モバイルシステム技術テキスト エキスパート編-MCPCモバイルシステム技術検定試験1級対応-第8版
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巻頭言(第8版刊行にあたって)
モバイルコンピューティングシステム(以下、モバイルシステム)は、スマートフォン、タブレット端末の活用に加えて、各種センサを内蔵あるいは接続したIoTデバイスをネットワークに接続し、クラウドに大量のデータを収集、蓄積し、これらを分析することによって、製造業をはじめとして様々な業種で、業務の効率化、業容の拡大、作業ミスの削減、流通(倉庫)、インフラ保全、ヘルスケア、住民サービスに活用されつつあります。
これらは総称として、IoTシステムと称して、世界各国の生産、流通、サービスを一変させつつあります。さらに銀行、保険、証券といった金融業でも、IoT及びこれと連携したAI(人工知能)が導入され、生産性向上が進みつつあります。今後拡大するIoTシステムでは、大量のセンサからのデータをモバイル回線(3GやLTE)で収集するには、端末の数が膨大なこと、端末当たりのデータ量が少なく送信の間隔が比較的大きい場合にはLPWAを活用し、また一度に多くの端末とのデータ交信を要する自動運転や自動工事などでは実用化された5Gが活用されます。閉域での活用にはローカル5Gが注目されています。
また、IoTゲートウェイとデバイス間の近短距離無線通信として、BLE、ZigBee、Wi-SUNなども活用されます。これら通信方式を用途に合わせ、最も合理的な方式で回線を選択する必要があります。IoTに関しては、サービスプラットフォーム、データの蓄積や分析用アプリケーション、伝送手段、課金、国際ローミングなど、複数の分野で標準化が図られています。また、クラウド、通信、システム構築関連の各事業者から、サービスの一環として、データ収集、蓄積、ネットワーク・端末の管理ソフトウェアが提供されています。IoT時代には、業種ごとの知識やノウハウと、その基礎技術であるモバイルシステム関連技術を十分理解しておくことが、ますます重要となっています。
MCPCは、IoT端末を含む多様なモバイル情報端末と、クラウドサービスをシームレスに接続するモバイルシステムの構築により、効率的なソリューションの推進を行う中核団体となっています。今や企業活動で蓄積された膨大なIT資産を活かすモバイルシステムは、企業活動の重要な役割を担っています。今後、自治体、医療、教育、食品、医薬、建設、金融、各種製造、流通の全分野で共通する運用・保守業務等を含めた、効率化、正確性、迅速化が重要視されます。モバイルシステムはその特徴である位置情報、カメラ、各種センサを使った安心・安全の確保、移動管理や大量のセンサやデバイス等を活用するIoTシステムは広範囲に利用されていきます。
MCPCでは、2005年に「モバイルシステム技術検定制度」を創設し、モバイルシステム関連技術の習得項目・範囲・難易度等のスキル基準を明示し、学習意欲の喚起を図って参りました。また学習教材として「モバイルシステム技術テキスト」(2級対応)、「同・エキスパート編」(1級対応:本書)を発行し、最新内容を盛り込みながらタイムリーな改定を行っています。2008年からは最高位資格であるシニアモバイルシステムコンサルタント(SMC)の認定研修会も実施しています。2010年には米国・電気電子学会(IEEE)から本検定の制度と内容が評価され、推薦を受けました。本検定制度に評価を頂いたわが国の多数のIT/ICT業界関係者に感謝いたしますとともに、本テキストの改割発行にご協力下さった関係者のご努力に敬意を表します。
2020年8月吉日
MCPC会長
東京大学名誉教授、早稲田大学名誉教授
安田靖彦
目次
第1章 はじめに
1-1拡大するモバイルシステムの活用
1-2モバイルシステム技術検定制度
MCPC
モバイルシステム技術検定の必要性と狙い
モバイルシステム技術検定制度の概要
最新試験情報
1-3本書の目的と構成・
本書の目的
本書の構成
第I部 ネットワークIoT
第2章 無線アクセスネットワーク技術
2-1無線アクセス・インタフェース
通信ネットワークの構成
通信プロトコルの構成
2-2伝送方式
変復調方式と伝送特性
通信路符号化
多重化方式と多元接続伝送方式
2-3移動体通信用周波数帯域
無線周波数の再編・割当て見直しの中・長期的な動向
移動体通信関連無線周波数帯の割当て
2-4電波伝搬特性と伝送技術
マルチパス伝搬
耐マルチパス・フェージング伝送技術
2-5マルチアンテナ技術
MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術
AAA(Adaptive Array Antenna)技術
マッシブMIMO
2-6無線アクセス制御技術
ハンドオーバ技術の概要
送信電力制御技術の概要
適応変調符号化と高速スケジューリング
2-7無線アクセスネットワークの構成
W-CDMAとLTEのセル構成
RANの構成
RANの展開
2-8無線通信方式
IMTファミリー無線アクセス方式のロードマップ
第三世代のIMTシステム
第39世代から第4世代にかけてのIMTシステム
WiMAXとAXGP、および、それらの発展形(第4世代IMT互換システム)
第5世代のIMTシステム(5GNR)
無線LAN(Local Area Network)
第3章 コアネットワーク技術コアネットワークの概要
3-2コアネットワークの概要
3-2信号方式
共通線信号方式
SIP信号方式
Diameter信号方式
GTP信号方式
3-3コアネットワークの構成
W-CDMA
CDMA2000
LTE
IMS
第5世代移動通信システム(5G)コアネットワーク
3-4移動体通信網の番号と識別子
E164
MSISDN(Mobile Subscriber ISDN Number)
IMSI(International Mobile Subscriber Identity)
IMEI(International Mobile Station Equipment Identity)
IMSで利用する識別子
回線交換コアネットワークにおける電話番号によるルーティング
3-5コアネットワークサービス(回線交換)
IN(Intelligent Network)とは
INによる付加サービス
企業内線電話サービス
3-6コアネットワークサービス(パケットコア)
ブロードキャスト/マルチキャスト
Voice over LTE(VOLTE)
3-7NFV/SDNの概要
NFV/SDNの動向
NFVの概要
SDNの概要
3-8コアネットワーク構築・運用技術
トラフィック理論と容量設計
障害対策
輻輳対策
第4章 IoTシステム技術
4-1IoTシステムの概要
IoTシステム
IoTシステムの構成
IoTシステムの構成要素
4-2IoTデバイス
IoTデバイスの役割と基本構成
IoTプロトタイピング・ハードウェア環境
4-3 IoTエリアネットワーク
概要
IoTエリアネットワーク通信方式
IoTエリアネットワーク構築・運用上の留意点
IoTエリアネットワークに用いられる周波数と無線局の制度
4-4IoTゲートウェイ
IoTゲートウェイの概要
IoTゲートウェイの提供機能
IoTゲートウェイによるデータ通信の分散・量の削減
IoTゲートウェイによるセキュリティ
IoTゲートウェイの機能拡張
4-5IoT基幹ネットワーク(WAN)
IoT通信の利用様態と基幹ネットワーク構成
IoT通信用のモバイルネットワーク技術
ローカル5G
省電力広域ネットワーク(LPWA(Low Power Wide Area)Network)”
4-6IoTアプリケーション/サービス層技術
1oTサービス層技術動向(oneM2M)
その他のIoTサービスプラットフォーム技術
4-7IoTセキュリティ
IoTセキュリティの重要性
IoTセキュリティの特徴
IoTセキュリティの動向
第Ⅱ部 端末/アプリケーション
第5章 モバイル端末・周辺技術
5-1モバイル端末の概要
モバイル端末とは
モバイル端末の種類
モバイル接続機器
5-2モバイル端末の特徴と機能分類
通信形態による分類
端末のサイズ
モバイル端末とその機能
5-3遠隔通信機能
モバイル端末と遠隔通信機能の関係
遠隔通信に必要な機能
5-4ヒューマン・インタフェース(HI)
モバイル端末とヒューマン・インタフェース(HI)の関係
各ヒューマン・インタフェースの種類
5-5マシン・インタフェース(MI)
モバイル端末とマシン・インタフェース(MI)の関係
各マシン・インタフェースの分類と特徴
近距離用途で用いられる無線インタフェース
5-6端末の構成部品と機能
端末の小型化、軽量化
ソフトウェア無線(Software Defined Radio :SDR)
第6章 モバイル端末開発技術
6-1モバイル端末のプラットフォームの構成
モバイル端末のチップセットとソフトウェアの構成
ソフトウェアの構成とスマートフォンOSの仕組み
6-2オペレーティングシステム
RTOSとカーネル
Linux OS
Android OS
6-3ミドルウェア
