世界トップの大学が“偏差値50”の公立校に注目したのは〇〇? その理由を紹介!【なぜ『偏差値50の公立高校』が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?】

元々は偏差値50くらいで地域4番手であった大阪府立箕面高校。しかし著者である日野田氏の校長着任から“わずか3年”で、海外の大学に36人もの進学者を輩出するグローバル校となりました。そこには、日野田校長らの壮大な計画と教員たちの努力がありました。今回は、日野田氏の「なぜ『偏差値50の公立高校』が世界のトップ大学から注目されるようになったのか⁉︎」から成功の秘訣を紐解きます。




これからの時代の変化に対応できる人材とは?

これからの時代、ナイジェリアやインドネシアなどが発展し、世界の中心が大きく変わると予想されます。時代は常に進み続けているもので、世界の変化を止めることはできません。では、皆さんこれからはどのような人物が、時代の変化に追いつけると思いますか? いきなりは思いつきませんが、時代の変化に追いつける人材とは、失敗してもチャレンジし続けられる「トライアンドエラー」ができる人物なのではないでしょうか。

この事を重要視して、学校の英語教育の革新に取り組んだのが大阪府立箕面高校です。箕面高校は、やがて世界の有名大学に多数合格者を出すグローバル校として認識されるようになります。今回レビューする本は、箕面高校を世界のトップ大学から注目されるようになった要因を記している、IBCパブリッシングの「なぜ『偏差値50の公立高校』が世界のトップ大学から注目されるようになったのか⁉︎」です。

本書の著者は、大阪府立箕面高校の前校長である日野田直彦氏です。帰国子女として同志社中高に入学・卒業。同志社大学を卒業した後、学習室を経営している馬渕教室に入社。奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わりました。その後、公募制の民間人校長として大阪府立箕面高校の校長に着任します。

日野田氏は、箕面高校の教育において「時代の変化に対応し、世界に貢献できる人材を育成する」ことを掲げています。世界で活躍できる人材とは、単に英語ができるということではありません。筆者は未来を見据えて、フェイストゥフェイスで世界と繋がれる人だと話しています。そのためには物事に対して「無理」と思うのではなく、チャレンジし続けることができることが大切なのです。

もちろん、骨太の事業は英語力の向上です。しかし、英語を話せるようになることではなく、思考力を育てることを目標としていました。そのためにはマインドセットが必要だと同氏は考えていました。マインドセットとは、思考のベースを強制的に合わせることです。例えば、様々な人種や国籍のメンバーで話し合うときに、同じ目的に向かってチームを作るときに必要とされます。

そしてもう一つ、英語力の中で日本人に欠けているものにコミュニケーション能力があると指摘しています。海外の大学で英語が話せるにも関わらず、教室の隅っこに座っている日本人の学生がいます。それは英語力ではなく、コミュニケーション力に課題があるからとしています。

そこで、日野田氏はベルリッツと手を組み、英語4割、マインドセット6割の土曜日に行う特別カリキュラムを開発しました。マインドセットでは、英語以前に目を見て話すことや振る舞い方、正確に状況判断ができるということを植えつけます。まずは日本語で話しつつ、その中に英語をついでに入れるという方法をとりました。また、箕面高校の先生にも生徒と一緒に成長してほしいという願いから、授業はインタラクティブな形式で行うことにしました。

特別講座を始めた当初は、40人の生徒が参加し、ほとんど日本語で話すものでした。3年後、箕面高校は36人もの生徒が海外の大学に合格するなど効果をあげます。受験対策も補講も行わず、TOEFLの点数や進学実績を上げたこと。その要因はマインドセットの基本を身につけ、外国の方やその他の研修から学び取る力をつけたからだと感じます。

この本を読んで、マインドセットの重要さに気がつきました。変化し続ける社会の中で、世界で活躍できる人材は、「英語ができること」ではなく、「フェイストゥフェイスで繋がれること」です。そのためには、できないと匙を投げるのではなく、チャレンジし続けることが必要なのです。

この先の章では、箕面高校の2年目以降の箕面高校について描かれています。海外の大学も視野に入り始め、いよいよ本格的に海外研修にも取り組み始めることとなります。常識にとらわれない確固たる持論で行った学校改革。実績だけではない学校経営の裏話などここでしか知り得ないものばかりとなっています。ぜひ、英語教育の関係者や学校経営に携わる人に読んでほしい一冊となっています。

 

日野田 直彦 (著)
出版社: IBCパブリッシング (2018/8/28)、出典:amazon.co.jp