新版JISステンレス鋼溶接受験の手引―JIS Z 3821ステンレス鋼溶接技能者研修テキスト




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まえがき

わが国におけるステンレス鋼の生産は,2004年をピークに減少に転じているものの中国に次いで,世界第二位の位置を占めている。ステンレス鋼の用途は,家庭用品をはじめ,化学装置,船舶,車両,食品加工機械,建築材料,原子力機器など多岐にわたり,わが国の産業の重要な部分を支えている。それらのステンレス鋼を使用した装置,構造物の製作には溶接施工が不可欠である。そのため,ステンレス協会では,1971年にステンレス鋼の溶接を行う溶接材能者の溶接技術検定制度を発足し,専門級としての資格を与えていた。しかし,(一社)日本溶接協会の溶接技能者要員認証制度の改正を機に,ステンレス鋼が普及してステンレス鋼のみの溶接技能者の存在が増えたことを考慮し,各種ステンレス鋼溶接専門級のうち,下向溶接姿勢を基本級として認める検定制度の改定が行われ現在に至っている。この間,「JISステンレス鋼溶接受験の手引」は,ステンレス協会編集の元で,ステンレス鋼に対する知識の普及と溶接技術・技能の向上のために,溶接技能者はもとより溶接技術者,研究者のための解説書として活用されており,すでに7版第9刷まで17回の重版を行っている。

このたび,ステンレス鋼の大幅なJIS規格改訂に伴い,同書の改訂が必要となり,また,編集作業を(一社)日本溶接協会が行う事になり,大幅な内容の見直し作業を行い,「新版JISステンレス鋼溶接受験の手引」として出版することになった。編集方針として,旧版で謳われている,ステンレス鋼溶接技能者・溶接技術者・研究者にも役に立つ内容にする事は,極力活かすものの,解説が難解すぎる内容や古い記述内容などの見直しを行った。第1章「ステンレス鋼の種類と性質」では,1.1節にステンレス鋼の溶接技能検定受験のための基礎知識を,12節に高度技術者・研究者にも役立つ内容を,と分けて解説した。

また,第3章「溶接機とその特性」では,本書のみでも溶接全般が理解できるように詳細に解説した。

最後に,本書の出版に当たり,編集方針から最終稿まで詳細に計画・検討.執筆いただいたワーキンググループの方々,編集作業に多大の労力を割いて頂いた,産報出版(株)の編集者,星野孝昌様並びに(一社)日本溶接協会の川添太郎様に心からお礼申し上げる。

平成29年6月
(一社)日本溶接協会
『新版 JIS ステンレス鋼溶接受験の手引』編集ワーキンググループ
主査 篠﨑 賢二(広島大学)
井上 裕滋(大阪大学)
岡﨑 司((株)タセト)
葛西 省五((株)クロセ)
金子 裕良(埼玉大学)
菅谷 裕司((一社)日本溶接協会)
山岡 弘人((株)IHI)

目次

第1部 JIS Z 3821 受験講座

1 ステンレス鋼の種類と性質
1.1 ステンレス鋼の基礎知識
1.1.1 ステンレス鋼とは
1.1.2 ステンレス鋼におけるCrとNiの役割
1.1.3 ステンレス鋼の分類
1.1.4 ステンレス鋼の物理的性質と機械的性質
1.2 ステンレス鋼の詳細
1.2.1 ステンレス鋼の歴史
1.2.2 ステンレス鋼の規格
1.2.3 ステンレス鋼の種類
1.2.4 ステンレス鋼の性質

2 ステンレス鋼の溶接
2.1 アーク溶接の概要
2.2 各種溶接法と溶接材料
2.2.1 被覆アーク溶接
2.2.2 炭酸ガスアーク溶接
2.2.3 ミグ溶接・マグ溶接
2.2.4 ティグ溶接
2.2.5 その他の溶接法

3 溶接機とその特性
3.1 電気の知識
3.1.1 電圧,電流,抵抗およびオームの法則
3.1.2 直流と交流
3.1.3 電力と力率
3.1.4 電流と電圧の測定
3.2 アーク現象の知識
3.2.1 アークの一般特性
3.2.2 溶接機の電源外部特性とアーク
3.3 溶接機の種類と特徴
3.3.1 被覆アーク溶接
3.3.2 炭酸ガスアーク・ミグ・マグ溶接
3.3.3 ティグ溶接
3.4 溶接機の取扱い
3.4.1 溶接機の設置と接続
3.4.2 溶接機の保守管理

