実践マルチメディア[改訂新版]




はじめに

インターネットという全地球的な規模のインフラの上を、文字・画像・映像・音声などのマルチメディアの情報が行きかうことが日常となって、誰でもどこでも情報の恩恵に浴することのできる社会が訪れた。大規模な計算やデータ処理を行うことが初期のコンピュータの中心的な目的であり意義であった。しかし、コンピュータがインターネットに接続されることにより、その応用範囲が画期的に広がると同時に、存在意義に大きな変化が起こってきた。それを象徴的にいうならば、データを高速に計算する機能から、コミュニケーションを支援する機能に重心が移ってきたということである。

人間は社会生活から個人的な生活に至るあらゆる場面で、さまざまな情報を受け取ったり発信したりしている。たとえば、授業を受けたり、職場で全画会議を開いたり、新聞を読んだり、手紙を書いたり、音楽を楽しんだり、電話をかけたりと、人間はつねに情報とともに生活しているといえる。
そんな人間が情報を獲得するための媒体(メディア)には、画像や映像などの視覚情報,声や音楽などの感覚情報をはじめ、いわゆる五感(視・・・味・触)の感性情報がある。

これらの多様なメディアは、コンピュータと通信技術が結びつくことによって、より高度に処理することができるようになった。この高度な処理は、「ディジタル化」と「インタラクティブ」の2つの言葉でまとめることができる。

「ディジタル化」は、多様な感性情報をその種類によらず数値として一元的に表現することを指す。これにより、一元的に表現されたメディア、すなわち、マルチメディアは、コンピュータによって自在に受け取ったり、発信したり、さらには、編集・保存したりできるようになる。

「インタラクティブ」は「双方向性」の意味合いをもち、人と人、または、人とコンピュータの間で情報のやりとりが行われることを指す。人工知能(AI)やビッグデータ解析,IoT技術の発展,普及により、そのやりとりは、あらゆるシーンでシームレスにスムーズに行われるようになる。
通信技術とマルチメディア技術が結びつくことによって引き起こされたICT技術革新の波が、人間の情報環境を大きく変貌させた。この波は,社会制度やビジネスから楽に至るまで大きな変革をもたらした。一例として、携帯電話における新技術の応用とその影響は著しく、今後もその変革は続いていくものと予想される。

このような状況において、現代のコミュニケーションに必要なマルチメディアやインターネットに関するITリテラシ、すなわち、利用したり情報発信したりするために必要な基礎技術、さらにはその意義や特性についての基本知識やそれらを積極的に取り入れていく習慣を身につけていることは大切である。つまり、マルチメディアやインターネットに関する知識は、日常生活を送る一個人にとっても、また、業として参加するビジネスパーソンにとっても不可欠のものとなりつつある。

本書は、マルチメディアを中心とした関連技術のプロフェッショナルになることを視野に置く人に、必要とされる基礎知識を提供することを目的としている。その目的のために、まず間連知識の整理を行い、知識体系をカリキュラムとしてまとめる作業を行った。そののち、それに基づいて本書を標準的なテキストとして新たに書き起こした。したがって、本書には、最新の関連ITリテラシのテーマがバランスよく、かつ実用の助けとなるように織り込まれているものと期待している。

ビジネスにおいて日頃マルチメディアやインターネットを使用する人,インターネットの単なる利用者にとどまらず、マルチメディアアプリケーションの開発者や運用者をはじめ高い技術を目指す人、新しいビジネスの創出に携わることを考えている人など、ここで得た知識をコミュニケーションの相として生かすことのできる多くの読者の皆様に受け入れられれば、編著者らの望外の喜びである。

