国語好きを活かして在宅ワーク・副業を始める 文字起こし&テープ起こし即戦力ドリル




目次

教材ファイルダウンロードのご案内
音が聞こえないときは
本書の内容
自己紹介

文字起こしとは
はじめに
第1章 文字起こしの仕事と働き方

文字起こしの基礎知識
第2章 文字起こしの準備
新聞表記と速記表記のテキスト/必要なもの/文字起こし用の音声再生ソフトExpress Scribe/フットスイッチ/文字起こしの基本的な作業方法/聞き打ち/キーボード、ヘッドホン、スピーカー、音声編集ソフト
第3章 仕様ドリル
要約、逐語起こし、ケバ取り、整文/仕様とは/仕様書の読み解き方/ケバ取り・整語・整文の処理例/言葉の修正ドリル
第4章 表記ドリル
表記の主なルール/漢字・数字・外来語・英字・固有名詞・約物の書き方/表記ドリル/平仮名の表記/?の使い方
第5章 入力ドリル
目標タイム/Wordの書式設定・文字カウント/入力ドリル/Wordの編集記号の表示・字下げ設定・校正機能/日本語変換システム/入力の小ワザ/音声入力
第6章 仕事の流れとネット検索ドリル
仕事の流れ/請求について/正しい聞き取りのために/ネット検索のスキルネット検索ドリル/録音から手掛ける場合

文字起こしドリル
第7章 講演を起こす
単独のトークの種類と特徴/講演起こしドリル/特記事項の連絡方法
第8章 インタビューを起こす
インタビュー系の種類と特徴/インタビュー起こしドリル/インタビュー音声への対処方法/「非常に強い整文」/要約や議事要旨
第9章 会議を起こす
会議の種類と特徴、用語/会議起こしドリル/やじ、笑い声、拍手の処理方法
第10章 動画、聞き取り困難な音声、長い音声
動画起こし/動画の変換/聞き取り困難な音声を起こす/騒音の低減方法方言の処理/長い音声を起こす/資料の参照/出力校正

実務をスタートしよう、そしてさらに学ぼう
在宅ワーク(テレワーク)の知識
Q&A
コーヒーブレーク

本書の内容

本書は、文字起こしの入門書です。文字起こしの副業や在宅ワーク(非雇用型テレワーク)をしてみたい方に役立てていただけます。仕事の探し方なども具体的に紹介しています。また、現在の仕事で文字起こしが必要な方にもアドバイスします。

「はじめに」と第1章で、文字起こしの仕事内容を紹介します。あなたの国語好きという特質がこの仕事で生かせそうか、確認してみてください。文字起こしが社会のどんなところで活用され、誰から仕事が発注されているか、今後も継続的に仕事が発生しそうかなども取り上げます。第2章~第6章では、文字起こしに必要なものを解説し、文字起こしの手順を説明します。表記の知識やタイピングのスキルなどを、音声を起こしながら身に付けていただけるようになっています。第7章~第10章には、よりリアルな音声を収録しています。比較的易しい音声からスタートして、録音状態の悪い音声などにもチャレンジできます。「実務をスタートしよう、そしてさらに学ぼう」では、文字起こしの仕事の探し方や、さらに学ぶ方法について取り上げます。

本書にはダウンロード教材が付属しています。3ページの案内に従って必ず教材をダウンロードし、実際に文字起こしをしながら学習してください。

お問い合わせについて
・パソコンの不調等については、お使いのパソコンメーカーのサポートセンターなどにお問い合わせください。
・ダウンロードした音声が再生できない(パソコンから音が出ないなど)場合は、4ページの解説内容をお試しいただき、それでも音が出ない場合は、お使いのパソコンメーカーのサポートセンターなどにお問い合わせください。
・文字起こしの起こし方は人によって多少異なるのが普通です。自分の起こしたものと本書に掲載した解答例の起こし方が違っていても、「こういう起こし方は違うのか」等の個別のお問い合わせにはお答えしておりません。

