電気通信主任技術者 これなら受かる 専門的能力(伝送交換主任技術者)




まえがき

現在,通信ネットワークの利用は,日常生活,企業活動の双方において,欠かせないものとなっています.この通信ネットワークを支えている企業は電気通信事業者と呼ばれており,利用者がいつでも情報通信を活用できるようにインフラ整備や設備管理を行っています.

電気通信事業者は,事業用電気通信設備を,総務省令で定める技術基準に適合するように維持していくために,電気通信設備の工事や維持及び運用の監督にあたることが義務付けられています.これらの監督業務を行うのが電気通信主任技術者で,その資格証として,伝送交換設備とそれに附随する設備の工事,維持及び運用に関する監督を行う「伝送交換主任技術者資格者証」と,線路設備とそれに附随する設備の工事,維持及び運用に関する監督を行う「線路主任技術者資格者証」があります.

これらのうち,伝送交換主任技術者の資格試験では,次の4科目が試験科目になっています.ただし,受験者が既に有している資格,合格している科目の有無,学歴と実務経験によって受験が免除される科目があります.

・電気通信システム
・専門的能力(伝送,交換,データ通信,無線及び通信電力のうちいずれか1分野)
・伝送交換設備及び設備管理
・法規

本書は,上記の試験科目のうち,「専門的能力(伝送,交換,データ通信,無線,通信電力)」で実際に出題された問題の解答と解法の例について述べるものです.試験は毎年7月と1月の2回実施されますが,本書では,平成26年度から平成27年度までの2年間,4回の試験に出題された問題について解説しています.

本書の特徴は,技術分野ごとに過去問の解説を行っていることです.これによって,読者が試験問題の出題傾向を把握し重点的な対策がとれるようにしています.また,問題解説では,解答に至るまでの思考に沿った詳しい説明と関連の技術情報が記載され,試験対策に必要十分な解説がコンパクトにまとめられています.

これによって,これから試験対策の学習を始める読者にとっては,出題対象の技術分野や学習の進め方が分かりやすくなり,また,既に学習を進めてきた読者にとっては,自己の苦手分野を把握し,それらを含めたスキルの向上に役立つものと考えています.

試験対策には本書のほかに,必要に応じて関連の書籍も合わせて学習することが必要と思いますが,本書では,解答に必要な技術知識も記載しているため,学習対象の技術分野の把握と関連する他の書籍の選択にも有効と考えています.

本書を読み通すことで,読者の皆様が電気通信主任技術者の資格を取得できることを心より願っています.そして,その力をもって,今後も発展が続く通信ネットワークを支える技術者としてのさらなる力を身につけていただきたく思います.

平成28年8月
オーム社

オーム社 (編集)
出版社: オーム社 (2016/9/14)、出典:出版社HP

Ⅰ 試験の概要

試験概要
「電気通信主任技術者試験」は,一般財団法人日本データ通信協会(JADAC)に属する電気通信国家試験センターが実施しています.ここでは,電気通信主任技術者試験のほかに「電気通信工事担任者試験」の二つの国家資格試験が扱われています.

以下では,電気通信国家試験センターホームページに記載されている内容を一部抜粋して概要を示します.詳しくは,電気通信国家試験センターホームページ(https://www.shiken.dekyo.or.jp)を参照してください.

電気通信主任技術者について
電気通信主任技術者は,電気通信事業者が営む電気通信事業において,電気通信ネットワークの工事,維持及び運用を行うための監督責任者です.

電気通信事業者は,管理する事業用電気通信設備を総務省令で定める技術基準に適合するよう,自主的に維持するために,電気通信主任技術者を選任し,電気通信設備の工事,維持及び運用の監督にあたらなければなりません.

資格者証の種類
電気通信主任技術者資格者証の種類は,ネットワークを構成する設備に着目して,「伝送交換主任技術者資格者証」と「線路主任技術者資格者証」の2区分に分かれています.また,各資格により監督する範囲が次のように決められています.

