秘書検定3級集中講義




秘書検定の参考書・テキストの選び方(独学勉強法)もチェックする。

まえがき

秘書検定はここ数年、年間延べ約16万人(1~3級)の方が受験しています。3級受験の多くは高校生ですが,目的は何なのでしょうか。一言でいえば,就職に際して「会社(職場)常識」と「社会性」を知り,身に付けるため,ということでしょう。それは,<秘書検定で秘書の仕事(秘書技能)を知れば,会社常識と社会性が分かり身に付けることができる>からです。
学生さんにとっては会社常識などは初めてのことでしょうし,社会での身の処し方(社会性)などは今までは気にすることはなかったことでしょう。しかし,これらのことは,これから社会人になるについての土台になることで,土台がなければ家が立たないくらいの重要なことなのです。

人は誰でも職に就かなければ生活ができません。その職に就くにあたって,会社の仕事に関して知識を持って飛び込むか,無知識で飛び込むかは大変な差が生じます。
会社は役割を持った人や役職者で構成されています。役職には序列があり,序列によって秩序が保たれています。秩序が保たれている一番の元は言葉遣いですが,言葉遣いの元はビジネスマナーです。これらのことをひっくるめたことがここでいう「会社常識」と「社会性」です。

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秘書検定3級は「初歩の会社常識」といえます。働く人なら誰にも言えることですが,特に就職を控えた学生さんにとって3級合格を目指すことは大切なことです。就職すればそこは職場社会です。上司の指示はどのように受ければよいのか,言葉遣いはどのようにするのかなどが,職場常識の宝庫である秘書検定を通して,あらかじめ身に付けておくことができるからです。

本書は、3級の秘書検定をじっくり,そしてきちんと学び,合格証を手にすることを目的にしています。が,しかし,ここで注意が必要です。それは、秘書検定3.2級は知識だけの試験ですが「秘書技能」は知識だけではなく、態度・振る舞い・話し方の調子など,体で覚える(体得)部分があり知識と連結しています。従って,知識を学びながらでもこのことを意識しないと秘書技能を生かすことはできません。今後の体得部分への挑戦を期待しています。
公益財団法人実務技能検定協会秘書検定部

実務技能検定協会 (編集)
出版社: 早稲田教育出版; 改訂版 (2012/3/1)、出典:amazon.co.jp

 

この本の使い方

秘書の仕事は領域が広いため学ぶべき事柄も広範囲にわたりますが、本書では審査基準に設けられた範囲を確実にカバーし、内容もレベルも,級位に沿って編集しています。
3級では,秘書の職務についての一般的な知識と,平易な業務を行うのに必要とされる技能に関して出題されます。「初歩的な仕事ができる」能力をみるための,試験の出題範囲は,以下の理論領域と実技領域になります。詳細は,後述の「秘書技能審査基準3級」を参照してください。
理論領域
I必要とされる資質,
II職務知識,
III一般知識
実技領域
IVマナー・接遇,
V技能

●集中講義シリーズの特長―自分一人でも学習できる
本書は,次のような点に配慮して編集されています。
◆本文での解説はできるだけ平易な言葉を用いている。
◆難しい漢字には振り仮名を付けている。
◆難しい用語には「*」マークを付け、そのページの下段に解説欄(「ワードCheck」)を設けている。
◆秘書技能検定の試験範囲を十分にカバーし,個々の項目を詳しく解説しているので、独学でも無理なく学習を進めることができる。
◆学校で秘書の勉強をしている人にとっても,講義から得たものを補強する最適な参考書となるよう編集している。

