CIA(公認内部監査人)合格へのパスポート〔第2版〕




推薦のことば

内部監査人と聞くと、皆さんはどういう人を思い浮かべるでしょうか?もうすぐ定年になる方が、最後のご奉公をしているといったイメージでしょうか?20年ほど前には、このイメージは正しかったと思います。

私は、20年ほど前から、一般社団法人 日本内部監査協会が主催する内部監査人を対象とした講座で、時折、話をさせてもらってきました。20年前、講座に出席されるほとんどの方は、50歳過ぎの男性でした。ところが、最近は、50歳過ぎの方もおられますが、30歳または40歳代の方が多くなり、また女性も増えてきました。内部監査人も多様化し、先に述べたイメージは、当てはまらなくなってきました。

この変化はなぜ生じたのでしょうか。理由の一つに、会社法や金融商品取引法による要請もあって、企業経営上、内部統制やリスク・マネジメントの整備・運用がより重視されるようになったことがあると思います。内部監査は内部統制やリスク・マネジメントの有効性評価 および改善提案を行いますが、適切な評価・提案をするには、内部統制やリスク・マネジメントに関する体系的知識が必要です。経験に基づくだけでよければ、定年間近の人を当てればよかったでしょう。しかし、真に適切な評価・改善を求めるとなると、年齢や性別に関わりなく、積極的に体系的知識を身につけようとする意欲ある人を当てるはずです。

加えて、内部監査を経営管理者へのキャリアパスと見る企業が現れてきたことも指摘できます。このような企業は、内部監査教育を通して体系的に内部統制、リスク・マネジメント、さらにはガバナンスに関する知識を養成し、内部監査業務を通して企業全体に関する知識を蓄積すれば、経営管理者として必要な資質を満たすことができると考えるのです。

公認内部監査人(CIA)資格は、グローバルな内部監査専門職団体である内部監査人協会(IIA)が認定する世界に通用する資格です。この資格の取得を目指す学習過程で、監査の知識に加え、ガバナンス、リスク・マネジメントおよび内部統制に関する知識を身につければ、企業人としての将来が開けてくるのではないでしょうか。本書は、CIA試験の受験指導に豊富な経験を持つ三輪豊明氏の著作である CIA受験の入門書として最適と確信しております。内部監査部門に配属された方はもちろん、これから経営管理者になろうとする方にも本書を手にとっていただければと思います。

2013年12月

青山学院大学大学院
会計プロフェッション研究科教授
松井隆幸

三輪 豊明 (著)
出版社: 税務経理協会; 第2版 (2019/8/2)、出典:出版社HP

はじめに

業務の有効性・効率性を評価する指標に役割拡大
日本の「内部統制」「内部監査」を巡る状況は、大きな変化を迎えています。

2006年成立の「金融商品取引法」に規定され、上場企業に義務付けられた内部統制の整備は、当初、財務諸表の信頼性確保にフォーカスされていました。また、内部統制の整備に対する認識としては、「組織の効率性を阻害する後ろ向き的な仕事」、「コーポレートガバナンスの強化という外部の要請に対する必要悪」といった、いわば誤解があったのも事実です。

ところが現在、内部統制や内部監査には、財務諸表作成の信頼性だけでなく、各業務そのものの有効性・効率性を評価する業務監査の視点が見られます。また、経営課題に関するリスク・マネジメントの側面を中心に、内部監査人に、社内コンサルタントのような役割が求め られるケースも増えてきています。

さらに、続発する企業の不祥事においても、内部監査や内部統制の不備が指摘されることがあっても、それらの不要論が出ることは、まずありません。内部統制や内部監査は、日本の企業においても着実に定着し、その役割を広げつつあると言ってよいでしょう。

内部監査を担う人材像の変化
このような変化によって、内部統制を担う内部監査部門で求められる人材像も当然、変化してきています。内部監査といえば、従来、企業内で経験が豊富なベテランに委ねられ、属人的、属企業的な業務というイメージが強いものでした。

しかし現在は、企業経営に近い部門として、比較的若い人材に内部監査を経験させることが増えてきており、内部監査に関する標準化された専門知識を備えた人材が求められています。

国際的に認知された専門知識証明ツール
国際的に認知された専門知識を証明するツールとして、内部監査人の方が目指す資格が、公認内部監査人(CIA:Certified Internal Auditor®)なのです。

CIAは、全世界で取得者16万人を越す国際資格です。その試験は、米国に本部を置く内部監査協会(IIA:The Institute of The Auditor)が主催し、190の国と地域で実施されています。2008年5月以降は、コンピュータ試験の導入により、ほぼ一年中受験ができるようになっています。

先に述べた金融商品取引法の成立前後から、日本国内でも受験者が急増し、8,801人の資格取得者がいます(2018年末)。また、最近では、内部監査業務に従事する方々はもとより、リスク・マネジメントの観点から、一般管理職の方々の受験も増えてきています。

CIA試験では、内部監査の専門知識はもとより、経済・財務会計・管理会計・ファイナンスから組織論・経営戦略論まで幅広い知識が問 われますが、内容はどれも、ビジネスパーソンとして当然学んでおくべき知識です。一方、試験問題は選択式ですから、復習に重点を置いて着実に学習を積み重ねることで、多忙なビジネスパーソンでも、一年程度あれば、十分全科目合格を狙えます。

制度概要を掴み重要ポイントを把握
本書は、内部統制・内部監査の業務や、試験制度の概要を説明した第1部と、試験科目の重要ポイントと練習問題を網羅した第2部に分かれています。

