管理会計 基礎編




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管理会計は、企業の経営者のために、戦略の策定と実行を支援するとともに、経営上の意思決定と業績管理を目的として多くの組織体で実践されている。

管理会計はいまや企業の経営幹部だけでなく非営利事業を含めてすべての階層の経営者に役立てられるようになった。従来の管理会計とは違って、計画とコントロールのためだけでなく、経営上の意思決定や経営戦略の策定と実行にも役立ちうる、経営者にとって不可欠の知識体系になってきている。

管理会計への役割期待の高まりと比例して、当然のことながら、その対象と内容もまた年々充実してきている。著者は2009年に、『管理会計 第四版』を上梓したのであるが、これは730ページを超える大著となったこともあり、経営者が比較的気軽に読める著書を上梓して欲しいという希望が著者に対して日増しに寄せられるようになった。大学生からは普及版が欲しいという要望が寄せられていた。研究者の1人として教科書ともいえる普及版を上梓するべきであるかについて迷ったのであるが、最終的には、管理会計を多くの人々に理解していただくことも管理会計の研究者にとっては重要な役割の1つではないかと考えて、管理会計の基礎編として纏めたのが本書である。

とはいえ、本書は『管理会計 第四版』のミニチュア版ではない。それは第1に本書によって著者が構想している管理会計の体系論を新たに明確に打ち出すことができたことがあげられる。

第2に、単に短く纏めただけでなく、基礎編として必要と思われるところを新たに付け加えた。企業の評価と財務分析を1つの章として加えたのは、管理会計の基礎としてこれらが不可欠と考えたからである。資金計画表を入れたのは、中小の企業ではその理解が必須だと考えたからである。予算管理におけるモティベーション、コーポレート・ブランドの特徴なども書き加えた。

第3の特徴は、学問的にはともかく実際には経営にあまり使われないなどの理由から、本書から除外した概念がある。リアルオプションや脱予算経営、スループット会計をはずしたのは、現時点で見る限り学用性が低いと考えられるからである。原価計算の章をはずしたのは、原価計質の記述が中途半端になると初心者にとっては却って理解が難しくなると考えたからである。

入門書の性格から、必要と思われる用語解説を各章ごとに挿入した。必要に応じて設例もつけた。また例外を除いて引用を可能な限り外して、自分の言葉で表現することにした。巻末には参考にした主要な文献を掲載した。もっと詳しい内容を研究したい読者には、『管理会計 第四版』をお薦めしたい。

本書の完成までには、大学院のゼミナールを通じて、城西国際大学の大学院ゼミ生一博士課程では榎本恒氏、関谷浩行氏、竹迫秀俊氏、また修士課程では羽鳥巧氏、石塚大氏一から貴重な意見をいただいた。記して感謝の意を表したい。出版では、編集局長の市川良之氏と角田貴信氏にお世話になった。

2010年 初夏
櫻井通晴

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版 (2010/7/1)、出典:出版社HP

目次

・第Ⅰ部 管理会計の基礎
第1章 管理会計の意義・本質
第2章 管理会計上の諸概念
第3章 企業評価と財務分析
練習問題 経営分析
第4章 事業部制の業績管理

・第Ⅱ部 経営計画とコントロールのための会計
第5章 損益分岐点分析と直接原価計算
練習問題 直接原価計算
第6章中長期計画、利益計画と予算管理
第7章 標準原価計算とコストコントロール
第8章 原価企画による戦略的コスト・マネジメント
第9章 ABCによる製品戦略、原価低減、予算管理
練習問題 ABC
第10章 統合的コスト・マネジメントと工学的手法
第11章 販売促進費、物流費、本社費の管理
第12章 資金管理とキャッシュ・フロー経営

・第Ⅲ部 経営意思決定のための会計
第13章 経営意思決定の基礎
第14章 戦略的意思決定と設備投資計画
第15章 戦略的・戦術的価格決定

・第IV部 経営戦略の策定と実行のための会計
第16章 経営戦略の管理会計への役立ち
第17章 バランスト・スコアカード
参考 三菱東京UFJ銀行の戦略マップ
第18章 無形の資産とコーポレート・レピュテーションの管理

参考文献

付録
複利現個表
年金現価表

索引

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版 (2010/7/1)、出典:出版社HP

本書の活用方法

本書は、全部で4部からなっている。第I部 管理会計の基礎、第Ⅱ部 経営計画とコントロールのための会計、第Ⅲ部 経営意思決定のための会計、および第IV部 経営戦略の策定と実行のための会計である。

大多数の読者には、管理会計の基礎から始めて、章の順序どおりに読み進めることをお薦めしたい。しかし、管理会計について一通りの知識をもった読者には、最近の動向を知るために、第IV部の経営戦略の策定と実行の会計から読み始めるといった本書の活用方法もある。

逆に、利益管理、原価管理、資金管理からなる伝統的な管理会計を中心に学習したい読者には、第Ⅰ部の管理会計の基礎に続いて、第Ⅱ部の経営計画とコントロールのための会計を中心に読み進めることをお薦めしたい。

さらに、本書を完全にマスターして深く学習したい読者には、拙著『管理 会計 第四版』の読破にチャレンジすることをお薦めしたい。

櫻井 通晴 (著)
出版社 : 同文舘出版 (2010/7/1)、出典:出版社HP