ディジタル・オシロスコープ実践活用法―しくみを知れば真の波形が見えてくる (MC BASIC)




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まえがき

小学生の頃、マーブル・チョコレートの筒に巻いたコイル、ポリ・バリコン、ゲルマニウムダイオードで作ったゲルマニウム・ダイオードのラジオから聞こえてきたアナウンサの声、それが私をエレクトロニクスの世界に引き入れました。今から40年以上前のことです。

眼には見ることができない「電気」を測りたいお小遣いで入手したものが、アナログ式のテスタでした。DC/AC電圧、DC電流、抵抗しか測れませんでしたが、抵抗モードでダイオードやトランジスタの不良を見分けたりして、少ない情報からあれこれ、電気の働きを知る手がかりを得ることができました。

当時は電気の動きが「眼で見える」オシロスコープはエンジニアでも高根の花の存在、アマチュアが入手できるものではありませんでした。何とか自作で間に合わせたのがグリッド・ディップメータでした。長年、電子計測の世界で仕事をしてきました。アナログ・オシロスコープの絶頂期、そしてディジタルオシロスコープへオシロスコープの構造は変わり、周波数帯域等の性能は飛躍的に高くなり、ジッタ解析やデジタル変調解析などいろいろな解析機能を搭載できる機種も増えてきました。

しかしオシロスコープの性能機能を100%使いこなせているかどうかというと、自信をもって「YES」といえる方は多くないのでは?と思います。本書ではオシロスコープを使いはじめた初心者の方から、普段オシロスコープをお使いの方を対象に、基本計測器クラスのオシロスコープの性能。機能を100%引き出して、できる限り正しい波形計測ができるように解説します。

ロジック信号が高速になり、アナログ的な挙動を正しく捉えることがデバッグの早道です。取り扱い説明を読んでもなかなか読み取れない。この使いこなしテクニックを身につけることができると、高速シリアル信号を扱うGHzクラスのオシロスコープを使いこなすこともさほど難しいことではなくなると思います。

2010年 春天野典

目次

まえがき

本書のねらい
イントロダクション 信号波形を正確に観測するテクニックを身に付ける
0.1正しく観測できていない例
0.1.1AUTO機能のメカニズムを理解していますか?
0.1.2ブロープのしくみを理解していないことが原因
●グラウンドが長い
●周波数特性の校正が必要

0.2ディジタルオシロの多彩な機能を使い切れていない例
0.2.1正しくトリガをかけられていないことが原因
0.2.2サンプル・レートを考慮していないことが原因
0.2.3見えない波形も見えてくる!

第1部 オシロスコープのしくみと仕様
第1章 刻々と変化する信号を測定する
1.1目的は電気の時間変化を波形で表示すること
1.1.1波形を表示する計測器はいくつかある
1.1.2オシロスコープは高速な信号を扱える
1.1.3最近はディジタル・オシロスコープが主流

1.2被測定信号に対してサンプリング周波数は2倍以上必要
1.2.1オシロスコープに必要なA-D変換の速度は?
1.2.2繰り返し信号は正弦波の集まり
1.2.3必要な帯域は測定したい信号の立ち上がり時間で決まる

1.3電圧レベルと時間の分解能の考え方
1.3.1ディジタル家電の先駆けコンパクトディスク
●昔は磁気テープ・レコーダが使われていた

1.3.2コンパクト・ディスクの規格
●入が聞こえる周波数からサンブル・レートが決められた
●人の耳ほどダイナミック・レンジがあるものはない
●圧分解能はかなり細かい

1.3.3オシロスコープに使われるA-D変換の分解能
●電圧分解能
●時間分解能

1.3.4オシロスコープの分解能をCDの分解能と比較してみる
1.3.5なぜオシロスコープのA-D変換器は8ビットが多いのか

1.4電圧の確度は直流で決められている
1.4.1周波数応答の平坦度は規定されていないことが多い
1.4.2電圧確度は使い方で大きく変わる
コラムオシロスコープの分解能を確認する方法

