ケース管理会計




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はしがき

管理会計は、経営戦略や事業計画を策定し、予算管理、業務活動のコントロールなどを行ううえで、経営者にとって不可欠な学問体系である。

管理会計を駆使することで、企業の経営者は適切な戦略策定、経営上の意思決定および業績評価を行うことができるようになる。管理会計の特徴を一言で表現すれば、管理会計とは、マネジメントのためのツールであるということができよう。

従来、管理会計は主として企業の製造業の経営者によって活用されてきた。しかし現在では、製造業だけでなく、顧客対応が必要となる流通業、ホテル、航空会社などにもその適用範囲が拡がってきている。さらに、管理会計は企業だけでなく、銀行、政府、自治体などの公的機関、独立行政法人、病院、大学などにもその応用範囲が拡がってきた。加えて、その対象も、製品など有形資産だけでなく、無形のサービス、ソフトウェア、ブランド、レピュテーション(評判)、組織における人的資源の有効活用にまで広がってきた。

本書は、以上の現状に鑑みて、管理会計の基礎をかみ砕いて解説しているだけではなく、新たな管理会計の展開の考察や日本の実態に基づく説明を行っている。本書の特徴は、次の3点にある。1管理会計の基礎概念をわかりやすく解説していること2近年の新たな展開をもれなく考察対象としていること3、すべての章で、管理会計のケースを用いて説明がされていること本書は、主として大学の商学部、経営学部、経済学部の学生と大学院生、企業の中堅幹部、とくに経理部、経営企画部で仕事をしている経営者にとって真に役立つ著書となりうるように執筆されている。

本書の構成は、3部からなる。第1部では、管理会計の骨格部分となりうる内容がわかりやすく描かれている。この第1部を読むことで、読者は管理会計の基礎知識を習得できるであろう。

第2部では、管理会計の新展開が考察されている。この第2部の内容は、1980年代の後半以降から現代に至るまでの著しい理論的展開を遂げた管理会計のテーマが考察されている。大学院生にとっては、新たな研究の手掛りが得られるであろう。

第3部では、領域別の管理会計が考察されている。最初の3つの音客、経営者・従業員、ITに関して、最後の3つの章では、病院、銀行管理会計が考察されている。学生のニーズに合わせて講義内容を選択することもできよう。講義のテキストとして使う場合、2単位科目であれば第1部を講義に部と第3部を発展問題として後期に使用することができる。4単位科日って、ば、すべての章を講義やゼミナールに使い、ときに復習として課題提出や、テストなどを行うこともできよう。学生と教師のためには、2018年4月以降の練習問題を中央経済社のHPの本書の紹介欄から入手することができる。

本書の執筆にあたっては、(株)中央経済社 代表取締役社長 山本継氏編顔 当取締役専務 小坂井和重氏のお世話になった。記して、感謝の意を表したい。本書の読者が1人でも多く、管理会計を正しく理解し、企業実践に活用されることを望みたい。

2017年初秋
編集責任者
櫻井 通晴
伊藤 和憲

櫻井通晴 (編集), 伊藤和憲 (編集)
出版社 : 中央経済社 (2017/11/15)、出典:出版社HP

目次

はしがき

第1部 管理会計の基礎
第1章 管理会計の現代的意義
1 企業の経営者と管理会計
2 財務会計と管理会計
3 会社のガバナンス体制とコントローラー制度
4 管理会計担当者の倫理規定
5 管理会計の体系と本書の構成

第2章 経営戦略とマネジメント・コントロール
1 経営戦略の意義
2 戦略の3つの側面
3 ポーターの戦略論と管理会計
4 マネジメント・コントロールの意義
5 マネジメント・コントロール論の展開
6 インテルにおける戦略創発とマネジメント・コントロール

第3章 中期経営計画と利益計画
1 はじめに
2 中期経営計画と利益計画の経営上の役割
3 中期経営計画と利益計画における企業価値の創造
4 利益計画の活用
5 中期経営計画の更新とレビュー
6 味の素(株)グループの3つの中期経営計画策定事例
7 まとめ

第4章 予算管理
1 予算管理の意義と予算の機能
2 予算管理と責任会計制度
3 予算管理のプロセス
4 予算編成の手順と流れ
5 予算編成の方法
6 予算差異分析
7 脱予算管理
8 バッファロー社の予算管理

