【完全攻略】医薬品「登録販売者試験」合格テキスト 第8版
はじめに
近年、あちらこちらでAIという言葉を耳にするようになりました。「AIとはなんでしょうか?人工知能AIとはArtificial Intelligenceの略です。人工知能の定義は、さまざまな専門家がそれぞれの定義をしており、統一的な定義はまだないようです。
10年後には、人工知能が日本を占領して地方銀行が日本からなくなるという、極論を言う学者も出てきています。私は、AIというと鉄腕アトムやドラエモンのようなロボットを想像してしまいます。
いずれ、ドラッグストアでもロボットが接客をして、一般用医薬品を症状によって見極め、値段を表示して、お金を入れると自動販売機のように薬が出る仕組みになるのでしょうか?
人の命と健康がかかっている薬もそのような扱われ方をするのでしょうか?
日本は、人生100歳を見据えた国づくり施策に方針を切り替えています。北海道から沖縄まで、日本のどの地域に住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現が重要な課題です。2040年からの人口の減少、特に生産人口の激減を考えて、病気にならないようにして、健康寿命の進展に目標を置いています。
このような未来が近づいている中で、ロボットによる健康寿命の進展を期待できるのでしょうか?私たちは高齢者も、若者も、一般用医薬品を利用しながら、食事と栄養のバランスや、睡眠・休養、運動、禁煙等の生活習慣の改善を含め、健康維持と増進について、セルフメディケーションすなわち自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすることを考えながら実行しています。
これから、皆さんが勉強をはじめる「登録販売者」の専門資格は、まさにその一般生活者の「セルフメディケーション」の担い手となる専門の仕事です。登録販売者は薬という物を売るのではなくて、薬を通して健康を売っているという、プライドと責任を持っていただきたいと思います。
忙しい仕事の合間を縫って、試験勉強を続けるためには、気力と根気が必要です。今のこの勉強が、いずれ現場での大きな自信と力になるのです。これから学ぶ薬の知識は、今後現場だけではなく、ご自分の健康を守っていくためにも、大いに役に立つこととなります。
学んだことを生かして、購入者のセルフメディケーションの良き相談相手となってください。
「薬」は、病気を診断し、病気を治し、病気を予防する、人々の健康を守るたいへん良い道具です。また、「薬」は、近年に入って、急に作られたものではありません。先輩たちのたゆまぬ研究や努力という、古い歴史の上に、今の「薬」があるのです。その時代の人々が、人の命と健康を守るために人生をかけて作り上げてきた重みが、「薬」にはあるのです。
勉強を始める前に、皆さんは歴史に支えられた薬のことを学ぶのだという誇りを持っていただきたいと思います。「もし、私が体調を崩して、一般用医薬品を買いに行ったら、どのような態度で、どのような知識を持って、どのように相談に乗ってもらいたいのか」を、考えながら勉強を進めてください。
テキストの隅々まで、きちんと地道に、理解を深めながら、勉強を始めましょう!最後まで、「あきらめないで」一緒に、頑張りましょう!