第2部は、重要箇所にフォーカスを置く構成としましたので、CIA試験のイメージを掴むと同時に重要度を掴んでいただくことができます。

CIAに興味を持たれている皆様、あるいはすでに取得を目指して準備をお始めの皆様に、本書が少しでも役立てば、著者としてこれ以上 の喜びはありません。

2019年8月

国際資格の専門校アビタス代表
米国公認会計士
公認内部監査人
三輪豐明

三輪 豊明 (著)
出版社: 税務経理協会; 第2版 (2019/8/2)、出典:出版社HP

スペシャリストをめざせ! CIA(公認内部監査人) 合格へのパスポート
目次

推薦のことば
はじめに

第1部 CIA試験と受験の手引き
第1章 脚光を浴びるCIA試験
1 CIAが注目される背景
2 内部監査とは何か
3 内部監査の流れ
4 内部監査の発展
5 内部統制のフレームワークの確立
6 企業改革法の成立
7 内部統制、世界標準の構成要素

第2章 CIA試験の概要
1 試験制度
2 試験形式:コンピュータ試験(Computer-based Testing : CBT)
3 受験条件・資格認定条件
4 継続教育制度 (Continuing Professional Education/CPE)
5 よくある質問

第3章 これがCIAに最適な学習方法
1 合格までに必要な時間とスケジュール
2 押さえるポイントはここだ!
3 代表的な参考資料とその使い方

第2部 試験科目別の学習ポイント

Part1 内部監査に不可欠な要素

[A] ⅡA属性基準の遵守
1 内部監査とは[重要度A] 練習問題
2 内部監査部門の独立性と客観性[重要度A] 練習問題 [B] コントロール及びリスクに係る諸概念
1 リスクに関する基礎的知識とERMフレームワーク[重要度A] 練習問題
2 リスク・マネジメント[重要度A] 練習問題
3 COSOの内部統制の統合的フレームワーク [重要度B] 練習問題 [C] 不正調査
1 不正調査実施のための基礎知識[重要度B] 練習問題

Part2 内部監査の実務

[A] 内部監査業務のプロセス
1 内部監査業務のプロセス[重要度B] 2 内部監査計画[重要度 A] 練習問題
3 予備調査 [重要度A] 練習問題
4 監査手続書(監査プログラム)の作成 [重要度A] 練習問題
5 監査証拠の収集 – 監査証拠の分類[重要度A] 練習問題
6 監査証拠の収集 – 分析的手続き(分析的レビュー)[重要度A] 7 発見事項・改善案の策定 [重要度A] 練習問題
8 監査報告書 [重要度A] 練習問題
9 監査結果のモニタリング [重要度A] 練習問題 [B] 監査ツール
1 サンプリング [重要度B] 練習問題
2 監査サンプリング[重要度B] 練習問題 [C] 業務監査
1 取引プロセスにおける監査 [重要度B] 2 売上・売掛・代金回収プロセス[重要度A] 練習問題
3 購入、買掛、支払いプロセス[重要度A] 練習問題
4 人事および給与プロセス [重要度B] 練習問題
5 その他のプロセス[重要度C] 練習問題 [D] 会計(財務)監査
1 主要な会計(財務)監査手続き [重要度C]

Part3 内部監査のためのビジネス知識

[A] 戦略的マネジメント
1 戦略的マネジメント概論 [重要度 A] 練習問題
2 競争戦略 [重要度A] 練習問題
3 産業環境 [重要度A] 練習問題 [B] 組織行動
1 モチベーションに関する理論 [重要度A] 2 集団力学 [重要度A] 練習問題
3 リーダーシップ [重要度A] 練習問題 [C]財務会計
1 会計の基本概念 [重要度A] 練習問題
2 損益計算書(Income Statement) [重要度B] 練習問題
3 貸借対照表 (Balance Sheet) [重要度B] 練習問題
4 キャッシュ・フロー計算書 [重要度A] 練習問題
5 流動資産と現金の定義 [重要度B] 練習問題
6 主な支払い条件と売掛金の評価 [重要度A] 練習問題
7 棚卸資産の基本概念 [重要度C] 8 棚卸資産の評価と会計処理 [重要度A] 練習問題
9 流動負債の定義と会計処理 [重要度B] 練習問題
10 有形固定資産に関わる会計処理 [重要度C] 練習問題
11 減価償却 [重要度A] 練習問題
12 収益認識の原則と例外的処理 [重要度C] [D] 原価計算の基礎
1 管理会計と原価計算 [重要度B] 2 基本的な原価の諸概念 [重要度B] 練習問題
3 基本的な原価計算の流れ [重要度B] 練習問題
4 製造間接費の配賦 [重要度B] 練習問題
5 活動基準原価計算(Activity-Based Costing : ABC) [重要度B] 練習問題
6 CVP分析 [重要度A] 練習問題
7 直接原価計算と全部原価計算 [重要度A] 練習問題
8 業務予算と財務予算 [重要度B] 練習問題
9固定予算と変動予算 [重要度A] 練習問題
10 責任会計 [重要度A] 練習問題 [E] グローバル・ビジネス環境
1 グローバル・ビジネスの展開方法 [重要度B] 練習問題
2 さまざまな環境要因 [重要度B] 練習問題 [F] 情報技術(IT)
1 システム開発 [重要度A] 練習問題
2 ITインフラストラクチャー [重要度A] 練習問題
3 ITコントロール [重要度A] 練習問題
4 ITコントロールの分類 [重要度A] 練習問題
5 不測事態対応計画 [重要度A] 練習問題 [G] 情報セキュリティ
1 ITに係るリスクの定義 [重要度A] 練習問題
2 情報セキュリティとサイバー・セキュリティ [重要度A] 練習問題
3 物理的コントロール [重要度A] 練習問題
4 インターネットセキュリティ [重要度A] 練習問題
5 データ保護法令 [重要度A] 練習問題
三輪 豊明 (著)
出版社: 税務経理協会; 第2版 (2019/8/2)、出典:出版社HP