ひと目でわかる実用手話辞典




●もくじ●

はじめに
この本の使い方と上手な利用法
ポイント 手話の伝え方
表現法 例文20
指文字
アルファベット
日本式アルファベット
数詞
本編(あ~わ)
さくいん(ASL)
手話さくいん

表現法 例文20
1指文字の表し方、名前・年齢の表し方
2時間の表し方、疑問文
3位置を変える
4単語の疑問詞への変化
5疑問詞の応用
6言葉の並列の表現、組み合わせ単語
7数詞の表し方、位置を変える
8順位・順番の視覚化
9仮定の文金額の表し方
10日付の表し方
11空間で距離を表現
12否定の表現、反対語の表現法
13地図の想定
14組み合わせ単語、受動態(受け身形)
15強調の方法
16同意を求める、未来・過去の表現
17動詞や名詞の変化
18単語の意味の変化、行為と状態を同時に伝える
19物事が発生する順に伝える
20写像的表現、タイトルファースト

編集協力:(株)せいとう企画社
イラスト:瀬野静、上野千春(ASL)、渋谷アートスクールの皆さん、荒井孝昌(指文字)
DTP:(有)バムブアート

NPO手話技能検定協会 (監修)
出版社: 新星出版社 (2002/8/1)、出典:出版社HP

はじめに

みなさん手話の世界へようこそ。

手話は耳の聴こえない人(ろう者や難聴者)の言葉です。耳の聴こえる人(聴者)が交わす日本語とは別の土壌で産まれ、育ってきた独自の言語です。そのため日本語とは違った言語文化を形成しています。そしてまた、日本国内で日本語や韓国語、中国語、アイヌ語、英語などさまざまな言葉が交わされているように、手話は日本で実際に使われている言葉です。

私たちは、いろいろな言葉やその言葉の背景にあるそれぞれの文化や考え方を理解しながら共に生きていくことの大切さを知っています。そこで、この辞書は日本語を話す人たちと手話で会話する人たちが結びつきを深めていかれることを願って編纂しました。社会には、いろいろな性格やさまざまな特徴を持った人々がいて、そうした人たちが交流し合うことで、新しい社会が拓け、未来へ発展すると信じるからです。

掲載の語彙は手話技能検定試験2級出題範囲の2千語を柱にしています。これは手話通訳をし、実際に手話によってコミュニケーションする監修者により選択されたものです。さらに実践で使うための参考となるよう見出し語の使い方を《例文》として紹介したほか、複数の単語を同時に覚えていただけるように解説を充実しました。資格試験の試験対策としてだけでなく、手話をこれから学び始める人、手話をもっと使いこなしたい人にもご活用いただけます。

手話を勉強されることで聴者の方は、さまざまな機会を通じて今後、より多くの耳の聞こえない人々とふれ合っていくことでしょう。そしてたくさんの人の生き方、考え方、耳の聞こえない人の文化を学ばれると思います。それはまた同時に、耳の聞こえない人にとっても同じく大切な経験となるでしょう。私たちは、この辞書を通してその交流の一助になりたいと考えています。

この本の使い方と上手な利用法

 

いっしょに勉強する友達
ASL担当、リンダ(右)とタッキー(下)。
ハロー


親指を伸ばして握る。「a」と同じ。

あい【愛】
《表現》手のひらを下に向けた左手の甲を、右手で回すように2-~3回なでる。気持ちを込めて。
《語源》かわいい子供や人をなでるようす。
《同意》愛してる
《同形》かわいい
《応用》左手の親指を立て一「男」の手話、右手でなでると「男を愛する」の手話になる。
《別形》
《例文》あなたを愛してる=「あなた」+「愛」。
《参考》「男を愛する」は「愛知県」と同形。

ASL
LOVE
握った両手を胸の前で交差して抱きしめる。
I love you
「I」「L」「Y」の指文字の合成。愛し合っているものどうしでは人差し指と中指で「R」(Real) をつくって会話される(左)。

指文字
相手側から見たものです。

《参考》
補足の説明とプラスαの知識です。また、間違いやすい手話の場合は注意点をあげています。

《例文》
別の単語と組み合わせてできる単語や構文の例です。手話を使う場合の参考にしてください。なお、※印のあるものは手話技能検定試験の出題範囲の手話です。

《別形》
同じ意味を持つ別の表現方法を解説しています。ただし、手話が違えばニュアンスが違う場合があります。

《同意》《同形》
《同意》は項目の日本語との同類語です。同じ手話で通じます。《同形》は同じ手話で通じる別の日本語です。

《応用》少し変えることで反対語や関連する別の手話になる例を紹介しています。見出し 語の手話を確認するときに、同時に確認できます。なお、「男」の手話と太字であるのは、前の文章がその手話を解説したものという意味です。

《語源》
手話の成り立ちや意味の解説です。語源には諸説あり断定はできませんが、手話を覚えるための参考にしてください。

ASL
アメリカ手話(AMERICAN SIGN LANGUAGE)です。

《表現》
①手話の形・動きの解説です。表現するときの表情などをあわせてアドバイスしています。
②2つ以上の単語で表現するものはで並べ、それぞれの単語の意味を表記しました(右図「いきがい」参照)。
③単語が1つであっても動きのあるものは、イラストを2つに分けで並べて紹介しました(右図「いきなり」参照)。
④別の表現ができるものについてはイラストとして紹介しています(下図「いきる」参照)。

いきがい【生き甲斐】
2つの単語で表現
いきなり
1つの単語の動き

生きる【生きる】
《表現》握った両手の両ひじを左右に張り出す。2回でもよい。
《語源》元気に生きる表現。
《同形》元気
《別形》握った両手を左右から向かい合わせて両手同時に上下に力強く振る。
《例文》長生き=「長い」+「生きる」。元気?=問いかけの表情で「生きる(元気)」。

一緒に勉強する友達
佐々木静20歳。趣味はテニス。手話技能検定2級の腕前。
加藤くん21歳。佐々木静の友達。手話初心者。
槍で刺すように両手の人差し指を突き出す。槍の使い手の加藤清正から。

手話の伝え方
~ポイントと日本語にはない特徴~

利き手で行う
手話は利き手で行います。右利きの人は右手、左利きの人は左手です。両手を使う手話で両手の形が違う場合は動きがある方を利き手で行います。

表情を使う
「うれしい」「悲しい」などの気持ちや「暑い」「寒い」などの状況を手の動きだけでなく、表情を使って伝えます。手話における表情は音声語でのイントネーションにあたり、手話の文法にかかわる重要な要素の1つです。

口型
口の形や動きを見て言葉を判断する技術を「読話(どくわ)」といいますが、読話ができる相手に限らず、手話や指文字を示すと同時に発声した場合の口の形(口型=こうけい)をはっきり表すことで手話がより分かりやすく伝わるでしょう。

日本手話と日本語対応手話
手話は大きく分けて「日本手話』と『日本語対応手話』があります。まず『日本語対応手話』は日本語を話す語順(言葉の並べ順)通りに手話を並べる方法で、もともと日本語を話していた中途失聴者や私服首で多く使われます。一方、『日本手話』は音声言語である日本語とは違う独自の言語です。本書では「日本手話』を基本に解説しています。

涼しい・秋
涼しそうな表情で行うと「涼しい秋」ですが、無表情で行うと単なる「秋」または「涼しくない(暑い)秋」の手話になります。

困る
「こまる」と口を動かすことで分かりやすくなります。

NPO手話技能検定協会 (監修)
出版社: 新星出版社 (2002/8/1)、出典:出版社HP