基本からわかる 電気回路講義ノート




【電気回路を理解するためのおすすめ本 – 電気主任技術者試験などの参考書にも!】も確認する

監修のことば

私たちは日ごろあらゆる場面で電気を利用し快適で便利な生活を送っています.これほどまでに電気の恩恵を享受できるようになったのは,近年電気電子工学が著しく発展したことによります。電気電子の専門家を目指すには,先ず基本原理を体系的に学び,これを理解する必要があります.

電気電子工学を修得するための第一歩は電気回路をマスターすることです。電気は直接目に見えないので、頭の中にいろいろな現象をイメージすることが大切です。電気回路の学習を通して電気の様々な動作を十分に理解したのちに,それぞれの専門分野を学ぶことが,エキスパートになるための最良・最短の道です.

本書は電気電子工学の基礎である電気回路を初心者にできるだけわかりやすく記述したものです.これまでにも、ビギナーを対象とした教科書・参考書は多数出版されていますが,電気回路の本質まで掘り下げて理解を深めることを意図したものは少ないように思われます。たとえ取り上げる項目が広範・多岐で,かつ記述が平易であったとしても,より深い理解が得られるようでなければ,専門分野を学習するための基礎力を養うことは困難でしょう。

そこで本書では、専門分野の学習に支障のない程度の基本的な力が得られるよう対象項目を限定し,それぞれについて丁寧に記述することにより深く理解できることを目指しました。これを実現するため,電気回路の教育経験の豊富な大学教員に執筆をお願いしました。執筆にあたっては、読者の理解をより容易にするため、執筆者間の連携を密にして本の統一感が損なわれないように留意しています.

本書は、全体で8章より構成されています。先ず電気回路の学習を始めるにあたり、直流の基礎を十分理解するため1章「直流は電気回路の登竜門」を記述し,電圧,電流,電力,熱などの関係や,2章以下の学習に繋がる基本事項について「説明しています。次いで、2章「直流回路」ではオームの法則ほかの基本法則や回路方程式の立て方,電源の考え方や種々の定理とその利用法などについて学習します.3章「交流の基礎」では日常利用している交流について基礎的事項を十分理解を深めたうえで,正弦波交流とフェーザや複素計算法の関連などについて学習します。

次いで、4章「交流回路」では交流の基本的な回路の理論的な取扱いについて理解したのち,共振回路の特性や2章で学んだ各種定理の交流回路における利用法などを学習します.さらに,5章「電力」では,交流回路における電力の考え方を理解し,有効電力,皮相電力,無効電力,力率などについて学習します。6章「相互誘導」では,ファラデーの電磁誘導の法則を基に二つの巻線間の電磁気的な相互作用を理解するとともに巻線のドット表示や変圧器の基本等について学習します.7章「二端子対回路」では2組の端子対を持つ回路を種々なパラメータを用いて取り扱う方法について学習します.最後に,8章「三相交流」では発電所や送配電システム各種電源などに利用される三相交流の基本的な回路について,電力も含めて学習します。

本書で扱う内容を十分学習し、理解できた方は電気電子工学の基礎的な力が十分に備わったと考えてよいでしょう。ただし,「理解した」ということは,ある事項を他の人に説明する場合,納得していただくことを意味します.この場合,皆さん自身の言葉で説明しなければならないことは言うまでもありません.それでは,電気回路の学習を始めましょう.

2014年1月
監修者 西方正司

岩崎 久雄 (著), 鈴木 憲吏 (著), 鷹野 一朗 (著), 松井 幹彦 (著), 宮下 收 (著), 西方 正司 (監修)
出版社 : オーム社 (2014/2/25)、出典:出版社HP

目次

1章 直流は電気回路の登竜門
1-1 直流とは
1-2 電圧と電流
1-3 オームの法則抵抗Rの性格を表した法則
1-4 電力
1-5 合成抵抗
1-6 分圧と分流
1-7 3-Y変換
練習問題

2章 直流回路
2-1 キルヒホッフの法則
2-2 回路方程式
2-3 電圧源,電流源
2-4 重ね合わせの理
2-5 テブナンの定理
2-6 ブリッジ回路
練習問題

3章 交流の基礎
3-1 交流とは
3-2 正弦波交流
3-3 フェーザ表示とフェーザ図
3-4 交流基本回路
3-5 交流回路の複素計算
練習問題.

4章 交流回路
4-1 交流回路とは
4-2 周波数特性と共振回路
4-3 交流回路における各種定理の適用
練習問題

5章電力
5-1 交流電力の考え方
5-2 有効電力
5-3 皮相電力と無効電力
5-4 力率
5-5 複素電力
練習問題

6章 相互誘導
6-1 相互誘導回路
6-2 ドット表示
6-3 等価回路と理想変圧器
練習問題

7章 二端子対回路
7-1 二端子対回路の定義
7-2 二端子対パラメータ
7-3 二端子対回路の接続
練習問題

8章 三相交流
8-1 対称三相交流
8-2 電源のY結線と△結線
8-3 Y結線負荷の電圧・電流
8-4 △結線負荷の電圧・電流
8-5 A-Y変換とY-A変換
8-6 三相電力
練習問題

練習問題解答&解説
索引

岩崎 久雄 (著), 鈴木 憲吏 (著), 鷹野 一朗 (著), 松井 幹彦 (著), 宮下 收 (著), 西方 正司 (監修)
出版社 : オーム社 (2014/2/25)、出典:出版社HP