CAD教科書 CAD利用技術者試験 2次元2級・基礎 テキスト&問題集 第2版
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はじめに
本書は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)が主催する「CAD利用技術者試験」の「2次元CAD2級」および「2次元CAD基礎」の合格を目指す受験者をターゲットとしています。一般企業において、今や「手書きかCADか」の議論は終わり、CADを使った設計が当たり前のこととなり、CAD利用技術者の需要は増すばかりです。
CAD利用技術者試験は、図形・製図・コンピュータ・ネットワーク・セキュリティなどの知識、CADツールの操作能力などをバランスよく備えていることを受験者に求めており、多くの受験者が試験合格を目指してチャレンジしています。
本書は、読者の皆さんに短期間で合格していただくために、試験合格に必要な知識を教科書として教えるだけでなく、実際に数多くの練習問題とその解説を紹介して、試験慣れしていただくことを目指しています。作図関連の解説においては、日本でも全世界でも最大のシェアを誇るオートデスク社のCADソフト「AutoCAD LT」を使用して具体的な操作方法を示すようにしており、最も効率よく合格を手に入れることができるよう配慮しています。
本書は、CADシステム企画・運用担当、設計者、CAD教育の経験者という多彩な執筆メンバによって、単に試験の合格を目指すだけでなく、設計・製図者として社会で通用する人を育てたいという志の下、基本的なことから丁寧に説明し、しっかり理解できる内容にするべく努めました。
各CADベンダが独自で策定したベンダ試験では、ツールの操作習熟度を認定する試験が多いのが現状です。CAD利用技術者試験は、設計・製図者として社会で通用する人材かどうかを認定できる唯一の試験です。
世間では、3次元CADを利用した設計に移行しつつありますが、3次元設計をするうえでも2次元設計の基本を押さえておく必要があります。ぜひ本書を利用して「2次元CAD利用技術者試験基礎」、「2次元CAD利用技術者試験2級」に合格され、さらなる上を目指していただきたいと思います。
「2次元CAD基礎」試験はIBT(Internet Based Testing) システムを採用し、随時、自宅で受験することが可能です。「2次元CAD2級」試験は CBT(Computer Based Testing)システムを採用し、随時、各地の試験会場で受験することが可能となりました。このように、受験の機会が大幅に広がりましたので、多くの読者の皆さんが本書で勉強され、無事に合格を手にされることを願ってやみません。
最後に、本書の企画に賛同し協力を賜ったオートデスク株式会社の方々、本書の出版に際し 多大なるご尽力を賜った株式会社翔泳社の方々に、心から感謝の意を表します。
2018年10月 編著者 吉野 彰一
目次
2次元 CAD利用技術者試験2級・基礎 試験の概要
・CAD利用技術者とは
CAD利用技術者の役割
CAD利用技術者への期待
・受験の手引き
2次元 CAD利用技術者試験2級・基礎の概要
試験の対策:CAD利用技術者「2次元 CAD2級」
試験の対策:CAD利用技術者「2次元 CAD基礎」.
・本書の使い方
本文解説
学習用問題
第1章 CADシステムの基本
1.1. 2次元CADの基礎知識
CADシステムの目的
CADシステムの構成
1.2.3次元CADの基礎知識
3次元形状モデルの種類
3次元形状モデルを表す方法
3次元CADのモデリング手法、
3次元CADの表示技術
1.3 業務の中でのCADシステム
2次元CADを使った仕事の流れ
3次元CADを使った仕事の流れ
コンカレントエンジニアリング
CADソフトと他ソフトウェアの連携
1.4 データ形式
データ変換
1.5 CAD による作図機能
1.5.1 作図機能
線分と直線
ポリゴン(多角形
円弧
スプライン
楕円
点
ハッチング
文字
寸法記入
1.5.2 編集コマンド
1.5.3 作図への応用
線の分割
角の二等分割
三角形の作成
1.5.4 図形の描き方
作図例1
作図例2
作図例3
練習問題
第2章 コンピュータの基本
2.1 ハードウェアの基礎知識
2.1.1 コンピュータの種類
パーソナルコンピュータ
