自衛消防訓練マニュアル




はじめに

皆さんの事業所には従業員で構成された“自衛消防の組織”があり、火災・地震などの災害に備え積極的に訓練をされていることと思います。

ところで過去の火災事例をみますと、自衛消防の組織は編成されているが隊冒個々に役割が徹底されていなかったり、日常から訓練が実施されていなかったため、いざというときに活動ができず被害を大きくした例が多くみられます。火災事例は、皆さんが自分の事業所の災害発生、拡大の危険性を考えてみる“かけがえのない教訓”でもあります。そのうちで“自衛消防の組織”において教訓とすべき点をみますと、

●炎を見てあわててしまい、消火器が使えなかった。
●屋内消火栓が近くにあったのに、使うことを思いつかなかった。
●屋内消火栓を使いかけたが、開閉バルブを操作しなかったため水が出ず、結局使われなかった。

など、初期消火活動に失敗したり、また、通報連絡や避難誘導活動が遅れたため、被害を大きくしてしまった事例は、ここに書き切れない程たくさんあります。このことから、自衛消防活動上の課題としてクローズアップされるのは、事業所の責任者の防災に対する認識の必要性は勿論ですが、防災教育の充実や消防訓練の効果的な実践が極めて重要であり、こうした面での指導者である有能なリーダーの必要性であります。

本書は、自衛消防の組織のリーダーに必要な基本的な知識及び消防技術をとりまとめたものです。リーダーである皆さんが今後、各々の事業所で実施する自衛消防訓練・教育の一助になれば幸いです。

自衛消防活動研究会 (編さん)
出版社: 近代消防社 (2015/11)、出典:出版社HP

目次

火災の実態

第1ホテル・ニュージャパン火災から
第2火災の知識
1火災の定義
2燃焼と消火法
3煙の恐ろしさ

自衛消防の組織

第1目的
第2位置づけ
第3任務

自衛消防訓練

第1自衛消防訓練の必要性
第2初期消火活動の実態
1初期消火の実施状況
2初期消火の問題点
第3訓練のすすめ方
1訓練種別
2訓練計画
3出火点の想定
第4訓練種別ごとの実施要領
1通報連絡訓練
2初期消火訓練
3避難誘導訓練

リーダーの役割

第1災害時における指揮
1リーダーの必要性
2指揮能力
第2平常時における教育
1教育の必要性
2教育をするための技術
第3安全管理
1安全管理の基本原則
2訓練時の安全管理
3消防用設備等に関する安全管理

災害発生時の心理と避難行動

第1人間の心理
1平常化の心理
2心理と五感に関する実験
第2避難行動
1避難行動の特性
2避難障害
3避難速度
第3パニック
1パニックとは
2人間の密度
3群集圧力
第4人間心理から見た避難対策
1フール・プルーフ
2フェイル・セーフ

(資料編)
I訓練のための基本動作
II消防用設備等の操作要領
III地震対策
Ⅳ台風関係
V消防関係用語

自衛消防活動研究会 (編さん)
出版社: 近代消防社 (2015/11)、出典:出版社HP