図解入門ビギナーズ 最新介護保険の基本と仕組みがよ~くわかる本[第7版]




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はじめに

「介護の社会化」を目指して創設された介護保険制度もほぼ20年が経過し、成長のステージから「成熟のステージ」に入りました。

制度が始まったころは「介護は女性の役割」「家族介護は美徳」という意識がまだまだ根深くありました。しかし、男性介護者が3人に1人という割合になり、介護されたい人が「嫁から配偶者・子ども」と大きく変わりました。介護サービスを利用することに対して戸惑いや抵抗・遠慮がありましたが、介護保険制度への社会的理解が深まるなかで介護サービスを利用することの「心の垣根」はかなり軽減されてきました。

しかし、老々介護や介護離職、認知症の急増、単身高齢者の孤立化と孤独死、生活困窮者の急増、など課題は山積しています。その対策として取り組まれているのが「地域包括ケアシステム」です。

介護保険は地方分権です。市町村や日常生活圏域で高齢化率や地域特性は異なります。ですからケアの提供の仕組みやケアサービスの内容はその地域特性を尊重したものにならなければなりません。その基本となるのが「自立 (自律) 支援」と「利用者本位」、そして「自助、互助、共助、公助」の考え方です。利用者への一方的な介護サービスの提供ではなく、利用者自らが前向きに人生に向き合える「意欲」を応援することがケアマネジャー、サービス事業者、医療関係者、保険者、そして地域に求められています。

介護保険を「暮らしのシステム」にするために必要なものは、利用者(家族)と地域、介護・医療関係者の地域包括ケアシステムへの正しい理解です。「賢い利用者(家族)」は「質の高いサービス」を育てる主体です。ケアマネジャーやサービス事業者に積極的に「ニーズ」を伝え、自らの「生活プラン(ケアプラン)」をともにつくる利用者(家族)になることがこれからますます求められます。

日本は「長命社会」となり「人生100年」を目指し「健康寿命」が真剣に語られています。医療も「キュア(治療)」から「ケア」に質的に変わろうとしています。医療と介護と福祉、地域、行政が連携・協働し「まちづくり」につながる地域包括ケアシステムづくりに尽力することが求められています。

本書が介護や老後に悩み、不安を抱えている方々の一助となるとともに、地域包括ケアシステムにかかわる多くの専門職や事業者の方々の参考になることを願っています。

ケアタウン総合研究所 代表 高室成幸

高室 成幸 (監修), ケアマネジメント研究フォーラム (著)
出版社 : 秀和システム; 第7版 (2018/7/21)、出典:出版社HP

目次

はじめに

介護保険歴史年表 2018年から第5次改正の介護保険制度が始まった!
介護保険制度改正のポイントダイジェスト
介護保険制度改正 ポイントと利用者・事業者への影響
流れがわかる! 介護保険が必要になったら
チャートでわかる! 興味があるところから読んでください
図解でわかる! 読む前に確認しましょう!

第1章 介護保険とこれからの介護
1-1 超高齢社会と介護保険
1-2 地域包括ケアシステムの強化のための改正が2018年度からスタート
1-3 第7期介護保険事業計画のポイント
1-4 地域の住民や元気な高齢者が生活支援などの担い手に
コラム 本当に要介護者が増えるのは2035年

第2章 介護保険の仕組み
2-1 介護保険の仕組みと概要
2-2 介護保険を運営するのは市町村
2-3 国や都道府県は市町村の事業の支え手である
2-4 国、都道府県、市町村がそれぞれ介護保険事業の計画を定める
2-5 介護保険に加入する人は40歳以上の国民すべて
2-6 適用除外の人や扱いの異なる人もいる
2-7 65歳以上の人と65歳未満の人はこう違う
2-8 資格の取得と喪失の時期は決まっている
2-9 介護保険の財源は公費と被保険者の保険料で1/2ずつ負担する
2-10 市町村の介護保険財政を支える仕組みがある
2-11 65歳以上の人の保険料はこうして決められる
2-12 65歳以上の人の保険料は自治体によって差がある
2-13 65歳以上の人の保険料はこうして集められる
2-14 保険料を滞納した人には給付に制限が加えられる
2-15 自営業者の保険料は国民健康保険と一緒に集められる
コラム 自立支援の施策の結果をどう評価する?

