改訂新版 気象予報士かんたん合格テキスト<学科専門知識編>




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はじめに

気象予報士試験には、「学科試験・一般知識」「学科試験・専門知識」「実技試験」という三つの科目があります。学科試験の二つのいずれか、または両方に合格した人は、実技試験に合格しなくとも1年間当該学科試験が免除されます。最終的には学科二つと実技試験に合格してはじめて気象予報士となれます。

気象予報士試験は平成25年度第2回試験(2014年1月)までに41回を数えました。試験問題は、予報技術の発展とともに、多少の変化がみられます。また、出題によっても多少の傾向が見られ、近年は暗記で正解を選択することが困難な問題の割合も増え、かつ理解度を問うために問題が工夫されています。
学科試験は15問中11問以上正解すれば、ほぼ合格です。逆にいえば4問ほどミスは許されます。学習は、ほぼ14問は確実に正解することができる分野・内容まで徹底すべきです。100%完全学習をするとなれば、専門知識分野だけでも5冊~10冊のテキストが必要(問題集は別)で、時間的にもコスト的にも非効率です。

業界初著書だけで実力構築が可能なテキストと過去問解説

専門知識における過去問をふり返ると、さまざまな実況資料や制作された図などを用いた問題が比較的見られます。そのときの実況資料を解析させる問題です。このような出題が定着してきている中、200~300ページの1冊のテキストで、専門知識の内容を合格に足りる解説を行うことは難しいものです。

本書では一般的なテキストの2倍以上の十分な紙面で、合格に足りる内容を余すことなく解説していくことができました。専門知識の理解は、その先の実技試験の学習において必須となります。実技試験では専門知識の内容を問う場面があり、落としてはいけない問題です。本書を利用して、本書の内容を実力として定着させ、先々の実技学習へと進んで欲しく思います。

気象予報士試験受験支援会は、福岡を拠点に気象予報士試験受験専門の通学・通信講座の運営をすでに13年間行っています(平成26年現在)。本書では、これまで受講生を学科試験・実技試験に合格させてきたノウハウを可能な限り盛り込んだつもりです。本書を手に専門知識に合格し、気象予報士への一歩を確実に進まれることを期待しております。 平成26年5月 気象予報士 試験受験支援会代表 荒山幸裕

気象予報士試験受験支援会 (著)
技術評論社; 改訂新版 (2014/5/23)、出典:出版社HP

目次

第0章学科専門知識の学習方法
1気象予報士とは(目的と試験を知る)
2試験の科目
3学科試験の科目「予報業務に関する一般知識」
4学科試験の科目「予報業務に関する専門知識」
5実技試験の科目

第1章地上気象観測の知識
1-1地上気象観測
1はじめに
2気温観測の目的
3気温の観測方法と観測機器
4最高気温と最低気温の定義(天気予報の場合)
5地上気温の変化の特徴
6気温の日較差
7近年の温暖化傾向
8摂氏、華氏、絶対温度
1-2風の観測
1風向・風速とは
2風の観測機器
3風速計の設置
4風の観測の時間
5平均風速・最大風速瞬間風速の定義
6飛行場における風観測
7ビューフォート風力階級
8強風・暴風・突風について
1-3降水量の観測
1はじめに
2降水粒子の種類
3降水量と降水強度
4短時間の降水量と災害の目安
5降水量の観測発表時刻と観測対象期間
6転倒升型雨量計
7雨量計(降水計)の設置
8降水量観測誤差の要因
9積雪の観測
1-4相対湿度、露点温度の観測
1大気に含まれる水蒸気量の観測の目的
2相対湿度の観測
3露点温度の観測
4水蒸気圧
5試験でよく使われる近似式
6乾燥空気と湿潤空気の成因
7天気図解析の応用
1-5地上気圧の観測
1気圧とは何か
2地上気圧の観測(単位はhPa)
3トリチェリーの実験
4地上天気図の作成
5気圧の観測機器
6気圧の海面更正
7鉛直p速度(hPa/h)
1-6日照・日射の観測
1直達日射・全天日射
2日照率
3日照計と全天日射計(気象官署での地上観測)
4その他の日照計(アメダス等の自動観測)
5混濁係数
1-7視程の観測
1大気の混濁
2視程の観測
3「霧」と「もや」、「大気現象の煙霧」と「天気の煙霧」について
4スモッグ、光化学スモッグ、PM2.5の基礎知識
1-8雲の観測
110種雲形と雲の性状
2雲の性状と降水の種類
3代表的な雲形の発生しやすい気象状況
4雲量の観測
5雲の観測要素
1-9大気現象の分類と天気の種類
1大気現象の分類
2大気現象の詳しい種類と定義
3天気の種類(15種類)
1-10海上観測
1波波の知識
2波高の発達に関する知識
3高波による災害
1-11アメダス
1アメダスの観測要素と体制
2アメダスのデータ資料
3気象現象の水平スケールの分類
4観測統計・対象時間の表記・雨風の表現方法
5平年値・冬の統計手法・日界
練習問題
解答解説

