忙しい人のための公認心理師試験対策問題集 (上巻)




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はじめに

本書は、公認心理師試験の受験生に、「点を取る技術を身につけてもらい」、「最小限の時間とコストで合格」していただくために作った問題集です。

具体的には、次の3点が本書の特長です。
1.点を取る技術を具体的かつ詳細に説明している。
2.各章を5節に分けた構成にしてあり、「今日はこの節」「明日は次のなど、隙間時間に学習できるようにしている。
3.合格するために欠かせない事例問題(普通問題は1問1点、事例問題は1問3点)への対策として、各領域の現場の具体的な様子が分かるように説明している。

本書は、仕事をしながら公認心理師試験の学習に取り組み、合格した3人で作りました。この3人の共通点は「教えることのプロ」であることです。喜田はプロの予備校講師(臨床心理士・公認心理師養成)、小湊は多くの大学で非常勤講師として教えています。そして私も、臨床しながら大学で非常勤講師をして、専門職養成に携わっています。

仕事をしながらの学びは大変です。初めての公認心理師試験の勉強は、見通しを立てられず困難を極めました。その要因の1つに、「これだ!」と思えるテキストに出合えなかったことが挙げられます。そのためいろいろと苦慮しながら、有益な情報を仲間と共有し合い、とにかく合格基準の60%程度を超える点が取れるようにということを意識して、仕事のちょっとした隙間時間に学びました。そのような経験を元に、私たちは試験が終わってから「使い勝手のよいテキスト」作りを目指しました。

本書は、「最小限の時間とコスト」を優先して細かい知識補充を目的としていないため、物足りないと思う人はいるかもしれません。しかし、この上下2巻を使ってしっかり学習していただければ、合格できる技術と自信が間違いなく身についていることでしょう。

公認心理師は自動車の運転免許のように、あくまで免許です。大切なのはその後、つまり「公認心理師としてどのような実力をつけられるか」であるのは言うまでもありません。合格基準は60%程度以上の得点なのですから、多忙な人ほど満点ではなく合格基準を超えることを合理的に目指し、早く合格して公認心理師として活躍してほしいのです。その思いから、私たちは「教えることのプロ」として、あえて内容を絞りました。

本書が、忙しく毎日を過ごしているみなさんの一助になれば幸いです。

編著者を代表して 青山有希

青山 有希 (著), 喜田 智也 (著),小湊 真衣 (著)
明誠書林 (2019/11/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに
点を取る技術

CHAPTER1 公認心理師としての職責の自覚
1公認心理師法
2秘密保持義務
3信用失墜行為の禁止
4多重関係
5地域連携

CHAPTER2 問題解決能力と生涯学習
1自己課題発見と解決能力
2生涯学習への準備

CHAPTER3 多職種連携
1多職種連携とは
2家族との連携
3チーム医療
4支援に関わる専門職と組織
5自己責任と自分の限界

CHAPTER4 障害者(児)の心理学
1ICF(国際生活機能分類)
2発達障害
3発達障害者支援法
4障害者差別解消法
5特別支援教育

CHAPTER5 心理状態の観察及び結果の分析
1インテーク面接
2テストバッテリー
3フィードバック
4関与しながらの観察
5構造化面接、半構造化面接

CHAPTER6 心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助)
1日本の心理療法
2認知行動療法
3人間性心理学(1)
4家族療法
5事例問題

CHAPTER7 健康・医療に関する心理学
1ストレス
2ストレスコーピング
3心身症
4生活習慣病
5がん(1)

CHAPTER8 福祉に関する心理学
1貧困(生活困窮)
2児童虐待
3里親制度
4認知症
5アウトリーチ

CHAPTER9 教育に関する心理学
1スクールカウンセラー(SC)
2いじめ
3不登校
4チーム学校
5コンサルテーション

CHAPTER10 司法・犯罪に関する心理学
1少年法
2医療観察法
3裁判員裁判
4DV防止法
5その他法律問題

CHAPTER11 産業・組織に関する心理学
1ストレスチェック制度
2ハラスメント
3キャリアコンサルティング
4ダイバーシティ
5ワーク・ライフ・バランス

CHAPTER12 精神疾患とその治療
1精神疾患の診断分類
2統合失調症
3大うつ病性障害
4PTSD(心的外傷後ストレス障害)
5パーソナリティ障害

事項索引
人名索引

青山 有希 (著), 喜田 智也 (著),小湊 真衣 (著)
明誠書林 (2019/11/15)、出典:出版社HP

点を取る技術

試験本番では、それまでの努力を遺憾なく発揮したいものです。そのためには、知識だけでなく「点を取る技術」を身につけることがポイントになります。以下の技術を習得し、合格を引き寄せましょう!

