図解入門 よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み[第3版]




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はじめに

本書は2008年の初版発売以来、今日まで長きにわたって多くの読者から愛用されてきました。このたび新たなべ容を加え、第三版を刊行することとなりました。

近年、毎年のように起こる気候変動により、日本や世界の国のどこかで「水のあるところには有り余るほどあって洪水・土砂災害まで起こすが、ないところには一日の生活用水すらない」という偏在した状況が発生し、人々が安全で健康的な生活をするための水を確保することが難しくなっています。こうした水問題の解決には地球上の淡水は限られた量が循環することで成り立っていることを認識し環境保全、リサイクル、節水などの有効利用を図ることが大切です。

水は簡単な構造をしたありふれたものですが、他の物質にはない「何でも溶かす」という特異な性質を持っています。何でも溶かす水は有害なシアン、6価クロム、重金属、フッ素、ホウ素、難分解性有機物など様々な有害成分を取り込みます。これを不完全な処理のまま排出すれば水環境汚染や公害の原因となります。

水処理は「分離と精製の技術」ともいえるので、化学、物理、機械、生物、環境などの基礎知識に加えて現場経験が要求されます。これらの手段を用いて適切な処理を施せば汚れた水はきれいな水に甦ります。それまで捨てていた汚濁排水でも高度処理すれば再利用でき水道料金の節約となるので、工場や事業所の経費節減ともなります。

本書は水処理について学ぶ学生や初心者の方々に読んでいただくことを想定し、わかりやすく解説することを心がけました。本書が水処理技術の基礎知識の整理と実務の参考に役立てば幸いです。

2017年11月 和田洋六

和田洋六 (著)
出版社 : 秀和システム; 第3版 (2017/12/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

Chapter1 貴重な資源、水
1 循環する淡水は地球上の水の約0.05%
2 水は生命維持と産業に必須の資源
3 河川には本来、自然浄化力がある
4 社会を支える水の特異な性質
5 暮らしを守る下水道の役割
6 必要性が増す水のリサイクル
コラム 富士山は大きなろ過装置

Chapter2 水処理技術のキーワード
7 DO(溶存酸素)―水中の酸素溶解度
8 COD(化学的酸素要求量)
9 BOD(生物化学的酸素要求量)
10 TOCI水中の全有機性炭素量
11 SS-直径2ミリ以下の不溶解性浮遊物質
12 pH-酸性やアルカリ性の度合いをはかる尺度
13 酸化と還元-水処理の基本
14 ORP(酸化還元電位)
15 電気伝導率水の種類で異なる
16 蒸発残留物―水の味や質を決める要素
17 硬度―「軟水」「硬水」とは?
18 アルカリ度―地下水や地質条件を知る指標
19 ランゲリア指数スケール制御の目安
20 塩素殺菌利点と欠点の理解が大切
21 紫外線殺菌—化学薬品を使わない処理
22 AOP(促進酸化法)―注目が高まる技術
コラム 亜硝酸性窒素と硝酸性窒素

Chapter3 生活用水をつくる
23 大切な上水道水源の水質
24 飲料水の水質と塩素殺菌
25 塩素殺菌と有害物質トリハロメタン
26 緩速ろ過と急速ろ過
27 小さな粒子を寄り集める凝集処理
28 鉄とマンガンの除去
29 汚濁水の砂ろ過(圧力式ろ過)
30 分離精度が高い膜ろ過
31 異臭除去にも効果、活性炭吸着
32 二次汚染のないオゾン酸化
33 淡水不足の地域で活躍、海水淡水化
34 RO膜で地下水を飲料水にする方法
コラム BODはとれてもCODは残る