●本書の学習の仕方――より効率的な学習をするために
次のような利用の仕方をすると、一層効果的に学習できます。
◆「CASE STUDY」では最適な対処法を自分で考えてみる。提示された状況説明を読んだ後,すぐに解答・解説(「対処例」や「スタディ」)を読むのではなく,イラストをじっくり見ながら考え、まず自分なりの解答を出すようにする。その後,自分の答えと照らし合せて解答・解説を読むと視覚効果も相まって記憶に残りやすくなる。
◆各Lessonの本文説明で重要な部分は箇条書きにしてあるので、注意して読むことが大切。ここからの出題が少なくない。また、自分で留意したいと思う箇所にマーカーを引くなどしておくと、読み返すときに、ポイントを取った効率的な学習ができる。
◆言葉は知っていても意味を曖昧につかんでいることが多い。「*」マークの用語
があれば、「ワードCheck」で確認するほか,自分で不確かな用語は印を付けて調べるようにする。また,関連用語を列挙した箇所には用語の前に□マークが付いているので,理解したらそこにチェック印を入れておくとよい。
◆Lessonの本文を読み終えたら,「SELF STUDY」の「POINT出題CHECK」と「CHALLENGE実問題」で過去問題を研究する。
①「POINT出題CHECK」でどのような問題が出るかを把握する。
◎必要に応じて誤答を導くような選択肢の文言例を出して解説(「●次のような間違えやすい問題に注意しよう!!」しているので要チェック。そうした文言で多くの人が誤答しているので注意したい。
◎ここでの過去問題は、「テーマ」や「ケース」別に分類し,全出題範囲をカバ一している。また,選択肢は理解しやすいように重要なものに絞って掲載しているので,問題の傾向がつかみやすくなっている。
◎ここでの過去問題にはすでに「○」,「×」が付けられているが,これは何度も目を通すときに,すぐに「○」「×」を確認して記憶に残すためである。従って、最初は各選択肢がなぜ「×」,あるいは「○」なのかを考えてみることが重要。その後,解説を読んでその理由を理解するようにしたい。実力試しに解答を隠して,自分で選択肢に「◯」,「×」を付けてみるのもよいが,不明な点があれば、該当する本文解説を読み直すことが大切である。
◎ここでの記述問題はよく出題されるものに絞ってあるので,実際に自分のノートなどに解答を書いてみるとよい。
②「CHALLENGE実問題」では学習した効果を検証する。
○難易度のマークは、★の数が多いほど、難しい問題です。
◆巻末には模擬試験問題が掲載されているので,全学習が終了したら挑戦して実力を確認してみる。忘れていたところや弱点部分を自分でチェックして、再度本文部分を重点的に学習し直すとよい。

目次 – 秘書検定3級集中講義

◆まえがき……….この本の使い方
プロローグ受験ガイド
◆秘書検定の受け方……
◆解答の仕方の留意点……
◆マークシート方式の答え方。
◆秘書技能審査基準3級……..

第1章必要とされる資質
SECTION1秘書の心構え…
1社会人としての自覚と心構え…………..
SELF STUDY
2補佐役としての心構え……
SELF STUDY
3機密を守る………
SELF STUDY………………….
4仕事を処理する際の心得
SELF STUDY
SECTION2要求される資質
1秘書に求められる基本能力…..
SELF STUDY
2要求される人柄と身だしなみ.
SELF STUDY……

第2章職務知識
SECTION1秘書の機能と役割………….
1秘書の機能とさまざまな役割………..
SELF STUDY
2上司と秘書の関係.
SELF STUDY
SECTION2職務上の心得と仕事の進め方……
1職務上の心得
SELF STUDY
2仕事の進め方の要領
SELF STUDY

第3章一般知識
SECTION1企業の基礎知識……
1企業の形態と組織…………
SELF STUDY……….
2さまざまな企業活動……………..
●SELF STUDY……………….
SECTION2社会常識
1基本用語を身に付ける…………….
●SELF STUDY………………..

第4章マナー・接遇
SECTION1職場での話し方(聞き方)……….
1人間関係と話し方
SELF STUDY…………………….
2敬語と言葉遣いの基本
SELF STUDY……….
3話し方・聞き方の応用
SELF STUDY……
SECTION2電話応対
1電話のマナーと応対の基本
SELF STUDY.
SECTION3接遇
1接遇の基本…….
SELF STUDY…….
2接遇の要領とマナー
SELF STUDY
SECTION4交際
1慶事と弔事への対応
SELF STUDY…….
2贈答の習わしと食事のマナー………..
SELF STUDY…..

第5章技能
SECTION1会議…….
1会議と秘書の業務……
SELF STUDY…
SECTION2文書の作成……..
1社内文書………..
SELF STUDY….
2社外文書………..
SELF STUDY……
3メモの取り方・グラフの作り方
SELF STUDY….
SECTION3文書の取り扱い
1受信・発信業務と関連知識
SELF STUDY……
2郵便の知識………
SELF STUDY……..
SECTION4資料管理
1ファイリングと各種資料管理..
SELF STUDY…..
SECTION5日程管理・オフィス管理…
1日程管理とオフィス管理…
SELF STUDY….
エピローグ模擬試験
SECTION1仕上げ1……
SECTION2仕上げ2…….

