむね多いと考えてよい。

③出題の形式
出題形式は客観式(四肢択一)とすることとなっている。四肢択一とは1つの設問に対して4つの選択肢を作り、適当と考えられる答えが1つのみある出題形式である。もなお、問題作成に当たっては次の点に留意することとされている。
①各問は試験科目ごとに出題範囲の中から出題するようにし、偏りのないようにすること。
②用語は普遍的なもの、または学術的に決定されているものを用い、一部のものにしか理解されない用語や、誤解を招くような文章、表現は避けるようにすること。

合格のレベル
①合格のおよその基準得点
平成26年の厚生労働省健康局長通知では、原則として全科目の合計得点が満点の6割以上であるものを合格とすること、1科目でも得点が当該科目の平均点を著しく下回る場合は不合格とすることが基準として示されている。
②合格率合格率は、各都道府県によって異なるが、受験者の約6割が合格している。

調理師試験に合格したとき
①免許の申請
調理師試験に合格したときは、住所地の都道府県知事に対して免許申請することになる(施行令第1条)。試験に合格して免許資格はあっても免許申請手続きをしなければ都道府県に備える調理師名簿に登録されないので、調理師とはいえない。
免許申請に必要な書類は、
①調理師免許申請書(後掲の調理師免許申請書(例)参照。都道府県によって様式
が一部違うので注意すること)
②免許資格を証する書類(試験合格者の場合は調理師試験合格証書(原本))
③日本国籍の方は本籍表示のある住民票または戸籍抄本もしくは謄本、外国籍の方は国籍等表示のある住民票(6カ月以内に発行されたもの)
④医師の診断書(麻薬、あへん、大麻または覚せい剤の中毒者であるかないかの診断書で、3カ月以内のもの)以上の書類に免許手数料15,600円(東京都・平成30年度の場合)]を添えて免許申請をする。

②登録
調理師の免許は、本人の申請により、都道府県に備える調理師名簿に次の事項が登録され、その上で都道府県知事から免許が交付される(調理師法第5条)。
調理師名簿に登録される事項は以下のとおり。(調理師法施行令第10条、施行規則第2条)
①登録番号及び登録年月日
②本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名、生年月日、性別
③免許取得資格の種別
④免許の取消に関する事項
⑤免許証を書換交付し、または再交付した場合には、その旨並びにその理由及び年月日
⑥登録の消除をした場合には、その旨並びにその理由及び年月日

③免許が取得できない場合
調理師試験に合格するなどして調理師の免許を受ける資格があり、免許を申請しても、次の場合は免許が与えられない(調理師法第4条)。
食中毒や衛生上の重大事故などを起こした場合で、一度もらった免許を取り消されたときから1年を経過していないとき
同様に、次の場合は免許を与えないことがある(調理師法第4条の2)。
①麻薬、あへん、大麻または覚せい剤の中毒者
②罰金以上の刑に処せられた者

④免許証の書換交付と再交付
1 本籍・氏名が変わったとき
免許証に記載されている本籍、氏名が変わったときは、免許を与えた都道府県知事へ、申請書に免許証と戸籍抄(謄)本を添えて免許証の書換交付を申請をすることができる(調理師法施行令第13条)。
手数料3,200円(東京都・平成30年度の場合)
なお、住所変更は届出の必要はない。
2 免許証を破ったり、汚したり、失ったときには再交付を申請することができる。この場合には、免証を与えた都道府県知事に対して、申請書に破ったり、汚したり、失った場合の理由、年月日などを記載して申請する。なお、破ったり、汚したりした場合には、古い免許証を添えて申請する。再交付後に失った免許証を発見したときは、5日以内にこれを免許を与えた都道府県知事に返納しなければならない(調理師法施行令第14条)。
手数料3,600円(東京都・平成30年度の場合)。

⑤免許証等の申請手数料
地方自治法第227条に基づく、各都道府県の手数料条例により定められている。

日本栄養士会 (編集)
出版社: 第一出版; 27版 (2019/3/28)、出典:出版社HP