Chapter4 工業用水をつくる
35 工業用水の水質とニーズ
36 工業用水の前処理と用途
37 懸濁物を沈める沈殿分離
38 水より軽いものに浮上分離
39 粒子に泡を付着させる加圧浮上
40 イオン交換樹脂による脱塩
41 イオン交換樹脂の再生①単床塔
42 イオン交換樹脂の再生②並流再生と向流再生
43 イオン交換樹脂の再生③混床塔
44 水中の二酸化炭素を除く簡単な方法
45 膜面が詰まりにくいクロスフローろ過
46 砂ろ過より高精度なMF膜ろ過
47 より高精度なUF膜ろ過
48 逆浸透作用を利用するRO膜脱塩
49 RO膜を排水処理に使うポイント
50 脱塩と濃縮が同時に可能な電気透析
51 産業活動に欠かせない純水
52 半導体製造に不可欠な超純水
53 シリカ(二酸化ケイ素)の除去
54 カルシウムの除去
55 電力の安定供給に貢献、ボイラ水
56 用途として最も多い冷却水
コラム 湖沼などの富栄養化を防ぐには

Chapter5 排水の物理化学的処理
57 pH調整による重金属の処理
58 硫化物法による重金属の処理
59 キレート凝集剤による重金属の処理
60 凝集沈殿での粒子径と沈降速度
61 6価クロム排水の処理
62 シアン排水の処理
63 ふっ素含有排水の処理
64 ほう素含有排水の処理
65 処理困難なほうふっ酸の処理
66 晶析材によるリンの吸着処理
67 亜鉛含有排水の処理
68 COD除去に適したフェントン酸化
コラム 排水処理は初めの分別が大切

Chapter6 微生物の力を利用する排水処理
69 好気性微生物の力を使う活性汚泥法
70 長時間ばっ気法と汚泥再ばっ気法
71 汚泥が沈まないバルキングの原因と対策
72 微生物の継続保持が容易な生物膜法
73 単一槽で行える回分式活性汚泥法
74 利点の多い膜分離活性汚泥法
75 生物の代謝活動を支える流量調整槽
76 汚泥を分離する沈殿槽
77 汚泥計量で流量を一定に保つ
78 汚泥負荷と容積負荷
79 毒性物質と生物の増殖阻害物質
80 富栄養化の一因となる窒素の除去
81 活性汚泥によるリンの除去
82 食品排水処理などで活躍、UASB処理
コラム 汚泥をくみ上げるエアーリフトポンプ

Chapter7 水処理で生じる汚泥の処理
83 スラッジの種類と脱水機の使い分け
84 ろ過室で加圧するフィルタープレス
85 有機系汚泥に適した真空脱水機
86 用途が広いベルトプレス
87 遠心力を利用、遠心脱水機
コラム 発電で注目のバイオガスの回収

Chapter8 環境と命を守る水処理技術
88 日本における環境規制の動向
89 水のリサイクル①-RO膜の活用
90 水のリサイクル②イオン交換樹脂の活用
91 水のリサイクル③MBRの活用
92 水のリサイクル④効果的な光オゾン酸化
93 水のリサイクル⑤シアン含有排水
94 水のリサイクル⑥3価クロム化成処理排水
95 回収・再資源化①―めっきで多用されるニッケル
96 回収・再資源化②—用途が広いクロム
97 具体例①表面処理排水のリサイクル
98 具体例②食品工場の排水処理
99 具体例③医療用水の製造
100 化学工業などで生じるジオキサンの処理
101 セシウム(放射性物質)の除去
102 汚染土壌と地下水の浄化
103 天然の蒸留水、雨水の利用
104 水資源有効利用に効果、中水道
コラム 排水リサイクルのためのポイント10

巻末資料
目的別処理技術一覧
①用水の種類と処理技術
②排水の成分と処理技術

索引

参考文献

本書は、図やイラストなどを用いて水処理のひととおりの基本を易しく解説した書であり、次のような方々におすすめです。

・水処理についてこれから学ぶ学生が、概要について広く押さえる。
・仕事で必要な方が、水処理の基本を押さえたり、自分の弱い項目の概要についておさえる。
・公害防止管理者(水質関係)、下水道技術検定などの水処理に関連する資格取得をめざす人の副読本として。

もちろん、水処理について関心のある一般の方にもおすすめです。

和田洋六 (著)
出版社 : 秀和システム; 第3版 (2017/12/20)、出典:出版社HP