ディジタル・オシロスコープ活用ノート―トップ・エンジニアを目指してスタートダッシュ! (トランジスタ技術SPECIALforフレッシャーズ)




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はじめに

ディジタル・オシロスコープが市場に出回り始めたころは、「表示波形が粗く、スピードが遅い」という印象でした、しかしディジタル・オシロスコープは予想を超えた速度で進化し、アナログ・オシロスコープに取って代わることができるようになってきました。

ディジタル・オシロスコープは、トリガ条件が分からなくても、STOPボタンで波形を静止できるという芸当ができます。また、帯域もアナログ・オシロスコープをはるかに凌駕しています。したがって、今ではよほど特殊な分野でない限り、アナログ・オシロスコープを備える理由はなくなってきました。

本書はこのような背景から「ディジタル・オシロスコープを早く使いこなせるようになりたい」という要望に応えることができるように構成しました。特に、図や写真にコメントを入れて、とっつきやすく分かりやすくしました。漫画を読むように短時間のうちに最後まで見ていただけると思います。

若いうちは、お金も時間もありません。私はかつて、オシロスコープ欲しさのあまりに、2、700円でブラウン管を入手し、時間を見つけて自作したものでした。今では、少し貯金すれば、性能の良いディジタル・オシロスコープが手に入ります。オシロスコープを使えば、今まで見えなかった「世界が見えてきます。望遠鏡で未知の宇宙を探るように、電子の世界を垣間見る、そんな喜びを味わっていただけたらと思います。

漆谷正義

CONTENTS

第1章 電子回路開発のための必需品
オシロスコープは電気信号を見る道具

1-1電子回路の動きを見るところから始める
電気信号ってどうやって見ればいいんだっけ?

1-2電子回路の診断装置はこんな格好をしている
ディジタル・オシロスコープの素顔

1-3電気信号のふるまいをディスプレイに映し出す
ディジタル・オシロスコープを使ってみる
1どんな物理量も電気信号でその姿を観測できる!
2実験その1 レモン汁を使って化学電池の起電力の変化を観測
3実験その2 DVDのディジタル音声出力波形を観測

1-4習うより慣れろ
身近な製品の電気信号を見てみる
1ワンチップFMラジオ・レシーバICの入出力
2ワンチップAMラジオ・レシーバICの入出力
3赤外線リモコンICの入出力
4ビデオ・テープ・レコーダの再生ヘッド出力
5DVDプレーヤのピックアップ出力とビデオ出力
6イーサネットの差動シリアル信号
7液晶ディスプレイのビデオ入力信号
8シリアルATAインターフェースの信号

1-5オシロスコープに表示されるのは教科書の波形と違う
現実の信号波形とその呼称

第2章 測定ターゲットに合ったオシロスコープを選ぶ
ディジタルオシロスコープの適材適所

2-1堅牢で野外の厳しい環境下でも安心して使える。
電池動作が可能なハンディ・オシロスコープ

2-2まれに発生する異常波形も捕らえる
長時間の波形を蓄積できるロング・メモリ・オシロスコープ

2-3テスタで物足りなくなったら
基本機能を備えたスタンダード・タイプ

2-41台二役!アナログとディジタルを一度に観測
ミクスト・シグナル・オシロスコープ

2-5アナログ・オシロスコープの長所を兼ね備えた
輝度階調表現が可能なディジタル・オシロスコープ

2-6パソコンの液晶モニタ・ディスプレイに表示
USBインターフェースの小型ディジタル・オシロスコープ

2-7専用のプローブで高速信号の姿を確実に捕らえる
Gbps超の差動伝送線路を評価できるディジタル・オシロスコープ

第3章 信号を捕らえてオシロスコープに伝える聴診器
プローブの基礎知識

3-1ターゲットの動作に影響を与えることなく確実に信号を伝える
プローブが必要な理由とそのしくみ
1電子回路の聴診器「プローブ」の働き
2プローブを構成するパーツの外観と呼称
3プローブに付属しているアクセサリ・キット