実務技能検定協会 (編集)
出版社: 早稲田教育出版; 改訂版 (2012/3/1)、出典:amazon.co.jp

 

プロローグ – 受験ガイド

◆1.秘書検定の受け方

1.秘書検定の範囲
試験は「理論領域」と「実技領域」に分けられます。理論領域には「I必要とされる資質」「II職務知識」「III一般知識」が,実技領域には「IVマナー・接遇」「V技能」が含まれています。
2.合格基準
理論領域・実技領域とも,それぞれの得点60%以上の場合に合格となります。どちらか一方が60%未満のときは不合格となります。
3.試験方法
3級は筆記試験だけです。問題の約90%がマークシート方式で,五つの選択肢から一つだけ選ぶ択一問題になっています。残りは記述式で,試験時間は110分です。
4.受験資格
学歴・年齢その他の制限はなく、誰でも自由に受験することができます。
5.試験実施日
原則として,毎年2月,6月,11月に実施されます。
6.申込受付期間
試験日のほぼ2カ月前から1カ月前までが受付期間となります。検定協会所定の「受験願書」が付いている「秘書検定案内」で確認してください。

7.受験申込方法
(1)個人申込の場合
以下の3種類の申込方法があります。
①書店で申し込む
全国の秘書検定特約書店で配布される「検定案内」の中の「個人申込用鍋願書」に受験料を添えて書店に申し込み,受付印が押された願書を協会へ郵送します。
②インターネットで申し込む
パソコンまたは,携帯電話で以下のアドレスにアクセスし,コンビニエンスストア,またはクレジットカードで受験料を支払う。パソコンhttp://jitsumu-kentei.jp/携帯電話http://www.jitsumu-kentei.jp/mb/index.php
③郵送で申し込む
現金書留で,願書と受験料を協会へ郵送する。
(2)団体申込の場合
学校などを単位としてまとめて申し込みをする場合は,検定協会所定の「団体申込用受験願書」が必要です。「受験願書」に必要事項を記入し,受験料を添えて必ず学校等の担当者に申し込んでください。
8.その他
試験会場,受験料,合否通知,合格証の発行等については「受験願書」に付いている「秘書検定案内」に書いてあります。不明の点があれば,下記へお問いわせください。
公益財団法人実務技能検定協会秘書技能検定部〒169-0075東京都新宿区高田馬場一丁目4番15号
電話03(3200)6675FAX03(3204)6758

◆2.マークシート方式の答え方

1.マークシート方式とは
マークシート方式とは,問題に対する解答を幾つかある選択肢の中から選び,その番号を解答用紙にマークする方式のことです。「秘書検定」の場合は,「適当と思われるもの」,または「不適当と思われるもの」を五つの選択肢の中から一つだけ選ぶ方式です。解答用紙は,コンピューターでマークされた番号の正誤を光学的に読み取って採点していきます。従って,マークするときは枠からはみ出さないように正確に塗りつぶさなければなりません。

2.HBの黒鉛筆と高性能の消しゴムを持っていく
解答用紙にマークする鉛筆は,「HBの黒鉛筆」に限定されているので指定以外の鉛筆は使用しないように注意します。間違って塗りつぶした箇所を消す場合はきれいに消し去ることが大切です。高性能の「消しゴム」を用意しましょう。

3.順番ずれがないように注意する。
採点するのは機械なので,人間が採点するような融通性は全くありません。解答を1問ずつずらしてマークするようなミスをしないように注意します。
4.易しい問題から処理していく
試験時間は110分で,設問は35問(内記述式問題4問)なので,1問当たり約3分強となりますが、記述式問題もあるので,選択肢の問題は3分弱とみておけばよいでしょう。問題を読んで解答に迷ったら,迷った選択肢に印を付けておき、易しい問題から先に処理してしまうようにします。

5.最後の3分間は見直す時間にする
マーク漏れがないかどうか,最後の3分間は最終チェックの時間にします。マークしなければ確実に失点しますが,迷った選択肢もどれかにマークすれば得点の可能性があります。マーク漏れがないようにしましょう。
6.解答用紙は折ったり汚したりしない
解答用紙を折ったり汚したりすると,コンピューターが誤認してしまうことがあるので注意します。消しゴムのくずが解答用紙に付かないように手できれいに払いのけておくようにします。

