DTPエキスパート受験サポートガイド 改訂9版




はじめに

DTPエキスパート認証試験は、創設よ25周年を迎え、2018年8月に第50期試験を実施しました。25年間の受験者総数は53,000名に上り、合格者は22,000人以上です。合格者の方々は、国内の印刷業界、関連機器メーカー・ベンダーの中核的存在として大いに活躍されています。

DTPエキスパートは、印刷業界においてもっともスタンダードな認証制度であり、合格者の方々は印刷業界の共通言語を習得されたと言えるでしょう。

日本の印刷業界にDTPが紹介され、日本語向けのソフトウェアやフォントが発売された のは1990年代前半です。JAGATは、将来DTPが本格的に普及してプリプレス・印刷の主流になることを想定し、そのための人材育成が急務であると考えていました。当時の印刷業界には、パーソナルコンピューターで文字や画像を扱うことに精通した人はほとんどいないという実態があったためです。

そこで、DTPや印刷に必要な知識とはどういうものか、専門家を集めてディスカッションを重ね、DTPエキスパートと名付けたカリキュラムをまとめました。そして、1994年3月、第1期 DTPエキスパート認証試験を実施したのです。

この25年間の印刷工程は、著しい進化を遂げました。DTP以外の分野では、CTP、イン クジェット校正、デジタルカメラ、PDF入稿、カラーマネジメント、Japan Colorと標準印刷、UVインキ、デジタル印刷などが挙げられます。DTPエキスパートの学習を通じて、最新分野の知識を習得し、ビジネス動向を理解することができます。

本書は、DTPエキスパート認証試験の受験者をサポートするために発刊しました。最新の出題傾向を反映した例題と、その解説を中心に掲載しています。出題の背景や意図、重要ポイントを理解した上で、正解を得られるような解説としています。

1人でも多くの方が認証資格を取得され、真に必要とされるDTPエキスパートとして活 躍されることを願っています。

2019年2月 DTP エキスパート認証委員会

DTPエキスパート認証委員会 (著, 編集)
出版社: 公益社団法人日本印刷技術協会 (2019/2/6)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに
目次
DTPエキスパート認証試験の攻略法
受験案内

1章
01 印刷用紙と規格
02 縦組みと横組み
03 版面設計と文字の配置
04 テクニカルイラストレーション
05校正・校閲、検版
06 デザインに関する権利と保護
07 知的財産権
08 PCの文字・フォント環境
09 カメラと撮影
10 画像レタッチ
11 トーンカーブによる色調補正
12和欧混植の組み方
13 DTP組版設計
14画像データ処理の計算
15 Photoshopの基本操作
16 Illustratorの基本操作
17 InDesignと正規表現
18レイアウトソフトの機能と役割
19 オーバープリントと透明効果
20 Acrobatでのデータチェック
21トンボの役割 –
22 PDFワークフロー

2章
23色の混合
24 モニターと反射物の観察環境
25 LED照明と演色性
26 照明と色評価
27カラープロファイルの進展
28 レンダリングインテントの実践
29 デバイスプロファイル
30 色差の表現方法
31カラーマネジメント
32画像の色分布

3章
33 プロセスインキの濃度と色
34 UVインキ
35 写真の2色刷りと特色
36 スクリーニング、高精細印刷
37 色校正技術と最新事情
38 Japan Colorとプロファイル
39 Japan Color デジタル印刷認証
40 製本と面付け
41 洋製本
42印刷物の表面加工
43 ワークフローの情報交換
44 スクラッチ印刷
45 蓄光、蛍光、発光印刷
46 デジタル印刷ビジネスの発展
47 デジタル印刷機
48 インクジェット

4章
49 インタフェース
50 印刷業におけるクラウド利用
51 Webフォント
52 CG
53 3Dプリンターとモデリング
54 デジタルサイネージ
55 Web to Print
56 データのセキュリティー
57 情報セキュリティー対策

5章
58 印刷物の説明責任とはがき
59 デザインとレイアウトの評価
60 配色の基本
61ユニバーサルデザイン
62マーケティング
63マーケティングオートメーション
64 改正個人情報保護法

DTPエキスパート認証試験の攻略法

DTPエキスパート認証試験は、学科試験と実技試験の2種類の試験から構成されています。合格するには、各試験で合格基準を満たすことが必要です。
(1) 学科(筆記)試験:多肢選択式(マークシート)
(2) 実技試験:制作課題と制作指示書データ(PDF)を提出

学科試験
学科試験は、全国の各会場で同日同時刻に行います。問題と解答用紙(マークシート)が配布され、制限時間内に解答する方式です。休憩を挟んで第1部、第2部に分かれており、制限時間は各120分となっています。

試験内容は、DTPエキスパートカリキュラムに準じたものとなっています。ただし、全問題の10~20%は新項目とされています。カリキュラムに含まれていない新しい技術やトピックが反映されます。

試験対策として第1に挙げられるのは、カリキュラムを熟読することです。DTPエキス パート試験の出題傾向やレベルを体系的に理解することができます。例えば、情報デザイ ンやマーケティングなどの新しい分野では、何が重要なのか把握することができます。