その他のコンピュータ
2.1.2 コンピュータの機能
コンピュータの5大機能の制御と情報の流れ
パーソナルコンピュータの装置構成
2.1.3 演算装置・制御装置
CPU
バス
チップセット
2.1.4 主記憶装置・補助記憶装置
主記憶装置
補助記憶装置
2.1.5 入力装置
2.1.6 出力装置
ディスプレイ装置
印刷機
2.1.7 拡張カード・拡張ボード
グラフィックボード
サウンドボード
ビデオキャプチャボード
ネットワークインターフェースカード(NIC)
2.2 周辺機器の接続
2.2.1 インターフェース
シリアルインターフェース
パラレルインターフェース
2.3 ソフトウェアの基礎知識
2.3.1 ソフトウェアの分類
2.3.2 基本ソフトウェア (OS)
2.3.3 アプリケーションソフトウェア
CAD. 文書作成ソフト
表計算ソフト
圧縮解凍ソフト
ウイルス対策ソフト
2.3.4 文字の処理
文字コード
日本語入力
辞書
書体
2.3.5 ファイル
属性
拡張子
練習問題
第3章 ネットワークの基本
3.1 ネットワークの基礎知識
3.1.1 ネットワークの種類
LANとWAN
インターネットとイントラネット
3.1.2 通信プロトコル
TCP/IP
3.1.3 IPアドレス
サブネット グローバルIPアドレスとプライベートIPア
IPv6 (Internet Protocol Version 6)
3.2 LANの基礎知識
3.2.1 LAN 0
接続機器
接続形態(トポロジ),
接続方式
3.2.2 LANへの接続方法
LAN内部の装置
外部との接続装置
LAN間での接続装置
ファイアウォール
プロキシサーバー
無線 LAN
LANのネットワーク管理
3.3 インターネットの基礎知識
3.3.1 インターネットの仕組み
DNS (Domain Name System)
URL (Uniform Resource Locator)
インターネットの代表的なサービス
ブロードバンド
3.3.2 インターネットへの接続方法
接続回線の種類
インターネットのセキュリティ
練習問題
第4章 CAD システムの運用と情報セキュリティ
4.1 CADシステムの利用環境
4.2 CADシステムの運用管理
4.3情報セキュリティの基礎知識
ウイルス
迷惑メール
迷惑メール防止法
特定電子メール
4.4 知的財産権の基礎知識
ソフトウェアの著作権
ライセンス契約
CADデータの著作権
フリーウェアとシェアウェア
4.5 個人情報保護法
個人情報保護法(個人情報の保護に関する法
個人情報に関する用語
個人情報取扱事業者の義務
練習問題
第5章 製図の基本
5.1 製図の基礎知識
5.1.1 図面の基本要件と用紙サイズ
図面の基本要件対応 JIS: JIS Z 8310
用紙サイズ対応 JIS:JIS Z 8311
Q213-10、JIS B 3402
5.1.2 図面の様式 対応 JIS :JIS Z 8311
5.1.3 図面に用いる線と文字
図面に用いる線対応 JIS :JIS Z 8312、JIS B 8316、JIS B 340D
図面に用いる文字対応 JIS: JIS Z 8313-1、JIS Z 8313-10、Jus
5.1.4 図面に用いる尺度 対応 JIS : JIS Z 8314
5.2 製図の表現方法 対応 JIS: JIS Z 8316、JIS Z 8317
5.2.1 投影法
正投影
軸測投影
5.2.2 斜投影
5.2.3 投影図
投影図の作図方法
そのほかの投影図法
断面図
全断面図
片側断面図
部分断面図
回転図示断面図
多数の断面図による図示
5.2.4 ハッチング
5.2.5 省略図
対称形状の省略
繰り返し形状の省略
中間部分の省略
5.2.6 特別な図示方法
展開図
かくれ線の省略
必要部分以外の省略
相貫
平面部の図示
四角い開口部の図示
切断面の手前側の図示
寸法記入
寸法記入の原則
寸法記入の方法
寸法線の記入法
寸法補助線の記入法
端末記号および起点記号
引出線の記入法
寸法数値の記入法
寸法公差の記入法
寸法補助記号
直径の記入法
半径の記入法
弦の長さ
円弧および中心角の記入法
等間隔の繰り返し図形
対称部品の寸法記入法
高さ寸法の記入法
尺度に比例しない形体の寸法
寸法の配置
特殊な領域の表示
練習問題
第6章 図形の基本
6.1 図形の基礎知識.
