電気教科書 電験三種合格ガイド 第3版
【電気主任技術者試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)】も確認する
はじめに
電気主任技術者資格は、電気関係の国家資格の中で最も価値のある資格といえます。
『電力を供給する設備および電力を利用する需要設備など、事業用電気工作物(一般家庭や小規模の低圧の設備は除く)を設置する者は、「電気主任技術者免状の交付を受けている者」のうちから、エ事、維持、運用の監督者である「電気主任技術者」を選任しなければならない』と法律で決められています。
このことから、すべての電力設備は電気主任技術者の力によって守られているわけで、主任技術者の果たすべき役割も、一層重要になっています。また、電気主任技術者の資格を取得すること自体が、技術者としての能力を示すバロメータとなり、高い評価を得られます。
第三種電気主任技術者は、実務経験を積むことで上位の第二種を、第二種があればさらに第一種の資格を取得することも可能です。また、5年の実務経験で第一種電気工を取得することもできるなど、電力業界ではとても有用な国家資格です(「電験三種」は、「第三種電気主任技術者試験」の略称です)。
本書は、『電験三種合格ガイド』として、「理論」「機械」「電力」「法規」「電験三種に必要な数学」の順に、次のような点に留意して解説しています。
1はじめて電気技術を学ぶ方も理解できるように、わかりやすく丁寧に解説しています。
2テーマごとに「○○といえば○○」の形に要点をまとめ、必要事項を覚えやすくしています。
3内容が難しく合格率の低い科目を先に学習することによって得点力がアップするように、「機械」を「電力」の前に解説しています。
4電験三種の問題を解くのに必要な数学の解説をしています。
5テーマごとに練習問題を解き、章末の過去問題で実力が身に付くように工夫しています。
6覚えるべき内容や単語は赤字になっており、赤いシートで文字が隠れるので、暗記などで
は効果的に学習ができます。
合格率は10%前後と、電験三種は難関国家試験の1つであり、合格するにはかなりの努力が必要です。合格のポイントは、出題される内容とレベルの把握にあります。出題されない範囲や高度な内容を学習しても、合格できません。
本書は、出題の範囲とポイントがわかるように工夫しています。理解できない箇所が出てきても、そこで足踏みせずに先に進んで科目ごとに重要ポイントを把握し、合格ラインの60点以上が取れる学習をするようにしましょう。
第3版の改訂に当たっては、既刊の内容を全面的に見直し、より効率的に学習できるよう、執筆しました。本書の活用により、より多くの方々が「電験三種」に合格されることを願っています。
2018年11月早川義晴
電験三種試験ガイド
01電気主任技術者とは
電気主任技術者とは、発電所や変電所及び工場やビルなどの電気設備の工事、維持及び運用に関し保安の確保のために必ず置かなければならない、専門の技術を有する技術者です。電気主任技術者の免状の種類と監督できる範囲は第一種、第二種及び第三種電気主任技術者の3つがあり、電気工作物の電圧によって必要な資格が定められています。
02試験の実施について
受験する際は、電気技術者試験センターのホームページ等で最新情報を必ずご確認ください。(https://www.shiken.or.jp)
受験案内・申込書の配布時期
5月中旬頃から試験センターで無料配布
受験申込期間
5月中旬頃〜6月上旬頃
試験実施日
9月はじめの日曜日
申込方法、受験手数料
・ゆうちょ銀行の払込取扱票:5,200円
・インターネット:4,850円
※試験日程、受験手数料は年度により変更される場合があります。
03受験資格
受験資格に制限はありませんので、だれでも受験できます。
04試験概要
試験は4科目について、科目別に行われます。各科目の解答方式は、マークシートに記入する五肢択一方式です。
・科目ごとの合格ライン
60点。年度によって多少異なります。合格者数が少ない場合は、合格ラインが低くなる傾向があります。
05科目合格制度
試験は科目ごとに合否が決定され、4科目すべてに合格すれば、第三種電気主任技術者試験に合格したことになります。また、4科目中一部の科目だけ合格した場合は、「科目合格」となって、翌年度及び翌々年度の試験では、申請により当該科目の試験が免除されます。つまり、3年間で4科目の試験に合格すれば、第三種電気主任技術者試験に合格となります。
