電気通信主任技術者試験 これなら受かる 電気通信システム 改訂2版




まえがき

現在,通信ネットワークの利用は,日常生活,企業活動の双方において,欠かせないものとなっています.この通信ネットワークを支えている企業は電気通信事業者と呼ばれており,利用者がいつでも情報通信を活用できるようにインフラ整備や設備管理を行っています.

電気通信事業者は,事業用電気通信設備を,総務省令で定める技術基準に適合するように維持していくために,電気通信設備の工事や維持及び運用の監督にあたることが義務付けられています.これらの監督業務を行うのが電気通信主任技術者で,その資格証として,伝送交換設備とそれに附随する設備の工事,維持及び運用に関する監督を行う「伝送交換主任技術者資格者証」と,線路設備とそれに附随する設備の工事や維持及び運用に関する監督を行う「線路主任技術者資格者証」があります.

資格試験では,次の4科目が試験科目になっています(ただし,受験者が既に有している資格,合格している科目の有無,学歴と実務経験によって受験が免除される科目があります).

・電気通信システム
・専門的能力(伝送,無線,交換,データ通信及び通信電力のうちいずれか1分野)
・伝送交換設備及び設備管理

本書は,上記の試験科目のうち,「電気通信システム」で実際に出題された問題の解答と解法の例について述べるものです.試験は毎年7月と1月の2回実施されますが,本書では,平成23年度から平成29年度までの6.5年間,13回の試験に出題された問題について解説しています.

本書の特徴は,技術分野ごとに過去問の解説を行っていることです.これによって,読者が試験問題の出題傾向を把握し重点的な対策がとれるようにしています.また,問題解説では,解答に至るまでの思考に沿った詳しい説明と関連の技術情報が記載され,試験対策に必要十分な解説がコンパクトにまとめられています.これによって,これから試験対策の学習を始める読者にとっては,出題対象の技術分野や学習の進め方がわかりやすくなり,また,既に学習を勧めてきた読者にとっては,自己の苦手分野を把握し,それらを含めたスキルのみと考えています.

さらに改訂2版にあたっては,最後の1回分を本試験の形式と同様に出題順で掲載し腕試しをできるようにしました.

試験対策には本書のほかに,必要に応じて関連の書籍も合わせて学習することが必要と思いますが,本書では,解答に必要な技術知識も記載しているため,学習対象の技術分野の把握と関連する他の書籍の選択にも有効と考えています.

本書を読み通すことで,読者の皆様が電気通信主任技術者の資格を取得できることを心より願っています.そして,その力をもって,今後も発展が続く通信ネットワークを支える技術者としてのさらなる力を身につけていただきたく思います.

平成30年3月
オーム社

オーム社 (編集)
出版社: オーム社; 改訂2版 (2018/4/6)、出典:出版社HP

Ⅰ 試験の概要

試験概要
「電気通信主任技術者試験」は,一般財団法人日本データ通信協会(JADAC)に属する電気通信国家試験センターが実施しています.ここでは,電気通信主任技術者試験のほかに「電気通信工事担任者試験」の二つの国家資格試験が扱われています.

以下では,電気通信国家試験センターホームページに記載されている内容を一部抜粋して概要を示します.詳しくは,電気通信国家試験センターホームページ
(https://www.shiken.dekyo.or.jp)を参照してください.

電気通信主任技術者について
電気通信主任技術者は,電気通信事業者が営む電気通信事業において,電気通信ネットワークの工事,維持及び運用を行うための監督責任者です.

電気通信事業者は,管理する事業用電気通信設備を総務省令で定める技術基準に適合するよう,自主的に維持するために,電気通信主任技術者を選任し,電気通信設備の工事,維持及び運用の監督にあたらなければなりません.

資格者証の種類
電気通信主任技術者資格者証の種類は,ネットワークを構成する設備に着目して,「伝送交換主任技術者資格者証」と「線路主任技術者資格者証」の2区分に分かれています.また,各資格により監督する範囲が次のように決められています.

資格者証の種類 監督の範囲
伝送交換主任技術者資格者証 電気通信事業の用に供する伝送交換設備及びこれに附属する設備の工事,維持及び運用
線路主任技術者資格者証 電気通信事業の用に供する線路設備及びこれに附属 する設備の工事,維持及び運用

受験資格
特に制限はありません,誰でも受験することができます.

試験の種類
試験の種類は,次の二つがあります.
1. 伝送交換主任技術者試験
2. 線路主任技術者試験

試験の科目「伝送交換主任技術者試験」および「線路主任技術者試験」で出題される科目は,次の4科目となります.

・電気通信システム
・専門的能力
・伝送交換設備及び設備管理(又は線路設備及び設備管理)
・法規

なお,一定の資格又は実務経験を有する場合には,申請による試験科目の免除制度があります.

試験時間
試験時間は,次のようになっています.

