登録販売者の研修中は何をする?必要な実務経験とは




1 はじめに−登録販売者とは?

登録販売者とは、2009年の改正薬事法により新たに誕生した、第2類医薬品、第3類医薬品を販売することができる資格のことです。
一般に、医薬品の販売というと薬剤師をイメージすると思いますが、第2類医薬品と第3類医薬品に限れば登録販売者だけで販売することができます。

薬剤師不足という状況の中で、登録販売者がいれば薬局やドラッグストアだけでなくコンビニやスーパーなどでも医薬品の販売ができるようになるので、登録販売者はニーズの高い資格となっています。

 

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2 資格を取得するために受験資格はある?

現在、登録販売者試験に受験資格はありません。
以前は、学歴や実務経験などの受験資格が必要でしたが、平成27年の登録販売者制度改正以降、誰でも受験できるようになりました。

3 正式に登録販売者になるためには実務経験が必要

(1) 現在要求される実務経験とは?

受験資格としての実務経験がなくなったかわりに、正規販売者として勤務するために実務経験が必要となりました。

現在、必要とされる実務経験は、「直近5年以内に通算2年分の実務経験」です。

「通算2年分」の部分について、令和2年3月に改正がありました。
改正前は、「24ヶ月以上の実務経験」に加えて、「月80時間以上」の要件を満たす必要がありました。
改正後は、「勤務時間が1920時間以上、かつ、月単位で勤務期間が通算2年以上」が要件となり、「月80時間以上」という制限がなくなりました。

これにより、直近5年以内に、月の勤務時間が80時間に満たない月も含め、勤務した月数が24ヶ月以上、勤務時間が合計1920時間以上であれば、必要な実務経験の要件を満たすことになります。

このような実務経験を満たすことのできるパターンとして、次の3つの場合が考えられます。

①資格取得以前に計2年分の実務経験を積んでいた場合
すでに必要な実務経験を積んでいることになるので、合格後すぐに正規の登録販売者として就業することができます。
直近5年以内、合計1920時間以上、合計24ヶ月以上という条件を満たすことが必要なので、きちんと確認しておきましょう。

②資格取得以前に実務経験を積んでいたが計2年に満たない場合
資格取得後、残りの実務経験を積めば正規の登録販売者として就業することができます。
2年分の実務経験は、直近5年以内であれば連続していなくてもかまいません。
この場合にも1920時間以上、24ヶ月以上という条件をしっかり確認しましょう。

③資格取得以前に実務経験がない場合
この場合、試験合格後、都道府県に登録販売者としての登録の申請をした後、研修中の登録販売者として、合計2年分以上(連続していなくても可)、かつ、計1920時間以上の実務経験を積むことが必要です。

(2) 平成27年改正後の経過措置とは?

平成27年の法改正以前は、受験資格として実務経験が必要でしたが、合格後、登録販売者として就業するために実務経験が必要ありませんでした。
平成27年改正により就業するために実務経験が必要になったため、平成26年以前の合格者で必要な実務経験の要件を満たさない人は、正規の登録販売者として就業できなくなってしまいました。
そこで、平成26年以前の合格者については、実務経験の要件を満たしていなくても、正規の登録販売者として就業できるという経過措置が定められました。

この経過措置について、場合分けして見ていきます。

①平成26年以前の合格者
平成26年以前に実施された試験の合格者は、経過措置の間は、就業するための要件としての実務経験は不要です。

②平成27年の合格者
平成27年に実施された試験の合格者のうち、平成27年8月1時点で直近5年以内に1年以上の実務経験があった人は、平成28年7月31日までの間は、「合計2年以上」の実務経験が「合計1年以上」で足りるとされていました。
平成28年8月以降は、この経過措置がなくなったため、平成27年に合格した人は全員、改正後に要求される実務経験が必要となります。

③平成28年以降の合格者
特に経過措置はなく、改正後に要求される「直近5年以内に合計24ヶ月以上、かつ、合計1920時間以上」という実務経験が必要となります。

なお、この経過措置の期日は、もともと令和2年3月末までとなっていましたが、改正により令和3年8月1日までとなりました。
そのため、令和3年8月2日以降は、合格年にかかわらず、全員「直近5年以内に合計24ヶ月以上、かつ、合計1920時間以上の実務経験」が必要となります。
現在休職中の方や過去に3年以上のブランクがある人は実務経験の要件を満たさない可能性がありますので、事前に確認しておきましょう。

(3) 実務経験中は具体的に何をするの?

試験に合格しても、必要な実務経験を積んでいない場合、合格後に実務経験を積む必要があります。その間、「研修中」の登録販売者として従事することになります。

登録販売者研修生は、正規の登録販売者とは異なり、1人で医薬品の販売を行うことができません。研修中の登録販売者が医薬品の販売を行うためには、薬剤師または正規の登録販売者の管理及び指導が必要となります。

研修中は、一般用医薬品販売などのレジ業務、薬剤師や登録販売者への引継ぎなど一般用医薬品の接客応対、一般用医薬品の品出し、期限のチェックや返品など商品・売り場の管理のような薬に関わる仕事を行います。

なお、正社員だけでなく、パートやアルバイトとして働く場合でも実務経験として認められます。パート・アルバイトでも必要な時間勤務をすれば、正規の登録販売者として働くことができるようになります。

(4) 実務従事証明書が必要

実務経験を終えたら忘れずに「実務(業務)従事証明書」を発行しなければいけません。

この実務従事証明書は、一般従事者として実務経験を積んだことを証明するもので、登録販売者として他企業に転職や復職、登録販売者研修生から正規の登録販売者へ登録変更する場合に必要な書類です。

この証明書がないと必要な実務経験を積んだことを証明できず、正規の登録販売者になることができないため注意が必要です。
必ずすぐに発行できる状態に準備しておきましょう。

4 正規の登録販売者になると変わることは?

正規の登録販売者になると、1人で医薬品の販売ができるようになるだけでなく、店舗管理者になることも可能です。

医薬品を扱う店舗では、必ず1人以上の店舗管理者を置かなければならないことになっています。
店舗管理者は、医薬品の管理や薬剤師、登録販売者をまとめる仕事も担うようになるため、より経験を積むことができます。

店舗管理者としての経験を活かすことで、転職に有利になったり、将来的に独立するのに役立てることもできます。また、店舗管理者になることで、給料が上がったり、特別な手当てがもらえるなど、収入アップも見込めます。

5 まとめ

ここまでで登録販売者の実務経験についてご理解していただけたでしょうか?

ここまでの内容を簡単にまとめると、次のようになります。
①正規の登録販売者になるためには、登録販売者として働く直近5年以内に合計1920時間以上の実務経験が必要(資格取得前、後、連続性は問わない)
*平成26年以前の合格者は経過措置に注意
②研修中は、医薬品の販売に制限があるため薬剤師や登録販売者の指導のもと医薬品に関与する仕事や品出しを行う
③実務経験後、正規の登録販売者として働くためには、実務従事証明書の発行が必要
④正規の登録販売者になれば店舗管理者になることも可能で、店舗管理者になるとキャリアアップや収入アップが期待できる

店舗管理者を目指す人、医薬品の販売をしたい方などは、この実務経験の仕組みに関して理解することは大切であるといえるでしょう。

この記事の内容を参考にしながら、実務経験について事前に確認し、スムーズに登録販売者としてのスタートを切ってください!