第5章 経営意思決定支援の管理会計
1 管理会計は経営者の意思決定に役立つ
2 経営意思決定のための増分分析
3 設備投資計画に必要な意思決定情報
4 設備投資モデルの決定と実行のプロセス
5 設備投資の経済性計算
6 プロジェクト・コントロール

第6章 コストマネジメント
1 はじめに
2 標準原価計算による管理
3 ライフサイクルコスティング
4 在庫管理
5 品質コストマネジメント
6 ミニ・プロフィットセンター
7 まとめ

第7章 原価企画
1 はじめに
2 原価企画誕生の背景
3 原価企画の特徴
4 原価企画の実施プロセス
5 原価企画における目標原価の範囲の捉え方
6 原価企画に用いられる主要なツール
7 原価企画のインフラ
8 原価企画の課題
9 まとめ

第8章 事業部制管理会計
1 事業部制とは
2 カンパニー制
3 事業部損益計算書と業績評価
4 本社共通経費の配賦
5 振替価格
6 事業部貸借対照表と業績評価
7 ケーススタディ:パナソニックのカンパニー制

第9章 経営分析
1 はじめに
2 経営分析とは
3 収益性分析
4 安全性分析
5 利益計画と損益分岐点分析
6 まとめ

第10章 日本の管理会計の実態
1 はじめに
2 日本における管理会計技法の導入状況
3 日本企業における予算管理の実態
4 まとめ

櫻井通晴 (編集), 伊藤和憲 (編集)
出版社 : 中央経済社 (2017/11/15)、出典:出版社HP

第2部 管理会計の新展開
第11章 ABCによる製品戦略、原価低減、予算管理
1 はじめに
2 製品戦略のためのABC
3 原価低減のためのABM
4 予算管理のためのABB

第12章 バランスト・スコアカード
1 はじめに
2 バランスト・スコアカードの役割
3 バランスト・スコアカードのフレームワーク
4 バランスト・スコアカードの運用
5 バランスト・スコアカードの導入成果
6 バランスト・スコアカード導入のケース
7 まとめ

第13章 レピュテーション・マネジメント
1 はじめに
2 コーポレート・レピュテーションとは何か
3 コーポレート・レピュテーションの測定
4 戦略的レピュテーション・マネジメント
5 ダイムラー社のレピュテーション・マネジメントの事例
6 まとめ

第14章 インタンジブルズ・マネジメント
1 はじめに
2 インタンジブルズと戦略の関係
3 インタンジブルズとは何か
4 インタンジブルズの体系と研究のアプローチ
5 事例によるインタンジブルズのマネジメント
6 まとめ

第15章 統合報告と管理会計
1 はじめに
2 統合報告の目的と管理会計
3 HBCフレームワークの基本概念
4 エーザイの価値創造プロセスの可視化
5 まとめ

第16章 組織間管理会計
1 はじめに
2 組織間管理会計の意義
3 組織間管理会計の源流
4 組織間管理会計の問題領域
5 組織間管理会計の理論的背景:取引コストの経済学

第3部 領域別の管理会計
第17章 顧客管理会計
1 はじめに
2 インタンジブルズとしての顧客資産の意義
3 顧客別収益性管理
4 顧客別収益性管理の発展
5 顧客別収益性管理の問題点
6 バランスト・スコアカードによる両者の関連づけ

第18章 人的管理会計
1 はじめに
2 コストとしての人
3 経営資源としての人
4 インタンジブルズとしての人
5 企業価値創造と人
6 ケース

第19章 IT管理会計
1 はじめに
2 ITマネジメントと管理会計上の課題
3 IT投資評価の方法と課題
4 情報資産の定義とレディネス評価
5 BSCを活用したIT投資の資本予算管理
6 まとめ

第20章 病院管理会計
1 はじめに
2 経営環境の変化と病院経営
3 医療の質の向上に資する管理会計手法
4 まとめ

第21章 銀行管理会計
1 はじめに
2 銀行管理会計の現状
3 ケースによる研究
4 銀行管理会計の方向性
5 まとめ

第22章 行政管理会計
1 はじめに
2 基本的な業績概念
3 戦略レベルの業績管理
4 業務レベルの業績管理
5 まとめ

付録 複利現価表
年金現価表
索引

櫻井通晴 (編集), 伊藤和憲 (編集)
出版社 : 中央経済社 (2017/11/15)、出典:出版社HP