科目 試験時間
電気通信システム 80分
専門的能力 100分
伝送交換設備及び設備管理
(又は線路設備及び設備管理)
法規 80分

試験実施日と試験実施地
試験は,例年2回実施されます.
第1回:7月の日曜日
第2回:翌年の1月の日曜日

試験実施地は変わることがありますので,協会ホームページを参照してください

受験申込み

・インターネットによる申込み
ホームページから申請
夏:4月上旬~5月上旬
冬:10月上旬~11月上旬
試験手数料の払込み
夏:4月上旬~5月上旬
冬:10月上旬~11月上旬

・試験申請書による郵送申込み試験申請書の提出
夏:4月上旬~4月末頃
冬:10月上旬~10月末頃試験手数料の払込み
夏:4月上旬~4月末頃
冬:10月上旬~10月末頃

試験手数料
全科目受験 18700円 3科目受験 18000円
2科目受験 17300円 1科目受験 16600円
全科目免除 9500円
(インターネット申請の場合は,実務経歴による免除申請はできません.)

合格基準
各科目100点満点で,合格点は60点以上です.

試験科目の試験免除について
資格,科目合格,実務経歴,認定学校修了によって,試験科目の免除を受けることができます.詳細は,(一財)日本データ通信協会にお問い合わせください.

試験についてのお問合せ先
一般財団法人日本データ通信協会電気通信国家試験センター
〒170-8585 東京都豊島区巣鴨2-11-1巣鴨室町ビル6F TEL:03-5907-6556

オーム社 (編集)
出版社: オーム社; 改訂2版 (2018/4/6)、出典:出版社HP

Ⅱ 試験の出題範囲と出題傾向

出題範囲(電気通信システム)
「電気通信システム」における出題範囲は、次のようになります.

大項目 中項目 小項目
1 電気通信工学の基礎 1 電気工学の基礎 1 電磁気学
2 電気回路(直流回路)
3 電気回路(交流回路)
2 通信工学の基礎 1 電子回路
2 ディジタル回路
3 光通信用索子
4 計測
5 情報工学
2 電気システムの大要 1 電気通信システムの基礎理論 1 伝送の基礎
2 交換の基礎
3 データ通信の基礎
4 無線の基礎
5 通信電力の基礎
6 線路の基礎
2 電気通信システムの構成 1 電気通信網の基礎
2 移動通信網の基礎
3 IPネットワークの基礎

出題傾向
本書では,過去6.5年間計13回に出題された問題を10の技術分野二分け,さらにそれらをいくつかの科目に分類し,科目ごとに,最近の試験問題(平成29年度第1回)から新しい順に解説を記載しています.また,最近の1回分(平成29年度第2回試験)の問題と解説を巻末に出題順に記載しています.

電気通信主任技術者の試験問題では,全く同じ問題,または計算問題でバラメータの数値が一部異なりますが解法が同じ問題が,別の時期の試験で出題されることがあります.本書ではこのような問題については解説の記述を省略し,省略した問題の出題時期を他の同様問題の解説の中に明記しました.

科目ごとの問題出題状況の一覧を表に示します(表内の表記は,「問番号(小問番号)」を表します).

Ⅲ 本書の使い方

紙面構成
本書では,穴埋めや選択の問題については答えに関係する箇所に架線を付しています.また,試験問題の解答や学習に役立てていただくために,各問題の解説と一緒に次の事項を記載しています.

本書で使用しているアイコン
覚えよう! 学習のポイント部分です
注意しよう! 問題を解く上で注意すべき部分を示します.
参考 問題に関連する技術知識を補足しています.
POINT 問題の解答で考慮すべきポイント,ヒントなどを示します.

注意しよう!
本書では,平成26年度の試験問題から一部の図記号が新JIS記号に改められたことを受け,抵抗器などの図記号を新JIS記号に統一しています.

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出版社: オーム社; 改訂2版 (2018/4/6)、出典:出版社HP

目次

Ⅰ 試験の概要
Ⅱ 試験の出題範囲と出題傾向
Ⅲ 本書の使い方

1章 電磁気学
1-1 電磁力
1-2 電界強度

2章 電気回路
2-1 合成抵抗
2-2 靜電誘導
2-3 電磁誘導
2-4 天他回路素子
2-5 交流回路消費電力
2-6 波形整流回路

3章 電気計測
3-1 電流計
3-2 熱電对形電流計
3-3 電庄計
3-4 電力計

4章 電子回路
4-1 論理回路
4-2 ダイオード/トランジスタを使用した論理回路
4-3 増幅回路

5章 伝送技術
5-1 伝送特性
5-2 雑音
5-3 伝送路のSN比
5-4 アナログ伝送路の電力
5-5 伝送路符号化
5-6 情報源符号化
5-7 アナログ伝送
5-8 デジタル伝送
5-9 光ファイバ
5-10 光ファイバ損失試験
5-11 光通信
5-12 メタリックケーブル

6章 アクセス網
6-1 ADSL
6-2 PON

7章 通信プロトコル
7-1 TCP/IP
7-2 アプリケーション(インターネット・プロトコル)
7-3 IP 電話
7-4 暗号化・認証

8章 ネットワーク技術
8-1 ネットワークトポロジー
8-2 ネットワーク構成
8-3 電話網信号方式
8-4 電話交換機
8-5 電話網のトラヒック制御
8-6 トラヒック理論
8-7 番号方式
8-8 ATM技術
8- 9 広域イーサネット
8-10 LAN
8-11 パケット交換方式

9章 無線通信技術
9-1 移動通信
9-2 無線LAN
9-3 衛星通信
9-4 アンテナ

10章 電力設備
10-1 電源設備
10-2 保護用設備
10-3 電力システム

平成29年度第2回試験問題
平成29年度第2回試験問題解答・解説

索引

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