第3章 サービス利用の手続き
3-1 介護保険のサービスを利用するには手続きが必要
3-2 保険給付が受けられるのは要介護・要支援のとき
3-3 市町村に要介護認定の申請をする
3-4 申請前でも認定前でも介護保険は利用できる
3-5 要介護認定を受ける
3-6 訪問調査は調査員が訪問して聞き取りによって行う
3-7 訪問調査では高齢者の日常の状態を見てもらう
3-8 1次判定は要介護認定等基準時間の合計で行われる
3-9 2次判定は介護認定審査会の合議によって行われる
3-10 市町村は認定結果を通知する
3-11 原因が労災や交通事故の場合は他の制度を利用する
3-12 医療保険の給付と同じものは介護保険が優先する
3-13 公費負担医療、措置制度、生活保護の場合
3-14 介護保険の手続きができない人のための制度
3-15 自立と判定された人も介護予防のためのケアを受けられる
3-16 市町村が実施する地域支援事業とは
コラム 介護スタイルの変化、老老介護の深刻化

第4章 サービスの利用と負担の仕組み
4-1 認定を受けてからサービスの利用、費用支払いまでの流れ
4-2 保険給付は3種類に分類されている
4-3 要介護度によって保険給付の上限が決まる
4 4 利用者が1割から3割を支払う現物給付の方式をとる
4-5 サービスの種類によって支払方法が異なる
4-6 費用は算定基準にもとづいて計算される
4-7 事業所の加算の取得状況によって利用料が変わる
4-8 払えないときは高額介護サービス費などの制度がある
4-9 施設入所のときの食費と居住費が補助される
4-10 国保連は介護報酬の審査と支払い、苦情処理をする
4-11 不服申立てに対応する介護保険審査会
コラム 介護離職は防げるのか?

第5章 サービスの利用とケアマネジメント
5-1 ケアマネジメントは介護保険の大きな特徴
5-2 ケアマネジャーは介護保険の要の役割を果たす
5-3 ケアマネジャーを上手に選んで上手に使おう
5-4 ケアプランは利用者のニーズにもとづいてつくられる
5-5 実際のケアプランはこうやってつくる
5-6 事業者は個別援助計画にそってサービスを提供する
5-7 ケアプランはいつでもつくり直すことができる
5-8 要支援であると認定された人のケアマネジメント
コラム 人生100年時代―50歳になったら人生後半戦のシミュレーションを

第6章 居宅サービスの種類と利用方法
6-1 在宅で利用者の生活を支える中心的サービス(訪問介護1)
6-2 慎重な業者の選び方と利用料金(訪問介護2)
6-3 家での入浴を希望する人へのサービス(訪問入浴介護)
6-4 家にいながら受けられる医療サービス(訪問看護)
6-5 家でリハビリテーションが受けられる(訪問リハビリテーション)
6-6 医療系の専門職が自宅に来てくれる(居宅療養管理指導)
6-7 日帰りで受けられる介護サービス(通所介護)
6-8 日帰りで受ける医療ケアとリハビリテーション(通所リハビリテーション)
6-9 家族の介護負担を軽くする(短期入所生活介護)
6-10 在宅復帰を目指した医療ケアを受ける(短期入所療養介護)
6-11 有料老人ホームなどに入居する(特定施設入居者生活介護)
6-12 レンタル&購入で自立した生活を援助する(福祉用具)
6-13 住まいの危険を減らすバリアフリー化(住宅改修)
6-14 サービスの不都合を解消する共生型サービスの創設
6-15 市町村独自のサービスを利用する
コラム 新しい認知症介護へのアプローチ

第7章 地域密着型サービスの種類と利用方法
7-1 24時間体制で、安心を提供する(夜間対応型訪問介護)
7-2 訪問、通所、宿泊のサービスを組み合わせる(小規模多機能型居宅介護)
7-3 認知症の人に家庭的なケアを提供(認知症対応型共同生活介護・認知症対応型通所介護)
7-4 地域に根付いたサービス(地域密着型特定施設入居者生活介護・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護)
7-5 地域包括ケアの実現(定期巡回・随時対応型訪問介護看護・看護小規模多機能型居宅介護)
コラム 医療職・介護職による意思決定支援とは

第8章 施設サービスの種類と利用方法
8-1 介護保険施設に入所して受けるサービス
8-2 常時介護が必要な中重度の利用者への住まいの提供(介護老人福祉施設)
8-3 生活の場と医療を結び付ける(介護老人保健施設)
8-4 長期の療養生活を支える(介護医療院)
コラム 看取りは、病院でなく「自宅や施設」で

第9章 居住型施設の種類と利用方法
9-1 老人福祉法に規定されている住まい・有料老人ホーム
9-2 高齢者住まい法に基づくサービス付き高齢者向け住宅
コラム 居住型施設の上手な使い方

第10章 相談窓口となる事業者と サービスを提供する事業者
10-1 指定を受けた事業者が介護保険のサービスを提供できる
10-2 ケアマネジメントを提供する事業者が指定を受けるには
10-3 サービス事業者は種類ごと、事業所ごとに指定を受ける
10-4 事業者の指定には特例がある
10-5 指定事業者に関する情報を収集する
10-6 民間業者などの介護サービスを利用する
10-7 保険会社の介護保険商品を利用する
10-8 介護保険のサービスについての苦情があるとき
コラム 民間の生活支援サービスを活用する

DATA 巻末資料
資料1介護保険被保険者証
資料2主治医意見書
資料3介護報勢の主な加算減算
資料4要介護度別ケアプランの例
索引

高室 成幸 (監修), ケアマネジメント研究フォーラム (著)
出版社 : 秀和システム; 第7版 (2018/7/21)、出典:出版社HP