①出題パターンを知る。
公認心理師試験は全ての問題がマークシート方式なので、各選択肢には○か×しかありません。そこで問題作成者は×の選択肢を作らなければなりませんが、そのパターンは3つしかありません。

1言葉を変える
⇒例:「指示」を「指導」
例題:主治の医師がある場合は、公認心理師はその医師の指導を受けなければならない。解説:正答は「指示」ですが、これが「指導」に変更されているために×となります。

2数字を変える
⇒例:「1か月」を「6か月」例題:PTSDの診断が下されるには、その原因となる出来事が起きてから6か月以上の期間が必要である。解説:正答は「1か月」ですが、「6か月」に変更されているために×となります。

3過度な言い方や限定的な表現(だけ、のみ、絶対に、何よりもまず、早急に、等)
⇒例題:PTSDの診断がつくのは、重症を負う出来事などを直接体験した場合のみである。解説:PTSDは直接体験だけではなく、目撃や、親族や親しい友人などからそういう出来事にあったと聞くことや、複数回の曝露でも発症することが診断基準に書かれています。この例題ではそれを限定的に扱っているので×となります。

反対に、「含みを持たせた選択肢」はだいたい正解です。
⇒例題:場合によっては、医療機関にリファーすることも検討していく。解説:「医療機関にリファーすること」は当然検討すべきことです。それを「必ず」だと当てはまらないケースもありますが、「場合によっては」だと臨機応変な対応と考えられるので、正答となります。

狙われやすいのは「何となく聞いたことのある言葉」⇒不安が高いと、知っている言葉があると○を付けたくなる(特に統計用語など)。

例題:クロンバックのa係数は、構成概念妥当性を測定する指標である。
解説:クロンバックのa係数は信頼性の中の内的整合性を評価する指標であるため間違いですが、クロンバックのa係数も構成概念妥当性も「何となく聞いたことがあるが、はっきりと自分の言葉では説明できない」という人が多い用語です。そのような問題が用語を変えられて作られます。多くの受験生は正答が分からないものの「クロンバックのa係数」も「構成概念妥当性」も聞いたことがあるので、不安から○を付けて間違えてしまうのです。

②×を探しにいき、も効率よく使う。
選択肢に○を付けるのは、選択肢内の全ての用語が間違っていないことを知っていなければならず、なかなか難しいものです。そこで、×を探しにいきましょう。選択肢内に1つでも×があれば、その選択肢自体が×になります。そして選択肢を読んでいる途中に×を見つけられれば、次の選択肢に素早く移ることができます。また、選択肢を最後まで読んでも×を見つけられない上につとも判断できないことがよくあります。その場合は△を付けて、素早く次の選択肢に進みましょう。

⇒例題:バウムテストは「なぐり描き」を表す言葉であり、Naumburg,M.が開発した描画技法の名称である。まずグルグル描きを鉛筆などで描き、そこから見えてくるものを絵として完成するというゲーム的で単純な手続きで行われるため、絵の得手不得手によるクライエントの抵抗が少ない技法であると言われている。

解説:上記のように比較的長い文となると、「バウムテスト」、「なぐり書き」、「Naumburg,M.」、「描画法」、「グルグル描きを鉛筆などで描き、そこから見えてくるものを絵として完成するというゲーム的で単純な手続きで行われる」、「クライエントの抵抗が少ない技法」という用語全てが適切でないとつになりません。しかし、「Naumburg,M.が開発した描画技法」は「スクリブル」なので、それを知っていれば全ての用語を検討しなくても全体が×となります。まずは×を探しにいくことがポイントです。

③国語力だけで解ける問題もあるので、知識がないからといって諦めない。
問題を読んで「知識がないから解けない」と諦めてはいけません。実は、国語力だけで解ける問題も多いのです。

例題(2018年公認心理師試験問題2)
児童虐待について、緊急一時保護を最も検討すべき事例を1つ選べ。(下線部は筆者加筆)①重大な結果の可能性があり、繰り返す可能性がある。
②子どもは保護を求めていないが、すでに重大な結果がある。
③重大な結果が出ていないが、子どもに明確な影響が出ている。
④子どもは保護を求めていないが、保護者が虐待を行うリスクがある。
⑤子どもが保護を求めているが、子どもが訴える状況が差し迫ってはいない。