3-2信号のタイプに合わせて選ぶ
プローブの種類と適材適所
1最もよく使うパッシブ・プローブ
2ターゲットへの影響がとても小さいアクティブ・プローブ
3任意の2点間の電圧差を観測できる差動プローブ
41kV以上の電圧信号を観測できる高圧プローブ
5配線をつかむだけで電流値がわかる電流プロープ
6ファイン・ピッチにコンタクトできる照明ルーペ付きプローブ

3-3信号の波形を正しく評価するために
プロービングの作法
1作法その1テスト端子や電線のつかみ方
2作法その2はんだ部やICの端子に直接当てる方法
3グラウンド・リードの接続のしかた
4プロービングを手助けしてくれるアクセサリのいろいろ
5ケーブルを延長する方法

3-4調整されていないプロープを使った観測には意味がない
大切な校正作業
1調整その1 低周波補正
2調整その2 高周波補正

3-5ターゲットの動作に影響を与える
プローブの入力インピーダンス

第4章 表示波形の拡大/縮小から振幅値の読み取り方まで
ディジタル・オシロスコープの基本操作

4-1オシロスコープの動作状態や波形が表示される情報窓
ディスプレイの見方

4-2波形のディテールを観測するための基本
表示波形の伸縮とポジショニング
1X軸とY軸のゲインと位置のコントロール
2波形操作を体感する
3水平掃引時間と水平位置を設定する

4-3限られた波形表示部をめいっぱい使って観測
波形の一部を詳しく見る
1直流成分を除いて交流分だけを拡大する
2波形の一部をクローズアップする遅延掃引

4-4データの比較や資料作成に役立つ
大切な波形データを内部メモリに保存する
1操作方法
2演習…CAL波形の保存と呼び出し
3演習・垂直軸と水平軸の設定を保存する

4-5目盛りと垂直軸感度、そしてプローブの設定で決まる
入力信号の電圧振幅の読み取り方
1交流信号の振幅を読み取る
2演習・正弦波の振幅を求める
3直流分を含む交流信号の振幅を測定する

4-6周期を読み取り逆数を取る
信号の周波数を求める
1周波数とは1秒間に繰り返される波の数
2表示波形から周期を読み取る

4-7波形の電圧値や時間の測定を補助してくれるカーソルの使い方
1カーソルを使った波形パラメータの測定
2演習・・・カーソルを使ってCAL信号の振幅と周期を測定する
3演習・・・CAL信号の立ち上がり時間を測定する
4立ち上がり時間と立ち下がり時間を自動測定する

4-8二つの信号の位相差や周波数比を図形で確認する
CH-1とCH-2の入力信号を2次元表示する
1二つの信号の位相差と振幅比が一目でわかる
2リサージュ波形からわかること
3演習・CAL信号をX-Y表示する

4-9表示をコントロールする
波形の輝度や色の変更

第5章 内蔵の波形蓄積メモリ操る
表示波形を安定させるトリガのテクニック

5-1オシロスコープの登竜門
トリガをマスタすれば一人前

5-2オシロスコープの内部でどんな働きをしているのか
トリガ回路のしくみ
1トリガがかかると波形蓄積メモリから表示メモリに波形データが転送される
2波形蓄積メモリにおけるトリガ点の移動
3トリガと波形蓄積メモリの関係

5-3表示の設定と入力チャネルの選択
トリガ動作の開始条件を設定する
1トリガ動作をしていないとき波形を表示するかしないかの選択
2トリガ回路への入力チャネルの選択
3波形に合わせて選ぶ3種類のトリガ・モード

5-4もっともよく利用する
立ち上がり/立ち下がりで引っ掛けるエッジ・トリガー
1トリガ設定の基本
2CAL信号をエッジ・トリガで捕らえる
3ノイズの多い信号の表示を安定させる

