建築コスト管理士認定試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)




建築コスト管理士認定試験の公式テキスト

公式のテキストはありませんが、ホームページでは過去の問題と解説を参照することが可能です。

建築コスト管理士公式HP

新☆建築コスト管理士ガイドブック

はじめに

現在、産業構造が大きく変革するとともに、建設産業もまた大変革を迫られています。従来の設計と施工という二つの分野による建築生産システムでは対応が困難となり、これをつなぐ第三の領域「マネジメント」が専門職能として求められてきています。

また、プロジェクトの大規模化・複雑化・複合化、あるいは発注・契約形態の多様化などを背景に、建築事業投資効果の最大化の検討や地球資源の有効利用の促進、さらには建築コストの透明性・妥当性・公平性を求める社会的要請は益々高まっており、これに対応する新しいマネジメント専門職能の確立が求められています。

このようなマネジメント分野において、コストマネジメントはその中枢を占め、建築生産の川上から川下に至るまで必須のものと認識されるようになりました。

プロジェクト推進において、事業主・資金融資者・設計者・施工者・運営管理者といった関係者の有機的な結びつきは不可欠なものであり、その最大の要素は経済性すなわちコストといえます。

これらのコストの領域に関する技術は、(社)日本建築積算協会の専門分野であり、現在、「建築コスト管理士」、「建築積算士」そして「建築積算士補」と三つの積算・コスト管理の専門資格を誕生させ、建築コストの専門家育成に携わってきました。

この「建築コスト管理士ガイドブック」は、上記の建設産業における様々な立場や状況でのコスト管理需要に対応すべく、下記の点に配慮して作成されています。

①建設産業界にとってコスト管理業務の規範とするべく、コスト管理士として具備しておくべき必要な業務内容をはじめ、技術・知識・理論を編纂している。

②基本的に建築生産プロセスの全てにわたってコスト管理業務の全体像を理解できるようコスト管理内容を説明しており、コスト管理体系の習得、技術の理解・向上に寄与するよう考慮している。

③コスト管理担当者の専門性向上につなげるべく、実務面への適用を十分に考慮したものとし、より具体的な事例内容を踏まえた分かり易い説明を加えている。

④発注者、設計者、施工者のみならず、行政、金融関連、施設管理等、建築コスト管理業務に携わる様々な領域や立場のコスト管理関係者にとって役立つガイドライン書としている。

⑤さらに日本建築積算協会の資格認定事業の一つである「建築コスト管理士」の受験用ガイドブックとしても役立つよう編纂されている。

⑥また、今後の建設産業の国際化の進展を睨み、業務および資格の国際化対応を意識したものとしている。

最後に、本ガイドブックがコスト管理業務ニーズに対応して有効に活用されることを願っております。

2011年4月10日
社団法人 日本建築積算協会
会長 藤上 輝之

日本建築積算協会 (著)
日本建築積算協会 (2020/4/1)、出典:出版社HP

建築コスト管理士ガイドブック改訂にあたって

建築コスト管理士は、企画・構想から維持・保全、廃棄にいたる建築のライフサイクル全般に渡って、コストマネジメント業務に関する高度な専門知識および技術を有する専門家を対象とする資格として2006年に創設され、現在(2019年4月1日)1496人の資格者が建築のコストマネジメンに関わる諸分野で活躍されています。

建築コスト管理士ガイドブックは、建築コストマネジメント業務の全体像と、それに必要な知識、技術を示し、建築コスト管理士受験の準備に役立てていただけるものとして、2011年に刊行され、今日まで、建築コスト管理士受験者をはじめとする大勢の方にご活用いただいています。

本資格の創設当時、日本の建設業は、経済活動が停滞し、環境保全への関心が高まる中で環境負荷の削減が求められ、その中で、コストマネジメントの重要性の認識が高まっていました。公共建築工事では、入札不調の克服が大きな課題となっていました。その後、東京オリンピック・パラリンピック関係事業、各地の災害復旧・復興事業などで、建設業界は活況を続けてきていますが、その中で、コストマネジメントの重要性は一層大きくなってきています。

公共建築工事の発注につきましては、建築工事と設備工事を分離し、各々競争入札方式で受注者を決める方式が専らであったのが、これに加え、2009年から本格導入された総合評価落札方式や、新国立競技場の建設で注目されたECI方式などを含む発注方式の多用化が推進されてきており、そうした中で、設計プロセスの各段階にけるコストの概算や精算における的確な算定が求められる機会が増大しています。

従前から、設計図書に基づき施工者選定を行う際には、事業主、設計者、施工者を支援する、施工費算定の専門職として、建築積算士が活躍してきていますが、設計の初期における概算や、事業企画の際のコストスタディなど、コストの専門技術者の活躍の場は広がってきており、状況に応じて建築コストを適切に算定し、プロジェクトの推進に寄与する役割を担うようになってきています。このことは、建築積算士が経験を重ねる中で目指すべきより幅広い業務に対応する資格としての建築コスト管理士のイメージにつながります。

