ワークルール検定-問題集2019年版




はじめに

ワークルール検定の開催

2013年6月、「NPO法人・職場の権利教育ネットワーク」が中心となり、わが国で初めてのワークルール検定(初級のプレ検定)が札幌で開催されました。翌年の春には中級検定も開催され、以後、毎年、6月には初級検定と中級検定を、11月23日の勤労感謝の日には初級検定を実施しています。14年10月には検定の全国展開をめざして「一般社団法人日本ワークルール検定協会」が設立され、厚生労働省、日本生産性本部、開催自治体の労働局、労働委員会、経営者団体などの後援も得て、ワークルール検定は着実に広がってきています。

初級検定は18年秋までに47都道府県で、中級検定は北海道・東京・静岡・愛知・大阪・福岡で実施されました。初級検定は、出題20問のうち7割以上の正解を合格とし、これまで7665名が受検し、その67 %が合格しています。中級検定は、出題30問のうちほぼ7割以上の正解を合格とし、これまで882名が受検し、その61%が合格しています。

日本ワークルール検定協会は、「検定」を実施するだけでなく、ワークルールの普及啓発事業、ワークルールに関する調査研究事業、ワークルール教育の担い手の研修教育事業を行なうことをその目的としています。

ワークルールを身につけよう

「ワークルール」とは、働くときに必要な法律や決まりのことです。

長時間労働、ブラック企業、パワハラなど、職場でワークルールが守られない場面が多くなってきています。グローバル化による企業間競争の激化や労働法の規制緩和、働き方の多様化などが進行しているにもかかわらず、労働者にも使用者にもワークルールの知識が乏しいためです。

その原因としては、ワークルールを知る機会がないことがあげられます。高校や大学で適切な教育がなされず、また、職場でもワークルールについて話し合ったり、相談する機会もあまりないからです。

このような状況のなかで、ワークルールを知りたいというニーズは確実に高まっています。自分や仲間を守るために、ワークルールの基礎知識はとても役に立ちます。また、企業にとっても、コンプライアンスを実現し、働きやすい職場環境をつくるためにワークルールの知識は欠かせません。そのような知識の獲得を応援・支援するのが、「ワークルール検定」です。

「ワークルール検定」5つの特徴

①いつでも誰でもチャレンジできる:正社員はもちろん、学生、パート、アルバイト、派遣社員、そして管理職など、誰でも受検できる自由な検定制度です。

②自分の知識レベルを客観的に評価できる:一人で学習するだけでなく、検定を受けることで知識の程度や欠点もわかり、自分なりの目標設定ができます。

③知識レベルを効果的に深められる:初級から中級への進級、また、講習会を受講することで、知識を効果的に得ることができ、さらに知識レベルを深めることができます。

④職場や家庭で気楽に話題にできる:働くときに必要ですぐに役立つさまざまな問題を取り上げるので、堅苦しくならずに、職場や家庭で気軽に話題にできます。

⑤資格と連動できる:知識や能力を客観化・外部化する検定は、組合や企業、社会の資格と連動させることができます。

「ワークルール検定」4つのメリット
①働く者一人ひとりにとって:自分を守り、働きやすい職場を実現するために実際に役立つ法律知識を身につけることができます。

②労働組合にとって:効果的なワークルール教育が可能となり、職場の問題点も見えてくるので、組織化の契機としたり、要求を結集しやすくなります。

③企業にとって:社員が共通の法的知識をもつことによって、コンプライアンスを促進し、無用な紛争を回避することができ、事業を円滑に進めることができます。

④社会にとって:ワークルールが社会全体に浸透すれば、過剰なサービスや低価格などを追求するのではなく、働く者の立場も尊重する社会や文化の構築にプラスとなります。

本書の特徴と活用の仕方
本書は、ワークルール検定を受検するための事前学習用の問題集として作成しました。ワークルールに関する基本的な問題と過去の検定で実際に出題された問題を集め、各問題について正解と解説をのせています。過去の問題については正答率も示しています。問題傾向と難易度、とりわけ初級と中級のレベルの違いがわかると思います。

