インテリアコーディネーターハンドブック 下




「統合版」の発刊にあたって

ライフスタイルの多様化、少子高齢化、地球環境・省エネルギーへの対応、安全・防犯など、住宅とそのインテリアに求められる社会的要求がますます高まるなか、個々の住まい手のニーズに応えて、くつろぎや癒しなど充足感のある快適な住生活空間実現のために、インテリアの果たす役割はこれまで以上に大きなものとなっています。

近年では、飽和したストック住宅の活用等からリフォーム市場が活性化し、このためインテリアに対する需要が更に高まっています。このように住まい手とインテリア供給側との仲立ちとなり、良質なインテリアを普及するインテリアコーディネーターの活躍が、期待されているところでもあります。

インテリア産業界に必要な人材育成事業として昭和58年に始まった「インテリアコーディネーター資格試験制度」と相まって、必要な技術的知識等を習得する参考書として、昭和61年に「インテリアコーディネーターハンドブック」を創刊し、その後、改訂を重ねてきました。このたび、平成26年度から行う一次試験の学科試験科目統合に対応して、これまで「販売編」と「技術編」の2冊構成としてきたものを統合し、「インテリアコーディネーターハンドブック「統合版]」上下巻として刊行しました。

また、前回の改訂から7年余りが経過していることもあり、住宅やインテリアの時代的変化や技術的進歩等を踏まえた掲載内容の最新化も行いました。本書が、インテリアコーディネーターを目指す方々の受験参考書として、あるいはインテリアに関心を持つ方々の教養の書として、広く利用されることを願っています。

最後に、監修・編集・執筆にあたっていただいた先生方並びに関係者各位に対して、心から感謝の意を表するものです。

平成25年11月
公益社団法人 インテリア産業協会会長 山口博章

インテリア産業協会 (著)
出版社: インテリア産業協会; 統合版 (2013/11/1)、出典:出版社HP

編集にあたって

インテリアコーディネーター資格が誕生して30年が経過しました。この資格が、社会の中でなくてはならない役割を担う専門家として定着し、立場が確立してきたことは誰もが認めるところです。

インテリアコーディネーターが誕生した当初は、未だ一般にインテリアという言葉すらあまり使われていなかった時期で、インテリア産業の黎明期でもありました。その時期に、この資格の必要性を確信し創設した先達の先見性には、あらためて深く敬意を表したいと思います。

そして30年を経て、誕生した資格者は6万人を超え、多くが人々の生活に関わる様々な場面でインテリアの専門家として活躍しています。その職域はメーカーの生産から販売の口そして施工現場、生活空間の中まで様々な場面でアドバイザーやコンサルタント等として、多様で広範な仕事にたずさわっています。

そして、環境や技術など急速に変化する社会を背景に、人々の生活の多様化が進む中で
インテリアコーディネーターの役割は増々重要になってきています。現今の建築空間は必ず、もそれだけで生活空間になっているわけではなく、そこに家族や個々人のライフスタイルに適した生活装置、インテリアエレメントが整えられてはじめて生活空間、即ちインテリア空間が出来上がるといえます。このようなことから、インテリアコーディネーターが未来に向かって新たな立場を築く期待も拡がってきています。

さて、多様な生活空間のアドバイザーとして、広い領域で役に立つ人材である資格者に必要な素養、知識とは何か。この資格を取得するために何をどのように学べばよいのか。その一つの答えを示すことが「インテリアコーディネーターハンドブック」の役割です。今回の改訂では、資格取得の参考書として初版から数回の改訂を経た原本の内容を尊重しつつ、これからのインテリアコーディネーターのあり方を指し示すとともに、より適切に学べることを目標に編集を進めました。

この基本方針により、これまでの「販売編」「技術編」の区分を見直し、生活の場としてのインテリア空間を適切にまとめ、形づくるための知識や技術を、その具現化のプロセスに沿って整理し解説することにしました。その結果、その区分をなくし、ひとつの構成に統合することにして、学習の流れも考慮し上巻、下巻という構成にまとまりました。

具体的な内容、難易度は概ね従来のハンドブックを踏襲し、重複を調整し、社会の動きに
即した内容を心がけました。基本的に本書はインテリアコーディネーター資格試験の参考書であり、資格試験の出題範囲全てを示しているものではありません。本書に記載されてないことであっても、インテリアコーディネーターにとって必要と思える事項については知識を深めておくことが望ましいことです。