第2章高層気象観測
2.1ラジオゾンデ観測
1ラジオゾンデ観測と観測網
2ラジオゾンデ観測の詳細
3ラジオゾンデ観測の利用
4ラジオゾンデ観測の短所
5その他の知識
6高層気象観測とエマグラム
7エマグラムから判断できる大気の鉛直安定性
8オゾン観測の知識
練習問題
解答解説

第3章レーダーによる気象観測
3-1気象レーダー観測
1気象レーダー観測の基本原理(雨や雪からの後方散乱を利用)
2気象レーダーの設置
3気象レーダーの観測分解能は高分解能かつ短時間
4エコーの形状と強度の特徴の解析
5気象状況に応じた代表的な降水エコーの特徴
6気象レーダー観測原理
7電波の後方散乱と降水粒子の関係
8気象レーダーの性質と特徴
9気象レーダー観測の注意
10ブライトバンド(融解中の雪片による降水強度の強いエコー域)
11気象レーダー観測の注意点
12X-MP気象レーダー
3-2気象ドップラーレーダー
1気象ドップラーレーダー観測の原理
2動径成分(動径速度)とは
3ドップラーレーダー観測と大気の流れ
4気象ドップラーレーダーの観測の目的
3-3ウィンドプロファイラによる風観測
1ウィンドプロファイラ観測と目的
2観測の時間と高度
3ウィンドプロファイラ観測原理
4ウィンドプロファイラの品質管理
5気象予報士としての観測データの解析方法
6気象予報士試験に問われるウィンドプロファイラ解析事例・
練習問題
解答解説

第4章気象衛星観測
4-1気象衛星画像の知識
1気象衛星観測理論
2静止気象衛星と極軌道衛星
3静止気象衛星(運輸多目的衛星ひまわり6号・7号)の観測目的
4静止気象衛星の観測体制
5静止気象衛星(運輸多目的衛星ひまわり6号・7号)の観測チャンネル
6各画像の知識
7赤外画像の観測原理
8水蒸気画像の観測原理
9その他の知識事項
10気象衛星画像の解析の詳細
11画像解析事例
12知っておくべき画像事例集
練習問題
解答解説

第5章数値予報
5-1数値予報のしくみ
1気象観測の利用
2ルイス・フライ・リチャードソンの夢
3数値予報の流れ(原理のイメージ)
4数値予報のプロセスの学習深度
5客観解析の理解
6パラメタリゼーション
7数値予報計算の基礎方程式
8数値予報は鉛直p速度で鉛直流を表す
5-2数値予報モデルの種類
1代表的な短中期数値予報モデルの種類(2014年4月現在)
2全球モデルの知識
3メソモデルの知識
4格子点関連の知識
5-3数値予報の短所とガイダンス
1数値予報の短所
2予報誤差の種類と要因
3天気予報ガイダンスの種類
練習問題
解答解説

