農業経理士教科書【税務編】(第4版)
はじめに
成長産業への変革期にある日本農業において、農業経営の法人化や異業種からの農業参入増加などを背景に現代的な農業経営を確立する必要性が高まっております。
農業という業種の特徴は、生物の生産であることから、病虫害や自然災害による被害等、経営者自身でコントロールすることができない要素が多いことにあります。それゆえ、経営者自身の経験則に基づく判断が重要となりますが、すべての判断を経験則に頼ることは合理的ではなく、客観的事実たる計数を確かめながら経営判断を行うことで、より健全な農業経営を行うことが可能となります。特に法人経営では、計数に基づく経営管理が必須であり、現代的な農業経営に欠かせない要素となります。
このような状況の中、当協会は日本の農業の発展、具体的には計数管理の基盤となる農業簿記の普及に寄与することを目的として、一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会による監修のもとで、平成26年度より「農業簿記検定」を実施しております。
さらに、当協会では「農業経理士」称号認定試験の創設を目指して準備を進めております。「農業経理士」称号認定試験は、農業簿記で培った知識を基盤としながら、農業経営の現場で必要となる実践的なスキルを習得していただけるものとしていく予定です。本書は、その先駆けとして「農業経理士税務編」として出版いたしました。
「農業経理士」称号認定試験の創設までしばらく時間的猶予をいただくこととなりますが、本書にて農業経営に関わる税務の知識を習得していただき、読者の皆様の実践的なスキル向上の一助になれば幸いです。
一般財団法人日本ビジネス技能検定協会
理事長 西原申介
目次
第1章 決算と申告
1.農業の決算書の特徴
2.簿記一巡と決算
3.棚卸(決算整理①)
4.減価償却(決算整理②)
5.費用収益の見越し・繰延べ(決算整理③)
6.経営者等の報酬
7.決算書と申告書の関係
第2章 利益や取引への課税
1.個人の所得の種類と課税のしくみ
2.所得と個人課税
3.法人の利益と課税所得
4.所得と法人課税
5.資本と法人課税
6.法人税における法人の分類
7.農地所有適格法人(旧・農業生産法人)
8.農業経営基盤強化準備金(税制特例①)
9.肉用牛免税(税制特例②)
10.従事分量配当
11.事業と消費税
第3章 法人化と経営継承
1.法人化に関する税務
2.経営継承に関する税務
3.経営継承と相続税
4.経営継承と贈与税
5.農業法人の株式・出資の評価