一方、建築の企画、設計、施工においてコストが重要な課題となることから、コストの専門技術者の枠を超え、コストマネジメントに責任ある立場にとって、自らコストマネジメントの一翼を担い、また、ステークホルダーの信頼につなげることの重要性が高まっています。従前から、設計事務所や建設会社に所属する建築コスト管理士の方々の中には、積算やコストエンジニアリングの部署以外の方がおられますが、近年は、不動産業、公共団体などに所属する建築コスト管理士もみられ、建築コスト管理士の活躍の領域の拡大が伺えるのです。

当協会は、建築のコストマネジメントを担う専門家の資格である、建築コスト管理士、建築積算士、建築積算士補の認定や更新の制度を運営していますが、建築コストマネジメントの業務と各資格者の関係をイメージアップし、コストマネジメントに従事する専門家のステップアップのガイドとするとともに、各資格者に対する多くの建築関係者の的確な理解を深めていただくべく、2018年に「コストマイジメントにおける人材育成体系」をとりまとめています。

建築積算士が、建築の工事費算定という、明確な専門職能に対応した資格であるのに対し、建築コスト管理士は専門性がより幅広く、このことを建築の各分野でご理解をいただき資格者のご支援をいただけることに資することも、「コストマネジメントにおける人材育成体系」を取りまとめた重要な狙いです。

建築のコストマネジメントは、建築の長寿命化が進む今日、設計費や施工費などのイニシャルコストだけでなく、ランニングコストを含むライフサイクルコストを的確に考慮するべき状況にあります。そこでは、イニシャルコストの適切な投入によりライフサイクルコストを最適化することが求められます。

イニシャルコストだけを見た節約がライフサイクルコストを増大させることについては、これを防ぐための具体的な課題として、省エネルギー、防災、耐久性向上などにコストを投入することへの関心が高まっています。建築業の各分野、更には建築に関わりの大きい諸分野でも、建築コスト管理士の資格者が活躍する場面が増大することも視野に入ってきています。

さらに、建築コスト管理士の資格はグローバルな活躍にもつながってきています。2013年にはRICS (Royal Institute of Chartered Surveyors) と本協会が結んだ協定に基づき、業務経験などについて一定の要件を満たす建築コスト管理士は、RICSにCQS(Chartered Quantity Surveyor) の称号を申請できることとなりました。今後の国際的な活躍を志す建築コスト管理士の方々に大いに活用していただきたいと考えています。

本書のこの度の改定では、建築コスト管理士の受験者の方々に、最新の状況を踏まえた受験のテキストを提供することを基本的なテーマとしていますが、その中で、建築コスト管理士が活躍できる場面、更には、建築コスト管理士が今後発展すべき方向性を示すことにも留意しています。このことは、受験者の方々のモチベーションを高めるだけでなく、本書を、既に資格を取得され各分野で活躍されている建築コスト管理士の方々にも大いに参考にしていただけるものにしたい、という想いに基づくものです。

本書が多くの受験者の方々にご活用いただき、また、様々な分野で活躍されている建築コスト管理士の方々に業務の参考にしていただければ幸いです。

公益社団法人日本建築積算協会
会長 吉田倬郎
2020年4月1日

日本建築積算協会 (著)
日本建築積算協会 (2020/4/1)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに
改訂にあたって

1 建築コスト管理の概要
1.1 建築コスト管理とは
1.2 建築コスト管理の目的
1.3 建築コスト管理士の業務と活動領域
1.4 建築コスト管理士の社会的責任と役割
1.5 建築コスト管理士の倫理

2 建築産業とコスト管理
2.1 建築産業におけるコスト管理の役割
2.2 経済状況と建設市場の動向
2.3 国際プロジェクトにおけるコスト管理

3 建築生産プロセスとコスト管理
3.1 建築コスト管理の業務体系

3.2 設計計画段階の業務
3.2.1 建築企画とフィジビリティスタディ
3.2.2 設計計画とコスト管理
3.2.3 建築コストの変動要因
3.2.4 概算手法とBIMの活用(概算や数量積)
3.2.5 コストデータの分析と活用
3.2.6 VE(バリューエンジニアリング)
3.2.7 LCC(ライフサイクルコスト)

3.3設備計画とコスト
3.4発注方式
3.5 施工段階の業務

3.6建物維持管理段階の業務
3.6.1 建物管理とコスト管理
3.6.2 改修工事とコスト管理
3.6.3 設備改修工事とコスト管理
3.6.4 集合住宅の維持保全とコスト管理

4 コスト管理の知識理論・技術手法
4.1 仮設と経費
4.2 構工法とコスト
4.3工程計画とコスト
4.4 解体工事
4.5 リスク管理とコスト

4.6 環境計画とコスト管理
4.7 法規とコスト
4.8 建築コスト管理における情報技術(ICT)とBIM
4.9 市場コスト情報とコスト管理
4.10 コンストラクション・マネジメント(CM)

4.11 ファシリティーマネジメント(FM)
4.12 PFIとコスト管理
4.13 建物の評価・鑑定
4.14 コスト管理業務に関わる法的責任

<巻末資料>
資格の定義について
監修・査読委員会、執筆者
参考文献

※本ガイドブックに記載されている各種事例は、読者の皆様が具体的なイメージをご理解いただけることを目的としたサンプルです。このまま実務に使用していただけるものではありません。

日本建築積算協会 (著)
日本建築積算協会 (2020/4/1)、出典:出版社HP