最新 図解でわかる 介護保険のしくみ




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はじめに

介護保険制度がスタートして19年目を迎えました。その間、5回の介護保険法改正と6回の制度報酬改定が行なわれ、利用者はもちろん、市町村職員、サービス事業者、医療機関、ケアマネジャーですら理解できないほど介護保険は複雑化しています。また昨今は戦後社会保障の改変が介護保険制度を軸に展開されようとしており日が離せません。

国は意識的に公表していないようですが、日本より5年早く介護保険をスタートさせ、モデルとしてきたドイツが平成27年から従来の要介護3・4・5に、新たに要介護1・2を認定し始めています。これ本が軽度者を切り捨て介護給付を削減しているのとは真逆の政策転換です。認知症が増えたためで国民はそれを評価しています。

日本の介護保険が、要支援から要介護2まで(利用者の6割)を介護保険から市町村事業に移行する政策の結果が出るころには政策担当者は交代しているでしょう。しかし、利用者の調査をすることなく、多額の調査費用をつぎ込んで財務省の言いなりで給付削減するなら、国民不在です。介護職の低賃金、医療職の過剰労働を是正することなく、7割の受入れ機関が違法行為している「外国人技能実習制度」を介護職に広げることが人材確保ではありません。日本の介護職の低賃金の改善を優先すべきです。

私は大学でケアマネジメント論を教え、社会福祉士の教育をしながら渋谷区で初めてのNPO法人をアマネジメント単独事業を続けてきました。ケアマネジャーとして利用者や家族と向き合い、介護保険制度と向き合ってきました。また、地域資源を活かしたケアマネジメントを提唱し、研修を続けてきました。

本書は、介護保険制度のしくみから利用法、平成29年介護保険法と平成30年介護保険制度報酬改定、介護度別のサービス利用のしくみ、介護保険外の施設サービスなどまでを解説しました。未熟な考察が多々あると思いますが、皆様のご意見、ご批判をいただき、今後に反映させていきたいと考えています。

平成30年6月
大妻女子大学大学院非常勤講師
NPO法人渋谷介護サポートセンター事務局長
服部万里子

服部 万里子 (著)
出版社 : 日本実業出版社; 最新7版 (2018/7/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 介護保険のあらましと利用法
1-1 保険者は市町村で被保険者は40歳以上の人
65歳以上の第1号被保険者と40~64歳の第2号被保険者がいる

1-2 認定申請から介護度が決まるまで
市町村に申請して介護認定を受けた人に、要介護度を記した保険証が送付される

1-3 主治医の意見書が介護認定やケアプランを左右する
ケアマネジャーだけ利用者の同意の下でコピーを入手できる

1-4 認定結果に納得できない人はどうする?
一般的には市町村に「区分変更申請」を行なう

1-5 要介護状態になった原因は問われる?
65歳以上の第1号被保険者は不問。40~65歳の第2号被保険者は特定疾患によるものだけ適用

1-6 介護保険の適用外の人
指定障害者支援施設などの施設入所者および刑務所に収監されている人は除外されてきた

1-7 介護保険で受けられるサービス
総合事業、予防サービス、介護サービス、地域密着型サービスがある

1-8 介護保険のサービスの使い方
ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて提供される

1-9 どんなサービスを組み合わせるとよいか、いくら払うか
市町村独自の保険の上乗せ=「横だしサービス」を活用

1-10 介護保険のサービス以外の地域資源の活用
在宅での暮らしを継続するためのサービスを探して地域でケアする

1-11 認知症の人の介護保険活用法
認知症は施設や入院だけではなく、地域で暮らし続けられるようにケアする

1-12 65歳以上の人の保険料は9段階
所得の低い人は、補足給付の対象となる

1-13 医療ケア&終末期の介護保険活用法
健康状態に気を配り、事前に緊急時の対応を決めておく

COLUMN 1 家族の葛藤と負担、怒りに向き合うケアマネジメント―無理しない、諦めない、見放さない

第2章 平成30年度の改正で何が変わった?
2-1 自立支援・重度化防止の成果で市町村に交付金
市町村で61項目、都道府県で20項目を改善すると200億円の交付金(税制インセンティブ)