◆3.解答の仕方の留意点

3級,2級の検定試験では,マークシート方式が約90%,記述式が10%になっています。具体的には、「必要とされる資質」,「職務知識」から各5問,「一般知識」から3問、「マナー・接遇」から10問,「技能」から8問の計31問が、マークシート方式となっています。記述式は,「マナー・接遇」から2問,「技能」から2問の計4問です。従って,3級,2級では五つの選択肢から一つの正解選ぶマークシート方式をいかに制するかが合否の鍵となります。

1.マークシート方式の攻略法
マークシート方式は,必ず五つの選択肢の中に正解が一つあるということですが,逆に言えば、正解は一つしかないということです。このことを頭に置いて以下のことに留意します。

(1)選択肢を読み,ある項目が正答であると確信した場合。
残りの四つの選択肢を再度検討し,適当なものに「○」,不適当なものに「×」を付けていきます。設問が「適当と思われるものを一つ選びなさい」であれば,残りが全て「×」になるはずです。設問が「不適当と思われるものを一つ選びなさい」であれば、残りは全て「○」になるはずです。そうなれば,選んだ選択肢は正答だということになります。
もし,設問が「不適当と思われるものを一つ選びなさい」で「○」とはならない選択肢が残った場合は,最初に選んだ選択肢は必ずしも正答とはいえなくなります。その場合は、もう一度設問をよく読み、どちらかをふるい落とすヒントを捜します。そのほか,後述する「選択肢の落とし穴」に引っ掛かっていないか検証します。

(2)選択肢を読み,これだという項目がない場合。
問題を読み直し,選択肢を消去法で消していって正答を導きます。これは,知らない用語などが選択肢に出てきた場合に有効です。例えば、用語と訳語の組み合わせで不適当なものを選ぶケースをみてみましょう。1)ビジター=協力者2)サポーター=支援者3)リポーター=報告者4)マネージャー=管理者5)アドバイザー=助言者
まず用語と訳語が合っていると思えるものから「◯」を付けている。例えば,2)サポーターは、「サッカーのサポーター」などから「○」だと推測がつきます。また,3)リポーターは「テレビ番組のリポーター」などから,4)マネージャーは「芸能人のマネージャー」などから,そして5)アドバイザーは「アドバイスをする」という言葉などから「◯」だと推測できます。そうすると,残った1)ビジターが「×」だと推定できます。
このように,確実でなくても見当が付くものから消していくと,選択肢が少なくなるので正答を導きやすくなります。

2.選択肢の落とし穴に注意する
多くはそのことに対して知識があるかどうかを素直に問う問題ですが,中には正答に思えるような表現を用いて受験者を迷わせる問題もあります。受験者が早合点したり,うっかり見過ごしたりすることで不正解に導くことが真の目的ではなく,そのような設問で「早合点したり、勝手な解釈をしたり,見過ごしてしまうこと」がないかどうか,「必要とされる資質」を問うているといえます。特に以下のような問題に注意しましょう。

(1)一般的には評価されることも,「不適当」とされるものがある。
例えば,秘書にふさわしい人柄や性格に関する問題で,「何事も人に頼らず,最後まで一人でやり抜く性格」という選択肢があった場合,このような人物は通常はよい評価を得るので「O」にしたいところですが,「秘書としての人物像」としては不適当の「×」になります。それは,協調性やチームワークを求められる秘書の仕事には向かない性格だからです。「人の意見に左右されず,どのようなときにも自分の信念は曲げない人」なども同様ですが,「秘書とはどのような仕事をし,それにふさわしい性格や人物像とはどのようなものか」を理解していれば,このタイプの問題には引っ掛からないはずです。

(2)「適当」の文章の後半に「不適当」を忍ばせている選択肢がある。
文章の前半で授業や本で学んだことを述べて,後半にさりげなく不適当な言葉を忍ばせている選択肢もあります。例えば,「開封した郵便物は急ぎのもの,重要なものを上にして渡し,速達や書留は開封しないで渡している」という項目は、一見正しいようですが,「速達」は私信以外は開封して渡すことになっているので不適当になります。このように、思わぬところに落とし穴が隠されているので,途中まで読んで早合点しないように、くれぐれも注意しましょう。
(3)程度によって「適当」になったり、「不適当」になったりする。
例えば,上司を理解するというテーマで出題される場合,「上司を知る」ということが程度の問題で適当になったり、不適当になったりします。「上司をよく
補佐するために、上司の基本的なことは知っておくようにしている」は適当ですが「上司をよく補佐するために、上司のことは詳細に知るように心掛けている」は不適当になります。つまり,「上司の基本的な情報を知るのはよい」が,「詳細に知ろうとするのは上司のプライバシーに深く立ち入ることになってよくない」というわけです。