06認定による資格取得のための単位が不足している場合
電気主任技術者免状を取得するには、主任技術者試験に合格する以外に、認定校を所定の単位を修得して卒業し、所定の実務経験を得て申請する方法(学歴と実務経験による免状交付申請)があります。
認定校卒業者で所定の単位を修得できていない場合、その不足単位に該当する試験の科目に合格すれば、その単位を修得したものとみなされます。ただし、単位修得とみなせる試験科目には制限があり、「理論」を除いた2科目まで認められます。また、「電力と法規」及び「機械と法規」の組み合わせは認められますが、「電力と機械」の組み合わせは認められません。
07試験会場で使用できる用具
筆記用具・HBの鉛筆又はHB(又はB)の芯を用いた
・シャープペンシル
・プラスチック消しゴム
・30センチ以下の透明な物差し
電卓…電池(太陽電池を含む)内蔵型電卓で音の発しないもの(四則演算、開平計算、百分率計算、税計算、符号変換、数値メモリ、電源入り切り、リセット及び消去の機能以外の機能をもつものを除く)に限る。ただし、開平計算(、)機能は必須です。関数電卓は使用できません。
その他使用できる用具…眼鏡、ルーペ、時計(時計機能だけのもの)
08第三種電気主任技術者が実務経験で取得できる資格
①第三種電気主任技術者免状取得者は、電圧1万ボルト以上の電気施設において5年以上の保安監督の実務を経験することにより、第二種電気主任技術者の資格を得ることができます。
②第三種電気主任技術者免状の取得後5年以上の保安監督の実務を経験することにより、都道府県知事の認定を受け、第一種電気工事士の資格を得ることができます(都道府県知事に申請)。
③第三種電気主任技術者免状の取得後3年以上の保安監督の実務を経験することにより、又は認定電気工事従事者認定講習の課程を修了することにより、経済産業大臣の認定を受け、認定電気工事従事者認定証の交付を受けることができます(産業保安監督部長に申請なお、認定証の取得者は、電圧600ボルト以下で使用する自家用電気工作物の簡易電気工事に従事することができます。
09問合せ先
一般財団法人電気技術者試験センター
〒104-8584東京都中央区八丁堀2-9-1(RBM東八重洲ビル8F)
TEL03-3552-7691FAX03-3552-7847
mailinfo@shiken.or.jpURLhttps://www.shiken.or.jp
10試験申込みから資格取得までの流れ
目次
電験三種試験ガイド
本書の使い方
本書で用いる主な量記号と単位記号
第1部 理論
1直流回路
1-1オームの法則といえば電圧÷電流=抵抗
1-22抵抗の直列合成抵抗といえば和、並列合成抵抗といえば和分の積
1-3導体の抵抗といえば長さに比例し、断面積に反比例
1-4キルヒホッフの法則といえば電流和の法則と電圧和の法則
1-5テブナンの定理といえば電気回路は起電力と内部抵抗の直列回路で表せる
1-6ミルマンの定理といえば並列回路全体の電圧を求める
1-7ブリッジ回路といえば平衡時は対辺抵抗値の積が等しい
1-8△-Y変換といえば回路計算の簡単化ができる
1-9直流回路の電力といえば電圧と電流の積、電力量といえば電力と時間の積
1-10定電圧源と定電流源といえば理想電源、重ね合せの理といえば起電力(電源)一つで計算
章末問題
2交流回路
2-1正弦波交流といえばサインカーブ
2-2交流の大きさといえば最大値、平均値、実効値
2-3交流のベクトル表示といえば大きさと位相で表す
2-4交流回路のオームの法則といえば電圧と電流の比は電流の通しにくさを表す
2-5R、L、Cの作用といえばRはエネルギーを消費し、L、Cは消費しない
2-6直列回路といえばインピーダンスの直角三角形をつくる
2-7並列回路といえば電流の直角三角形をつくる
2-8共振の条件といえば誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスが等しい
2-9電力といえば有効、無効、皮相電力で電力の直角三角形をつくる
2-10交流回路といえば複素数で計算
2-11過渡現象といえば回路定数を急変したときの特性
章末問題
3三相交流回路
3-1三相交流回路といえば単相交流回路3つの組合せ
3-2△-Y変換といえば和分の積
3-3三相電力といえば有効、無効、皮相電力で電力の直角三角形をつくる
