天気と気象 グラフィックヒストリー




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目次

はじめに
謝辞

紀元前45億6700万年 地球大気の形成
紀元前43億年 水の惑星
紀元前29億年 ピンク色の空と氷河
紀元前27億年 最古の雨痕化石
紀元前24億年から4億2300万年 全球凍結から火災の発生へ
紀元前2億5200万年 灼熱地獄と「大絶滅」
紀元前6600万年 恐竜の絶滅と哺乳類の繁栄
紀元前5600万年 超温暖化した始新世
紀元前3400万年 南極海による地球の寒冷化
紀元前1000万年 チベットの隆起とアジアのモンスーン
紀元前10万年 気候変動が促した人類の集団移動
紀元前1万5000年 100年規模の干ばつ
紀元前9700年 肥沃な三日月地帯
紀元前5300年 北アフリカの乾燥とファラオの台頭
紀元前5000年 農耕による気候の温暖化
紀元前350年 アリストテレスの気象学
紀元前300年中国 神話から気象学へ

1088年 気候変化を記録した沈括
1100年 中世温暖期から小氷期へ
1571年 大航海時代
1603年 温度計の発明
1637年 虹の解読
1644年 大気の重さ
1645年 黒点のない太陽
1714年 ファーレンハイトによる標準温度計の発明
1721年弦楽四重奏による「四季」
1735年 風の循環図
1752年 ベンジャミン・フランクリンの避雷針
1755年 フランクリンによるつむじ風の追跡
1783年最初の気象観測気球の飛行
1792年 農民の生活暦
1802年 ルーク・ハワードによる雲の命名
1802年 フンボルトの地層断面図
1806年 ボーフォートによる風の分類
1814年 ロンドン最後のフロストフェア
1816年 噴火飢饉怪談話
1818年 スイカ雪
1830年 万人のための傘
1840年 氷期の発見
1841年 泥炭湿地の歴史
1845年 北極探検家たちを襲った最寒冷期の悲劇
1856年 科学者たちによる温室効果ガスの発見
1859年 地球にふりかかる宇宙天気
1861年 最初の天気予報
1862年 カリフォルニアの大洪水
1870年 日常に役立つ気象学へ
1871年 中西部のファイアストーム
1880年 「スノーフレーク」・ベントレー
1882年 北極の共同観測
1884年 初の竜巻写真
1886年 グラウンドホッグデー
1887年 風力の利用
1888年 グレートホワイトハリケーン
1888年 史上最悪の雹嵐
1896年 石炭、二酸化炭素、そして気候
1900年 強大な嵐
1902年「空調設備」
1903年 ワイパー
1911年 ブルーノーザー、 寒冷な北風
1912年 地球の軌道と氷期
1922年 リチャードソンの夢「天気予報工場」
1931年 「中国の悲しみ」
1934年 猛突風.
1935年 ダストボウル
1941年 ロシアの「冬将軍」
1943年 ハリケーンハンター
1944年 ジェット気流が武器に
1946年 レインメイカー
1950年 初めての数値天気予報
1950年 竜巻の事前警報
1952年 ロンドンスモッグ
1896年 初の国際雲図帳
1953年 北海大洪水
1958年 二酸化炭素の上昇曲線
1960年 軌道からの気象観察
1960年 カオス理論と気候
1965年 大統領による気候変動への警告
1903年 乾燥地の発見
1967年 気候モデルの発展
1973年 ストームチェイスによる科学調査
1975年 危険を伴うダウンバーストの正体
1978年南極の氷床が脅かす海面の上昇
1983年 地球上で最も寒い場所.
1983年 核の冬
1986年 エルニーニョ現象の予測
1988年 地球温暖化が初めてニュースに
1989年 発光現象「スプライト(妖精)」の立証
1993年 氷と泥のコアの中の気候の手がかり

2006年 気象災害における人為的要因
2006年 気候を操る?
2006年 大西洋を越える砂塵
2007年 気候を形成する海洋の役割を追跡
2012年 気候問題に対する科学的調査
2012年 熱い(世界一熱い気温) 議論の決着
2014年 極渦
2015年 気候外交一リオサミットからパリ協定まで
2016年 北極海の海氷の後退
2016年 世界一の稲妻地帯
2017年温暖化の影響を受けるサンゴ礁
10万2018年 氷期が終わる?