第1章AppendixA よく使われる計測器のしくみと確度
A.1計測器の種類と使いどころ
A.1.1周波数カウンタ
●計測の原理
●周波数が低いときに分解能を保つには
●クロックとトリガ回路が鍵

A.1.2ディジタルマルチメーター
●直流電圧の計測なら高い確度が得られる
●交流電圧の計測
●電流の計測

A.2計測器の確度はどれくらいか
A.2.1測定器の確度
A.2.2確度と精度
A.2.3オシロスコープの確度

第2章 三つの重要な性能指標とその意味
2.1三大性能その1:周波数帯域
2.1.1周波数帯域の一般的な考え方
2.1.2オシロスコープの周波数帯域とは?
2.1.3周波数応答とパルス応答
2.1.4実際の信号を入力した場合のパルス応答
2.1.5オシロスコープの周波数帯域はどれだけあれば良いのか?

2.2三大性能その2:サンプル・レート
2.2.1標本化定理
2.2.2周波数帯域とサンプル・レートのバランスが大切

2.3三大性能その3:レコード長
2.3.1時間軸を極端に速くすると実質的なレコード長はどんどん短くなる

2.4カタログに現れない性能
2.4.1ちょっと無理すると大きなエラーが発生することがある
2.4.2故意に電圧感度を上げた使い方・オーバードライブ

2.5カタログに現われにくいトリガの性能

第3章 オシロスコープの種類と動作原理
3.1アナログ・オシロスコープの構造
3.1.1信号の振幅方向の表示
3.1.2信号の時間方向の表示

3.2アナログ・オシロスコープとディジタル・オシロスコープの違い
3.2.1画面表示の違いを波形の例で確認
●アナログ・オシロスコープの表示
●ディジタル・オシロスコープの表示

3.2.2波形の密度が分かるアナログ・オシロスコープ
●頻度の低い現象は見逃してしまう

3.3アナログ・オシロスコープでの波形解析方法
3.3.1単発現象の取り込み機能を実現する方法
●専用機材とテクニックを駆使して単発信号をカメラで撮影
●特殊なブラウン管を使ったオシロスコープ
●幅広ビームを使ってA-D変換するアイデアも
●データの記録できる範囲が非常に狭かった

3.4ディジタルオシロスコープの限界と進歩
3.4.1初期のディジタルオシロスコープはアナログ・オシロスコープの機能も持っていた

3.4.2ディジタル・オシロスコープのデメリット
●波形の取りこぼしが多い
●時間軸の設定で周波数帯域が変わってしまう

3.4.3ディジタル・オシロスコープのメリット
●発生頻度が低い波形を確認できる
●トリガ以前の波形を確認できる
●波形の表示/解析も便利になった

3.5ディジタル・オシロスコープの構造

第2部 測定前に知っておきたい標準的な機能と使い方
第4章 電圧や時間を「正しく」測定するための基礎知識
4.1測定に必要なレコード長を選ぶ
4.1.1狙い打ちで短いレコード長でも高精度に測定
4.1.2どんな信号を測るかで最適なレコード長が異なる

4.2目視確認で重要な波形取り込みレート
4.2.1レコード長は長ければ良いのか?
4.2.2目視確認では適切なレコード長の選択が重要
4.2.3繰り返し波形を速い時間軸で観測する場合、ロング・レコードの意味はあまりない

4.3電圧を「正しく」測定するために
4.3.1ゼロ電位のずれを避けるにはウォーミングアップが大切
4.3.2正しい感度(電圧分解能)の決め方
4.3.3十分な電圧分解能がないと時間分解能も悪化
4.3.4電流リプルの測定にはACカップリング入力を使う
4.3.5瞬間的な電圧降下の測定にはオフセットを使う

4.4時間を「正しく」測定するために
4.4.1正しい時間」(サンプル・レート)の設定
4.4.2必要な時間分解能を分かっていることが重要
コラムオシロスコープでもデータの記録と解析ができる

