プロの検索テクニック:検索技術者検定2級 公式推奨参考書
監修者の言葉
一般社団法人 情報科学技術協会(INFOSTA)では、1985 年以来,一貫して検索技能に関する検定(現在は「検索技術者検定」という名称)を,重要な事業として行ってきた。そのため,本書は,当初,検定試験のためのテキストないしは参考書として企画された。
しかしながら,私たちの間では、「検索」というもはや日常的になった技能や営為について,基礎的な知識や高度なノウハウをまとめて提示することが必要なことも,痛感されていた。本書の内容は,商用データベースについての検索手法や考え方が中心であるが,ここに示された知識や考え方は、ネット上のさまざまな情報資源を探索する際にも,有効なものであると考えられる。
その根底にあるのは,「検索」というのは気まぐれの入力行為ではなくて,計算された確固たる情報探索の手法のもとに,行われなければならないということである。そうでなければ,私たちは、インターネット上の情報の大海原で,位置や方向を見失い,ただ,情報の大海を漂流する小舟にも比すべき存在に陥ってしまうのではないだろうか。
今回は、各分野の情報内容や検索手法に関して知識や経験が豊富な方々に,編集・執筆をお願いした。編著者各位は、多忙な中で熱心に作業にあたっていただき,その結果として、データベースを中心とした検索に関わる、現時点における実務的な知識の集大成ができたものと考えている。
こうした内容を世の中に幅広く訴えることを目的として,理事会の議を経て、株式会社樹村房に出版をお願いすることとした。ぜひ、本書によって、情報検索について勉強していただきたい。そのうえで、「検索技術者検定」を受験されるなり,自らの「検索力」「調査力」を磨くなりされて、高度情報社会において,より豊かで実り多い生活や仕事,そして学習や研究をしていただけるよう期待します。
2018年7月
一般社団法人 情報科学技術協会
会長 山﨑久道
序文
本書は,一般社団法人 情報科学技術協会(INFOSTA)が実施する検索技術者検定の2級受験を目指す方々のための参考書として企画・編集したものです。この検定試験と試験範囲の詳細は,本書の付録で述べているとおりですが試験は3級,2級,1級と3段階のレベルに分けて実施されています。
このうち2級は、情報検索に興味があり,日ごろから自分で調査・研究の目的で検索を頻繁に実践している方、あるいは企業の情報センター、大学図書館,公共図書館などで情報検索業務に従事し,インフォメーションプロフェッショナル(情報専門家。略してインフォプロともいいます)を目指す方々のための試験となっています。1985年に始まったこの試験は2度の名称変更と試験範囲の見直しを経て今日に至っていますが,33年間継続して実施されてきた伝統ある試験です。
本書は試験範囲に対応して5章で構成されています。1章では情報検索技術に関する基本的な知識とインフォプロの役割について紹介しています。2章では情報検索の歴史,データベースの種類や流通機構,情報サービス機関について述べています。3章では専門分野別情報資源の種類と検索の特徴について詳細に紹介しています。信頼性の高いさまざまな分野の情報資源について学ぶことができます。4章では検索の結果得られた情報の管理工分析に必要な知識と知的財産権について具体的に紹介しています。5章では検索に欠かせないネットワークと情報セキュリティの知識について述べています。
これらの内容を学ぶことによって、信頼に足る質の高い情報を検索して入手するとともに,得られた情報を利活用するための知識とスキルが得られ,検索能力が確実に向上することでしょう。
一方、検索やネットワーク情報資源を取り巻く環境は常に流動的で変化しています。本書は執筆時点での最新情報に基づいて記載していますが,今後記載内容と異なる面が出現してくることは否めません。その場合は,本書で学んだ検索技術を活かして新しい動きに対応していただければと思います。みなさまが,本書を活用して検索のプロの技に近づいていただけることを願っています。そして、検索のプロフェッショナルである1級を目指す足掛かりにしていただければと思います。
本書の出版にあたり,樹村房の大塚栄一社長,編集部の石村早紀さんには一方ならずお世話になりました。厚くお礼申し上げます。
2018年7月
編集責任者 原田 智子
プロの検索テクニック もくじ
監修者の言葉
序文
