実践 ビジネス数学検定3級




はじめに

「彼はいい人なんだけど、ちょっと頼りなさそう」「挨拶はしっかりできるし、人当たりはいい。でも、物事をきちんと把握できていなさそう」「一生懸命な姿勢は理解できるけど、何を伝えようとしているのかわからない」。あなたの周りに、こんな“残念な人”はいませんか。もしかしたら、あなた自身が周囲からこう評価されているかもしれません。

1分1秒を争うビジネスシーンでは、素早く情報を把握・分析し、的確な判断を下すことが求められます。実は“残念な”ビジネスパーソンに共通して欠けているスキルの一つが、「ビジネス数学力」です。数字を基に論理的に物事を考えたり判断したりできないことが、ビジネスシーンにおいて残念な印象を与えてしまうのです。

ビジネスで求められる5つの力

ビジネスシーンで求められるビジネス数学力は、大きく5つに分けられます。物事の状況や特徴をつかむ「把握力」、規則性や変化、相関性などを見抜く「分析力」、いくつかの事象から最適な解を選ぶ「選択力」、過去のデータから未来を見通す「予測力」、情報を正確に伝える「表現力」です。これらの力は、ビジネスシーンの至るところで求められます。あなたは今、大事な商談を成立させるための準備をしていたとしましょう。まず、あなたは新聞や雑誌、統計資料などを基に、商談先の経営状況や扱う商材のトレンド、国内外の消費者動向などを正しく「把握する」必要があります。

もちろん、数字をピックアップするだけでは意味がありません。集めたデータを基に、市場の規則性や変化、関連する事項を「分析する」ことで、状況把握が正しいかどうか、見落としているリスクはないかどうかを見極める必要があります。

すべてが思惑通りに行くようなビジネスはまれです。メリットとデメリットを見極め、最適な方策を「選択する」必要があります。このとき、過去の取り引きデータやトレンドなどのデータを基に、商談がうまく進んだ場合の利益や失敗した場合の損失などを「予測する」ことも不可欠です。

こうしたプロセスを通して、あなたは商談の方向性を決めます。その意思決定が正しいことを上司に報告したり、商談先に対して取り引きすることの利点を明確に示したりするには、これまで集めた情報や分析結果などを、わかりやすく「表現する」ことも必要です。

「できる」と思い込んでいませんか

さて、あなたはこの5つの力をフルに活用して、ビジネスに臨めているでしょうか。実は本人は「できている」と思っていても、実際には大きな勘違いをしていることも少なくありません。
ほとんどのビジネスパーソンは、グラフに示された数字を読み取ることはできます。ところが、「その割合はどのように求めているのか」「その数字に妥当性はあるのか」「そもそも、その数字から何が読み取れるのか」といったことを聞いてみると、とたんに言葉に詰まるビジネスパーソンは少なくありません。文章の中に数字などの事象が埋め込まれていると、まったく読み取れないビジネスパーソンもいるのが実情です。

ほかにも、「あるデータを参考にしてプレゼンテーション資料を作ったら、そもそも参考にした資料に誤りがあることを取り引き先から指摘されて恥をかいた」「表計算ソフトでの計算結果をうのみにしていたが、実は計算式が間違っていて思わぬ損失を招いた」「同じソリューションを提案したにもかかわらず、競合先のプレゼンテーションのほうがポイントを突いてわかりやすかった。その結果、失注してしまった」など、ビジネス数学力が不足していたことによる失敗例は数多くあります。

このように、ビジネス数学力が不足していると、どんなにビジネスチャンスが目の前にあったとしても、それを生かすことはできないのです。

「ビジネス数学力」は訓練で高められる

ここまで読んでいただいても、「いまさら数学はちょっと…」と思う方はいるでしょう。でも、ご安心ください。中学・高校でつまずいた難しい数学のテクニックは必要ありません。重要なことは、ビジネスシーンに潜んでいる数字を見つけ出し、それらの関係性をしっかりと把握し、目的に応じてそれらを組み合わせる思考プロセスを身につけることなのです。そして、これらのベースとなるビジネス数学力は、基本的な訓練を続けることで、飛躍的に高めることができます。

ビジネス数学力を高める早道が、当財団(公益財団法人日本数学検定協会)が企画・実施している「ビジネス数学検定」です。商品企画やサービス設計、マーケティングなど、さまざまなビジネスシーンに関連する問題を通じて、「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」のレベルを試せる検定試験です。どんなビジネス数学力が欠けているのかを、試験結果を基に診断した分析シートも受検者に渡されます。

さまざまな問題に触れることで、いつの間にか数字感覚が身についたり、数字が持つ意味を理解できるようになったりします。まずは本書を開いてみてください。そして、気になる問題を解いてみてください。ビジネス数学力を身につけ、「スマート」なビジネスパーソンに変貌する一歩を踏み出してみましょう。