3-4V結線といえば2台の変圧器で√3VIの出力
章末問題
4電気・電子計測
4-1指示計器といえば直流は可動コイル形、交流は可動鉄片形と整流形
4-2倍率器といえば(m-1)倍、分流器といえば(m-1)で割る
4-3抵抗の測定といえば電圧降下法、ブリッジ法など
4-4電力の測定といえば電力計、三相電力といえば2電力計法
章末問題
5静電気と電界、コンデンサの静電容量と接続
5-1クーロンカといえば電荷の積に比例
5-2電界の強さといえば1クーロンに働く力
5-3静電容量といえば誘電率と極板の面積に比例、距離に反比例
章末問題
6磁気と磁界、電流の磁気作用
6-1磁気に関するクーロンの法則といえば磁極の強さの積に比例
6-2磁界の強さといえば1ウェーバに働く力
6-3磁界の強さといえば電流に比例
6-4導体の運動起電力といえばBlu
6-5磁界中の電流に作用する力といえばBIC
6-6磁気回路といえば磁束の回路
6-7インダクタンスといえば1Aを流したときの磁束鎖交数に等しい
6-8インダクタンスが蓄えるエネルギーといえば電流の2乗に比例
章末問題
7電子工学・電子回路
7-1半導体といえば半導体製品、整流回路といえば交直変換回路
7-2トランジスタといえばスイッチングと増幅に用いる
7-3トランジスタ回路といえば増幅回路
7-4FETといえば入力インピーダンスの大きいトランジスタ
7-5オペアンプといえば理想的な増幅器
章末問題
第2部 機械
1変圧器
1-1変圧器といえば交流の電圧を変える装置
1-2変圧器の等価回路といえば理想変圧器と抵抗、リアクタンスで表した回路
1-3電圧降下といえばインピーダンス電圧
1-4変圧器の損失といえば鉄損と銅損、最大効率といえば鉄損=銅損
1-5並行運転といえば基準容量に合わせた%を求める
1-6単巻変圧器といえば自己容量を求める
章末問題
2誘導電動機
2-1三相誘導電動機といえば回転磁界で回転する
2-2三相誘導電動機の回路といえば変圧器と同じ
2-3トルク特性と比例推移といえば特性図から滑りを求める
2-4三相誘導電動機の始動法といえば電圧を下げて始動
2-5単相誘導電動機といえば二相交流により回転する
章末問題
3直流発電機と直流電動機
3-1直流発電機の起電力といえば磁石の強さと回転速度に比例
3-2電圧変動と電圧降下といえば電機子巻線抵抗による
3-3電動機の回転速度といえば逆起電力に比例、磁束に反比例
章末問題
4同期発電機と同期電動機
4-1同期発電機といえば一定周波数の電力を発生
4-2同期発電機の電機子反作用といえば偏磁、減磁、増磁作用
4-3同期インピーダンスといえば内部インピーダンス
4-4同期発電機の短絡電流といえば定格電流とほぼ同じ
4-5同期電動機といえば一定回転速度
章末問題
5電動機応用
5-1電動機の所要動力といえば同じ形式の公式となる
5-2回転運動エネルギーといえば慣性モーメントと角速度の2乗に比例
章末問題
6パワーエレクトロニクス
6-1パワーエレクトロニクスといえば半導体によるスイッチングの技術
6-2位相制御といえば電力の制御
6-3チョッパ回路といえば直流平均電圧の制御を行う
6-4インバーターといえば直流・交流変換、サイクロコンバータといえば交流変換
章末問題
7照明
7-1照明に関する基本といえば光度、照度、輝度、光束発散度
7-2照明設計といえば単位面積の有効光束を求める
7-3各種光源といえば省エネ光源に着目
章末問題
8電熱と電気加熱
8-1電熱と熱量計算といえばmc0とmg8-2、換気扇排出熱量といえばmVca
8-3電気加熱方式といえば抵抗、アーク、誘導、誘電、赤外線
章末問題
9電気化学
9-1ファラデーの法則といえば析出量は電気量に比例
9-2電池といえば電子を放出し酸化、電子を捕らえ還元
章末問題
10自動制御と制御理論
10-1フィードバック制御といえば制御量、目標値等で分類
10-2フィードバック制御といえばオン・オフ制御とPID制御
10-3周波数伝達関数と伝達関数といえば出力信号と入力信号の比
10-4フィードバック結合といえばGを1+GHで割る
10-5制御系の安定判別法といえばナイキスト線図、ボード線図
章末問題
11論理回路とデジタル回路
11-1基本論理回路といえばAND、OR、NOT、NAND、NOR
11-2組合せ回路といえば27通りの組合せ
11-3フリップフロップといえば反転動作の記憶素子
11-4基数変換といえば数値を別の進数に変換すること
