調理師読本〈2019年版〉
序文
昭和25年,京都・兵庫・滋賀の3府県で,栄養行政の一環として相次いで調理師条例が制定されてから,68年経ちました。
日本栄養士会は,各都道府県条例に基づく調理師制度の充実のため,昭和26年7月,初めて『調理師讀本』を刊行して,その円滑な促進に努めました。昭和32年には38都道府県において同条例が制定されています。
昭和33年5月,調理師法の制定公布に伴い,『調理師読本』に改めるとともに,厚生省栄養課(当時)監修の下に法律に準拠して整理するなど内容の大改訂を行い,その後も時代の推移の中で進歩する学術や関係法規の改正をさしかえ,また,栄養・調理関係者の要望に応えながら改訂を重ねて今日に至っています。
調理師法施行後半世紀を越え,調理師業界は大きな発展を遂げてきた中で,食生活の多様化,健康づくり推進の中でますます高い知識や技術が求められています。食生活に携わる者にとっては,食はその国の文化の指標であるとともに,食の安全・健康・味覚は永遠のテーマであり,また,常に取り組むべき重要課題であるといえます。
本書は,調理師の資質の向上を目指して編集されたもので,特に,調理師養成に必要な教科目について,それぞれ専門の諸先生にご尽力いただき分かりやすく解説しています。従来から斬新な本書は高く評価され,養成施設における教本としてはもとより,調理師や調理師を志す者の座右の書として好評を博しています。
今,調理師養成は知識・技術両面にわたり高度化が求められつつある折,ここに2019年版を刊行したので,広く関係者のご活用を願ってやみません。
2019年2月
公益社団法人 日本栄養士会会長 中村 丁次
目次
序文
1 公衆衛生学
1 公衆衛生の概念
1.公衆衛生とは
2.公衆衛生行政の組織(機構)体制
3.公衆衛生行政の活動
4.公衆衛生の国際機関
2 健康の概念
3 健康と疾病に関する統計
4 環境と健康
1.室内の空気環境(生活環境)
2.室内の温度・湿度・気流
3.室内の換気・採光・照明・健康障害物質
4.上下水道
5.廃棄物処理
6.ネズミ,衛生害虫の駆除
7.公害
8.衣服の衛生
9.感染症の発生と予防
5 食生活の現状と健康づくり対策
1.食生活の現状と課題
2.健康づくり対策
3.食育対策
6 主な疾患の現状と予防対策
1.疾病予防と健康管理
2.生活習慣病
7 保健・医療・福祉の制度の概要
1.母子保健
2.学校保健
3.高齢者保健
4.産業保健
5.地域保健
8 健康増進や食生活の向上に関する法規
1.法の種類
2.調理師法
3.食品衛生法
4.健康増進法
5.食育基本法
6.学校給食法
7.感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)
9 調理師の業務と社会的役割
2 食品学
1 食品の意義と用途
1.食品学の意義
2.食品の用途
3.食品の分類
4.食品の成分と栄養価ならびに消化吸収率
5.食品成分表の概
2 食品の特徴と性質
1.日本食品標準成分表2015年版(七訂)の食品群
2.その他の食品
3.食用微生物
3 食品の加工・貯蔵
1.食品の加工
2.食品の貯蔵
4 食品の表示
5 食品の流通
3 栄養学
1 栄養と健康
1.栄養とは
2.人体の構成素
3.健康とは
4.食生活の実践
2 栄養素の機能
3 栄養生理
4 ライフステージと栄養
1.妊娠期・授乳期の栄養
2.乳児期の栄養
3.幼児期の栄養
4.学童期・思春期の栄養
5.成人期の栄養
6.高齢期の栄養
7.日本人の食事摂取基準
8.食品構成
9.栄養指導に用いる食品分類法
10.運動と栄養
11.国民の栄養状態
5 病態と栄養
資料 日本人の食事摂取基準(2015年版)(概要)
4 食品衛生学
1 食品の安全と衛生
2 食品の腐敗
1.腐敗,変敗と変質
2.食品の保存法
3 食中毒
1.食中毒の概要
2.食中毒の発生状況
3.食中毒の種類
3-1 細菌性食中毒
3-2 ウイルス性食中毒
3-3 化学性食中毒
3-4 自然毒(天然に含まれる毒)による食中毒
4.食中毒が起きたときの処理と注意
4 食品による感染症・食品と寄生虫
5 食品中の汚染物質
1.食品汚染物質
2.食品異物
3.食品残留農薬
6 食品添加物
7 飲食による危害の防止と衛生管理
1.飲食による衛生上の危害
2.衛生管理:危害を防止するための衛生管理
3.食品簡易鑑別法
8 洗浄と消毒方法
1.洗浄
2.消毒
9 器具・容器包装の衛生
10 食品の安全・衛生に関する法律
1.食品衛生法
2.食品安全基本法
3.消費者政策関連法規
11 食品の安全・衛生対策
1.調理場の衛生管理
2.食品取り扱い者の衛生管理
資料 大量調理施設衛生管理マニュアル(抜粋)
5 調理理論
1 調理の意義と目的
1.調理の意義
2.調理の目的
3.調理の方法
2 調理の種類と特徴
1.調理の種類
2.様式別調理の特徴
3.行事食,供応食の調理
4.特別食の調理
3 調理操作
1.調理操作の分類
2.手法別調理
4 調理器具
5 調理施設・設備
1.調理室の構造と食品取り扱い設備
2.給排水および汚物処理設備,空調・換気設備
3.調理と熱源
6 調理に使う食材の特徴
1.調理特性
2.調理科学:調理と香り・味・色
3.調理による食品成分の変化
7 献立作成
1.献立の意義,役割
2.食品群別摂取量の基準と食材料費
3.年齢別・性別による献立
4.家庭の献立
5.特別食の献立
6.行事食,供応食の献立
7.献立作成の手順
8 調理技術
1.食品別調理
2.調味料と香辛料の調理特性
9 集団調理
1.給食の献立と食事管理
2.給食の調理
10 調理施設の洗浄・消毒・清掃
1.衛生管理の基本
2.施設設備の洗浄・殺菌・清掃
3.調理台および調理機械の洗浄・消毒
11 接客サービス・食事環境
1.接客サービスの方法
2.食事環境
6 食文化概論
1 食文化の成り立ち
1.食文化の定義
2.食文化の多様性
3.調理の起源と役割
4.食物の組み合わせと評価
5.食文化の伝承と変容
6.食の環境と食文化の未来像
2 日本の食文化と料理
1.日本の食文化の成立と発展
2.近代日本の食文化の形成
3.調理師と食文化
3 伝統料理・郷土料理
1.伝統料理
2.生活のなかのケとハレの食事
3.食習慣の地域差と郷土料理
4 世界の食文化と料理
5 食料生産
索引