全体像を把握した上で、さらに細かい分野を掘り下げると効率よく学習できるでしょう。 カリキュラムを把握した上で、過去問題などに取り組むとより効果的です。
合格基準は、各カテゴリー得点率、80%以上です。1カテゴリーでも基準以下となると不合格となります。

実技試験の概要
実技試験では、与えられた課題に即した作品、および第三者に制作作業を委託するための「制作指示書」を作成します。約4週間の期間内に受験者自身の制作環境で作業を行います。

提供される実技課題データ
・「制作の手引き」:課題の仕様と制作指示書に必要な内容が解説されている
・素材データ(テキスト・図版・画像等)

実技課題は2種類あり、課題A(冊子・ページ物)と課題B(端物)のどちらかを選択します。これまで、ページ物は取扱説明書、端物ではチラシやDMハガキ(表裏)が出題されています。

提出物
(1) 課題(作品)※PDF形式 (2)「制作指示書」※PDF形式

実技試験の進行手順
(1) 支給データをダウンロード
・学科試験当日、受験者に実技試験サイトへのアクセス方法が伝えられます。
・受験者は自身の制作環境において、ダウンロードを行います。
(2) 作品と制作指示書を制作
(3) 完成した実技課題を実技試験サイトにアップロードし、提出します。

制作指示書のポイント
試験で出題される課題は、シリーズ物という設定です。シリーズ物という前提の作品、制作指示書となっていなければなりません。表組みであれば、項目が増えたときの対処を考慮したレイアウトや指示書であることが求められています。

制作指示書は、受験者が制作した方法を第三者が継承して制作することを想定し、そのために必要な設定、制作手法や工程、注意事項などを記したものです。部下やパートナーに的確に指示を与えることができるか、という点が評価のポイントになります。

これまでの制作指示書で不合格になった原因の多くが、画像や図表をレイアウトする基 準点や座標の指示がないことです。テンプレートデータの有無にかかわらず、制作指示書に明示されていなければなりません。指示書だけでレイアウトできない場合は、作品の完成度が高くても不合格となります。

作品では、基本的にデザインセンスの良し悪しを評価することはありません。ただし、文字が極端に小さい、あるいは画像と重なって判読しにくいものは減点されることがあります。

注意事項
課題制作では、支給された素材データを使用して課題を作成します。それ以外のデータを使用することは認められていません。仮に、過去の試験で支給されたデータや制作の手引きを流用すると、条件違反として不合格となります。

また、他の受験者が制作した作品やパーツなどを使用することは、不正流用として両者とも不合格となります。

メディア産業共通の学習プログラム – DTPエキスパート認証試験

JAGATは、DTP、印刷・製版、情報システムの知識を体系化し、DTPエキスパートカリキュラムを編成しています。このカリキュラムに沿って知識を修得することでDTP制作および印刷物製作の共通言語を身に付けることができます。

2018年11月発行のカリキュラム第13版では、「印刷メディアの強みを活かして価値を生み出す」をテーマに、印刷ビジネスに携わる人材像を再定義し、構成しています。

DTPエキスパートの基本は、印刷物の目的と役割を理解し、それを最適な工程で作り出すこと、およびその環境を構築することです。メディアが多様化した現在においても、基本となる知識やディレクション能力は共通するものです。したがってDTPエキスパート認証試験は、DTP制作の現場のみならず、印刷・メディア制作に関わる営業部門や企画部門に至るまで幅広い職種の方々にとって、応用可能な知識を身に付けられる試験と言えます。

DTPエキスパート認証試験は、1994年3月に第1期の試験を開催して以来、通算の受験者は5万人、合格者は2万人を超え、印刷業界の中核的存在として各方面で活躍されています。

試験概要
主催:公益社団法人日本印刷技術協会

後援:一般社団法人日本印刷産業連合会

試験日:年2回(3月、8月)

時間:学科試験 13:00~17:40

会場:東京会場/大阪会場/名古屋会場/福岡会場/仙台会場/札幌会場/新潟会場
(開催地は期ごとにお問い合わせください。)
指定講座会場(JAGAT指定の教育機関・団体の会場)

対象:DTPに関心のある方ならその資格、経験は問いません

試験形式:学科試験
多肢選択形式(出題範囲は「DTPエキスパートカリキュラム最新版」に準拠)
実技試験(課題制作)
試験当日配布の要項に記載されたWebサイトから課題材料をダウンロードし、提出期限以内に作品と制作指示書のデータをアップロードする

受験料:20,520円(税込)

資料請求・お問い合わせ
公益社団法人 日本印刷技術協会 資格制度事務局
〒166-8539 東京都杉並区和田1-29-11
TEL:03-3384-3115 FAX:03-3384-3168
mail: expert@jagat.or.jp

最新情報:JAGATエキスパート認証制度 Webページ https://www.jagat.or.jp/dtp

DTPエキスパート認証委員会 (著, 編集)
出版社: 公益社団法人日本印刷技術協会 (2019/2/6)、出典:出版社HP