最後に、本書を企画し、カリキュラム定・編集・著の全工程を温かく見守っていただいたCG-ARTSのご関係者各位に感謝申しあげます。

2018年3月
「実験マルチメディア」編集委員会
編集委員長 久保田 浩明

筆者
出版社: 画像情報教育振興協会; 改訂新版 (2018/3/27)、出典:出版社HP

contents

1 人間の知覚とヒューマン
コンピュータインタラクション
1-1 情報の伝達とメディアの役割
1-1-1 情報とコミュニケーション
1-1- 2 メディア
1-1-3 道具としてのコンピュータ
1-1-4 コンピュータを介したコミュニケーション
1-2 感覚と知覚
1-3 視覚
1-3-1 眼の構造と機能
1-3-2 可視光と色
1-3-3 対比・同化
1-3-4 図形の知覚
1-3-5 奥行きの知覚
1-3-6 運動の知覚
1-4 聴覚
1-4-1 音の構成要素
1-4-2 音声
1-4-3 感覚情報の干渉と統合
1- 5 触覚・力覚
1- 6 記憶と学習
1-6-1 短期記憶と長期記憶
1-6-2 再生と再認
1-6-3 学習
1-6-4 知識
1-7 コミュニケーションのしくみとデザイン
1-7-1 コミュニケーションのメカニズム
1-7-2 コミュニケーションデザイン
1-7-3 プレゼンテーション
1-8 ヒューマンコンピュータインタラクション
1-8-1 ヒューマンインタフェース
1-8-2 ユニバーサルデザイン
1-8-3 記号要素
1-8-4 マルチモーダルインタフェース
1-8-5 バーチャルリアリティ(VR)

2 マルチメディアの処理技術
2-1 マルチメディアの特徴
2-1-1 アナログとディジタル
2-1-2 マルチメディアの形態
2-2 文書
2-2-1 文書処理
2-2-2 タイポグラフィ
2-2-3 文字コード
2-2-4 文書の構造
2-2-5 文書作成
2-3 音声と音響
2-3-1 音の標本化と量子化
2-3-2 音声波形
2-3-3 音声符号化
2-3-4 音声認識
2-3-5 音声合成
2-3-6 音響処理
2-4 色
2-4-1 加法混色と減法混色
2-4-2 カラーモデル
2-4-3 カラーマネジメントシステム
2-5 画像
2-5-1 画像のディジタル化
2-5-2 画像処理
2-6 図形
2-6-1 ラスタ形式とベクタ形式
2-6-2 図形の数値表現
2-6-3 曲線の表現
2-6-4 複何変換
2-6-5 投影
2-6- 6 隠線消去・隠面消去
2-7 3次元CG
2-7-1 モデリング
2-7-2レンダリング
2-8 映像とアニメーション
2-8-1 映像
2-8-2 アニメーション
2-8-3 映像の用途による分類
2-8- 4 集技術の歴史

3コンピュータシステムの
しくみと技術
3-1 ハードウェア
3-1-1 コンピュータの構成と入出力の操作
3-1-2 コンピュータを構成する要素
3-1-3 ディスプレイモニタ
3-1-4 ディスプレイ機能GPU
3-1-5 補助記憶装置
3-1-6 RAD
3-1-7 記憶メディア
3-2 ソフトウェア
3-2-1 ソフトウェアの構成
3-2-2 OS
3-2-3 アプリケーションプログラム
3-2-4 ライブラリ
3-2-5 フレームワーク
3-3 仮想化
3-3-1 ハードウェアの仮想化
3-3-2 サーバの仮想化の手法
3-3-3 コンテナ
3-3-4 デスクトップの仮想化とシンクライアント
3- 4 クラウド
3-4-1 クラウドコンピューティング
3-4-2 対策としてのクラウド
3-4-3 クラウドの種類
3-4-4 企業におけるクラウドの導入
3-4-5 マネージドサービスの利用
3-5 プログラミング
3-5-1 プログラムと処理の流れ
3-5-2 関数とライブラリ
3-5-3 オブジェクト指向プログラミング
3-5-4 プログラミング言語
3-6 データベース
3-6-1 データベースとデータベースマネジメントシステム
3-6-2 データベースの種類
3-6-3 リレーショナルデータベース
3-6-4 ロックとトランザクション

4 ネットワークと通信
4-1 コンピュータネットワーク
4-1-1 プロトコル
4-1-2 LAN
4-1-3 ルーティング
4-2 インターネット
4-2-1 インターネットのしくみ
4-2-2 インターネットへの接続
4- 3 無線通信
4-3-1 電波利用の原則
4-3-2 無線通信の種類
4-4 ネットワークセキュリティ
4-4-1 認証
4-4-2 暗号化通信
4-4-3 ネットワークの防御
4-4-4 認証とセキュリティ
4-5 電話と携帯端末
4-5-1 携帯電話の歴史と意義
4-5-2 携帯電話のしくみ
4-5-3 IP電話
4-6 放送と通信
4-6-1 ディジタル放送の歴史と意義
4-6-2 映像配信