2-2 介護療養型は平成36年3月末までに介護医療院に移行
都道府県が削減を予定している病床が移ると保険給付が急増する

2-3 創設された「共生型サービス」とは
障害児者等向けの居宅サービスに介護保険の事業所指定が可能になった

2-4 第2号被保険者の被用者保険の保険料は総報酬制に移行
上乗せされた保険料は国の公費負担の削減に使われる

2-5 平成30年8月から65歳以上に3割負担導入
高額介護費の見直しで負担上限が3万7200円から4万4400円に

2-6 有料老人ホームの指定取消しが制度化
都道府県は業務停止・制限を命じ、市町村は地域密着型特定施設の指定取消し

2-7 小規模デイサービスの指定拒否が制度化
サービス供給への保険者の関与が強化された

2-8 要介護認定期間を3年へ延長
判定にかかる市町村の事務負担や費用を軽減するのが狙い

2-9 生活援助の無資格者導入等、人材の多様化
新たな無資格者で報酬減額、通所リハ等で人員基準を緩和してサービス誘導

2-10 サービスの適正化福祉用具レンタルに上限価格設定
平成30年10月から、全国平均価格より16%超のものは保険適用外に

2-11 定期巡回・随時対応型訪問介護看護等での要件緩和
運営基準を緩和して、定額報酬パッケージ型サービスへの事業化を誘導

2-12 身体拘束の適正化身体拘束廃止の取組みをしていないと減算
対象サービスが3施設からケア付き住宅までに広がったうえ10%減算に

2-13 通所介護(デイサービス)の利用は2時間単位が1時間単位へ
ADL(日常生活動作)の改善を評価し,加算が付くことになった

2-14 ケアマネジメントの適正化生活援助サービスの回数制限
全国平均より利用回数が多いケアプランは事前に市町村へ届け出る

2-15 同一建物集中減算の対象が拡大し、条件緩和
同じ建物であれば移動が少なく効率的に訪問できるため

2-16 中重度中心への介護報酬見直し
医療ニーズ対応、ターミナル対応で加算、医療保険から介護保険への移行推進

2-17 介護職の処遇改善加算のⅣ・Vは廃止予定
介護職の低賃金の補填が5段階から3段階へ変更予定

Column 2 共生型サービスの狙いは戦後福祉の転換と介護保険への移行

第3章 要支援1・2の人のサービスのしくみと利用法
3-1 介護保険の4つのサービス体系
介護保険の利用、介護予防事業、総合事業、一般介護予防事業がある

3-2 認定せずにチェックリストでサービス対象を選定
サービスを受けることで健康状態が改善する

3-3 要支援の訪問型サービス(総合事業)
要支援1、要支援2、総合事業の事業対象者の訪問型サービスとは

3-4 総合事業の通所型サービスは4類型
国基準のサービスと市町村の独自サービスは1~3割負担

3-5 総合事業のその他のサービス
メニューにはあるが、市町村によりないところも多い

3-6 要支援の地域密着型サービス
メニューにはあるが、利用されていることは少ない

3-7 自宅で暮らして利用する 要支援1・2の介護予防サービス
訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、短期入所(療養)介護など