2017年3月吉日
公益財団法人 日本数学検定協会

(公財)日本数学検定協会 (著)
出版社: 日経BP (2017/3/9)、出典:出版社HP

本書の読み方、使い方

本書は「ビジネス数学検定3級」の合格レベルに達するための公式テキストです。新入社員などエントリーレベルで必要とされるビジネス数学力を身につけることができます。ビジネス数学力を構成する5つの力「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」のそれぞれについて8問ずつ、全40問の問題を掲載しています。問題はそれぞれ1問完結型になっているので、解く順番は自由です。

それぞれの問題は、「問題」「考え方」「解説」「ポイント」の4ステップで構成されています。数学が苦手な人でも、本書に記された「考え方」や「解説」を読むことで、ビジネス数学力の基礎となる思考プロセスを身につけることができます。

1ページ目問題
2ページ目考え方
3ページ目解説
4ページ目ポイント

ステップ1(1ページ目)=問題
「ビジネス数学検定3級」で出題される問題の類似問題です。1問あたりの制限時間を2分として、まずは自力で問題を解いてみましょう。

ステップ2(2ページ目)=考え方
正解に至るまでの考え方を示しています。空欄になっている部分に数字や用語を書き込みながら、問題を解くための思考プロセスを身につけてください。

ステップ3(3ページ目)=解説
問題の正解と考え方の空欄にあてはまる数字や用語をチェックしてください。本書に示した考え方とは別の考え方で解いた場合は、本書のような考え方もあるのだということを理解するとよいでしょう。正解にたどり着くまでの考え方は、たくさん知っておきましょう。

ステップ4(4ページ目)=ポイント
問題に関わる数学的な背景、問題に関する周辺知識、実際のビジネスシーンでの活用方法など、知識をさらに深め、活用する方法を示しています。

本書をひと通り読み終えたら、あなたのビジネス数学力は、飛躍的に高まっているはずです。自身のスキルレベルを把握するためにも、ぜひ、「ビジネス数学検定3級」を受検してみましょう。検定に合格することは、あくまでもスキルアップの一つのステップにすぎません。身につけたビジネス数学力を、実際のビジネスの現場で生かせるようにすることが、みなさんの最終ゴールです。「できる」ビジネスパーソンを目指し、早速、ビジネス数学力を高める一歩を踏み出しましょう。

(公財)日本数学検定協会 (著)
出版社: 日経BP (2017/3/9)、出典:出版社HP

「ビジネス数学検定」のご案内

「ビジネス数学検定」とは、実用数学技能検定「数学検定」を運営する公益財団法人日本数学検定協会が開発した、ビジネスパーソンに必要な数学力・数学技能を測定する検定です。ビジネスで特に必要とされる数理的な考え方を「把握力」「分析力」「選択力」「予測力」「表現力」の5つの力に分類し、さまざまなビジネスシーンを想定した問題を通して測定します。

ビジネスに必要な5つの力

把握力 物事の状況・特徴を理解する力
データやグラフの意味を正確に把握する力
分析力 規則性・変化・相関を見抜く力
データを高い精度で加工する力
選択力 いくつかの事象から最適なものを選ぶ力
数理的な根拠をもとにして選ぶ力
予測力 過去のデータから未来を予測する力
事業の将来像を見抜く力
表現力 情報を正確に表現する力
物事をわかりやすく伝える力

 

これら5つの力を測定することで、数理的な能力の強みや弱みを認識し、「ビジネスパーソンとしてさらに活躍するには、どのようなスキルを磨けばよいのか」を把握することができます。自分自身のスキルアップのために個人で受検するだけでなく、企業における内定者研修や新人研修、リーダー研修などでも利用されています。

ビジネス数学検定は、インターネット上で受検できるWBT(Web Based Testing)方式を採用しています。そのため、自宅や会社などご都合に合わせた場所で、ご自身のご都合に合わせて早朝や深夜などの時間帯でも、受検することができます。合否判定や分析結果は受検直後に画面上に表示されるので、検定結果をすぐに活用できる利点もあります。

検定概要

ビジネス数学検定は、「ビジネス数学検定3級」「ビジネス数学検定2級」「ビジネス数学検定1級」の3つの階級が用意されています。

ビジネス数学検定3級
対象:エントリークラス(新入社員や学生など)
問題数:30問(5者択一問題)
検定時間:60分
合格点:70点(100点満点)
検定料:2,000円(税抜き)

ビジネス数学検定2級
対象:リーダークラス(中堅社員など)
問題数:30問(5者択一問題)
検定時間:60分
合格点:70点(100点満点)
検定料:4,000円(税抜き)