第6章短時間予報・短期予報・中期予報の知識
6-1ナウキャスト
1ナウキャストの種類
2降水ナウキャスト
3ナウキャスト
4竜巻発生確度ナウキャスト
5竜巻注意情報の運用(注意報ではない)
6竜巻の月別発生件数
7竜巻とダウンパーストの被害痕跡の特徴
6-2降水短時間予報(短時間予報)
1降水短時間予報
2降水短時間予報のしくみ
3外挿(補外)予報と数値予報精度と予報比率の重み
6-3短期予報
1短期予報の発表の方法・
2短期予報の予報要素(府県天気予報)
3予報用語の規定
448時間先までの予報精度
6-4降水確率予報
1降水確率予報の定義
2確率予報の解釈事項
6-5天気分布予報・時系列予報
1天気分布予報
2時系列予報
6-6週間予報(中期予報)
1全般週間天気予報
2地方週間天気予報
3府県週間天気予報
練習問題
解答解説

第7章アンサンブル予報
7-1アンサンブル予報
1アンサンブル予報
2単独予報と比べたアンサンブル予報のメリット
3アンサンブル予報のメリットとデメリット
7-2週間アンサンブル予報
1週間アンサンブル予報の仕様
2週間アンサンブル予報の専門語句
3500hPa高度・過度の予想(センタークラスター平均で表示)
4850hPaの相当温位(センタークラスター平均)
5500hPa特定高度線・スプレッド・降水量予想頻度(5種のクラスター平均)
6週間予報支援図の基礎解釈
7アンサンブル予報で多用する平均天気図
8試験で出題される内容
7-3季節予報
1季節予報の種類
2季節予報の予報対象と用いるデータ
7-41か月予報
1専門用語の理解
21か月予報(アンサンブル予報)
31か月予報の発表例
41か月予報ガイダンス
51か月予報の基礎用語
6月平均天気図の解析
7月平均天気図の見方
8北極振動について
9正偏差域と負偏差域とが交互に配列するパターン
10地理的知識の確認
7-53か月予報・暖候期予報・寒候期予報
13か月予報・暖候期予報・寒候期予報
23か月予報・暖候期予報・寒候期予報の利用法……..
練習問題
解答解説

第8章予報精度の評価法
8-1予報精度評価法
1カテゴリー予報の精度評価法
2スレットスコア
3バイアススコア
4注意報・警報予報の予報精度評価
5気温予想誤差の予報精度評価
6降水確率予報と実況での降水有無に関する予報精度評価
7スキルスコア
8持続予報と気候値予報を含めた予報精度の評価
9捕捉率
練習問題
解答解説

第9章台風
9-1台風
1台風という名称の適用
2台風の定義
3暴風域と強風域の定義
4台風の勢力の強さと大きさの表現(定義)
5台風に関する表記
9-2台風進路予想図
1台風進路予想図
2台風進路予想の解釈
3台風進路予想の解釈と防災対策
45日先の台風進路予想
5台風進路予想と台風アンサンブル予報
6台風情報の種類
7台風の暴風域に入る確率地図表示式(確率予報の解釈)
83時間の期間毎に暴風域に入る確率形式(確率予報の解釈)
9台風情報に関する用語の定義事項
9-3台風と気象衛星画像
1気象衛星画像による台風
2気象衛星解析による台風
3台風の一生を気象衛星赤外画像で観察
9.4台風の気象学
1台風の発生
2第2種条件付不安定(シスク)
3台風は衰弱すると温帯低気圧か熱帯低気圧に変わる
4台風の月別発生数と日本本土への上陸数の統計
5台風通過と海面温度の低下
9-5台風と災害
1台風による災害
練習問題
解答解説