協力者一覧
関連資料
画像クレジット

索引

著者紹介
監訳者と訳者紹介

アンドリュー・レブキン (著), リサ・メカリー (著), 渡部雅浩(監訳) (その他), 足立理英子 (翻訳)
出版社: ニュートンプレス (2020/1/21)、出典:出版社HP

はじめに

この本では、人類と天気にまつわる100の場面が、地球の起源からはじまって年代順に次々と登場してきます。人類は、大気、海洋、陸地などが複雑に作用しあう「気候システム」や、不意に人類を見舞い、すべてを破壊しつくすこともある極端な気象現象と、どのようにかかわり知見を深めてきたのでしょう。人類が誕生してからほぼいつの時代でも、こうした気象現象と人類のかかわりは、人類にむけて一方向に作用してきました。たとえば気候パターンの変化です。気候パターンが変化することで、氷床、砂漠、海岸線に前進や後退がもたらされました。干ばつ、雨、風、気温などが従来の気候パターンから極端に変化すれば、コミュニティーは、繁栄か適応か移転か消滅か、いずれかの選択を迫られざるをえませんでした。

ところが現在では、科学者の間で、人類と気候とのかかわりが双方向になりつつあると実証されるようになってきました。どの国でも農業が普及しはじめると同時に気候パターンに大きな変化が引きおこされ、さらに、農業以外でも人間によるふるまいがもとで、地形がすっかり変貌をとげ、数千年前には気象パターンが変化していました。この先数十年は、気候の変動がどんなペースで、どのくらい進んでいくのかまだはっきりしていません。

しかし、大気と海洋は、増えつづける温室効果ガスが排出する熱の影響をあきらかに受けはじめています。この影響は、地球科学者が「グレートアクセラレーション(大加速時代)」とよぶ、1950年頃を境とする、人口の増加や経済成長にともなうエネルギーや土地、水への需要が拡大したことにより引きおこされました。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスは、太陽光を透過させる一方で、地球から放射される赤外線を吸収し大気中から熱を逃がさないようにするのです。

気候について詳細な年代史をつくろうと思えば、それこそ何巻にもおよぶことでしょう。この本では、長い長い発見の旅を続ける中で、はっと驚かされたり、ふと口元が緩むような場面に出会います。この探検では、ゴールにたどり着くまでに、さまざまな気象現象についてや、気候と人類が影響しあいながら相互に進化してきたこと、気象にまつわる発明の話まで知ることができるしくみになっています。それも、年代順に、その時代の印象的な場面を切りとったイラストや写真つきです。今は常識となっている現象でも、これから数十年のうちにくつがえされたり、一新されたりする現象も出てくるかもしれません。

その昔、天気がころころ移り変わる現象を神の怒りや喜びの仕業にしてしまったように。気候ははっきりしたパターンを一定期間とる現象なので、短期間で現象がころころ変わる天気の特徴を昔の人は知らなかったのです。米国気象学会の前会長J・マーシャル・シェファードは好んでこう言っています。「気候が性格みたいなものなら、天気は気分みたいなものだ」。

ガリレオ・ガリレイやベンジャミン・フランクリンといった、なじみ深い名をもつ偉人による非凡なひらめきだけでなく、なじみが薄くても魅力あふれる人たちによる発見についても知るようになるでしょう。最初にワイパーを発明した不動産開発業者メアリー・アンダーソンや、1920年代に高高度で高速のジェット気流を発見した日本人気象学者大石和三郎など。ジェット気流はのちに日本で軍事利用され、第二次世界大戦中にアメリカへ何千もの風船爆弾を気流に乗せて飛ばすことになりました。

人類の歴史を通して、天気と気候についてわかったこととわかっていないことを網羅しようとする場合、胆に銘じておくことが一つあります。それは、人類による知見は発展しつづけていくということです。たとえば、科学者が「大気中の温室効果ガスは熱を閉じこめる」。という基本認識から、「燃料や森林を燃やすことで生じる二酸化炭素(CO2)の排出量を減らせなければ、これから何世紀にもわたって温暖化と海面上昇が続く」といった認識をもつようにいたるには、一世紀以上もの調査や測定を系統だてて行うとともに、進化しつづける技術が必要だったのです。

これからの世代は、テクノロジーの恩恵を受け、天気に左右されない生活を送るようになるかもしれません。かつて出かける前にごく普通に天気予報をチェックしていた世代は、これに違和感を覚えることでしょう。ですが今のところ、天気は日々注意をはらわないと影響をこうむるかもしれないと、ほぼだれもが考える生活環境の側面です。

わたしたちは早いうちから、だれもがざっと紐といて親しめる気候システムの歴史とメカニズムについて年代記をまとめ上げるつもりでした。数十億年前までさかのぼり、地殻変動がもたらした何千年にもわたる痕跡から推測したり、化石を検証したりして測定できる時代を調べたところ、従来の年代記にある定説を塗りかえさなくてはならない場面もありました。それは、24億年前から4億2、300万年前までに登場する「場面」を見れば歴然としています。この原生代のマイルストーン(節目となる事象)は、紀元前とあるだけあって、とうてい計り知れないスパンの年月について書かれているのは言うまでもありません。

炭素同位体や化石も何一つ確かな根拠は残されていないのです。そしてもちろん、氷期の終わりについて触れた最後のマイルストーンは、まだだれも書いていない歴史について憶測で書きました。選ばれたマイルス水難救助部隊がサウスカロライナ陸軍州兵から派遣されました。この部隊は、2017年のハリケーン「ハービー」が引きおこしたテキサスの洪水で立ち往生した人々を救助した捜査隊です。トーンの大部分は、異なる場所で生じた事象をいくらか意味を広げて伝えるようにしました。たとえば、1922年にリビアで観測された、長年にわたる最高気温記録を取り消した調査のくだりでは、気温の観測と同じように気象史における精度の限界を物語っています。