第5章 正確な波形取得に欠かせないトリガのテクニック
5.1自動測定の落とし穴
5.1.1自動測定における波形パラメータの求め方
5.1.2実際に測定してみた…立ち上がり時間がばらつく
5.1.3波形を正しく取り込むにはサンプル・レートを意識する
5.1.4自動測定が可能なサンプル・レートを再検証

5.2確実にトリガをかける方法
5.2.1基本の確認 トリガ・レベルとトリガ・スロープ
5.2.2トリガにはどのチャネルを選ぶのか

5.2.3さまざまな波形の取り込みでトリガ・モードを使い分ける
●オート・トリガー
●ノーマル・トリガー
●シングル・トリガー

5.3さらに上手にトリガをかける方法
5.3.1フィルタを利用してノイズの影響を取り除く
5.3.2外部の信号をトリガとして利用する
5.3.3誤動作を示す信号を利用する
5.3.4遅延取り込みを利用する
5.3.5重ね書きを利用し、まれに発生する事象を取り込む
5.3.6パルス幅トリガを利用する

第6章 測定に不要なノイズを減らすノウハウ
6.1必要な周波数帯域で信号を測定する
6.1.1信号を計測する場合はノイズを減らしたい
6.1.2周波数帯域が広ければよいわけではない
6.1.3帯域を制限して波形が変化しなければOK

6.2アベレージを使って安定した計測結果を求める
6.2.1平均化によってノイズレベルが低下する
6.2.2トリガが安定しないと正しく平均化できない

6.3単発波形に適用できる移動平均
6.3.1 1回しか起こらない信号のノイズを減らす
6.3.2電圧分解能を高め、ノイズを減らせるハイ・レゾリューション・モードとは

6.4ピーク検出機能と低サンプルレートの併用

6.5安定したトリガを得るためのテクニック
6.5.1計測したい信号に同期した安定信号源を探す
6.5.2アベレージにはノーマル・トリガを使うべし
6.5.3トリガ・ホールドオフは次のトリガまで待機する
6.5.4トリガ・ホールドオフを活用するとロング・レコードなしで長い周期の信号を観測できる
6.5.5簡単なパルス幅トリガの積極活用
6.5.6最近実用化されたソフトウェア・トリガ

 

第7章 FFTを使った周波数解析の手法
7.1FFTの使い方
7.1.1前後をつなげて繰り返し信号のように解析
7.1.2サンプル・レートが低いと折り返し誤差が発生
7.1.3FFTの電圧は1Vers%3D0dBVと読み取る

7.2周波数の計測確度を上げるには周波数カウンタを利用する
コラムオシロスコープとスペクトラム・アナライザー

第3部 実例で学ぶプロービング・テクニック
第8章 信号をプローブで正しく取り出す
8.1測るということ自体が誤差を招く

8.2標準プローブを理解しよう
8.2.1感度が1/10?
8.2.2オシロスコープの入力インピーダンス
8.2.3どのようにして信号源とつなぐか?
8.2.4巧妙に考えられた10:1プローブ

8.2.5調整が必要な標準プローブ
●プローブを付け替えるたびに調整が必要

8.2.6減衰比切り替えスイッチに注意
●ブローブが負荷になり回路動作に影響を与える
●測定波形が変わってしまう

8.3グラウンド線の悪影響と対策
●インダクタンスを減らすには

8.3.1正しいグラウンド線のつなぎ方
8.3.2アクティブ・プローブの活用
8.3.3簡単にできる高周波用プローブ

8.4電流波形を見るには
8.5オシロスコープとプローブのセットで高周波特性が決まる場合も
8.6高電圧を計測するには8.7誤差を招く三つの要因

第9章 電源回路の基本測定テクニック
9.1配線インピーダンスによる悪影響と対策方法
9.1.1電源回路の出力は低電圧化と大電流化が進む
9.1.2分散電源で負荷変動による電源電圧の変動を抑える