ミドルウェアの構成(ハードウェア処理とソフトウェア処理)
ミドルウェア各種ライブラリ
JNI(Java Native Interfaces)
6-4 SIM
SIM(Subscriber Identity Module)カード
セキュリティ技術
第7章 モバイルインターネット技術
7-1モバイルインターネット接続
モバイル端末の接続動作
モバイルインターネットサービスへの接続
モバイル端末(UE)内部からの接続(3GPPの場合)
モバイル端末内部からの接続(LTEの場合)
モバイル端末内部からの接続(3GPP2の場合)
7-2IPに関する技術
IPv6の動向とその特徴
HTTP2.0
PUSH技術
7-3記述言語
HTML5
ブラウザとXML
XML
XHTML
フィーチャーフォン向けXHTML
スタイルの記述
7-4ネットワークシステム通信関連技術
モバイル・リモートアクセスの技術とサービス
ネットワークセキュリティ技術
VolPシステム
ユニファイドコミュニケーション
第8章 モバイルコンテンツサービス技術
8-1モバイルコンテンツサービスの概要
8-2コンテンツ提供技術
Webを利用したコンテンツ提供技術
ユーザ認証
ダウンロード
クロスメディア(通信・放送連携)による配信
8-3コンテンツ開発技術
メディアデータ
アプリケーションの開発
8-4その他のコンテンツ技術
接触ICカードと非接触ICカード
音声認識対話技術
通信事業者にまたがるサービス提供例
8-5コンテンツの課金と決済
コンテンツ課金方法
料金回収代行による決済
コンテンツの料金回収代行以外による決済
8-6モバイル端末の位置検知方式
GNSS/RNSSを利用した位置測位
GNSS/RNSSを利用しない方式
センサの活用
第Ⅲ部 モバイルシステム
第9章 システム要件定義
システム要件定義のフロー
9-1顧客ニーズの引き出し
「顧客は要求を正しく表現できない」という視点に立つ
言葉や表現を合わせる
ビジネス要件と機能要件を区別する
アイデアを形に変える、ヒアリング手法
要求管理全体のライフサイクル
9-2要求事項の分析
新しいビジネスアイデアの探索
検証されたビジネスモデルの活用
9-3要件の定義
システム要件
プロジェクト要件
9-4要件の実現方法
要件の実現方法
対象企業からの実現制約条件
9-5提案
背景
目的
提案の全体像及び提案範囲
システム要件
作業アプローチ及びスケジュール
提案条件
体制
見積り
第10章システム開発
システム開発のフロー
10-1開発手法
開発手法
10-2設計
セキュリティ設計
システムズ・エンジニアリング
外部設計
内部設計
10-3実装
開発環境
管理手法
10-4検証
テスト計画
テスト実施
テストの自動化
10-5納入
ユーザ受入れテスト
納入物件の検査
終結プロセス(契約の終了)
第11章 システム運用
システム運用のフロー
11-1運用移行
システム運用基準
開発手法に適した移行
データモデルに適した移行
移行後の日々の運用
AIシステム導入後の運用
11-2IT資産管理
設備/ITシステムの資産管理
設備/ITシステムの資産運用・最適化
11-3障害と問題管理
システム保守
問題の切り分け
トレーサビリティー
第12章 モバイルシステム関連の法制度
12-1電気通信法制の体系
電波法 (昭和二十五年五月二日法律第百三十一号)
電気通信事業法 (昭和五十九年十二月二十五日法律第八十六号)
12-2個人情報の保護に関する法律及びプライバシーマーク
個人情報保護法
個人情報保護法の改正
個人情報の活用
プライバシーマーク制度とその概要
12-3著作権法
著作権法
12-4特定商取引に関する法律
特定商取引法
「通信販売」に関する特定商取引法の詳細
12-5特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律
デジタル・プラットフォーマー取引透明化法
12-6電子契約法
電子消費者契約法
12-7電子署名及び認証業務に関する法律
電子署名法
電子署名・認証の仕組み
電子書類の公的認証
12-8資金決済に関する法律
資金決済法
概要
暗号資産の利用にあたって
Columnブロックチェーン
12-9特定電子メールの送信の適正化等に関する法律
迷惑メール対策法
12-10不正アクセス行為の禁止等に関する法律
不正アクセス禁止法
12-11携帯電話不正利用防止法
携帯電話不正利用防止法
12-12刑法(サイバー犯罪関連)
関連刑法制定・改変の背景
サイバー犯罪に適用される主な刑法
各刑法の概要
参考文献
索引
監修・執筆者一覧