3-8 住まいを移して利用する 要支援1・2のケア付き住宅
予防特定施設と要支援2の認知症グループホーム

3-9 要支援1・2のその他のサービス
居宅療養管理、小規模多機能、福祉用具、住宅改修

3-10 地域包括支援センターは地域の相談窓口
役割は医療連携、地域ケア会議、予防マネジメント、総合事業マネジメントなど多様

COLUMN 3 要介護認定者は増えたが利用者は減った

第4章 要介護1~5の人のサービスのしくみ
4-1 要介護認定は7段階。支給限度額が異なる
介護保険証に記載された区分支給限度額を超えた分は全額自費になる

4-2 介護保険サービスの報酬は国が決める
地域区分は居住地域ではなく、利用するサービス事業所の所在地で決まる

4-3 ケアマネジメントは介護保険の要
居宅、施設、小規模多機能(看護小規模多機能)、ケア付き住宅等に分かれる

4-4 アセスメントとモニタリングがケアマネジメントの基本
本人の意向に基づいて自立支援・重度化防止

4-5 サービス担当者会議と地域ケア会議はどこが違うのか
似て非なるものだが、ケアマネジャーの真価が問われる

4-6 上乗せ・横だしサービスと基準該当サービス
地方自治体は独自の判断で介護保険からの給付を行なうことができる

4-7 特例介護サービス費と特定介護サービス費
市町村やサービス受給者の事情を考慮して特例が認められている

4-8 生活全体を捉えた総合的ケアプランと多職種連携
地域包括ケアではケアの質が問われる

COLUMN 4 ケアマネジメントの標準化と利用者のサービス選択、決定権

第5章 要介護1~5の人の居宅サービスと利用法
5-1 居宅サービス1 訪問介護(ヘルパーが居宅で提供するサービス)
入浴・排泄などの「身体介護」、調理、掃除などの「生活援助」、「通院乗降介助」がある

5-2 居宅サービス2 夜間対応型訪問介護
臨時対応もしてくれるが、制度導入から3年経過してもサービス提供事業所が増えない

5-3 居宅サービス3 訪問看護サービス
退院支援、在宅でのリハビリ、在宅のターミナル(看取り)に不可欠

5-4 居宅サービス4 訪問リハビリテーション
報酬減額の一方で加算が強化され、効果が求められる

5-5 居宅サービス5 訪問入浴
自宅に持ち込まれた風呂で寝たまま入浴サービスが受けられる

5-6 居宅サービス6 居宅療養管理指導
ケアマネジャーの給付管理の対象外。医師、薬剤師、歯科医師等が行なう

5-7 居宅サービス7 通所介護(デイサービス)
ADL改善効果が求められ、家族の介護負担の軽減は評価されない

5-8 居宅サービス8 (地域密着型サービス) 認知症対応型通所介護と療養通所介護
小規模認知症専用デイサービスは認知症の増加とともにニーズ拡大

5-9 居宅サービス9 地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
平成27年度に続いて報酬が減額されたため経営は厳しい

5-10 居宅サービス10 通所リハビリテーション
短時間化に伴い医師の関わり変更、IC活用、訪問から通所への移行

5-11 居宅サービス11 短期入所生活介護と短期入所療養介護
短期入所生活介護は施設のショートステイ、療養介護は医療機関のショートステイ

5-12 居宅サービス12 福祉用具の貸与と購入
福祉用具は全国平均価格基準に上限設定

5-13 居宅サービス13 住宅改修
段差解消や手すりなど8万円まで現物給付

5-14 複数サービスパッケージ1 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
国が推奨する上限価格設定。介護と看護を一体的に24時間、定額で提供する

5-15 複数サービスパッケージ2 小規模多機能型居宅介護
地域包括ケアの切り札の1つ。上限設定の介護度別定額

5-16 複数サービスパッケージ 看護小規模多機能型居宅介護
病院から退院したときや、重度の人の在宅での受け皿として期待されている

COLUMN 5 上限設定サービスと事業所数のコントロール

第6章 要介護1~5の人の介護保険施設・ケア付き住宅の利用法
6-1 保険がきく地域密着型ケア付き住宅 特定施設入居者生活介護
有料老人ホームや養護老人ホームで3人以下に介護サービスを提供

6-2 保険がきく認知症専用ケア付き住宅 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
個室、3食付き、9人以下の小規模な地域密着型サービス