自己紹介

あらためまして、こんにちは。廿里美です。文字起こしの仕事をしています。厚生労働省などの事業で、文字起こしの師をした経験もあります。

家で仕事をしたくて、長女出産後の1995年に文字起こしを初体験。そのときは仕事が軌道に乗らなかったのですが、次女出産後の1999年に再チャレンジしました。まず2社に在宅スタッフとして登録しました。次女が保育園に入ってからは、出版社などから直接、仕事を受注するようになりました。

長女の発達障害が小学校時代に判明し、担任との面談など平日の昼間に出かける用事がたくさん発生しました。夫の父ががんになって、大学病院にたびたび付き添ったりもしました。文字起こしは自由な時間にできる仕事で、本当に助かりました。

やがて残念ながら夫の父は亡くなり、一方で長女は自分なりのリズムをつかみ。そんなとき声をかけてもらって、今の会社に就職しました。仕事は相変わらず文字起こしです。起こす音声の内容は1本ずつ違いますから、20年近くこの仕事をしていても、全く飽きていません。

本書は文字起こしの入門書です。でも、堅苦しい概論を書いたつもりはありません。10年間の在宅ワーク+9年目の会社員として私が現場で見聞きしてきたことを、個人的な思いも交えて書いてみました。

文字起こしとは

■はじめに
■第1章文字起こしの仕事と働き方

はじめに

会議やインタビューなどの、人の話が録音された音声を聞いて、話の内容を言葉通りに文字に書く。それが文字起こしの仕事です。

「音声を」「聞いて」「文字に」「書く」

この4つの側面から、「音声起こし」「聞き起こし」「文字起こし」「書き起こし」と呼ばれます。聞き取る媒体は、現在は音声ファイルや動画ファイルですが、以前はカセットテープやビデオテープでした。そのため「テープ起こし」とも呼ばれています。1つの仕事に複数の名前があります。

音声起こし、聞き起こし、文字起こし、書き起こし、テープ起こし

本書ではこれらを代表する名称として「文字起こし」と呼びます。「文字化する」というのが、この仕事の本質だからです。
※「書く」といっても、現在は手書きではなく、パソコンで入力します。

OnePoint
「文字起こしをする人」の呼び方も、今のところさまざまです。
テープライター、リライターや、ちょっと難しい言い方ですが録音反訳者(はんやくしゃ)、単に「文字起こしをしています」「テープ起こしをしています」と名乗る人もいます。英語圏では、トランスクライバーもしくはトランスクリプターと呼ばれるようです。
ピアノを弾く人→ピアニスト、起こしをする人→オコシストという連想で、私はオコシストと名乗っています。

◆なぜ「起こし」と呼ばれるのか
録音された音声には情報がぎっしり詰まっています。しかし、音声が録音されたレコーダーを見つめても、話の内容は何も分かりません。いわばレコーダー内に情報が眠っている状態です。

話の内容を知るには録音された音声を聞いてみるしかありませんが、2時間の音声を聞くには2時間かかります。重要なところに書き込みをしたいと思っても、音声のままでは不可能です。

音声の内容を文字にすることによって、情報が見えやすく、使いやすくなります。それを「眠っているものを起こす」と捉えて、この仕事は「○○起こし」、文字起こしやテープ起こしと呼ばれるわけです。

◆文字起こしは国語の好きな人に向いている
私たちが起こす音声には「言葉」が録音されています。言葉を聞いてその通りに入力します。簡単そうに思えますね。

ところが、やはり向き不向きはあります。文字起こしの仕事には国語好きな人が向いています。

ポイントはあくまで好きかどうかです。「学校時代に国語の成績が良かったというほどではない」という人でも、全く問題ありません。いわゆる理系の進路を歩んできた人でも、国語好きなら大丈夫です。

文字起こしの仕事では、自分の全く知らないジャンルの話題を起こすこともあります。知らない言葉が音声に出てきたときは調査力や推理力が必要なのですが、言葉の調査力や推理力に影響するのが、実は国語力です。

