仕事に役立つ情報活用入門「ファイリングデザイナー3級テキスト」




はじめに

現代社会は、仕事も生活もあふれるほどの情報に取り囲まれています。現代人は毎日、情報の海の中で働き、生活していると言っても過言ではありません。しかし、それら膨大な情報の価値は、人により、場所により、あるいは時によって千差万別であり、私たちがほんとうに役立つ情報を、必要なときにいつでも即座に取り出して活用しているかといえば、必ずしもそうとは言えないでしょう。なぜなら、情報を上手に取り扱う“技術”について、真剣に考えたり、学んだりする機会があまり多くはないからです。

今日、次々に生み出される情報をうまくさばきながら仕事の質や生産性を高めることは、どんな職場においても欠かせない要件となっており、ファイリング・デザイナー検定は、この現代人にとって必須の技能を習得するために開発された情報活用のためのライセンスです。

このテキストには、情報と仕事と人間の基本的な関わりを中心に、情報をどう整理し、ムダなく仕事に活かすかについて、さまざまなヒントが紹介されています。ファイリング・デザイナー検定試験3級用テキストとしてはもちろん、日々の仕事の中で、膨大な情報の整理と活用の方法について悩みを抱えている多くの方々の問題解決の手引書として、お役立ていただくことを期待します。

一般社団法人日本経営協会検定事務局

一般社団法人日本経営協会 (編集)
出版社: 一般社団法人日本経営協会 (2010/12/1)、出典:出版社HP

目次

プロローグ

第1章 スバル君のある1日
AM 8:40 始業15分前に席に着く
AM 9:00 大事な書類が見つからない!!
AM10:30 用紙サイズを間違えてコピーミス
AM12:00 目的地に着いてからゆっくりする
PM 1:30 在庫データが更新されていない
PM2:30 書店で情報アンテナを磨く
PM 3:50 上司から急な仕事をふられる
PM 5:00 書類整理も営業の重要な仕事

第2章 e-メールと情報 情報の本質とその役割
2-1 ビジネスにおける情報の本質
2-1-1 情報とは何だろう?
2-1-2 天気予報と情報
2-1-3 行動の指針としての情報
2-1-4 e-メールの役割
2-1-5 情報内容を評価する
2-2 情報と仕事
2-2-1 情報とつき合うさまざまな場面
2-2-2 情報をどこから収集するか
2-2-3時間管理の重要性
2-2-4 情報処理の8原則
2-3 情報使いの達人となるには
2-4 情報活用における倫理的側面
2-4-1 情報倫理
2-4-2 組織における情報に関わる不祥事

第3章机はあなたの情報ステーション
3-1 あなたの机まわりをチェックしよう
3-2 個人机は、仕事の始発駅であり終着駅
3-3 なぜ、机まわりが「無法地帯」になってしまうのか
3-4 仕事場を改善しよう
3-4-1 「整理」と「整頓」を区別する
3-4-2 「捨てる」でなく「拾い上げる」
3-4-3 1分以内で「要、不要」を判断する
3-4-4 「迷う」「愛着がある」「とりあえず」の書類の取り扱い
3-5 毎日5分、机まわりを見直そう
3-6 職場会議の約束事項

第4章 仕事の効率を上げよう
4-1 そもそも仕事とはなにか
4-1-1 仕事とは「問題解決の連続」
4-1-2 仕事の流れと情報の流れ
4-2 「3つのなぜ運動」を始めよう
4-3仕事には6つのタイプがある
4-4 仕事に「優先順位」をつける
4-5 仕事の「進め方」を工夫しよう
4-5-1 前の晩に「仕事メモ」をつくる
4-5-2 仕事をこなす「基本動作」とは
4-5-3 「いつでも、どこでも」仕事はできる
4-5-4 仕事を見直し、時間を有効に使う

第5章 ファイリングシステムの基礎
5-1 ファイリングシステムとは何か
5-1-1 情報に関わるムダを排除する技術
5-1-2 偶然をあてにしないのがシステムの意義
5-2 仕事と情報の関わり
5-2-1 情報整理のステップとファイリングシステム
5-2-2 仕事がうまくいかないのは情報が整理されていないため
5-3 プロの道具の取り扱いに学ぶ仕事の基本
5-3-1 プロは仕事の準備に抜かりがない
5-3-2 情報は仕事に欠かせない道具
5-4ファイリングシステムの基本技術
5-4-1 まずは仕分ける
5-4-2 置き場所を決めておく
5-4-3 ファイル道具のいろいろ
5-4-4 情報は共有されてこそ価値がある
5-4-5 不要な書類を捨ててこそ必要な情報が分かる
5-4-6 残す情報は期限を決めて持つ
5-5 ファイリング・デザイナーのすすめ

Prologue

オフィスという「場所」、知っていますか?
組織で働いているあなたなら、当然知っていますよね。
でも、就職前のあなたは、具体的にイメージできるでしょうか?