2019年8月
藤澤節子
目次
はじめに
本書の構成と活用方法
登録販売者制度の概要成分名索引
第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識
I 医薬品概論
医薬品の本質
医薬品のリスク評価
健康食品
Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因
副作用
不適正な使用と有害事象
他の医薬品や食品との相互作用、飲み合わせ
小児への配慮
高齢者への配慮
妊婦・授乳婦への配慮
治療を受けている人への配慮
プラセボ効果
医薬品の品質
Ⅲ 適切な医薬品選択と受診勧奨
一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲
販売時のコミュニケーション
Ⅳ 薬害の歴史
薬害事件の内容と対応
一問一答・過去問
第2章 人体の働きと医薬品
Ⅰ 胃・腸、肝臓、肺、心臓、腎臓などの内臓器官
Ⅱ 目、鼻、耳などの感覚器官
Ⅲ 皮膚、骨・関節、筋肉などの運動器官
IV 脳や神経系の働き
V 薬が働く仕組み
Ⅵ 全身的に現れる副作用
Ⅶ 精神神経系に現れる副作用
Ⅷ 体の局所に現れる副作用
一問一答・過去問
第3章 主な医薬品とその作用
Ⅰ 精神神経に作用する薬
かぜ薬/解熱鎮痛薬/眠気を促す薬/眠気を防ぐ薬/鎮暈薬/小児鎮静薬
Ⅱ 呼吸器官に作用する薬
鎮咳去痰薬/口腔咽喉薬・うがい薬
Ⅲ 胃腸に作用する薬制酸薬、健胃薬、消化薬/整腸薬、止瀉薬、瀉下薬/胃腸鎮痛鎮痙薬/その他の消化器官用薬
Ⅳ 心臓などの器官や血液に作用する薬
強心薬/高コレステロール改善薬/貧血用薬(鉄製剤)/その他の循環器用薬
V 排泄に関わる部位に作用する薬
痔の薬/その他の泌尿器用薬
Ⅵ 婦人薬
Ⅶ 内服アレルギー用薬
Ⅷ 鼻に用いる薬(鼻炎用点鼻薬)
Ⅸ 眼科用薬
Ⅹ 皮膚に用いる薬
Ⅺ 歯や口中に用いる薬
歯痛歯槽膿漏薬/口内炎用薬
Ⅻ 禁煙補助剤
XⅠⅠⅠ 滋養強壮保健薬
XⅠV 漢方処方製剤・生薬製剤
XV 公衆衛生用薬
消毒薬/殺虫剤・忌避剤
XVⅠ 一般用検査薬
一般用検査薬/尿糖・尿タンパク検査薬/妊娠検査薬
一問一答・過去問
第4章 薬事関係法規・制度
Ⅰ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の目的等
Ⅱ 医薬品の分類・取扱い等
医薬品の定義と範囲
一般用医薬品、要指導医薬品と医療用医薬品
毒薬・劇薬等
一般用医薬品のリスク区分
容器・外箱等、添付文書等への記載事項
医薬品と医薬部外品との違い
医薬品と化粧品との違い
医薬品と保健機能食品等の食品との違い
Ⅲ 医薬品の販売業の許可
医薬品販売業の許可
医薬品販売業の許可行為の範囲
リスク区分に応じた販売従事者等
リスク区分に応じた情報提供
リスク区分に応じた陳列等
薬局または店舗における掲示等
Ⅳ 医薬品販売に関する法令遵守
適正な販売広告
医薬品等適正広告基準
不適正な販売方法
行政庁の監視指導
行政庁による処分
別表
一問一答・過去問
第5章 医薬品の適正使用・安全対策
Ⅰ 医薬品の適正使用情報
添付文書の読み方
製品表示の読み方
安全性情報
購入者等に対する情報提供への活用
Ⅱ 医薬品の安全対策
副作用情報等の収集、評価および措置
副作用等が疑われる場合の報告の仕方
Ⅲ 医薬品の副作用等による健康被害の救済
副作用等による健康被害の救済
Ⅳ 一般用医薬品に関する主な安全対策
副作用事例とその対応
Ⅴ 医薬品の適正使用のための啓発活動
医薬品に関する啓発活動
別表
一問一答・過去問
一問一答・過去問解答
本書の構成と活用方法
「登録販売者試験」は、厚生労働省が公表した「試験問題の作成に関する手引き」に基づき、出題されることとなっています。したがって、「手引き」を中心に学習することが合格への近道となるため、本書は、この「手引き」に準拠しつつ、学習しやすいよう編集しています。また、平成30年3月に「手引き」の改訂が行われ、本書はこの内容に完全対応しています。
ナビゲートバー
いま自分がその章のどこを学習しているのかが一目でわかります。
プロローグ
各単元の最初にあるプロローグを読めば、これから学習する内容がわかります。
チェックボックス
覚えたところにはチェックをつけましょう。最低2回は読んで覚えてください。
