医療接遇ワークブック―スタッフと考える“おもてなし”の心とスキル




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はじめに

私は「自分で考えられる人材を育てる」をモットーに、新入社員研修やリーダー研修を行う仕事をしています。

人材教育の大きなテーマに、いわゆる「接遇」があります。「接遇」というと表面的な立ち居振る舞いと考えられがちですが、本質は心のありようです。「相手を思いやる気持ちを言葉や行動で伝えること」だと思っています。患者さまやお客さまのように外部の人に対するものが「接遇」と捉えられがちですが、それだけではありません。働く者同士の間でも接遇はとてもたいせつなのです。私は、長年の経験のなかで「地域性や業種に関係なく、互いに思いやりをもって仕事をしている職場はとても元気である」ということを感じさせられてきました。人も組織(経営状態)も元気で安定しているのです。

これまでさまざまな企業や機関で研修をしてきましたが、その一つに医療機関があります。医療機関の特徴は、目に見えないサービスを提供すること、またサービスを受ける人が「患者さま」という心身に痛みや不安を抱えている人だということです。スタッフ数が少ないクリニックなどは常にface to face で仕事をします。それゆえに、他の業種以上に相手をたいせつにする心が問われます。

今は平成になって生まれた人が仕事の第一線で活躍している時代です。研修で若い人と接して感じることは、「対人コミュニケーションが苦手だったり、自分の感情表現がうまくできない人が多い」ということです。ですが、この一冊をきっかけに、臆病にならず積極的に人とかかわることにチャレンジする方がすこしでも増えればとても嬉しく思います。とくに、クリニックで働く若い世代の皆さんに気づいてほしいことは、「接遇」とは決して特別なことをすることではなく、相手を思う気持ちの小さな積み重ねだということです。最初からうまくいく人などいません。失敗をしながらも「目の前の人にどう接したら安心してもらえるだろう」と自分の心の中にあるやさしさを伝えれば、ちゃんと笑顔が返ってきます。だれの心にもやさしさはあります。そのやさしさをたいせつにしてください。

約8年間書き続けたいろいろな接遇の形を一冊にまとめました。「接遇」は人の和をつくりだし、仕事を活気づけます。そして、人生をも充実したものにします。この一冊が皆さんの接遇のヒントになり、考えるきっかけになれば光栄です。そして最後に、本書をまとめるにあたりお手伝いをしてくださった皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。

2014年1月
著者

目次

はじめに

・やさしさを伝える第一歩
接遇・医療接遇とは
社会人は学生のときとどうちがう
ここからスタートしよう
医療機関でなぜ働くのか

・接遇力アップのヒント1
おしゃべりは防げる

・感じのよいクリニックをめざして
あいさつからすべてがはじまる
笑顔で安心を届けよう
中身がわからないから見た目もたいせつ
身だしなみを整えよう 服装
身だしなみを整えよう 髪とメイク
しぐさがやさしさを印象づける

・やさしい言葉があふれるクリニックをめざして
敬語は仕事の基本
話じょうずになるコツ
ちょっとした表現でやさしさを表す
「はい」からはじめるコミュニケーション
患者さまにプラスのストロークを
解答&解説

・接遇力アップのヒント2
電話のじょうずな対応 見えないからこそしっかり対応

・不満のある患者さまへの対応
心の準備をしよう
クレームは怒りを鎮めることがたいせつ
対応の原則と三つのチェンジ

・混んでいるときの対応
患者さまに感謝の気持ちを
患者さまにも仲間にもやさしく

・誰にでもやさしいクリニックをめざして
子どもも患者さまのひとり
これからは高齢者の時代

・接遇力アップのヒント3
モチベーションアップしたいとき

・教えることでステップ・アップ
新人を教えようーみんな最初は新人だった
新人研修はオリエンテーションから
接遇インストラクターになろう

・おわりに
クリニックのサービスを向上するには

著者紹介