以下に下巻について留意事項を述べます。

6章は、建築という構造物の中にインテリア空間を作るための、構造・構法と仕上げに関する知識、技術について、従来の技術編の内容を整理し解説してある。仕上げに使う塗料や機能材料はここで取り上げ解説してある。

7章は、室内環境とそれを支える設備に関する解説で、従来の技術編の内容に設備機器
を合わせた内容になっている。インテリアコーディネーターにとってはやや難解な部分で
あるが、いざというときには有益な知識になるので基礎理論は覚えておく必要がある。

8章は、実務に必要な知識と技術である。特にプレゼンテーションの表現技法は従来の「ハンドブック」に詳しい記載は無かったが、インテリアの独特な表現手法は参考にできるものが少ないため、ここで示すこととした。この部分は1次試験に関わりが薄いといえる。

9章は、「販売編「技術編」に分散し解説されていた各種法規、制度等をこの章にまとめた。ただ、近時は法改正や、新制度の制定等が目まぐるしく、出版物で常に最新の情報を掲載することは出来ない。そのためこの章に関わる新しい情報は、今後他の手段で補うことも検討していく。

本書は資格試験の参考書として記述・編集されたもので、出来るだけ一般に認知された論・説や見解を分かりやすく解説し掲載するように努めました。そのため、記述された内容や図表は他の文献等に負うところも少なくありません。その引用については、それぞれ手続をして許可を得ているつもりですが、もしも不備、不適切な点があれば陳謝申し上げ、お許しをいただきたいと思います。また、不適切な点については、是非ともご指摘、ご叱正いただくよう、お願い申し上げます。

平成25年11月
編集委員長 栗山正也

インテリア産業協会 (著)
出版社: インテリア産業協会; 統合版 (2013/11/1)、出典:出版社HP

目次

第6章 インテリアの構造・構法と仕上げ

第1節 建築の構造・構法
1建築構造の発展史と建築構造のしくみ
2木構造と木材
3鉄骨構造と鋼材
4鉄筋コンクリート構造とコンクリート
5その他の構造
6プレハブ構法

第2節 インテリアの構法
1インテリアの構成
2床の構法
3壁の構法
4天井の構法
5スペースユニット

第3節 造作と造作材
1内壁の構造
2床と床の間
3その他の造作
4開口部の構成と部材
5造作と建具
6開口部のその他の機能
7階段

第4節 機能材料と構法
1断熱材料
2吸音材
3防火材料
4防水材料・シール材
5接着剤

第5節 建具
1内部建具
2外部建具
3建具金物
4ガラス

第6節 仕上げ材と仕上げ
1床仕上げ
2壁仕上げ
3天井仕上げ
4塗装仕上げ

第7節 インテリアのリフォーム
1リフォームの目的と構法

第7章 環境と設備

第1節 環境工学
1屋外環境と室内環境
2熱と湿気
3換気と通風
4音環境
5光環境

第2節 住宅設備
1給水設備
2給湯設備
3排水設備
4換気設備
5空調設備
6自然エネルギーの利用
7電気設備
8照明設備
9水回りの住宅設備機器

第8章 インテリアコーディネーションの表現

第1節 インテリアコーディネーターと設計図書の関わり

第2節 建築設計図書を読む
1建築設計図書の種類と役割
2主な設計図書の読み方
3その他の図書

第3節 インテリアコーディネーションの表現
二次元で表現
1インテリアコーディネーションに必要な主な図書
その種類と役割
2三次元による立体的表現
3プレゼンテーションボード作成の心得

第4節 インテリアコーディネーションとCAD
1インテリアコーディネーションとCAD
2CADO
3レンダリングの基礎
4CAD・CGによるプレゼンテーション

第9章 インテリア関連の法規、規格、制度

第1節 概要

第2節 主な関連法規
1建築基準法
2消防法
3住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)
4エネルギーの使用合理化に関する法律(省エネ法)
5建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)
6高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)
7環境基本法
8住生活基本法
9家庭用品品質表示法
10製造物責任法(PL法)
11消費生活用製品安全法
12特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)
13工業標準化法(日本工業規格JIS)
14農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)

第3節 インテリア関連の制度と表示マーク
1シンボルマークと制度の概要

<上>の章立て
第1章インテリアコーディネーターの誕生とその背景
第2章インテリアコーディネーターの仕事
第3章インテリアの歴史
第4章インテリアコーディネーションの計画
第5章インテリアエレメント・関連エレメント

インテリア産業協会 (著)
出版社: インテリア産業協会; 統合版 (2013/11/1)、出典:出版社HP