また,「上司が書いた原稿の清書をする」ケースでは,「原稿に誤字があったきは、上司に確認してから直している」も,「原稿に明らかな誤字があったときは、いちいち上司に確認しないで直している」も同じように適当になります。原理原則を言えば、誤字があった場合は勝手に直さずに上司に確認するのが正解です。しかし,「陽春の侯」と書いてあれば,「侯」を「候」に直したり、「斎藤」を「斉藤」と誤記していたので訂正したなどの場合は、上司に確認したり報告したりするほどのことではないので,「……いちいち上司に確認しないで直している」は適当になるのです。逆に,そうしたことを「報告して確認する」のは不適当になります。それは、誤字だと分かっていることをわざわざ報告するのは、上司を煩わせることになるからです。

これらの「程度」をどこで判断するかというと,「上司を知る」では「基本的なこと」と「詳細に」であり,「原稿の清書」では「『明らかな』誤字」です。こうした言葉も見落とさないで考える習慣をつけるようにしましょう。

(4)不適当な選択肢が二つあった場合は最も不適当なものを選ぶ。
受験生がよく迷うのは、不適当なものを選ぶとき選択肢に二つ不適当と思われるものがある場合です。例えば,次のような問題です。

秘書A子がいつもの時刻に出社すると,上司はすでに出社していて忙しそうに調べものをしていた。このような場合,A子は上司にどのように対応すればよいか。次の中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。当然,選択肢は五つあるのですが,ここでは問題をはっきりするために二つ考えてみます。①あいさつしながら上司のところへ行き、いつも一番で行っている日程の確認はいつするかと尋ねる。②じゃまになるといけないので,何も言わず、静かにお茶だけを机の上に置いてくる。

上司は忙しそうにしているのだから本来は、「すぐにお茶を持って行き,あいさつをして,何か手伝えることはないかと尋ねる」のがよい対応と考えら
①は,上司が忙しくしているのに、手伝おうかと気遣いの言葉も掛けずに自分の仕事の日程の確認をするなど,あまりよい態度とはいえません。

②では、上司のじゃまをしないようにと配慮してお茶だけを置いているわけですが,「何も言わず」ということは「あいさつもしない」ということになります。①も不適当ですが,上司にあいさつをしなかったということで、②はもっと不適当ということになり,この場合の正答は②になります。

このように不適当なものを選ぶ場合に,迷う選択肢があれば最も不適当なものを選びます。
また,「適当なものを選ぶ」場合も同様です。例えば,「来客のお茶を下げるときに手を滑らせて茶わんを倒した」という設定で,謝り方として適当なものを選ぶ場合に,1「失礼いたしました」,2「申し訳ございませんでした」の選択肢があれば,より適切なものを選ぶようにします。1も不適当ではありませんが,謝り方としては2の方がより丁寧な言葉になるのでこちらが正答になります。

3.イージーミスをしない
よく読めば分かったのにと、後で悔やむような単純ミスをしないように気を付けます。
(1)「適当と思われるものを一つ選びなさい」と「不適当と思われるものを一つ選びなさい」に注意する。
設問は「適当と思われるものを一つ選びなさい」と「不適当と思われるものを一つ選びなさい」の二つですが,不適当なものを選択する問題が続いたときに「適当と思われるものを一つ選びなさい」の設問が出てきても,「不適当」に慣れてしまっているので,無意識にそちらを選んでしまうというミスを犯しがちです。しかもその場合は当然不適当な選択肢が四つもあるので,すぐに「目当てのもの」が見つかり,後の選択肢を見ないでマークしてしまうのです。こうしたミスは結構多いので,十分な注意が必要です。

(2)問題をよく読み、キーワードを見落とさない。
設問には「会議が始まる直前」とか「退社時刻が過ぎたので」などの状況設定や,先述した「詳細に」とか「明らかな」などのちょっとした言葉が書かれており,それらが正解を得るための鍵になることが多いものです。従って,問題文をよく読み、キーワードを見落とさないようにしなければなりません。
例えば,「会議が始まる直前」と設定されている場合,「F氏に取り次ぐように電話があったので、席に着いていたF氏に小声で取り次いだ」という選択肢は適当でしょうか,それとも不適当でしょうか。「会議中」であれば,小声でも口頭ではなくメモで取り次がなくてはなりませんが,「会議前」であれば口頭で取り次いでも何ら問題ないことになります。