第10章さまざまな気象現象
10-1温帯低気圧
1大気の傾圧性と偏西風の蛇行
2傾圧不安定波の発生
3上空の波動と地上の気圧系の関係(発達する場合)
4温帯低気圧の熱の南北輸送の役割(北半球)
5温帯低気圧のライフサイクル
6発達する低気圧と発達しない低気圧
7温帯低気圧の循環と温度場
8温帯低気圧の盛衰と上空のトラフの位置関係
9気象衛星画像で見る温帯低気圧の今後の勢力変化
10温帯低気圧に伴う雲の種類
10-2梅雨
1梅雨と水害
2梅雨という現象
3梅雨のプロセス
4亜熱帯ジェット気流と気圧の尾根の相関…
5梅雨前線の構造と降水の性質
10-3寒冷低気圧
1寒冷低気圧の構造
2寒冷低気圧の事例検証
10-4冬型の気圧配置
1冬型(西高東低型)の気圧配置
2冬型の気圧配置で日本海側に降雪をもたらす理由
3里雪型と山雪型
4冬型の気圧配置における大気の状態曲線
10-5南岸低気圧
1南岸低気圧の進路
2雨と雪の分岐点
3南岸低気圧で降雪時の大気の状態曲線
4雪密度と雪水比
10-6雷と積乱雲の知識
1南岸低気圧の進路
2積乱雲の種類とメカニズム
3テーパリングクラウド
練習問題
解答解説

第11章気象情報と気象災害の知識
11-1気象現象と災害
1災害とは
2現象と災害の関係
3大雨と災害
4短時間強雨(強雨)
5強風や暴風
6大雪
7高波
8高潮
9低温
10雷
11突風
12融雪・雪崩
13霧(濃霧)
14着雪
15着氷

16 霜
17 降雹
11-2警報・注意報の知識
1 警報・注意報の種類
2 警報・注意報の発表の基準
3 大雨時の注意報・警報および土砂災害警戒情報の流れ
4 注意報・警報の発表区域
11-3 特別警報
1 特別警報
2 特別警報の発表基準
3 津波・火山・地震に関する特別警報の発表基準
11-4 さまざまな気象情報
1 土砂災害警戒情報
2 記録的短時間大雨情報
3 異常天候早期警戒情報
4 指定河川洪水情報
5 気象情報
練習問題
解答解説

第12章 専門知識に関する付録
12-1 日本三大局地風の知識
1 やまじ風(愛媛県四国中央市~新居浜市)
2 広戸国(岡山県勝田郡奈義町、津山市付近)
3 清川だし(山形県東田川郡庄内町清川付近)
12-2 ジェット気流の知識
12-3 下層ジェットの知識
12-4高気圧の知識
練習問題
解答解説
索引
練習問題(3 章練習問題の続き)
解答解説
カラー図版

コラム一覧
第1章 地上気象観測の知識
日本の最高気温・最低気温の記録と要因
雷注意報
風が強い状況の気圧配置パターン
セントヘレンズ山の大噴火
2013年3月10日午後に関東平野で煙霧を観測
梅雨期の夜間の雷雨
第3章 レーダーによる気象観測
気象レーダー観測と防災活動の役割
高度 10km 程度までの乱気流の観測
第6章 短時間予報・短期予報・中期予報の知識
降水確率5%未満
第7章 アンサンブル予報
チベット高気圧とオホーツク海高気圧の関係
第9章 台風
大潮と小潮はいつ頃か?
第10章 さまざまな気象現象
温帯低気圧による強い風
南西モンスーンとは
積乱雲が発達する気象の状態
気温が地上で氷点下なら必ず雪が降るのか
日本海寒帯収束帯(JPCZ)
第11章 気象情報と気象災害の知識
気温と海風の影響
雷注意報での注意喚起
災害・防災関連のお勧め著書の紹介

気象予報士試験受験支援会 (著)
技術評論社; 改訂新版 (2014/5/23)、出典:出版社HP

第0章 学科専門知識の学習方法

初心者、中級者を問わず限りある時間の中で専門知識試験 を合格するためのアドバイスをいたします。気象予報士試験 の主旨の理解も必要です。すべての読者に理解していただく ためにあえて第0章としました。13年間の講師業務を行う中 での経験から、読者のためになる学習方法を説明します。これからがんばりましょう。

1 気象予報士とは(目的と試験を知る)

気象予報士は、気象庁から提供される気象衛星画像、気象レーダー、アメダスなどの実況資料および今後の予測資料を総合的に解析したり、予測したりし て、現象の予想を行います。気象予報士になるためには、気象庁長官の行う気 象予報士試験に合格する必要性があり、合格後は気象庁に登録を行うことで、 はじめて気象予報士となります。

