はじめての医療接遇 患者のための心のこもったおもてなし




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はじめに

本書は、あらゆる医療職にとって役に立つ、医療接遇に絶対に知っておきたいポイントをわかりやすく、文章化したものです。忙しい医療者のために、必要最小限に絞って説明しています。医療職としてはじめて就職する新人職員のガイドブックやベテラン職員にとっても日々の業務のみなおし、指導者として新人職員への説明にも役立てられる内容をめざしています。

2020年東京五輪の招致活動の中で使われた「おもてなし」という言葉がブレークして以来、あらゆる分野のサービス業で「おもてなし」という日本古来の価値観が改めて見直されました。医療業界も例外ではありません。1995年の厚生白書に「医療はサービス業」と明記されたことを契機に、医療の現場での患者さんに対するおもてなしをいかに充実させるか、すなわち「接遇」のあり方が模索され続けています。

東京大学医学部附属病院に、全国の大学病院に先駆けて「接遇向上センター」が設置されたのは2006年のことです。私立・自治体病院関係でも見られない画期的な試みでした。病院の接遇向上の取り組みにも、人材を配置する必要があるという病院執行部の提案が実行されたのです。初代センター長に任じられたのは当時の副院長、老年病科(現・虎の門病院院長)の大内尉義教授で、顧問として招聘された看護師資格をもつ私との2名で新規立ち上げを担当することになりました。

私たちはまず、東大病院の敷地・各施設・全病棟を、毎週1回3カ月かけてラウンドして回り、各職の職員から接遇を高めるためのニーズについてヒアリングを重ねました。そこから、3つの方針をたてました。医療接遇とは何か?ひとまずその定義をする。O医療における接遇が及ぼす影響を関係図に示しアイコン化する。3民間の接客業のエキスパートの方々から、それぞれの接遇の極意を教示していただく。

こうしたプロセスを経て、他業種の接遇のプロたちの意見を聴き、医療の接遇に必要不可欠と思えるポイントを選択しながら、その内容を職員に発信する。センター長の理想とする医療接遇の定義づけを先にしたものの、その結果、当初に立てた定義が変化するのなら柔軟に対応するという方針です。

4年間で行った接遇講座は始回に達し、講師陣は帝国ホテルや椿山荘、航空会社のキャビンアテンダントをはじめ、コーチングなどのコミュニュケーショントレーナー、さらには美容家、警察関係、映画監督まで多岐にわたり、その道の人間関係の育て方(リレーションシップ)の極意を講義していただきました。

この取り組みは、全職員への接遇、意識を高め、各科・部署ごとに接遇向上の取り組みを推進させる刺激には寄与できましたが、医療接遇、と言える共通の骨子を見出すまでには至らなかったのです。そこで、実践から引き出されたノウハウを仮説として、もっとほかの医療職や病院関係者と広く共有できるものに練り上げ、多くの医療現場での医療側と患者側の関係改善に役立てられる内容にしていかなくてはならないという課題を自らに課すことになりました。

そのため、2010年からは大学病院を離れ、全国の医療・介護施設で接遇の講義をしながら、医療接遇の核となるものは何か、模索してきました。この接遇の講義では、画一的にせず、各施設の職員の希望と実態をヒアリングした上で作成したレジュメを使い、オーダーメイドの内容にするよう努めました。その講義も2016年には100施設を達成。ようやく医療接遇に外せないポイントをわかりやすく伝えられるレベルになってきたなと感じてきたころ、2018年3月に、虎の門病院の院長になっておられた大内尉義教授に、虎の門病院新入職員対象に「はじめての医療接遇」と題して、講義させていただく機会に恵まれました。ここに公開した情報はその講義案をもとに加筆構成しています。

患者のための心のこもったおもてなしとは何か、患者も医療者も笑顔になれる病院施設経営や専門職種にとっての接遇とは何かを考えるみなさまの参考になれば幸いです。

2018年9月吉日
近藤和子

近藤 和子 (著)
ごきげんビジネス出版; 第3版 (2018/9/28)、出典:出版社HP

目次

はじめに

序章 なぜ、医療に接遇が大切なのか
◆コラム◆ココがポイント

Part1 医療接遇のきほん
この病院を選んでよかった
第一印象は最初の6秒で決まる
医療接遇のきほん5つのキーワードを意識する
「笑顔」のポイント
「挨拶」のポイント
「身だしなみ」のポイント
プロの顔をつくる整容マナー
◆コラム・ココがポイント
「言葉と態度」のポイント
「気づきと配慮」のポイント

Part2 医療接遇に活かすコミュニケーションスキル正しい言葉遣い(丁寧語、尊敬語、謙譲語)を理解しよう
安心と安全を支えるコミュニケーションスキル
思いやりを示すために
具体的な表現の工夫
クッション言葉を使おう
◆コラム◆ココがポイント
カウンセリングマインドをもって接しよう
より適切なコミュニケーションスキルを目指して
よりわかりやすく伝えるには?
クレームがあったときは?
終末期の患者さんとどう接するか
自分のコミュニケーションスタイルを知る(自己理解):発声練習のすすめ

Part3 社会人として知っておきたいビジネスマナー
電話対応のマナー
お茶を出すときのマナー
文書作成のマナー
◆コラム◆ココがポイント
メール連絡のマナー
ケアする人にもケアを!
セルフ・ケアのすすめ
ストレスへの対応・心と身体のセルフケア

Part4 医療接遇に役立つQ&A
おわりに

接遇に関する用語解説
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著者プロフィール

近藤 和子 (著)
ごきげんビジネス出版; 第3版 (2018/9/28)、出典:出版社HP