このように、会議中と会議直前とでは正解が異なるので,問題をよく読み,正誤を左右する言葉をうっかり見落とさないように注意することが大切です

4.最後の見直しは記入漏れのチェックのみ
問題は3分弱を目安に解けば十分ですが,平易な問題はできれば2分程度くようにし,非常に迷う問題以外はその場で確定していきます。問題用紙に書いておいて、後でまとめてマークしようなどと考えてはいけません。マークシートへの転記ミスの原因になります。解いた問題は見直さないことを前提にして1回ずつ確定していきます。最後の見直しは、記入漏れがないかどうかの確認だけにしましょう。

5.記述式問題への対応
記述式問題は「マナー・接遇」と「技能」から各2問ずつ出題されますが、特に次の点に留意します。

(1)誤字に注意し,用語を正しく使う。
漢字の間違いや送り仮名の付け方に注意します。

(2)簡潔で分かりやすい文章を書く。
できるだけ簡潔に,誰が読んでも分かるように書きます。

(3)丁寧に読みやすく書く。
文字は丁寧にきれいに書くようにします。読みやすさが重視されるので,殴り書きや崩し書きは厳禁です。また、返信はがきの問題で,「御出席」や「御(出席)」,「御芳(名)」,「行」などを消す場合は,「御出席」のように2本線できれいに消すようにします。

(4)記入漏れに注意する。
グラフの記述では,「タイトル(表題)」や「調査時点の日付」など,書き込むべき要素に漏れはないか,問題文にあるデータとよく照合します。

(5)時間配分に注意する。
記述式の問題で一番時間を要するのは、グラフの作成です。事前に作成してみて,実際にどれくらいかかるのか、所要時間を測っておくことが大切です。

(6)定規などの用意について。
グラフ作成の問題には「定規を使わずに書いてよい」と記してあります。問題が,グラフの書き方が分かっていればよいからですが、定規を使った方が書きやすければ、定規を使っても構いません。

秘書技能審査基準

●3級 ●
程度 領域 内容
初歩的な秘書的業務の理解ができ,2級に準じた知識 があり,技能が発揮できる。
I 必要とされる資質
(1) 秘書的な仕事を行うについて備えるべき要件
①初歩的な秘書的業務を処理する能力がある
②判断力、記憶力、表現力、行動力がある。
③機密を守れる,機転が利くなどの資質を備えている。
(2) 要求される人柄
①身だしなみを心得,良識がある。
②誠実,明朗,素直などの資質を備えている。

II職務知識
(1) 秘書的な仕事の機能
①秘書的な仕事の機能を知っている。
②上司の機能と秘書的な仕事の機能の関連を知っている。

III一 般知識
(1) 社会常識
①社会常識を備え,時事問題について知識がある。
(2) 経営に関する知識
①経営に関する初歩的な知識がある。

IVマナー・接遇
(1) 人間関係
①人間関係について初歩的な知識がある。
(2) マナー
①ビジネスマナー, 一般的なマナーを心得ている。
(3) 話し方,接遇
①一般的な敬語,接遇用語が使える。
②簡単な短い報告,説明ができる。
③真意を捉える聞き方が,初歩的なレベ ルでできる。
④注意,忠告が受けられる。
(4) 交際の業務
①慶事,弔事に伴う庶務,情報収集と簡単な処理ができる。
②贈答のマナーを一般的に知っている。

V技能
(1) 会議
①会議に関する知識,および進行,手順について初歩的な知識がある。
②会議について,初歩的な計画,準備,事後処理ができる。
(2) 文書の作成
①簡単な社内文書が作成できる。
②簡単な折れ線,棒などのグラフを書くことができる。
(3) 文書の取り扱い
①送付方法,受発信事務について初歩的な知識がある。
②秘扱い文書の取り扱いについて初歩的な知識がある。
(4) ファイリング
①簡単なファイルの作成、整理,保管ができる。
(5) 資料管理
①名刺,業務上必要な資料類の簡単な整理,保管ができる。
②要求された簡単な社内外の情報収集ができ,簡単な整理保管ができる。
(6) スケジュール管理
①上司の簡単なスケジュール管理ができる
(7) 環境,事務用品の整備
①オフィスの簡単な整備,管理,および事務用品の簡単な整備,管理ができる。

実務技能検定協会 (編集)
出版社: 早稲田教育出版; 改訂版 (2012/3/1)、出典:amazon.co.jp