気象予報士試験の目的

平成5年5月に改正された気象業務法の規定(第19条の3)により、気象庁長 官の許可を受けて予報業務を行おうとする者(民間の気象会社など業務として 天気の予測を行う事業者、正確には予報業務許可事業者)は、現象の予想を気 象予報士に行わせなければならないとされています。気象予報士試験は、その 合格者が現象の予想を適確に行うに足る能力を持ち、気象予報士の資格を有することを認定するために行うものです。
具体的には、気象予報士としての今後の技術革新に対処しうるように必要な 気象学の基礎的知識、各種データを適切に処理し、科学的な予測を行う知識 および能力、予測情報を提供するに不可欠な防災上の配慮を適確に行うため の知識および能力を認定することを目的とします。

試験の概要

試験日程:1月および8月の第4週日曜日(2014年1月現在)
受験資格:年齢や学歴などの受験資格の制限はない
試験地:北海道・宮城県・東京都・大阪府・福岡県・沖縄県
試験手数料の正式価格は、一般財団法人気象業務支援センターのホームペー ジ上で表示されます。詳しくは、「試験案内書」をダウンロードまたは郵送による請求をして確認してください。

試験の手続き方法(概要)

1月と8月の第4週の日曜日に試験が行われています。試験に関する受験資料 の順布期間は、試験日のおよそ3か月半前から始まります。さらに試験日の2か 月半前からは受験申請期間に入ります。資料頒布や手続きは試験日よりかなり 早く始まるため、受験者はご注意ください。
1月試験:10月中旬くらいから案内書の頑布、11月中旬くらいから受験申請受付開始
8月試験:5月中旬くらいから案内書の領布、6月中旬くらいから受験申請受付開始

2 試験の科目

学科試験二科目と実技試験

気象予報士試験は、学科科目二つと実技科目で構成されています。学科科目 は15問出題され、五つの選択肢から正解を一つ選ぶマークシート形式の試験 です。学科試験は大学入試でたとえるならセンター試験です。難易度もまさに 気象学のセンター試験レベルといえます。高校程度の基礎学力が十分にあれば 70%以上の正解率を得るのは容易です。
しかし、実技試験はかんたんとはいえません。実際は比較的かんたんなので すが、十分な学科科目の理解の上で、十分に慣れた状態で資料解析を敏速に行っ て、正確に文章や作図で解答すること自体に多少のハードルがあるためです。「学 科科目の合格=実技の合格」とはならない面があるのです。時間をかけて資料 や作図に慣れ、論述は敏速に行える状態にすることで合格が見えてきます。学 科はいつも合格するけど、実技がなかなか合格しない方は学習方法や学習の質 に問題があるかもしれません。

試験科目一部免除制度

試験の一部免除
学科一般・専門のいずれか、または両方に合格した人は、申請によって合格 発表日から1年以内に行われる学科試験が免除されます。また、気象業務に関 する業務経歴または資格を有する人については、申請により学科試験の一部または全部が免除になります(詳細は試験案内書参照)。

合格発表
10月と3月の第1もしくは第2金曜日に一般財団法人気象業務支援センター のホームページに掲載される他、直接本人に郵送されます。

3 学科試験の科目「予報業務に関する一般知識」

まず、学科試験「予報業務に関する一般知識」の出題項目と傾向、学習方法に ついてふれます。
予報業務に関する一般知識
イ. 大気の構造(ほぼ1問出題)
ロ,大気の熱力学(ほぼ2問出題)
ハ降水過程(ときどき1題出題)
二,大気における放射(ほぼ1題出題)
ホ,大気の力学 (2題前後の出題)
へ,気象現象 (1題~2題出題)
ト、気候の変動(ときどき1題出題)
チ,気象業務法その他の気象業務に関する法規 (15問中4問出題が継続)