また、ワークルールを学ぶテキストとしては、日本ワークルール検定協会が編集した初級者向けの『ワークルール検定初級テキスト(第2版)』(旬報社)、中級者向けの『ワークルール検定中級テキスト(第3版)』(旬報社)が刊行されていますので、併せて読むことをお薦めします。

本書の使い方としては、問題集なので自習に適しています。同時に、ワークルールを適切に理解するためにはそれに関する知識だけではなく、労使紛争の実際やワークルールの基礎となる考え方、ルール相互の関連も学習することが必要です。そのためには、この問題集を素材に仲間や友人、家族で話し合うことが有用だと思います。法的な世界は、議論を通じて納得する・納得させることが重要だからです。

本書を通じて、ワークルールの知識を得るだけではなく、働くことについての論議が活発になることを期待しています。

なお、2019年版は、2018年6月に制定された、「働き方改革関連法」を取り入れた内容となっています。

[道幸哲也]
道幸 哲也 (著), 加藤 智章 (著), 開本 英幸 (著), 淺野 高宏 (著), 國武 英生 (著), 平賀 律男 (著), 上田 絵理 (著), 一般社団法人日本ワークルール検定協会 (編集)
出版社: 旬報社 (2019/4/22)、出典:出版社HP

目次

はじめに

初級問題

Ⅰ一般的知識
Ⅱ労働契約
1 労働契約
2 就業規則
3 採用・内定・試用
4 権利保障·人格的利益
5 配転・出向・降格
Ⅲ労働条件
1 賃金
2 労働時間・休日・年休
3 労災
Ⅳ雇用終了
1 懲戒
2 退職のパターンと解雇の規制
3 有期労働契約と雇止め
4 整理解雇
V 労働組合
1 労働組合の役割
2 不当労働行為禁止
3 不当労働行為救済
4 団体交渉権保障
5 労働協約締結
6 団体行動権の保障

中級問題
1 労働法総論
・労働条件決定システム
2 労働契約
・労働契約
・採用・内定・試用
・労働契約状の権利義務
・権利保障・人格的利益
・人事異動
3 賃金
・賃金の支払い
・割増賃金
・賞与
4 労働時間
・労働時間
・年次有給休暇
・休暇・休業・休職
5 雇用終了
・辞職
・定年
・懲戒
・有期雇用契約と雇止め
・雇用終了と雇用保険
6 労働組合法
・労働組合法の全体像
・組合内部問題
・不当労働行為制度
・団体交渉権の保障
・労働協約
7 社会保障・社会保険
8 総合問題
・労働法総論
・賃金と労働時間
・雇用の終了
・労働組合法

本書で使われる法令等の略称
憲法 日本国憲法
労基法 労働基準法
労基附則 労働基準法附則
労契法 労働契約法
労組法 労働組合法
労調法 労働関係調整法
安衛法 労働安全衛生法
男女雇用機会均等法/均等法 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法
最賃法 最低賃金法
育介法 育児・介護休業法
雇保法 雇用保険法
労災法 労働者災害補償保険法
労保徴法 労働保険料徴収法
健保法 健康保険法
厚年法 厚生年金保険法
介保法 介護保険法
基発 厚労省労働基準局長が発する通達

過去問について
問題文末尾(正答率0%)と示してある問題は、2018年までに実施した初級検定、中級検定において出題された問題です。なお、過去問の一部は、より題意が分かりやすいように改訂しています。

道幸 哲也 (著), 加藤 智章 (著), 開本 英幸 (著), 淺野 高宏 (著), 國武 英生 (著), 平賀 律男 (著), 上田 絵理 (著), 一般社団法人日本ワークルール検定協会 (編集)
出版社: 旬報社 (2019/4/22)、出典:出版社HP