章末問題
第3部 電力
1水力発電
1-1水力発電所の発電方式といえば水路式、ダム式、揚水式など
1-2水頭といえば位置水頭、圧力水頭、速度水頭
1-3水力発電所の理論水力といえば流量と有効落差に比例
1-4年平均河川流量といえば1秒間の流出水量
1-5水力設備といえばダム、水槽、水圧管路、入口弁
1-6水車といえば衝動はペルトン水車、反動はフランシス水車
1-7揚水発電といえば余剰電力の利用
章末問題
2火力発電
2-1汽力発電といえばランキンサイクル、再生、再熱、再熱再生サイクル
2-2ボイラといえば自然循環、強制循環、貫流ボイラ
2-3蒸気タービンといえば衝動タービン、反動タービン
2-4熱効率計算といえばボイラ、熱サイクル、タービン、タービン室効率
2-5効率といえば出力と入力の比、燃焼といえばCO2の発生
章末問題
3原子力発電、特殊発電
3-1原子力発電質量欠損といえば質量mと光速cの2乗に比例
3-2原子炉といえば沸騰水型と加圧水型
3-3特殊な発電といえばガスタービン、ディーゼル、コンバインドサイクル発電
3-4コジェネレーションといえば電気と熱の利用、地熱発電といえば噴出蒸気の利用
3-5他の発電方式といえば太陽光、風力、燃料電池、バイオマス
章末問題
4地熱
4-1変電所の分類といえば送電用、配電用など、設備といえば変圧器、開閉設備など
4-2変圧器の結線といえばY結線と△結線、経済的運転といえば並行運転
4-3開閉設備といえば遮断器、断路器、負荷開閉器、GIS
4-4遮断器の容量といえば定格遮断容量と短絡容量
4-5保護継電器といえば比率差動、過電流、地絡、距離、ブッフホルツ継電器など
章末問題
5送電、配電
5-1架空電線路の構成といえば支持物、電線、架空地線、がいしなど
5-2送電線による障害といえば電磁誘導と静電誘導
5-3異常電圧の発生といえば雷と線路の開閉、塩害対策といえばがいしの増加と洗浄
5-4直流送電といえば長距離送電と50/60Hzの連系
5-5ケーブルといえばCV、-故障点探査法といえばマーレーループ法
5-6電線路の機械的特性といえばたるみと実長の計算
5-7電線路の電気的特性といえば電圧降下、電力損失を考える
5-8受電設備の力率改善といえば力率を100%に近づける
5-9短絡電流の計算といえば定格電流:()、地絡電流の計算といえばテブナンの定理
5-10配電線路の構成といえば高圧、20kV級配電と特別高圧受電方式など
5-11バランサといえば単相3線式の電圧と電流を平衡させる
章末問題
6電気材料
6-1導電材料といえば電線、巻線、抵抗線
6-2磁性材料といえば電磁鋼板、鉄、永久磁石材料
6-3絶縁材料といえば固体、液体、気体
章末問題
第4部 法規
1電気関係法規
1-1電気事業法といえば電気工作物の工事、維持、運用の規制による安全確保の法律
1-2電気工事士法といえば欠陥工事による災害防止を目的とする法律
1-3電気用品安全法といえばPSEとPSEによる安全性確保の法律
章末問題
2電気設備の技術基準・解釈
2-1電気設備技術基準・解釈といえば「解釈」で技術的内容を示す
2-2電気機械器具、発電所などの保安原則といえば危険のない場所に施設する
2-3架空電線路の支持物といえば木柱、鉄柱、鉄筋コンクリート柱など
2-4架空電線路、架空引込線といえば交通に支障なく安全性を確保
2-5地中電線路といえば管路式、暗きょ式、直接埋設式がある
2-6電路の保護装置といえば過電流遮断器、地絡遮断装置
2-7電気使用場所の施設といえば幹線、分岐回路と保護装置、接地工事など
2-8高圧受電設備といえばCB形とPF・S形がある
章末問題
3電気施設管理
3-1需要率、負荷率、不等率といえば最大負荷を算定する係数
3-2地絡電流といえば単相交流回路の電流となる
3-3力率改善といえば電力の三角形をつくる
3-4支線に関する計算といえば安全率は2.5または1.5以上
3-5変圧器の全日効率といえば1日の電力量の効率
3-6系統連系といえば受電と送電を行う
3-7調整池式水力発電所の運用といえば余剰分の利用
章末問題
第5部 電験三種に必要な数学
1数学の基礎
1-1数学記号
1-2分数の計算
1-3比例、反比例、指数計算
2方程式、三角関数
2-1方程式の解き方
2-2三角関数
3複素数、対数、ベクトル
3-1複素数
3-2対数
3-3ベクトル
索引
会員特典データのご案内
本書の使い方