図形の基礎的な形状
角の種類とその角を持つ三角形の名称
平行線であるための条件
円の名称
円と接線の関係
円の性質
円周角の性質
内接する四角形
三角形の内角と外角
三角形の種類
三角形の性質
三角形の合同
三角形の相似
中点連結の定理
多角形
6.2 三角関数
正弦定理
余弦定理
接弦定理
6.3三平方の定理
三平方の定理の応用
6.4 立体図形の基本
球・円柱・円すい
三角柱・立方体・直方体・五角柱
三角すい・四角すい・五角すい
6.5 立体図形の展開
立体図形の展開図
立体から展開図へ(1)
立体から展開図へ(2)
展開図から立体へ(1)
展開図から立体へ(2)
練習問題
2級 学習用問題
2級 学習用問題 1(Type A)
解答·解説
2級 学習用問題 2 (Type C)
解答·解説
基礎 学習用問題
基礎 学習用問題
解答·解説
索引
2次元 CAD利用技術者試験 2級・基礎試験の概要
CAD利用技術者とは
▶︎CAD利用技術者の役割多くの産業の中で設計情報の伝達手段として「図面」が用いられており、その「図面」の作成王段として「CAD(Computer Aided Design)」が利用されています。CADが世の中に誕生してから50年近くが経ちますが、当初のCADは大型コンピュータトで動き、主に大企業で導入されていました。その後、技術の発展に伴いパーソナルコンピュータ(パソコン)上で動くCADが出現し始めたことにより、一般的な企業でも導入されるようになってきました。コンピュータの進歩と共に成長してきたCADには、従来のドラフタ(製図版)に比べて、次のような利点があります。
1. 複写・編集など、情報の再利用が容易にできる
2. ライブラリなどを利用した標準設計が容易にできる
3. 情報の伝達が高品質のまま高速で容易にできる
4. 情報の保管が安全にできる
こうした利点によってCADの普及率は高まり、CAD利用者は「設計者」から「コンピュータを扱える人」へと裾野が広がってきました。CADで作成した図面は見た目が美しく、どんな図面でもベテランの設計者が製図したように見えてしまうことから、「CADの功罪」として「設計力の低下」が問題になってきています。CADはあくまでもツールにすぎず、CAD利用者イコール設計者であるとは限りません。CADには、利用形態によって「トレース」「製図」「設計」という3つの役割があり、CADを利用する技術者にも、「設計者」「オペレータ」などの役割があります。また、CADを取り巻く世界には、CADシステムの開発者・操作トレーナー・営業、運用管理者など多くの関係者がおり、CAD利用技術者を支えています。
▶︎CAD利用技術者への期待
CAD利用技術者の役割から、CAD利用技術者へのアプローチの仕方が複数あることがわかります。「設計者」が「CAD利用技術者」になるにはCADの操作方法を覚える必要があり、「オペレータ」が「CAD利用技術者」になるには設計・製図の勉強をする必要があるのです。「CAD利用技術者試験」の問題や合格基準を見てもわかるように、「CAD利用技術者」には、CADの操作能力だけでなく、コンピュータ・ネットワーク・セキュリティ・CAD・製図・図形・知的財産などについての知識が求められます。
CADから出力される「図面」には、必要な品質を確保したうえで短期間・低コストで作成できる情報を含み、なおかつ、設計変更がしやすいように描かれている必要があります。CADを操作できる人は世の中に数多くいますが、誰もが一律に良い図面を描けるとは限りません。まずはトレースから始め、製図を経験し、最終的に設計をするようになる過程で、「CADオペレータ」から「良い設計者」になることが求められています。必要なスキルを習得することに加えて、自らの業務を効率よくこなし、後工程の業務効率の向上をも同時に実現することが「CAD利用技術者」には期待されているのです。
本書の使い方
本書は、2次元CAD利用技術者試験2級・基礎を受験し、合格しようと思われている方の学習書です。本書の構成を次に示します。
▶︎本文解説
学習テーマごとに解説をしています。また、各章末には本文で学習した内容に関する練習問題(学習用問題を分野別に収録したもの。学習用問題については次ページ参照)とその解答・解説を掲載しています。実際に解いてみて、学習内容の復習をしましょう。
試験に出題される問題に正解するために、重要なポイントや知っておきたい事項を示します。
・Point
学習上のポイントを示します。
・用語解説
知っておきたい用語を示します。
・MEMO
本文を補足する事項や、知っておくと便利な事項を示します。
・スキルアップ
試験だけでなく現場で役立つ知識を示します。
▶︎学習用問題
巻末には、学習用問題とそれに対する解答および解説が掲載されています。ここに掲載されている学習用問題は、過去問題のように活用することができますので、実際の試験時間に合わせて取り組んでみるとよいでしょう。なお、この学習用問題は、『2018年度版2次元CAD利用技術者試験2級・基礎公式ガイドブック』に準拠して作問されております。最新の試験範囲は、当該年度の公式ガイドブックを参照してください。