解説:2と3で迷うかもしれませんが、問題文は「最も」「1つ選べ」なので正答は2です。

それではここで、「点を取る技術」2と3を使って以下の問題を解いてみましょう。

例題(2018年公認心理師試験問題68)
12歳の男子A、小学6年生。Aは授業中ぼんやりしていることが多く、学習点を取る技術に対して意欲的な様子を見せない。指示をしない限り板書をノートに写すことはせず、学習全般に対して受動的である。常に学習内容の理解は不十分の点数も低い。一方、教師に対して反抗的な態度を示すことはなく、授業中に落ち着かなかったり立ち歩いたりという不適切な行動も見られない。クラスメイトとの人間関係にも問題があるとは思えず、休み時間などは楽しそうに福る。知能指数は標準的で、言葉の遅れもなく、コミュニケーションにも支障はない。また、読み書きや計算の能力にも問題はない。Aの状態として最も適切なものを1つ選べ。

①学業不振
②学習障害
③発達障害
④学級不適応
⑤モラトリアム

解説:問題文の中に「読み書きや計算の能力にも問題はない」とあるので、学習障害が不適切。また、「授業中に落ち着かなかったり、立ち歩いたりという不適切な行動も見られない」、「コミュニケーションにも支障はない」という記述があるので、3発達障害も不適切。そして「クラスメイトとの人間関係にも問題があるとは思えず、休み時間などは楽しそうに過ごしている。」と記述があるので、の学級不適応も不適切。そもそも12歳であるので、5モラトリアムは不適切。その結果、消去法で○学業不振が正答となります。この問題で積極的に○を選ぶのは不可能に近いので、国語力、消去法を使い、正答を導く「技術」が必要です。

また、上巻第12章「精神疾患とその治療」「4PTSD(心的外傷後ストレス障害)」問題2(2018年公認心理師試験問題153)も、同様の技術で正答できるので確認しましょう。

④事例問題は、まず選択肢を読む。
「時間が足りなかった」と感想をもらす受験生が多いのですが、その要因の1つに、事例問題に時間をかけてしまうことがあります。そこで、事例問題では選択肢を先に読みましょう。選択肢を読んだだけでもある程度正答を絞ることができたり、それだけで正答できることが往々にしてあるからです。詳細を読むのは、選択肢を読んでも絞り切れないときだけにしましょう。

⑤そもそも「心理師」の試験である。
「試験では心理的要因が関連する問題が出題されます。これは当たり前のことですが、いざ問題を解くとなると、選択肢の「ひっかけ」に惑わされてしまうことがあります。例えば、一般的な友人、保護者や教師などが問題文に登場した場合、その人たちとは違う役割(受容、傾聴など)の選択肢を選びましょう。試験の場では「公認心理師である前に、人として…」のような発想をすると余計な迷いを生じてしまうので考えないようにしましょう。

ここで、「点を取る技術」4と5を意識して、公認心理師試験の問題を見てみましょう。

【2018年公認心理師試験問題72の選択肢】
下線部(筆者加筆)を見れば、事例問題を読まなくても×を付けることができます!
相談室の公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。

①Aに中期目標をどのように書くべきか助言する。
②現在Aは抑うつ状態であるため、まず精神科への受診を勧める。
③昇進はチャンスと捉えられるため、目前の中期目標の作成に全力を尽くすよう励ます。④目前の課題に固着するのではなく、キャリア全体から現在の課題を眺めることを支援する。
⑤現在のAには中期目標の作成は過重な負荷であるため、担当を外してもらうよう助言する。

解説
①×「目標を書くアドバイス」は心理師の役割ではない。
②×相談室の心理師としては、「医療機関」を「何よりもまず」は勧めずに傾聴、アセスメントをしていく。
③×「励ます」は心理職の役割ではない。ただし、「ねぎらう」は正答の可能性が高い。
④△×を付けられないので△として残す。
⑤×「担当を外してもらうように人事担当者にコンサルティングする」のは、相談室の心理師とすれば越権行為である。
「心理師としての×」を積極的に探しにいった結果、△の④が正答です。

以上、いかがでしたでしょうか。これらの「点を取る技術」を用いても正答できない問題もあるでしょう。そのような時は、「問題が悪い」くらいの気持ちで割り切ることも大切です。満点を取る必要は全くありません。「6割程度の正答で合格なのだから、4割は間違えられる」という心の余裕も必要です。読者の皆様の合格をお祈りしています!

青山 有希 (著), 喜田 智也 (著),小湊 真衣 (著)
明誠書林 (2019/11/15)、出典:出版社HP