キーワード
本文中の重要と思われる語句や試験で出題された正誤のボイントになりうる部分を色つき文字で示しています。
ワンポイントアドバイス
登録販売者になってから特に気をつけなければならないことや、この単元で重要なことを著者がアドバイスします。
一問一答
この単元で学んだことは、O×問題で理解力をチェックしましょう。間違えたところは該当する単元に戻ってどこを間違えたのかもう一度確認しましょう。
過去問
登録販売者の試験は、多肢複択式の方法により行われます。実際に、どのような形式で出題されるのか確認しておきましょう。
本書の巻末には成分名索引があります。豊富な索引量ですので、重複する医薬品や生薬の成分を調べるのに便利で、学習効果も高まります。
※本書発行後に、「手引き」が改訂された場合は、弊社ホームページで本書の補正情報をご案内いたします。https://www.chuohoki.co.jp/
登録販売者制度の概要
登録販売者制度とは
登録販売者制度は、一般用医薬品(大衆薬)を副作用等のリスクの程度に応じて3つに分類し、その分類ごとに、登録販売者などの専門家により、適正使用のための情報提供や相談対応がなされて医薬品の販売が行われる制度をいいます。
一般用医薬品のリスク分類のうち「リスクが特に高い」とされるものを除き、「リスクが比較的高いもの」「リスクが比較的低いもの」とされる医薬品については、薬剤師とは別の専門資格者「登録販売者」が必要な情報提供・相談対応をして販売を行うことができます。
医薬品のリスク分類 | 対応する専門家 |
A リスクが特に高いもの(第一類医薬品) | 薬剤師 |
B リスクが比較的高いもの(第二類医薬品) | 薬剤師または登録販売者 |
C リスクが比較的低いもの(第三類医薬品) |
現在、ドラッグストアや薬店、コンビニエンスストアなどにおいて、登録販売者による一般用医薬品の販売が行われています。登録販売者となるには、各都道府県において実施される試験に合格しなければなりません。
登録販売者試験
登録販売者試験は、都道府県によって難易度等に格差が生じないように、また内容についても一定の水準が保たれるように、国の関与・指導の下により実施されます。
1.試験実施の方法
①試験方法・試験問題
●試験方法は筆記試験とされ、真偽(Ox)式や多肢選択式等の方法により行われます。
●試験問題は、都道府県が厚生労働省作成「試験問題の作成に関する手引き」及び「例題」に準拠し作成したもので行われます。
※本書の構成・内容は、「試験問題の作成に関する手引き」及び「例題」に対応したものとています。
②実施回数・時期
●少なくとも年1回以上、定期的に実施されます。
※試験日時、試験会場、受験願書の受付期間などについては、各都道府県にご確認ください。
③出題方針
●登録販売者が、医薬品販売の最前線において、実際に購入者に情報提供や相談対応を行うことができるよう、実務的な内容として出題されます。
2.試験項目、出題数、試験時間
試験項目 | 出題数 | 配分時間 |
医薬品に共通する特性と基本的な知識 | 20 | 40分 |
人体の働きと医薬品 | 20 | 40分 |
主な医薬品とその作用 | 40 | 80分 |
薬事関係法規・制度 | 20 | 40分 |
医薬品の適正使用・安全対策 | 20 | 40分 |
合計 | 120 | 240分 |
3.合格基準
試験の合否決定は、総出題数に対して7割程度の正答の場合で、試験項目ごとに都道府県知事が定める一定割合以上の正答のときに合格とされます。
登録販売者試験における実務経験等の要件の廃止
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(平成26年厚生労働省令第92号)により、これまで、登録販売者の受験資格として求められてきた薬局、店舗販売業または配置販売業での実務経験要件が不要となりました(平成27年4月1日以降に行われる試験より)。
改正の概要は、以下のとおりです(次頁の通知も参照してください)。
登録販売者試験の実務経験等の省令改正の概要
現行の受験資格に関する実務経験
・大卒・高卒1年、中卒4年の実務経験
・経験を積んだ地域や、実務を経験した時期の限定なし(実務経験を行った場所に限らず全国で受験可。数十年前の実務経験でも受験可)