関連法規の学習

学科一般知識は、気象業務法・災害対策基本法・消防法(一部のみ)から4問 の出題が継続しています。学習は、第何条・項という厳格な暗記は不要ですが、 条文内容別に2、3度繰り返して熟読、内容の理解をした上で、過去の問題を多 く確認していけば自信が付きます。関連法規4問の出題においては3問以上の正 解を確実にできる状態にしましょう。
その後は、試験日の直前10日以内に再度 確認しましょう。特に物理的数式内容の問題に苦手意識がある方は関連法規の 問題は全問正解を狙うべきで、努力すれば普通に4問正解できます。
学科一般知識科目の学習方法
学科一般知識に関しての学習方法について説明します。法規以外の分野につ いては、受験生のスタート時点の学力や知識によって多少の優位性があります。 しかし、知識が0である分野については、学習を進めていくことですでに知識 のある方に追いつくことが可能です。学科科目の試験は11問以上正解すればほぼ合格です。大学受験のように定員があるわけでもなく、他人に勝つ高度な実 力が必要なわけでもありません。きちんと理解して応用力を養い、その上で覚 えることは正確に覚えましょう。
70%以上正解するためには、ごくまれにある題意を理解しにくい問題や一部 の苦手な分野、および試験時の単純ミスなどを考慮すると、14問は余裕で正解 できる実力を養成しなくてはなりません。本書の解説の内容は14問正解を目標 に設定してあります。

イ、大気の構造
基本的に知識的な内容がほとんどであり正確に覚えましょう。物理的な関連 がある内容については暗記ではなく、理解に努めましょう。
たとえば、多くの場合で対流圏は上層ほど気温が一定割合で下降します。し かし、成層圏では上層ほど気温が上昇しています。どうして、上層ほど気温が 上昇するのだろうか?何かエネルギーを気体分子が吸収して熱に変えているの だろうか?このような疑問を持ちましょう。ポイントはノートに整理していく とよいでしょう。単なる暗記でよいのか、それとも理解すべき内容があるのか を区別してください。

ロ大気の熱力学
学科一般知識では、ある程度は深く出題されます。数式が苦手な人は、込み入っ た式の展開はばっさりと省略しても構いません。しかし、数式が苦手な人でも 内容の理解は必須です。たとえば、温位とは何か?相当温位とは何か? 断熱変 化とは?潜熱の授受の影響は?というような内容です。これらは絶対に理解し ておかないと先の学科専門知識や実技試験の学習にも影響があります。
0からのスタートでも努力で必ずできるようになります。気象予報士試験受験 支援会の過去の受講生でも、0スタート、計算力も中学生レベルの状態だった人 が、努力を惜しまず多少時間(3年)はかかりましたが、合格した人は結構います。 その後は気象予報士として仕事で活躍している人もいます。
正直、学力的には高校1、2年レベルの理科(物理)や数学基礎(指数計算・三 角関数・対数基礎・差分概念)があれば十分です。気象予報士は学者になるた めの試験ではありません。気象学の基礎と予報業務を行うにあたって最低限必 要である知識や技能を一定水準求めるものです。合格すれば日本気象予報士会に加入して、さまざまな著名人の開催する勉強会へ参加して、さらに気象学や 予報のスキルアップを行うことができます。まずは、気象予報士試験には早く 合格して受験対策の時間を少なくしましょう。

ハ 降水過程
降水過程は気象に興味があればおもしろい分野です。学習は急がず頭の中で イメージしながら楽しく進めましょう。一部の数式が出てきますが、苦手な方 でも努力すれば理解でき、計算も可能です。

二. 大気における放射
放射関連は重要です。必ず試験に最低1問は出題されます。かんたんな知識 的な内容の出題や計算問題の場合もあります。放射分野においても数式が苦手 な方でも努力すれば理解でき、計算も可能です。意外にも範囲が広く、実力定 着のための学習には多少時間が必要です。

ホ大気の力学
大気の力学は試験で2間前後出題されることが普通です。数式の理解も絶対 に必要です。数式は意外ですが、さほど難しくありません。数式が苦手な方で も努力すれば理解でき、計算も可能です。最近の試験での出題は、本当に理解 しているかどうかを問う工夫された問題が増えています。言葉で理解 + 数式で 理解すること、さらに苦手意識のある人は過去の問題を多くあたって、さまざ まな問題形式を経験しておき、どのように物理概念を使って解くのか確認しま しょう。逆に数式に自信のある人は、学習終了後、過去の問題を3年分程度解 いてみれば十分でしょう。