4 溶接施工法
4.1 溶接記号
4.2 溶接継手設計上の注意
4.3 溶接施工
4.3.1 溶接作業前の準備
4.3.2 開先準備
4.3.3 溶接ジグの準備
4.3.4 タック溶接(仮付溶接)
4.3.5 溶接条件
4.3.6 本溶接
4.3.7 管の本溶接
4.3.8 溶接棒
4.3.9 溶接後の処理
4.4 溶接による変形と残留応力
4.4.1 溶接による変形の防止法
4.4.2 残留応力の除去法
4.5 溶接欠陥とその対策
4.5.1 ビード形状不良,のど厚不足,アンダカットおよびオーバラップ
4.5.2 ブローホールおよびピット
4.5.3 溶込不良,スラグ巻込みおよび融合不良
4.5.4 割れ
4.6 マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接性と溶接施工法
4.6.1 溶接性
4.6.2 溶接材料の選択
4.6.3 溶接施工法と注意事項
4.7 フェライト系ステンレス鋼の溶接性と溶接施工法
4.7.1 溶接性
4.7.2 溶接材料の選択
4.7.3 溶接施工法と注意事項
4.8 オーステナイト系ステンレス鋼の溶接性と溶接施工法
4.8.1 溶接性
4.8.2 溶接材料の選択
4.8.3 溶接施工法と注意事項
4.9 オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(二相ステンレス鋼)の溶接
4.10 析出硬化系ステンレス鋼の溶接

5 炭素鋼との異種金属溶接
5.1 異種金属との溶接
5.2 炭素鋼との異材溶接
5.2.1 異材溶接の考え方
5.2.2 異材溶接における溶接材料
5.2.3 異材溶接施工法
5.3 ステンレスクラッド鋼の溶接
5.3.1 母材炭素鋼の溶接
5.3.2 合わせ材の溶接
5.3.3 溶接施工法
5.4 肉盛溶接
5.5 ライニング材の溶接

6 溶接部の試験と検査
6.1 概要
6.1.1 試験と検査
6.1.2 溶接部の試験
6.1.3 溶接部の検査
6.2 溶接部の欠陥
6.3 破壊試験
6.3.1 機械試験,
6.3.2 化学試験
6.3.3 組織試験
6.4 非破壊試験
6.4.1 表面欠陥検出のための非破壊試験
6.4.2 内部欠陥検出のための非破壊試験
6.4.3 その他

7障害とその防止対策
7.1 アーク溶接の障害とその防止対策
7.2 ヒューム・ガスによる障害とその防止対策
7.2.1 ヒューム・ガスによる障害
7.2.2 防止対策
7.3 アーク光による障害とその防止対策
7.3.1 アーク光による障害
7.3.2 防止対策
7.4 スパッタ・スラグ・アーク熱・騒音による障害とその防止対策
7.41 スパッタ・スラグ・アーク熱・騒音による障害
7.4.2 防止対策
7.5 火災・爆発とその防止対策
7.5.1 火災・爆発の概要
7.5.2 防止対策
7.6 電撃による障害とその防止対策
7.6.1 電撃の概要
7.6.2 防止対策
7.7 高周波による障害とその防止対策
7.8 その他の障害とその防止対策
7.8.1 溶接材料の取り扱い不良による障害とその防止対策
7.8.2 高圧ガス容器の取り扱い不良による障害とその防止対策

8 溶接用語

第2部 JIS Z 3821 演習問題

演習問題1 ステンレス鋼の種類と性質
演習問題2 ステンレス鋼の溶接
演習問題3 溶接機とその特性
演習問題4 溶接施工法
演習問題5 炭素鋼との異種金属溶接
演習問題6 溶接部の試験と検査
演習問題7 障害とその防止対策

第3部 JIS Z 3821 演習問題模範解答

1 ステンレス鋼の種類と性質●解答
2 ステンレス鋼の溶接・解答
3 溶接機とその特性●解答
4 ステンレス鋼の溶接性と溶接施工法●解答
5 炭素鋼との異種金属溶接●解答
6 溶接部の試験と検査●解答
7 障害とその防止対策

第4部 JIS Z 3821/WES 8221 受験ガイド

ステンレス鋼溶接技能者評価試験の受験ガイド
はじめに
1 資格の種類
2 評価試験の受験資格
3 評価試験の科目
4 実技試験の詳細
4.1 溶接姿勢
4.2 試験材料の形状・寸法
4.3 試験に使用する鋼材
4.4 試験に使用する溶接材料
4.5 試験に使用するガス
4.6 試験に使用する溶接機器
5 溶接上の注意
5.1 一般的注意事項
5.2 板の溶接の場合の注意事項
5.3 管の溶接の場合の注意事項
6 評価試験の判定方法
7 評価試験の合否判定基準
8 適格性証明書
9 資格の再評価
10 評価試験の区分
11 受験の手続

●溶接技能者認証のための評価試験受験申込先・問合先一覧

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