ビジネス数学検定1級
対象:マネジメントクラス(管理職など)
問題数:30問(5者択一問題)
検定時間:90分
合格点:70点(100点満点)
検定料:6,000円(税抜き)

出題範囲
各階級の出題範囲は次のとおりです。

階級 出題内容
3級 把握力 グラフ(折れ線グラフ・棒グラフ円グラフなど)の把握
労働時間の把握・給料の把握・簡単なデータの把握
平均値の把握・時差の把握・集合の把握 など
分析力 定価・利益の計算・売上高の計算・割合を用いた計算
金利の計算・為替差益の計算・仕入原価の計算
債券利回りの計算・税額(所得税など)の計算 など
選択力 交通機関の選択・数値の比較による選択
スコアシートによる選択・割合を用いた選択
期待値による選択 など
予測力 到着時刻の予測・平均を用いた予測
加重平均を用いた予測
一次関数・連立方程式を用いた予測 など
表現力 折れ線グラフでの表現・棒グラフでの表現・円グラフでの表現
図表の適切な使用法・関数のグラフ表現
バブルチャートによる表現 など
2級 把握力 簡単なデータの把握・平均値の把握・時差の把握
集合の把握・論理的な文章把握
グラフからの相関関係の把握・商品の位置づけの把握 など
分析力 金利の計算・為替差益の計算・仕入原価の計算
債券利回りの計算・税額(所得税など)の計算
損益分岐点分析・財務諸表分析 など
選択力 スコアシートによる選択・割合を用いた選択
確率や期待値による選択・株式投資
財務諸表分析や投資指標を基にした選択 など
予測力 平均変化率を用いた予測
一次関数・連立方程式を用いた予測
データに基づいた業績の予測 など
表現力 図表の適切な使用法・関数のグラフ表現
バブルチャートによる表現・レーダーチャートによる表現
三角グラフによる表現・ベン図による表現 など
1級 把握力 集合の把握・論理的な文章把握
グラフからの相関関係の把握・高度な統計処理
作業工程の把握・品質管理 など
分析力 損益分岐点分析・財務諸表分析
キャッシュフロー現在価値分析(DCF法・NPV法・IRR法)
クリティカルパス分析・ポートフォリオ分析 など
選択力 確率や期待値による選択・株式投資
財務諸表分析や投資指標を基にした選択
デシジョンツリーを用いた選択・ゲーム理論 など
予測力 加重平均を用いた予測・相乗平均を用いた予測
統計に基づく予測・複数のデータに基づく予測
マクロ経済学による予測・ミクロ経済学による予測 など
表現力 バブルチャートによる表現・ベン図による表現
対数グラフによる表現・統計分析の結果の表現
三次元グラフによる表現 など

 

受検の際に必要な持ち物
検定はインターネット上で行われますが、受検の際には以下の持ち物をご用意ください。
・筆記用具
・計算用紙
・電卓または関数電卓
・表計算ソフト(1級のみ)

検定結果
検定終了直後に、合否判定などの検定結果が画面上に表示されます。「合格」「不合格」のほか、総得点、「5つの力」それぞれの得点、「5つの力」のレーダーチャートなどが、検定結果として表示されます。
検定結果

受検方法
ビジネス数学検定の受検方法は、個人で受検できる「個人受検」と企業や大学・高等学校で一括申込を行って受検する「団体受検」があります。「個人受検」は年6回(変動することがあります。最新情報は公式サイトでご確認ください)の実施です。同一の検定期間で複数の階級を受検することも可能です。「団体受検」は随時受付中です。

詳しいお申し込み方法は「ビジネス数学検定公式サイト」をご覧ください。
ビジネス数学検定公式サイト→http://www.su-gaku.biz/

お問い合わせ先
公益財団法人日本数学検定協会
〒110-0005東京都台東区上野5-1-1文昌堂ビル6階
TEL:03-5812-8340
受付時間9:30~17:00(土日祝を除く)
FAX:03-5812-8346
URL:http://www.su-gaku.biz/

(公財)日本数学検定協会 (著)
出版社: 日経BP (2017/3/9)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書の読み方、使い方
「ビジネス数学検定」のご案内

第1章 把握力
問題1業界シェアの動向は?
問題2売上状況は?
問題3どれだけ売れ筋に頼っている?
問題4契約数は何万件?
問題5製品Aのカロリーは?
問題6肥満は何人?
問題7インドはいま何時?
問題8未開拓の顧客はどれくらい?

第2章 分析力
問題9小売店Aの利益は?
問題10Nさんの年収は?
問題11完全失業率は?
問題125年後の受け取り利息は?
問題13定期預金の満期、いくらになる?
問題14為替差益(差損)はどれくらい?
問題15平均賃金はいくら?
問題16リースが得になるのはどの場合?

(公財)日本数学検定協会 (著)
出版社: 日経BP (2017/3/9)、出典:出版社HP