9.2リブルと電圧ドロップの測定
9.2.1電源回路に起因するリプルの測定

9.2.2負荷変動による電圧ドロップを測定する
●電源電圧自体のふれをトリガにする場合
●何らかの現象をトリガにする場合

9.3高速デバイスによるノイズの測定
9.3.1多数の信号線が同時にON/OFFすることで生じる電源電圧のリプルが信号のジッタを招く
9.3.2高速信号による影響の測定と外来ノイズの対策

9.4電流プローブによる電流測定
9.4.1スイッチング電流の検出
●使い方が限られるシャント抵抗
●直流と交流を簡単に測れる
●直流も測れるDC/AC電流プローブ

9.4.2電流プローブの測定範囲
9.4.3電流プローブにもある負荷効果

9.5フローティング電圧の測定
9.6スイッチング・デバイスのオン電圧の測定

9.7電力の測定 電圧プローブと電流プローブにはスキューが生じる
●スキューの調整方法

9.8高調波の測定

第9章AppendixB 変動する信号は表示モードを変えて観測
B.1.1スイッチング・モード・オーディオアンプの波形のエッジがずれている?
B.1.2編射ノイズのピークを低減するスペクトラム拡散クロック波形の観測

第10章 シリアル・バスの観測とアクティブ・プローブの安全な使い方
10.1組み込み機器に使われる低速シリアル・バスIPCとSPI-
10.1.1PCの概要
10.1.2SPIの概要

10.2 1PCの信号の取り込み
10.2.1解析とレコード長の制限
10.2.2実際の波形

10.3低速シリアル・バス信号のトリガのかけ方
10.3.1連動する波形をトリガ・ソースにする
10.3.2パルス幅でトリガをかける

10.4使う前に知っておきたいアクティブ・プローブの基礎知識
10.4.1内部構成
10.4.2メリット/デメリット

10.5アクティブ電圧プローブの使い方には細心の注意を
10.5.1最短のリード線で接続する
10.5.2アクティブ電圧プローブでもうまく測れないケース

10.6アクティブ電圧プローブは破損に注意!
10.6.1静電気に弱い

10.6.2商用電源には極性がある!
●電源のグラウンドと商用電源の接続
●商用電源のホット(非接地)、コールド(接地)の確認
●シャーシ・グラウンドは接地する
コラムプロ仕様の製品とは?

第11章 高速信号の扱いと測定方法
11.1パラレル・バスの限界とシリアルへの変換
11.1.1伝送量の増加にともないバスの基板占有面積が増加
11.1.2特性面や機器間の接続にも問題発生
11.1.3シリアル・データへの変換でバス幅は小さくできる
11.1.4ただし高速なのでアナログ信号として扱う必要あり

11.2電気信号を波として考える
11.2.1インピーダンスの不整合により反射波が生成される
11.2.2伝送線路が反射を起こすようす
11.2.3反射の原因を知る
11.2.4高速信号を「波」と考えなければならない理由

11.3高速オシロスコープによる波形測定
11.3.1オシロスコープと高速オシロスコープの違い
11.3.2高速オシロスコープの周波数特性

11.4高速プローブを扱う上でのポイント-
11.4.1プローブのアクセサリで大幅に特性が変化する

11.4.2高速信号用の測定機器を接続する方法
●機器を直列に並べて接続する
●時間のずれなく信号を二つに分配する

11.5オシロスコープやプローブの周波数帯域とは?
11.5.1一般的な周波数帯域の測定方法
11.5.2アクティブ・プローブとの使い分け
コラムプローブのしまい方

AppendixC オシロスコープの操作パネルと機能
●操作パネルは大きく三つの機能をもつ
●電源はできるだけグラウンドを取る
●精度を高めるためにも2~30分程度のウォーミング・アップが必要

AppendixD オシロスコープ選択時に知っておきたいポイント
●仕様の読み方
●実時間サンプルと等価時間サンプル

索引
著者略歴
参考文献