この100の場面につけた物語の糸筋は、問題意識をもてるような科学的な物の見方や壊滅的ともいえる気象事象に軸をおいています。ですが、一風変わった面白い話題も2、3載せていて一天気が音楽にはたす役どころや、春の訪れを占うグラウンドホッグの伝統的行事など――人間と気象要素との濃密なつながりを余すところなくとらえようとしました。

ここで選んだ100の事象をはるかに上まわる数の歴史的価値をもつ事象が、まだたくさん残っています。この物語が食欲をそそる前菜となり、読者のみなさんの、より専門的でまとまった気象と天気の歴史や、さらに、それにまつわる伝承にも興味をもっていただけるきっかけとなるよう心より願っています。伝承作家としては、クリストファーバート、ブライアン・M・フェイガン、ジェームズ・ロジャー・フレミング、エリザベス・コルバート、スペンサー・R.ウィアートらがいます。そして、今ではあたりまえに、膨大な量の貴重なオンラインコンテンツが利用できます。アメリカ気象学会やアメリカ国立気象局、それにアメリカ航空宇宙局(NASA)などの機関から、「Weather Underground」や「Real Climate」などのブログまで。

この本の出版にあたり、詳細な説明が必要な場面は、気候史について深い専門知識のある友人や同僚からの知恵や話を活用しました。寄稿者の名前は、寄稿の最後にイニシャルで示し、詳細は巻末の協力者一覧に記載しています。特に先カンブリア時代の地球を専門とする地質学者にして、作家のハワード・リーに懇請し、これからはじまる歴史の幕を開けることにしました。それではページを進め、ダイナミックに展開する大気の状態を天気とよぶ、大気そのものの起源からはじめましょう。

アンドリュー・レブキン (著), リサ・メカリー (著), 渡部雅浩(監訳) (その他), 足立理英子 (翻訳)
出版社: ニュートンプレス (2020/1/21)、出典:出版社HP

謝辞

本書は、人類の気候システムへの理解と関係を追跡調査してきた、数多くの歴史家、学者、科学者、研究所による比類ない学識と専門知識をもとにしています。参考文献のリストには、各場面とマイルストーンにふさわしい資料を二人で吟味して載せる一方で個人としての意見や洞察をあたえてくれた専門家諸氏には、とりわけ深く感謝を申し上げます。アメリカ物理学協会の物理学史センター長を長年務めたスペンサー・R・ワート氏のおかげで広範な調査をとどこおりなく進められ、気候を形成する人間の役割をあきらかにできました。ワート氏の傑作『温暖化の《発見》とは何か』の特にオンライン版https://history.aip.org/climateの情報は、資料として欠かせません。

コルビー大学のジェームズ・ロジャー・フレミング教授からは、気象史についての深い知見のもとに、多くの項目へのフィードバックを気持ちよく速やかにいただくことができました。地球における気候の物語の草創期部分は、惑星科学研究所の上級科学者デイビッド・グリンスプーン博士とロチェスター大学の天体物理学の教授アダム・フランク博士による精査をうける恩恵にあずかりました。誤りや見落としはもちろん、わたし二人の責任です。

本書はまた、2019年に100周年を迎えるアメリカ気象学会が運営するオンライン・アーカイブと、アメリカ国立気象局や、気象と気候を中心にあつかう他の連邦政府関係機関、それにイギリス気象庁からの情報を得ています。次のサイトでは、潤沢な資料を集める絶好のスタートをきることができました。weather.gov/timeline and metoffice.gov.uk、およびnationalacademies.org/climate(米国科学アカデミーのレポートが豊富)

また、スターリング出版社チームの、特にメレディス・ヘイルの鋭い編集眼のおかげで、少しの間違いもないよう、多彩なマイルストーンを一貫したトーンで通すことができました。ステイシー・スタンボーは、素晴らしい仕事ぶりで、わたしたちが見つけてきた挿絵や図をふるいにかけ、短時間でぴったりする画像を探しあててくれました。この本は、スターリング出版社に勤めていた科学編集者メラニー・マッデンがいなかったら存在しなかったでしょう。マッデンは、出版社をやめても戻ってきては、粘り強く筆者の一人(アンディ・R.)とアイデアを突きつめしてきました。最初に戻ってきた2012年からです!

最後に、わたしたちは互いに責任を負うとともに感謝の念に堪えません。環境ジャーナリスト(アンディ・R.)と、環境・科学教育(リサ・M.)との30年以上の経験を融合させた初めての共同執筆でしたが、思いだしてみてもストレスは一度か二度、わずかにあっただけです。

アンドリュー・レブキン (著), リサ・メカリー (著), 渡部雅浩(監訳) (その他), 足立理英子 (翻訳)
出版社: ニュートンプレス (2020/1/21)、出典:出版社HP