5 マルチメディアアプリケーションの実現
5-1 アプリケーションの日的
5-1-1 情報検索
5-1-2 見える化
5-1-3 コミュニケーション
5-2 アプリケーションの実例
5-2-1 ビッグデータ解析
5-2-2 IoT
5-2-3 音声対話
5-3 アプリケーションの構成
5-3-1 アプリケーションの基本構成
5-3-2 クライアント/サーバアプリケーション
5-3-3 Webアプリケーション
5-3-4 スマートフォンアプリ(スマホアプリ)
5-3-5 アプリケーションサーバー
5-3-6 分散型アプリケーション
5-4 アプリケーションの開発
5-4- 1 コンセプトメイキングー
5-4-2 設計・デザイン
5-4-3 アプリケーション開発のプログラミング
5-4-4 システム構築
5-5 アプリケーションの運用
5-5-1 可用性の担保
5-5-2 性能の向上
5-5-3 クラウドコンピューティングの利用
5-5-4 バージョンアップの必要性
5-5-5 災害対策

6 インターネットの応用
6-1 コミュニケーションツール
6-1-1 Web
6-1-2 電子メール
6-1-3 電子掲示板
6-1-4 チャット
6-1-5 ストレージサービス
6-1-6 プログ
6-1-7 SNS
6-1-8 ユニファイドコミュニケーション
6-2 情報の共有
6-2-1 情報共有の多様化
6-2-2 ディジタルアーカイブ
6-2-3 eラーニング
6-2-4 グループウェア
6-3 ネットビジネス
6-3-1 ネットビジネスの歴史
6-3-2 電子商取引(EC)
6-3-3 オンラインショッピング
6-3-4 ビジネスモデル
6-3-5 ネットオークション
6-3-6 ネットバンキング
6-3-7 オンライントレード
6-3-8 電子マネー
6-3-9 サービスプロバイダ
6-4 マーケティング
6-4-1 Webマーケティング
6-4-2 サービス
6-4-3 ネット広告の種類
6-4-4 ネット広告の取引形態
6-4-5 広告の出稿

7 豊かで快適な社会の実現に向けて
7- 1 生活を豊かにする情報通信技術(ICT)
7-1-1 ホームオートメーション
7-1-2 生活を支援するサービスロボット
7-2 ICTと情報機器の応用
7-2-1 写真
7-2-2 オーディオビジュアル
7-2-3 エンタテインメント
7-3 交通
7-3-1 交通インフラを支援する取り組み
7-3-2 ナビゲーション
7-3-3 交通システムによる運転支援
7-3-4 安全運転への支援
7-4 ネットワーク社会
7-4-1 ネットワークの利用
7-4-2 ディジタルデバイド(情報格差)
7-4-3 電子政府と電子自治体
7-5 情報リテラシ
7-5-1 インターネット上でのモラルとマナー
7-5-2 個人情報保護
7-5-3 情報の守秘義務と漏えい
7-6 セキュリティ対策
7-6-1 情報セキュリティ
7-6-2 セキュリティリスク
7-6-3 信人のセキュリティリスク
7-6-4 企業・組織のセキュリティ対策

8 知的財産権
8-1 知的財産権
8-2 著作権
8-2-2 利権の内容
8-2-3 著作権の発生
8-2-4 著作物
8-2-5 著作者
8-2-6 保護期間
8-2-7 著作物の利用
8-2-8 権利者との交渉
8-2-9 契約
8-2-10 著作権侵害
8-2-11 ©️(マルシーマーク)による著作権表示
8-3 業財産権と不正競争防止法
8-3-1 産業財産権
8-3-2 不正競争防止法

R リファレンス
R-1 ハードウェア
R-1-1 CPU のスペック
R-1-2 記録メディア
R-1-3 入カデバイス
R-1-4 ディスプレイモニタ
R-1-5 プリンタ
R-1-6 ネットワーク機器
R-1-7 インタフェース
R- 2 規格
R-2-1 放送方式と映像規格
R-2-2 ファイル形式
R- 3 標準化・規格化の機関

補足説明
index

筆者
出版社: 画像情報教育振興協会; 改訂新版 (2018/3/27)、出典:出版社HP