完全解説! 火薬類取扱保安責任者試験




はしがき

本書は,火薬類取扱保安責任者試験(甲種および乙種)を受験しようとする方々が,資格試験に合格するために必要な「一般火薬学」と「火薬類取締に関する法令」についての知識を習得し,試験問題を解き得る実力を養成することを目的としています.

火薬類の用途は,よく知られているようなトンネルの掘削やダムの建設,石灰岩の採掘ばかりではなく,医療機器,金属加工,自動車産業,宇宙開発など,幅広い分野にまで広がっていますこれらの仕事に従事する人々は,火薬を正しく安全に取り扱うために,火薬類取扱保安責任者の資格をもっていることが求められています.

2009年発行の拙著「火薬取扱者試験徹底研究」は,長年ご好評をいただきました.その書籍の内容をもとに本書では,各章の最初に「出題傾向をつかもう!」「こんな問題が出題されます!」という項目を設け,各分野の出題傾向や合格に必要な基本的な知識をわかりやすく,コンパクトにまとめていますこれらによって,より効率的に学習できる内容となっています.

さらに,各章末の「実戦力テスト」の問題数を増やし,解く力をより高められるようにいたしました.なお,「I編火薬類取締に関する法令」は,法令改正がある度にそれらを取り入れて参りましたが,内容のご理解を得られやすいようにとの視点から,法令の解説を工夫しています.

資格を取得するには,法令と技術の問題を繰り返し練習することが役立ちます.本書が皆様の学習の一助となり,さらに,試験に合格された後も実務において「法令」と「技術」を再確認するための参考書としてご利用いただければこの上ない幸いです「受験者の皆様が首尾よく合格されることを心から祈念いたしております.

2015年4月
手束 誠治

手束 誠治 (著)
出版社: オーム社 (2015/5/23)、出典:出版社HP

目次

I編 火薬類取締に関する法令
1. 法令の基本的な事項
2. 許認可の手続きなど
3. 貯藏
4. 運搬
5. 消費
6. 廃棄
7. 保安

II編 一般火薬学
1. 火薬学の基礎的な事項
2. 火薬
3. 爆薬
4. 火工品
5. 性能と試験方法
6. 発破
7. 計算問題

索引

受験の手引き

1 火薬類取扱保安責任者とは

火薬類取締法第30条第2項の規定により,火薬または爆薬を1ヶ月に25kg以上消費する者,あるいは火薬庫の所有者または占有者は,火薬類取扱保安責任者(同代理者,同副保安責任者)を選任し,都道府県知事に届け出なくてはならない,この保安責任者は,甲種または乙種火薬類取扱保安責任者免状を有する者でなければならず,この免状は都道府県知事が行う試験((試験事務は指定試験機関である火薬類保安協会が行っている)に合格した者に交付される.

2 どんな試験が行われるのか

●受験資格
性別,年齢,学歴,経験などの制限はなく,だれでも受験することができる.ただし,18歳未満の者は試験に合格しても火薬類の取扱いをすることはできないが,満18歳に達すれば火薬類の取扱いが可能となる.

●試験の期日と場所など
受験願書の受理を含む試験事務は,公益社団法人全国火薬類保安協会が,毎年1回全国一斉に同一問題で試験を実施している.試験の場所は各都道府県ごとに1箇所であるが,離島の多い県などは1県内に複数の試験場が設けられることもある.試験の期日,場所,受験願書の受付期間などは毎年5月頃までには公告されるのが普通である.

また,各都道府県の火薬類保安協会で受験者のための講習会が開かれることもある.受験希望者はあらかじめ各都道府県庁または各都道府県の火薬類保安協会に問い合わせるのがよい.

公益社団法人全国火薬類保安協会
東京都中央区八丁堀4丁目13番5号
電話03-3553-8762(代)

●試験の内容
主として火薬類に関して必要な知識及び技能についての学科試験で,次の課目について行われる.

① 火薬類取締に関する法令
② 一般火薬学

問題の形式は択一式による筆記試験で,設問のうちから正解一つを選ぶ方法である.火薬類取扱保安責任者には甲種と乙種の2種類があるが,試験は甲種のほうが乙種よりもいくぶん難しいといえる.なお,甲種と乙種とで免状の効用にどんな違いがあるかについては,1編7章で説明してあるので参照されたい.

3 試験を受けるには

●期日の確認
都道府県の火薬担当課または火薬類保安協会に問い合わせて,試験の期日と,願書受付期間(通常試験期日の2ヶ月前の10日間で,土,日曜を除く.郵送の場合は受付最終日の消印まで有効)を必ず確かめることが必要である.

●提出書類
① 受験願書
② 写真(縦6cm×横5cm,出願前6ヶ月以内に撮影した正面脱帽上半身像)
③ 住民票抄本

願書類は各都道府県の試験事務所(火薬類保安協会)に用紙を印刷して用意しているので,これらをもらって記入し,受験地の都道府県試験事務所へ提出する.このとき,受験手数料を郵便局で納付し,その証明書を願書に添付しなければならない.

●試験課目の免除
次のどれかに該当する人は試験課目の免除を受けることができる.

① 火薬類製造保安責任者免状(甲種または乙種)をもっている人
→課目全部が免除される(丙種火薬類製造保安責任者免状では課目免除を受けられない)

② 新制または旧制の大学,日制専門学校などの卒業者で,火薬学を修得した人
→一般火薬学が免除される.

③ 鉱山保安規則による火薬係員試験に合格した人
→一般火薬学が免除される

これらの特典により試験課目の免除を受けるには,免除事由を証明する文書を受験願書に添えて提出しなければならない.

4 受験勉強はどうするか

●参考書
火薬類取締法に関しては,法令集を熟読して勉強すればよい.「火薬類取締法令集」は一般の書店には置いていないことが多いが,各都道府県の火薬類保安協会に相談すれば求めることができる.

一般火薬学に関しては各種の参考書もあるが,日本火薬工業会資料編集部発行「火薬学(第2版)」が推せんできる.購入希望者は火薬類保安協会に相談してみるとよい.

しかし,本書に収録した練習問題は過去数年間に実際に出題されたもの,または出題傾向に沿った予想問題であるから,本書をマスターすれば出題の傾向も理解でき,受験に必要な実力をつけることができるはずである.

●講習会
各都道府県の火薬類保安協会では,試験の前の適当な時期に受験者のための講習会を開催するところが多い.受験勉強に役立つので,利用するのが賢明であろう.

5 試験に合格したら

●免状の交付
試験の結果については,合否の通知が試験事務所から受験者に直接郵送されるので,合格した人は通知書に示された指示にしたがって手続きをして,火薬類取扱保安責任者免状の交付を受ける.

●保安手帳制度
「火薬類取扱保安責任者免状の所有者が火薬類の取扱いに従事するときは,「火薬類保安手帳」を携帯しなければならないが,免状交付直後であれば保安手帳の交付申請も容易である.免状交付の際火薬類保安協会から手帳制度について説明があるので,これにしたがって手続きをすればよい.

手束 誠治 (著)
出版社: オーム社 (2015/5/23)、出典:出版社HP