へ.気象現象
気象に興味があればおもしろい学習となります。さまざまな気象現象を個別 に学びます。温帯低気圧・台風・積乱雲・雷・海陸風・山谷風・ベナール対流・ その他など、一つひとつ徹底して理解してください。

ト,気候の変動
試験で問われる内容は、テレビで報道されているトピックスや一部の逆説的 な論文内容ではありません。一般的な根拠の明確なものだけです。補足や拡充 の学習のためにインターネットを用いる場合は、気象庁が発表したものを学習 しましょう。

4 学科試験の科目「予報業務に関する専門知識」

次に、学科試験「予報業務に関する専門知識」の出題項目と傾向、学習方法に ついてふれます。
予報業務に関する専門知識
イ.観測の成果の利用 (知識や画像解析、事例など)(2~4問出題)
口.数値予報(1~2問出題)
ハ.短期予報・中期予報 (2問前後出題)
二長期予報(ほぼ1問出題)
ホ,局地予報(ときどき1問出題)
へ短時間予報(1~2問出題)
ト、気象災害(確実に1問出題)
チ,予報精度の評価(ほぼ1問出題)
リ.気象の予想の応用(交通や産業と気象との影響)(ときどき1問出題)

備考
学科専門知識は、学科一般知識の上に構築された科目であり、大気の構造・ 低気圧・台風・メソスケール現象・ジェット気流などの知識や解析に関する出 題もよく見られます。よって、専門知識のテキストに掲載されておらず、一般 知識のテキストに解説があるような内容が1~3問出題されることがあります。

学習自体は学科一般知識と同時開始することは可能ですが、できれば一般の 学習の全体像を把握してからの方が最適です。もちろん、単に知識的な分野(観 測方法や気象統計的なものなど)に限っては、その限りではありません。

学科専門知識科目の学習方法
イ.観測の成果の利用 専門知識の出題には大きな相違があります。単に知識を問う問題と、観測資 料を使って適切な解析技術を問う問題に大別できます。後者は学科一般知識の 内容を使って解くことになります。どうして、この大気層は相当温位が鉛直方 向にほぼ一定になっているのか?その根拠は何だろうか? と考えなくてはなり ません。

さらに天気図や資料の読解には実技試験科目の初級内容を使います。学科専門知識は試験によって問われる内容が大きく変わることがあります。見たこと がない資料を提示して問題が作られることもありますが、しっかりと学習すれ ば、ほとんど正解でたどりつくことは可能でしょう。今回の専門知識テキスト はページ数に余裕があり、事例的な資料や天気図も可能な限り取り入れました。

口.数値予報
平成13年度以前では難関の分野でした。一般向けの適切なテキストが少な かったことや数値予報自体が日進月歩で改定されたり、数値予報モデルの大き な改定もあったりしていたからです。近年は出題数も減少して1間~2問が定 着しています。1問は基礎的な内容、2問目は理解や解釈的な内容が問われやす いようです。知識的な内容は正確に暗記しましょう。その上で理解すべき内容 を確実にしてください。最近5年間の過去問は確認しておく方が無難でしょう。
ごくまれになかなか知りえない情報まで出題されることがありますが、この場 合は受験生のほとんどが同じように知り得ません。まれな出題内容はある意味 努力しても不可抗力でもあります。試験の数回に1度は、15間中1間くらいまれ な出題内容がある場合がありますが、必要以上に気にしても仕方ありません。

ハ.短期予報・中期予報
48時間以内の予報、週間予報が該当します。予報用語を正確に覚えなくては なりません。多種多様な予報は、どのような目的があり、どのように利用すべ きなのか学習しましょう。日々の天気は週間予報までが現実的です。それでも 週の後半は予報精度がかなり低くなってしまう場合があります。

ニ.長期予報
1か月予報、3か月予報、暖候期・寒候期予報などが該当します。アンサンプ ル予報の概念を理解したり、実際の資料を見て基礎的な解析が行えたりするこ とが必要です。