資格者証の種類 監督の範囲
伝送交換主任技術者資格者証 電気通信事業の用に供する伝送交換設備及びこれに附属する設備の工事,維持及び運用
線路主任技術者資格者証 電気通信事業の用に供する線路設備及びこれに附属する 設備の工事,維持及び運用

受験資格
特に制限はありません.誰でも受験することができます.

試験の種類
試験の種類は,次の二つがあります.
1. 伝送交換主任技術者試験
2. 線路主任技術者試験

試験の科目
「伝送交換主任技術者試験」および「線路主任技術者試験」で出題される科目は,次の4科目となります.

・電気通信システム
・専門的能力
・伝送交換設備及び設備管理(又は線路設備及び設備管理)
・法規

なお,一定の資格又は実務経験を有する場合には,申請による試験科目の免除
制度があります.

試験時間
試験時間は,次のようになっています.

科目 試験時間
電気通信システム 80分 180分*
専門的能力 100分
伝送交換設備及び設備管理 (又は線路設備及び設備管理) 100分 180分*
法規 80分

*二つの科目を受験する場合は,180分の間に同時に受験します.

試験実施日と試験実施地
試験は,例年2回実施されます.
第1回:7月の日曜日
第2回:翌年の1月の日曜日

試験実施地は以下の地区です(試験実施地は変わることがあります.受験前に必ず試験センターホームページで確認してください)
札幌,仙台,さいたま,東京,横浜,新潟,金沢,長野,名古屋,大阪,広島,松山,福岡,熊本及び那覇

受験申込み
・インターネットによる申込み
ホームページから申請
夏:4月上旬~5月上旬
冬:10月上旬~11月上旬
試験手数料の払込み
夏:4月上旬~5月上旬
冬:10月上旬~11月上旬

・試験申請書による郵送申込み
試験申請書の提出
夏:4月上旬~4月末頃
冬:10月上旬~10月末頃
試験手数料の払込み
夏:4月上旬~4月末頃
冬:10月上旬~10月末頃

試験手数料
全科目受験 18700円 3科目受験 18000円
2科目受験 17 300円 1科目受験 16600円
全科目免除9500円
(インターネット申請の場合は,実務経歴による免除申請はできません.)

合格基準
各科目100点満点で,合格点は60点以上です.

試験科目の試験免除について
資格,科目合格,実務経歴,認定学校修了によって,試験科目の免除を受けることができます.詳細は,(一財)日本データ通信協会にお問い合わせください.

試験についてのお問合せ先
一般財団法人 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター
〒170-8585 東京都豊島区巣鴨2-11-1 巣鴨室町ビル 6F
TEL:03-5907-6556

オーム社 (編集)
出版社: オーム社 (2016/9/14)、出典:出版社HP

Ⅱ 試験の出題範囲と出題傾向

伝送交換主任技術者の専門的能力の試験では,「伝送」「交換」「データ通信」「無線」「通信電力」の五つの専門科目があります.各専門科目とも,試験問題は問1~問5からなり,解答数は40となっています.このうち,「伝送」「交換」「データ通信」では,問1と問2が各科目独自の問題で,残りの問3,問4,問5が各科目共通の問題となっています.

本書では,伝送交換主任技術者の五つの専門科目について,過去2年計4回の試験で出題された問題を専門科目ごとにいくつかの技術分野に分類し,技術分野ごとに,平成27年度第2回試験の問題から新しい順に解説を記載しています.

専門科目の問題ごとに記載している編・章を表1に示します.

表1 専門科目の問題の解説を記載している本書の編・章

専門科目 問題
伝送 問1、問2 Ⅰ編伝送・交換・データ通信 1章 伝送設備
問3、問4、問5 同上 4章 ネットワーク技術
交換 問1、問2 同上 2章 交換設備
問3、問4、問5 同上 4章 ネットワーク技術
データ通信 問1、問2 同上 3章 データ通信設備
問3、問4、問5 同上 4章 ネットワーク技術
無線 問1〜問5 Ⅱ編 無線 5章 無線設備
6章 無線設備設計
通信電力 問1〜問5 Ⅲ編 通信電力 7章 通信電力設備
8章 通信電力設備設計

注:「伝送」「交換」「データ通信」では共通の問題が問3,問4,問5に記載されている.