社会人になって初めて出入りするようになり、しかも社会人になったその日から、社会
生活の拠点となる、それがオフィスです。

■オフィスは部屋、オフィスはスペース
オフィスは会社や役所が置かれた建物のなかにあります。小さな会社であれば、一部屋のオフィスが会社全体ということもあります。

大規模な会社や役所の場合は、オフィスが広い部屋であったり、いくつもの部屋に分かれていたりします。支店や支社をもつ会社や出先をもつ役所であれば、建物は複数になりますから、オフィスも当然複数置かれます。

オフィスには、社員や職員が仕事をするための机や椅子があり、パソコンや電話があり、応接セットや時には会議スペースがあります。オフィスの周辺にはデジタル複合機や、書類を収納するキャビネット、私物を収納するロッカーなどを設けているところもあります。お茶を入れるための給湯コーナーや自動販売機が置かれていることもあります。

■オフィスの座席
たとえば、役所ではオフィスの入口に、職員の座席表が掲示してあるのが一般的です。掲示された座席表をみると、入口から遠い、奥まった席は課長をはじめとする管理職の席になっていることが分かります。

入口に近い席は、肩書のない一般職員の席で、多くは若い職員が座っています。入口のドアを開けて「失礼します」と声をかけると、最初にこちらを向いてくれるのは、そうした若い職員の人たちです。

他方、民間会社のオフィスの座席配置はさまざまです。肩書の高い人が入口近くの席を占める場合もありますし、仕事の内容によっては個人用の机を持たせないオフィスもあります。

なお、民間の会社では、現在セキュリティの関係で、外部の訪問者が直接職場=オフィスに通されることは少なくなりました。会社の入口に受付が置かれ、社内に通される場合は、来訪者のバッチをつけるように求められます。社員もまた、組織の一員であることを示す名前と顔写真付きのネームプレートを身につけます。ネームプレートの装着は役所でも広くおこなわれています。

■「社長室」もオフィスの一つ
オフィスには、ふつうは社長の席は置かれていません。社長は社長室で仕事をするのが一般的です。社長室の入口には秘書の机がおかれ、秘書はそこで社長室へ出入りする人と情報の「交通整理」をします。社長にとっては社長室がオフィスであり、社長秘書にとっては社長室前におかれた席がオフィスです。秘書は人と情報の交通整理のためにファイリングをおこないます。

■オフィスの仕事、ファイリング
こうしてみてくると、オフィスとは、社長から入社したばかりの新人まで、組織で働くすべての人にとって、それぞれの仕事の拠点であることが分かります。では、みなさんは、オフィスにある自分の仕事の拠点で、何を使ってどのように仕事をするのか(しているのか)を考えてみましょう。

オフィスでは、管理職のもとで社員や職員が共通の目的に向かって協力して仕事をします。社員や職員は、業務を分担し、必要な情報を共有しなければなりません。そのために会社や役所ではメールや書類などをつかって、仕事を進めます。これが文書主義です。

オフィスでは文書主義による仕事がおこなわれますから、メールや書類などの「文書」が毎日たくさん作られます。その文書は適切に整理・整頓し、管理して、必要な時に素早く取り出せるようにすることが必要です。文書を適切に整理・整頓し管理する、これがファイリングです。

社長秘書がおこなう情報の交通整理と同じように、あなたも文書を適切に整理・整頓し、管理することで、課員として、また社員として、他の人たちとの情報共有がうまくできるようになります。そのことは、課員として、社員としてのあなたの存在価値を大きく高めることになるでしょう。

一般社団法人日本経営協会 (編集)
出版社: 一般社団法人日本経営協会 (2010/12/1)、出典:出版社HP