6-3 介護保険施設の特徴と選び方
要介護3以上の介護老人福祉施設の他、リハビリ施設、医療ニーズ対応施設がある

6-4 介護保険施設1 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
現在の入所条件は要介護3以上。認知症と看取りの施設としての位置づけ

6-5 介護保険施設2 介護老人保健施設
在宅復帰目的のリハビリと看取り、退院後の受け皿として

6-6 介護保険施設3 介護療養型医療施設
いわゆる老人病院。平成36年3月には完全廃止で、介護医療院へ移行する

6-7 介護保険医療施設 介護医療院
重度者と看取りのための医療・生活施設。医療病床の転換が増える

COLUMN 6 介護医療院の将来。介護療養型医療施設は早く移行するか

第7章 介護保険外の老人福祉施設、有料老人ホーム、高齢者住宅
7-1 介護保険外の老人福祉施設1 養護老人ホーム
大正時代は養老院、経済的困窮者の老人ホーム

7-2 介護保険外の老人福祉施設2 ケアハウス
軽費老人ホームの新タイプ―バリアフリーでケアの付いていない施設

7-3 介護保険外の有料老人ホーム 健康型有料老人ホームと外部サービス利用型有料老人ホーム
保険外だが、在宅介護サービス併設が多く、退院後の受け皿として急増

7-4 「無届け施設」は、なぜ増えるか
国は有料老人ホームの届出を行なえと言いつつ、利用者不在の制度改正

7-5 介護保険外の高齢者賃貸住宅1 サービス付き高齢者住宅
保険外だが、国が補助金で支援。定額報酬の介護サービス併設を誘導

7-6 介護保険外の高齢者賃貸住宅2 シルバーハウジング (シルバーピア)
当時の建設省と厚生省の共管で10万室建設された管理人付きバリアフリー住宅

COLUMN 7 外国人技能実習制度の介護職解禁は介護職の低賃金の固定化につながる危険がある

第8章 国が目指す地域包括ケアと介護保険の行方
8-1 一般病床に在宅復帰率導入
地域包括ケアは医療が全面。退院させて医療から介護保険へ移行

8-2 介護保険の1人当たり受給額は制度スタート以来下がっているが
医療保険からの付替えで増大した介護給付の分は国民が負担

8-3 非営利ホールディングス化の構想
経営統合による効率化を進め、介護事業への出資もできる

8-4 介護サービスはパッケージ化と包括単価(上限設定)へ誘導
小規模事業所の淘汰、全国一律から市町村への移行促進、市町村格差の拡大

8-5 介護職は雇用条件が悪いから介護から離れてしまう
現場の人手不足を外国人介護職に求めては根本的な解決にならず逆効果

8-6 福祉も教育も「共生型」の名目で保険制度に移行?
介護保険の保険料徴収年齢の引下げにつながる

8-7 後期高齢者医療保険料減額特例廃止による高齢者への影響
平成29年度から保険料がジワジワ上がって負担増

COLUMN 8 介護保険とサービス事業所の生き残り対応

巻末資料
資料1: 介護保険 被保険者証
資料2 : 主治医意見書
資料3: 要介護認定の訪問調査票
資料4 : 介護保険 認定のための申請書
資料5: 基本チェックリストの質問内容
資料6 : 日常生活自立度
資料7: 介護予防サービス計画作成・介護予防ケアマネジメント依頼(変更)届出書
資料8:住宅改修費支給申請書
資料9:介護保険高額介護(介護予防)サービス費支給申請書
資料10:介護保険負担限度額認定申請書
資料11: 介護保険負担限度額認定申請書の同意書
資料12:介護保険基準収入額適用申請書
資料13: 介護保険負担限度額認定証と施設とショートステイの食費・居住者の負担限度額と基準費用額一覧表
資料14:区分支給限度基準額に含まれない費用、適用されないサービス
資料15:介護保険負担割合証
資料16: 要介護・要支援状態区分による状態像

索引

服部 万里子 (著)
出版社 : 日本実業出版社; 最新7版 (2018/7/20)、出典:出版社HP