ホ.局地予報
数値予報も分解能が高くなってきました。局地的な予報も利用価値が高く、 予報事例に関する資料が出題されることもあります。天気図の解析としては一 般的な天気図と基本的に同じです。また、気象観測による局地的な解析に関す る出題もあります。ドップラーレーダー解析なども近年は高頻度で出題されています。

へ,短時間予報
ナウキャストや降水短時間予報が該当します。大雨や大雪時においては、重
大な災害に結び付くためにとても大事な予報です。

ト. 気象災害
できれば気象災害は0にしたいものです。災害はどんな現象のときに起きや すいのか熟知しておくことが大切です。日々の天気予報や気象ニュースを年単 位で視聴していれば、自然とセンスが身につく分野です。語句や用語の正確な 使用方法や意味を理解しましょう。

チ, 予想の精度の評価
唯一、計算問題で出題されることが多い分野です。計算自体は中学レベルで すので誰でも行えます。精度評価の定義を即答できるくらいにしておくことが 必要です。工夫された問題も見られますので、過去の問題で確認しておくとよ いでしょう。

リ.気象の予想の応用
長期予報では平均天気図が用いられます。日本周辺で見られる代表的なパター ンの事例や天気図解釈の知識を理解しておくことが大切です。ごくまれな知識 に関してまで学習する方は少数です。出題時に8割~9割は正解できる内容まで 学習しましょう。

その他(少数ですが試験によっては出題あり)
最近の試験は、学科専門知識のテキストに掲載されておらず、学科一般知識 のテキストに掲載されている内容の出題が数問ほど見られる場合があります。 大気の構造・低気圧・台風・メソスケール現象・ジェット気流などの知識に関 しては、特に注意しましょう。また、一部は実技試験に関する基礎的な出題も あります。天気図や資料を提示して気象学的に解析する問題です。基礎的な天 気図の見方や資料解析については確認しておく方がよいかもしれません。

専門知識の学習時間と方法について

学科専門知識の学習量自体は、学科一般知識の学習量のおよそ半分以下といわれています。1日あたり90分の学習で、2か月もあればすべての内容を学習することが可能でしょう。
専門知識の内容は年単位で改定されるものがあります。予報技術の発達によって、手法や形態が変化するのはごく普通であり、テキストはなるべく新しいも のを使用すべきです。また、気象庁のホームページも試験に関連する内容は把握しておくとよいでしょう。

近年は、気象現象に対して注意警戒すべき災害名を容易にイメージすること ができない方が増えています。子供のころから天気予報を見ていれば自然と知 識が得られ、ある意味体感的に習得する知識です。暗記でもよいのですが、で きれば実際にこのような現象が起きたら、どんな状態になることが考えられるかイメージして欲しく思います(1時間に50mmの雨が降れば、低地の浸水、河 川の増水に注意など)。

学習の方法としては、気温の観測手法といった単なる知識的なものは暗記と、 さらになぜそのような規定があるのか、その根拠を理解すればよいでしょう。 気象レーダーは、観測する原理構造を理解した上で、実際の代表的な事例画像 を見てどのような気象の状態のときに、観測される降水エコーなのか学科一般 知識の内容と絡めて理解すべきです。
このように学科専門知識の科目は独立して覚える分野と学科一般知識の内容 と絡めて理解していく分野に分けて、整理しておくことが大切です。

昔は、知識的に暗記・理解するだけでも合格できたのですが、最近の試験を 見ると学科一般知識の内容を絡めた問題も数問出題され、本当に理解している かどうか工夫された問題が見られるようになってきました。詰め込みではなく、 ある程度は時間をかけてじっくり取り組むことが大切です。

5 実技試験の科目

最後に、実技試験の出題項目と傾向についてふれます。
1気象概況およびその変動の把握
2局地的な気象の予想
3台風等緊急時における対応
実技試験は制限時間75分で1問解き、問題が2問出題されます。得点は100点 満点ですが、2回行われますので200 点満点となります。合格基準は試験時の平 均点を考慮して、公平性を担保しています。第40回試験までは正解率の最低と 最高は58%~72%でしたが、多くは63%~70%内に収まるようです。

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