見直しの内容○受験に際しての実務経験要件を廃止(学歴等も廃止)
・管理者・管理代行者となるには、過去5年間のうち2年間の実務・業務経験が必要。それまでの間は、管理者・管理代行者の管理・指導の下に実務に従事。(配置については、新懸けごとの管理者への報告を要件に、単独での新懸けも可)
・管理者・管理代行者要件を満たす登録販売者と、それ以外の登録販売者を名札で区分。
・薬局等に、当該登録販売者の勤務経験の記録・保存業務を課すとともに、求めに応じた勤務経験の証明を義務付け(管理者となる際に使用)。
登録販売者試験の実施状況
登録販売者試験実施状況 (受験者数合格者数単位:名)
平成20年度 | 平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | |
受駭者数 | 91,024 | 44,788 | 39,116 | 33,913 | 28,050 | 28,527 | 31,362 | 49.864 | 53,369 | 61,126 | 65,433 |
合格者数 | 58,715 | 21,209 | 18,510 | 16,007 | 12,261 | 13,381 | 13,627 | 22,901 | 23,330 | 26,606 | 26,996 |
合格率 | 64.50% | 47.40% | 47.30% | 47.20% | 43.70% | 46.90% | 43.50% | 45.90% | 43.70% | 43.50% | 41.30% |
【登録販売者試験関係通知】
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について(抜粋)
1.登録販売者制度について
(1)試験の実施方法(改正省令「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(平成26年厚生労働省令92号)]による改正後の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号。以下「新施行規則」という。)第159条の3及び第159条の4第1項関係)
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第36条の8第1項に規定する試験(以下「登録販売者試験」という。)については、従前のとおり、筆記試験とし、次の1から5までの事項について毎年少なくとも一回行う。
①医薬品に共通する特性と基本的な知識
②人体の働きと医薬品
③主な医薬品とその作用
④薬事に関する法規と制度
⑤医薬品の適正使用と安全対策
(2)登録販売者試験の公示(新施行規則第159条の4第2項関係)
登録販売者試験を施行する期日及び場所並びに受験願書の提出期間は、従前のとおり登録販売者試験を受けようとする者の受験機会を確保できるよう、あらかじめ都道府県知事が公示する。なお、公示については、登録販売者試験を受けようとする者に広く周知できる方法で行う。具体的な方法としては、都道府県公報等のほか、都道府県の公示板への掲示やホームページへの掲載でも差し支えない。
(3)受験の申請(新施行規則第159条の5関係)
登録販売者試験の受験の申請に当たり、登録販売者試験を受けようとする者は、本籍地都道府県名(日本国籍を有していない者については、その国籍。6の1のイにおいて同じ。)、住所、連絡先、氏名、生年月日及び性別を記載した申請書に写真その他都道府県知事が必要と認める書類を添えて、登録販売者試験を受けようとする場所の都道府県知事に提出しなければならない。
登録販売者試験の受験資格としてこれまで求めてきた実務経験等については今後不要となるため、学歴や実務経験に関する書類の提出は必要ない。上記の写真については、従前のとおり、あらかじめ受験申請書に貼付する形式でも差し支えない。なお、受験申請書の様式及び受験手数料については、都道府県の条例等により規定する。
(4)合格の通知及び公示(新施行規則第159条の6関係)
従前のとおり、試験合格者には合格通知書を交付するとともに、合格者の受験番号を公示する。公示の方法については、都道府県公報等のほか、都道府県の公示板への掲示やホームページへの掲載等でも差し支えない。また、試験終了後に、試験問題及びその正答並びに合格基準について公表することが望ましい。