1章 情報検索の技法とインフォプロ
1.1 情報検索の技術
1.1.1 論理演算と論理演算子
1.1.2 近接演算
1.1.3 トランケーション
1.1.4 索引ファイルを使用した検索
1.1.5 形態素解析
1.1.6 Nグラム法
1.1.7 類似文書検索
1.1.8 化学構造検索
1.1.9 画像検索
1.1.10 メタサーチ
1.1.11 検索結果の評価
1.2 情報検索方法の種類と仕組み
1.2.1 コマンド検索
1.2.2 フォーム検索
1.2.3 検索式の作成
1.2.4 統制語による検索
1.3 インフォプロとは何か
1.3.1 インフォプロの仕事内容
1.3.2 情報要求者とのコミュニケーション能力
2章 データベースと情報サービス機関
2.1 情報検索のあゆみ
2.2 データベースと情報検索システム
2.2.1 データベースの定義
2.2.2 データベースの種類
2.2.3 情報検索システムとその種類
2.3 データベースの流通機構
2.3.1 商用データベースの流通
2.3.2 オープンアクセスとウェブ情報資源
2.4 情報サービス機関
2.4.1 図書館
2.4.2 書誌ユーティリティ
2.4.3 情報センター
3章 専門分野別の情報資源の内容とその検索
3.1 専門分野別の情報資源の特徴と主な商用情報検索システム
3.1.1 専門分野における情報資源の特徴
3.1.2 主な商用情報検索システム
3.2 自然科学・科学技術分野の情報資源と検索
3.2.1 ライフサイエンス分野の情報資源と検索
3.2.2 化学分野の情報資源と検索
3.2.3 特許分野の情報資源と検索
3.2.4 その他の自然科学・科学技術分野の情報資源と検索
3.3 ビジネス分野の情報資源と検索
3.3.1 ビジネス分野の情報資源
3.3.2 企業情報
3.3.3 業界・市場情報
3.3.4 統計情報
3.3.5 人物情報
3.3.6 雑誌・新聞記事に関する情報
3.4 人文科学分野の情報資源と検索
3.4.1 人文科学分野全般における情報資源と検索
3.4.2 図書館情報学,心理学,哲学分野の情報資源
3.4.3 歴史,地理分野の情報資源
3.4.4 美術分野の情報資源
3.4.5 言語・文学分野の情報資源
3.5 社会科学分野の情報資源と検索
3.6 全分野に関わる図書・雑誌・アーカイブなどに関する情報資源と検索
3.6.1 図書に関する情報資源
3.6.2 雑誌・学術論文および電子ジャーナルに関する情報資源
3.6.3 辞書・事典に関する情報資源
3.6.4 情報資源としてのウェブアーカイブ
4章 情報の管理・分析と知的財産
4.1 情報の管理
4.1.1 企業における情報管理
4.1.2 情報資源の管理
4.1.3 企業内における情報システム
4.1.4 法令などによって管理が求められる情報
4.1.5 情報管理をめぐる環境変化
4.1.6 調査と情報セキュリティ
4.2 情報の分析
4.2.1 情報分析の目的
4.2.2 情報分析に用いる情報資源
4.2.3 文献などの計量的な分析
4.2.4 知識発見のための情報分析
4.2.5 情報可視化ツールによる分析
4.3 情報と問題解決の知識
4.3.1 情報検索と問題解決
4.3.2 問題解決の定義
4.3.3 問題解決の手順
4.3.4 問題解決手法の選択
4.4 知的財産権
4.4.1 産業財産権
4.4.2 著作権
5章 コンピュータ,ネットワークと情報セキュリティに関する知識
5.1 コンピュータに関する知識
5.1.1 コンピュータの歴史
5.1.2 コンピュータの種類
5.1.3 ハードウェア
5.1.4 ソフトウェア
5.1.5 マークアップ言語
5.1.6 ファイル形式とデータ圧縮
5.2 ネットワークとインターネットに関する知識
5.2.1 ネットワーク
5.2.2 インターネットの歴史的背景
5.2.3 インターネットと通信プロトコル
5.2.4 ウェブと検索エンジン
5.2.5 クラウドコンピューティング
5.3 情報セキュリティに関する知識
5.3.1 脅威の種類
5.3.2 情報セキュリティ対策
付録 検索技術者検定の概要と試験範囲
参考文献
事項索引
情報資源索引
【本書の執筆分担】(五十音順)
1章 丹一信,原田智子
2章 清水美都子,原田智子,藤井昭子
3章 小河邦雄,清水美都子,丹一信,原田智子,藤井昭子
4章 小河邦雄,清水美都子
5章 丹一信