伝送交換主任技術者の専門的能力を受験される方は,各専門科目について過去問とその解説を記載している編・章を参照して学習してください.

節ごとに,該当する技術分野の問題の出題状況の一覧を表2に示します.

Ⅲ 本書の使い方

紙面構成
本書では,穴埋めや選択の問題については答えに関係する箇所に下線を付しています.また,試験問題の解答や学習に役立てていただくために,各問題の解説と一緒に次の事項を記載しています.

本書で使用しているアイコン
POINT
問題の解答で考慮すべきポイント,ヒントなどを示します.

覚えよう!
学習のポイント部分です.

参考
問題に関連する技術知識を補足しています.

注意しよう!
問題を解くうえで注意すべき部分を示します.

オーム社 (編集)
出版社: オーム社 (2016/9/14)、出典:出版社HP

目次

試験の概要
試験の出題範囲と出題傾向
本書の使い方

I編 伝送・交換・データ通信

1章 伝送設備
1-1 有線伝送技術
1-1-1 伝送路符号
1-1-2 伝送品質
1-1-3 イーサネット
1-2 光ファイバ伝送設備
1-2-1 光ファイバ伝送方式
1-2-2 光デバイス
1-3 伝送路網設計
1-3-1 SDHの構成と伝送方式
1-3-2 OTN(光伝達網)
1-3-3 伝達網の機能

2章 交換設備
2-1 デジタル交換設備
2-1-1 電話用デジタル交換機
2-1-2 共通線信号方式
2-1-3 トラヒック管理
2-1-4 3G移動通信システム
2-2 IP系設備
2-2-1 音声符号化方式
2-2-2 IP電話の品質
2-2-3 IP電話プロトコル

3章 データ通信設備
3-1 ハードウェア技術
3-1-1 回路
3-1-2 装置・デバイス
3-2 ソフトウェア技術
3-2-1 ソフトウェアとプログラミング言語.
3-2-2 プロセス制御
3-2-3 文書記述の言語
3-2-4 各種ソリューション
3-2-5 通信プロトコル
3-3 サーバ
3-3-1 サーバ技術
3-3-2 各種サーバ

4章 ネットワーク技術
4-1 ネットワークの基本技術
4-1-1 QoS制御
4-1-2 イーサネット
4-1-3 ネットワークセキュリティ
4-2 伝送ネットワーク技術
4-2-1 インターネットアクセス
4-2-2 コアネットワーク伝送技術
4-2-3 ネットワーク技術
4-2-4 無線LAN
4-3 TCP/IPプロトコル技術
4-3-1 IPS
4-3-2 TCP
4-3-3 TCP/IPの上位置プロトコル

Ⅱ編 無線

5章 無線設備
5-1 無線运送工学
5-1-1 電波伝搬
5-1-2 伝送品質の劣化要因と評価・補償技術
5-1-3 变調方式
5-2 無線設備一般
5-2-1 無線伝送装置と回路
5-2-2 アンテナ
5-3 衛星通信設備
5-3-1 衛星通信技術
5-3-2 衛星通信D動作送特性
5-3-3 衛星通信設備
5-4 移動通信設備
5-4-1 移動通信技術
5-4-2 移動通信之久AO送特性
5-4-3 移動通信入了D機能·構成

6章 無線設備設計
6-1 置局設計
6-2 各種無線設備設計
6-2-1 衛星通信システム設計

Ⅲ編 通信電力

7章 通信電力設備
7-1 通信電力工学
7-1-1 受電・配電方式
7-1-2 給電方式
7-2 通信電源設備
7-2-1 受電設備
7-2-2 電力变换装置
7-2-3 発電機
7-2-4 UPS
7-2-5 蓄電池

8章 通信電力設備設計
8-1 装置設計
8-1-1 受電設備の設計
8-2 配線設計
8-2-1 配電系統·送配電線
8-2-2 高圧架空·地中引込

索引

オーム社 (編集)
出版社: オーム社 (2016/9/14)、出典:出版社HP