◆学校の国語は話し言葉について教えていない
「国語力が要るなら、国語の成績が良かった人でないと無理なのでは?」そう思われるかもしれません。ところが、学校の国語では、話し言葉についてはさほど教えていません。「結論を先に言う」とか「みんなに聞こえるようにはっきりした声で話す」程度ではないでしょうか。

話し言葉には、書き言葉とは異なる特徴があります。語順や語彙も、書き言葉とは異なります。そもそも話し言葉は本来「聞く」ものですから、文字起こしでは次のように関係がねじれるのです。

普通の関係
「話し言葉を→聞く」
「書き言葉を→読む」

文字起こしは…
「話し言葉を→読む」ために、
読んで内容が分かるものにする

これはほとんど誰でも初めての体験ですから、いわばスタートは横一線。あとは楽しんで取り組めるかどうかです。ですから国語が好きであることが大事なのです。

◆「そんなの全然違う」と言いたいけれど
話し言葉には、話す人の気持ちや、話す人と聞く人との人間関係が投影されます。

例えば誰かの意見を聞いて、内心「そんなの全然違う」と思ったとします。

その意見を表明するのに、文章なら「そうとは断定できない面がある」とでも書くでしょうか。内心の声よりはマイルドです。

では、お偉方が大勢出席している会議で、あなたが一番末席だとしたら何と発言するでしょうか。いっそ黙っていたいけれども、役割上、どうしても否定の発言をしなければならないとしたら。

必ずしもそうとは言い切れない部分が、まあ、もしかしたらのことではありますけれども、あるかもしれないなあと、ちょっと思ったりするわけでありまして・・・・・・。

このぐらいの婉曲表現になるかもしれません。なんと、内心の思い「そんなの全然違う」の9倍もの文字数です。

※文字起こしは一般に横書きします。そのため、本書も横組みにしています。

◆あらたまった話し言葉には多少の婉曲表現が付き物
言い回しを修正せず、完全に発言通りに文字化してほしいと言われた場合は、上記のような文字化でOKですが「極端過ぎる婉曲表現は少し整理してほしい」と指示されたら、どう文字化すればいいでしょうか。

「それは全然違います」は誤りです。発言者は、この会議において断言する意図はありません。むしろ、ぼかす表現を必死に積み重ねたのです。短く端的に表現する場合でも「そうとは言い切れません」が無難でしょう。多少の婉曲表現を残すなら、次のような感じになります。

必ずしもそうとは言い切れない部分があるかもしれません。

◆「登場人物の気持ち」はストライクゾーン内なら大丈夫

学校時代、国語のテストには、小説などを題材にして次のような問題がよく出てきましたね。

このときの主人公の気持ちに近いものを、次の1~4の中から1つ選びなさい。

国語のテストに「登場人物の気持ち」が出題されても、「このときのこの人物はこう思っているはずだ」と、独自な解釈をする自由はあるはずです。特定の1つの選択肢以外は不正解と採点されるのは、本当は理不尽です。

文字起こしも、先ほどの婉曲表現の手直しに見るように、そのときの発言者の立場や気持ちを推測します。しかし、幸いにも文字起こしにおいては、1つの選択肢だけが○であとは全部×という評価ではありません。野球のストライクゾーンのような範囲を想定して、その範囲に収まっていればOKとされます。

◆文字起こしに固定の正解はない
おかげで、逆の厄介事もあります。本書は音声を起こしながら文字起こしを学べるようになっていますが、固定の正解は示せないのです。「正解」を示した章では1字でも異なっていれば×ですが、「起こし例」を掲載した章もあります。起こし例はあくまで一例ですから、あなたの原稿が起こし例と多少異なっていても、ストライクゾーン内に収まっていれば問題ありません。

自分の起こしはストライクゾーンに入っているのか、それともボール球なのか?それはご自身で判断してください。国語好きなあなたのセンスに期待します。何を根拠に判断するべきかは、できるだけお示しするようにします。