5-5方形波を確実に捕まえたいときは
パルス幅で引っ掛けるパルス・トリガ

5-6アナログ・ビデオ信号を捕まえたいときはテレビ信号の同期信号で捕まえるビデオ・トリガ
1ビデオ・トリガの用途と使いかた
2DVDプレーヤのアナログ・ビデオ信号を観測する

5-7単発信号を捕えたり垂れ流し表示する方法
トリガ・テクニックのいろいろ
1単発現象を捕らえるシングル・トリガ
2H/Lの組み合わせで指定するパターン・トリガ
3絵巻きのようにゆっくりと波形表示するロール・モード
4一定期間だけトリガ機能を抑止するホールド。
5表示波形を録画/再生する

第6章 周波数分析からパソコンによる制御まで
ディジタルならではの便利な機能

6-1FFT解析機能を使って周波数分解
波形に含まれる周波数成分を表示する
1周期信号を単一周波数の正弦波に分解するフーリエ変換
2.FFT機能を使ってみる
3窓関数の使い分け

6-2差動信号の観測などに威力を発揮!
波形の加減算

6-3電力波形の観測などに利用する
波形の乗算

6-4アベレージング機能や帯域制限機能を駆使する
雑音を除去して精度良く観測する
1必要十分な測定帯域で正確に観測する
2ディジタル・フィルタを使った特定の周波数成分の抽出
3ランダム・ノイズを除去するアベレージング

6-5ハード・ディスクに保存したりExcelでデータ整理
パソコンに波形データを取り込む

6-6BASICやCでプログラミング
オシロスコープを自動運転する
1GP-IBやEIA-232-E経由でオシロスコープを遠隔操作
2アドレスを使って測定器を指定する
3スケール/トリガの設定やデータ取り込み用の指示文
4オシロスコープを解析モードにする

6-7目視よりも高精度&手間要らず
振幅や立ち上がり時間の自動測定機能
1自動測定コントロール
2自動測定できる電圧パラメータ
3電圧値の自動測定の例
4時間幅の自動測定
5自動測定は手動よりも高精度
6CR回路のパルス応答波形の自動測定

6-8モデル波形と実測波形を重ね描きして一発チェック
信号が規格内にあるかどうか自動判定するマスク・テスト
1信号品質を自動判定するマスク機能
2マスク・テスト機能を使ってみる

6-9温度や経時変化による特性のずれを見つけ出して元に戻す
状態を表示したり診断、校正する機能
1自己校正
2セルフ・テスト

第7章 測定器は万能じゃない!
誤差の原因や測定限界
7-1オシロスコープの入力インピーダンスや
プローブのグラウンド・リードが影響する
ターゲットの信号を変化させる要因のいろいろ
1オシロスコープは本当の信号レベルより小さく表示する
2オシロスコープの入力インピーダンスが波形レベルに影響を与える例
3プロープのグラウンド・リードが表示波形を変化させる
4低周波信号はDC結合で観測する

7-2オシロスコープにも周波数特性がある
帯域の限界が与える波形への影響
1精度良く振幅を観測できるのは帯域の70%程度
2立ち上がり時間の測定限界

7-3表示部にも誤差要因が潜んでいる
液晶ディスプレイの表示分解機能による
1測定誤差

7-4偽の表示波形にだまされないためにサンプリング周波数、帯域、波形蓄積メモリ容量の関係
1オシロスコープの波形取り込み部の特性
2メモリ容量とサンプリング・レート
3偽信号の発生

コラム
オシロスコープの入力回路
カーソルを波形に沿って移動させるトラッキング機能
フーリエ変換は身近なところにある
振幅ばらつきが一目でわかるピーク検出機能
グラウンド・リードは観測信号の4分の1波長が目安
サンプリング・レートと帯域の関係
垂直軸回路の精度と最大入力電圧

索引